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『ウナギ 地球環境を語る魚』

2014年08月25日 | 読書
『ウナギ 地球環境を語る魚』井田徹治(岩波新書)

 ウナギの生態は謎だった。アリストテレスは、ウナギは「交尾によって生まれるのでも、卵生するのでもなく」、「泥や湿った土の中に生ずる『大地のはらわた』と称するもの[ミミズ] から生ずるのである」と書いた。
 19世紀末、ジクムーント・フロイトの初めての論文は、ウナギの精巣を見つけたとする論文だった。出発点が自然科学だったというのは面白い。フロイトが指示した場所は合っていたが、精巣であるという確証はなかった。正式な発見は、後の時代に譲る。
 ヨーロッパウナギやニホンウナギの産卵場所を突き止める研究報告はおもしろい。ヨーロッパウナギはサルガッソー、ニホンウナギの故郷はフィリピン沖。スルガ山といわれる、富士山に似た形の海山だという。レプトケファルは自力で泳ぐ能力を持たない。潮流を利用して数千キロの旅をして、河口付近にたどりつくと変態する。この絶妙さ。エルニーニョ現象がおきると,黒潮の分岐位置が通常時より北寄りになってしまい、日本にはたどりつけない。盲亀浮木とはこのことだなと思う。
 かば焼きなどの輸入物として日本のスーパーやファーストフードで扱われてきた中国産ヨーロッパウナギは、来年以降、店頭から姿を消す。ウナギの人工養殖の研究も進んでいるが、まだ実用化のレベルではない。
 重金属など有害物質は筋肉に蓄積され、欧米では妊婦や子どもには禁じられているという。世界最大のウナギ消費大国でありながら、ウナギの環境との関わりなどは知られていない。眠れぬ夜、退屈しのぎにながめているうちに、面白くてつい読み通してしまった。 

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