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ひたきのつぶやき(8年ぶりの再開)

山野草、樹木、虫、鳥、魚 などなど 身近な自然についてのつぶやきです

はぜとえび

2005-12-08 17:35:35 | ひたきのぐぜり
みなさん、ありがとう。でも、ごめんなさい、もう少し時間をください。更新気力がないので、以前書いた文書を載せますね。少し休みます。かわいい坊ちゃんと。

どこまでも続く白い砂。
スコーンと晴れた太陽は、澄み切った水の存在を無視したかのように海底に届いています。
一見、自然豊かに見えるこの海は、実は砂漠です。
水があまりにも澄んでいるのは栄養素が溶け込んでいないからで、おまけに暖かいので溶存酸素に乏しいのです。隠れ場所もないただの砂地では小魚は生きていけません。
そんな砂漠にもオアシスができました。新月に解き放たれた珊瑚の卵がかろうじて、砂から顔を出している岩に着生孵化したのです。
何年もかかって、体内の藻が光合成によって供給するエネルギーに助けられ、珊瑚はその骨格を大きくしていきました。
でも、そのオアシスもすぐに満員です。
珊瑚にとりついたイソギンチャクも実は光合成に助けれられているのでこんなに大きくなったのですが、そこには毒に少しずつ順化していったクマノミしか住めません。(蝶ほどは厳格でないにしろクマノミも種類によって毒を制することのできるイソギンチャクにはある程度決まりがあります。)
そんな特技のないハゼは、力があるわけでもなく、身を守る毒があるわけでもなく、遊泳能力に長けているわけでもなく、珊瑚の端っこの砂地におびえながら生活していました。ここには時々大型の魚が狩りにやってくるので唯一の取柄の目の良さでかろうじて難を逃れています。
エビも同じでした。愚鈍で目の悪いエビはせっせと穴を掘ってそこに潜んでいるのですが、穴の中の砂を外に出した途端にパクッとやられるので、うかうかできません。
ある日、ハゼがエビに言いました。
「エビ君、一緒に住まない?」
「えっ!僕そんな趣味はないんだけど。」
「変なことしないよ。君は僕たち2匹が住む穴を掘る。僕は入り口で危険がないかずっと見張ってるよ。だから、安心して穴を掘っていられるでしょ。」
こうして、2匹の共同生活が始まりました。他の魚たちは、「ハゼのやろうめ、うまいことやりやがったな。」と陰口を言いますが、そんな時ハゼは、「ヤドカリにオンブにダッコのイソギンチャクよりはずっと役に立っているだろ。」と反論します。
さて、どうでしょうか?イソギンチャクの反論がほしいところです。

ヒメギフチョウとウスバサイシン

2005-05-22 11:38:58 | ひたきのぐぜり
日本中の蝶が集まって会議をしています。
会議の招集はモンシロチョウの発言が発端でした。
「うちの子がカラスアゲハのお子さんに葉っぱから落とされて大怪我しました。蟻どもに巣に運び込まれて今頃きっと食べられています。こんな悲劇は二度とごめんです。」
これまで、蝶達は自分の好きな草や木に勝手に卵を産んでいたので、このようなトラブルが後を絶ちません。それどころか、皆おいしくて栄養のある葉に集中して卵を産むため、その植物が枯れてなくなる危険にさらされています。
そこで、会議の結果、それぞれの蝶がどの植物の葉を食べるかくじ引きで決めることにしました。
欲張って何度もくじを引くもの、一度であきらめてしまうもの様々です。
本州のヒメギフチョウには「ウスバサイシン」が当たりました。
毎年「黄色の女王コンテスト」で敗れているアゲハチョウとキアゲハは、「薄馬鹿妻子ですって、ぴったりのご馳走じゃありませんこと。」と皮肉たっぷりです。
そのどころか、「うちの主人は、ギフチョウの小娘の尻を追いかけて困ります。飛んでいい季節もくじ引きで決めましょう。」と提案する始末。
なんと、この提案が可決されてしまいました。
ヒメギフチョウは、くじの結果、蝶にとってはまだ寒い早春から少しの間しか空を飛べなくなってしまいました。
他の蝶達は、みなとても気の毒に思いました。蝶は、気温が下がると体が動かなくなることは誰でも知っているからです。
でも、ヒメギフチョウはめげませんでした。これまで、コンテストのために、無駄毛の処理は欠かせないお手入れでしたが、これを一切やめてしまったのです。
少しでもたくさんの毛で体を覆い、暖かくして、蜜を吸いながら、今でもキャベツやみかんに卵を産むことはせず、少なくなってなかなか見つからないウスバサイシンを探しています。
写真は、ヒメギフチョウよりやや大柄のギフチョウとウスバサイシンに近縁で徳川家の家紋のフタバアオイ。

ひばりとふでりんどう

2005-05-15 23:39:06 | ひたきのぐぜり
原っぱがあります。
子供らは、林の小路を抜けてこの原っぱにきました。
まだ早春の日差しは、空をそれほど濃い瑠璃には染めていません。
枯れ草色一色の世界に遠慮がちに若い緑を載せた大地には、ポツンポツンと空の色を反射する小さな小さなフデリンドウの花が咲いています。
足元からひばりが飛び立ちました。もう少し暖かくなると天高く自分の存在を誇示するかのように囀るはずです。
囀りが終わると、巣の場所をイタチに見つけられないように、ちょっと離れた場所に降り立ちます。
それから、ジグザグに自分の巣に歩いてたどり着きます。
空から、意味ありげにも見える不規則さでぽろ、ぽろと点在する空の鏡は、それをたどれば巣につけるのです。
でも、曇りの日は、この鏡は閉じていて見つけられません。雛たちが大きくなる頃には、粉のような種を撒き散らした後で枯れてしまいます。
でも、それでいいのです。ひばりの子供たちは、甘えて巣に帰ってはいけません。別の土地で自分の空の鏡を見つけます。
野うさぎが、冬毛を卒業して、遠くをぽくぽくと歩いています。きつねやたぬきはずいぶん昔にいなくなってしまいました。
空の鏡も、削り取られた大地にも懸命に根を張ります。でも、人間が掘り取っても根付いてくれません。大事に大事に種蒔きしても空の鏡になれないところでは芽を出してくれません。
子供らはそれを知っているので、小さな小さな花を空と交互に見比べて、そっとしておきます。
川では、ヨシノボリが瑠璃色をまといそろそろお嫁さん探しをしはじめます。