KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

裏丹沢・原小屋沢遡行~中ノ沢下降

2014年08月31日 | 沢登り

日程:2014年8月31日(日) 日帰り
天候:時々
行程:早戸川林道魚止橋7:40-雷平9:00-F2雷滝9:35-F4バケモノ滝10:50-F7ガータゴヤの滝11:50-姫次13:20-蛭ヶ岳14:25-中ノ沢下降-伝道-魚止橋18:05(単独)
参考:「丹沢の谷110ルート」(山と渓谷社・1995年刊)
   「山のホームページ・沢登りと山スキー」銀座山の会・森田氏の記録
   「その空の下で」タケちゃんの記録

 今年の夏は天候不順でこの週末も予報は悪く、早々とS師とジムの約束をしていたのだが直前になって天気が好転。
 せっかくなので一人沢へ転進する。
 原小屋沢は、以前から考えているパチンコ遡行のために大事に(?)とっておいた一本だが、なかなかその計画を実行できないため今回日帰りで行くことにした。

 未明に家を出て早戸川林道の終点、魚止橋まで。車で2時間弱。
 圏央道の海老名-高尾間が開通したため周辺道路も整備され、アクセスが少し良くなったような気がする。

 沢登りか渓流釣りか、周辺には既に何台か路駐しており、自分も空スペースに停める。
 魚止橋には、「この先通行止め」のガード柵あり。簡単に手でどけられるが、その先はかなり荒れたダートで普通の車ではまず無理。
 台風の影響か土砂崩れで、現在復旧中である。

  
 (左)早戸川林道「魚止橋」手前                (右)早戸川林道終点の案内板

 20分ほど荒れた道を歩いて林道終点。
 ここから原小屋沢へは右の尾根の「伝道」を通っていけるが、自分はよくわかっていなかったのでここから沢に入る。

 いきなり南アの尾白川本谷のような巨岩越え、そして深い淵のあるゴルジュ突破など、雷平まで結構時間がかかる。
 以前は途中に木橋が二か所ほど渡してあった箇所も、今は増水で流され橋の残骸があるばかり。
 渡渉ポイントにはケルンが積まれているので見逃さずに渡っていく。

  
 (左)渡渉ポイントの橋は増水で壊れたまま           (右)雷平付近

 ようやく少し開けた河原に出て、雷平に到着。
 少し歩いて右岸から中ノ沢と思われる沢を見送り(下からだと涸沢に見える)、さらに本流通しに行くとF1「大岩の滝」。

 正面突破は完全に頭からシャワーを浴びることになり、左側から越えようとするが、ちょいと被っていてボルダーちっく。
 ガイドブックには「岩の下からくぐり抜けるように越える」とあるが、よくわからない。
 まぁ最初から無理することもないだろうと結局、右から巻く。

 続いて沢が左に曲がると、いきなりF2「雷滝」。

  雷滝 15m

 凄い!見事だ!高さは15mらしいが、幅もあり、何より水量が圧倒的。
 花火で言ったら大玉の「枝垂れ柳」か「スターマイン」。これまで丹沢の滝はいくつも見てきたが、その美しさと迫力でベスト10、いやベスト5に入れていいかも。

  
 右の写真は上部1/3辺りからの俯瞰ショット

 一応登れるラインを探ってみるが、滝下へ行っただけで物凄い風圧で、写真を撮るにもたちまちレンズが水滴で曇ってしまう。
 正面突破は水勢に押されてまず無理。左の水際ラインが行けそうだったが、上部がよくわからず結局ここも左側から巻く。
 途中、巻き道から滝へトラバースし、上部1/3だけ登ってみた。

 雷滝の上は台風の影響か、倒木が流れを塞ぎ、ちょっと遡行と景観の邪魔をしている。
 その先しばらくナメや小滝が続く。深い淵を洞窟探検のようにヘツっていくのが面白い。

 この先で顕著な二俣となる。水量比は正面3:左2。
 進行方向、水量ともにどう見ても正面の方が本流のようだし、そのまま先へ進んでしまう。

 しばらく行くと、なだらかだが結構大きな三段のナメ滝が現れる。
 おかしい。原小屋沢だったら次に現れるのは直瀑のバケモノ滝のはずで、ここでようやくカサギ沢へ進んでしまったようだと気づく。
 すぐに引き返して右岸の沢へ入り直す。
 地形図だと原小屋沢は本流から左に折れるようになっているが、「丹沢の谷110ルート」などのトポだとほぼ真っ直ぐの流れで描かれているので注意が必要だ。

 また「110ルート」だと、その先が水量比1:1の二俣となっているから紛らわしい。
 先ほどのカサギ沢との二俣を左に入って次の二俣だが、ここは明瞭。
 右手には豪快に「バケモノ滝」が落ちていて、間違えようもない。

  バケモノ滝。落口の上に大きな倒木がブリッジ状にかかっている。

 このバケモノ滝(F4・10m)も水勢強く、取り付くにしてもドップリ釜に入り込まないといけないのでパス。
 左手の急なリッジから巻いて、落口に立つ。

 次に現れるのがF5、三段20m滝。
 ここは行けそうだったが、やはり最初の滝に取り付くには腹から胸の辺りまで釜の中に入っていかなければならない。
 8月最終日とはいえ本日はちょっと曇りがち。結局、水の冷たさに気持ちが負けてここも左側から巻く。
 側面から見ると傾斜はなだらかだったので、まぁわざわざ冷たい思いをして登るほどでもないかなと思った。

 

 

 さらに進んで行くとようやくクライマックスのF7「ガータゴヤの滝」30mが現れる。
 同じ「枝垂れ柳」系でも「雷滝」は豪快、「ガータガヤの滝」は優美な印象。どちらもどこからこんなに水が湧いてくるのかと思うぐらいの水量だ。

   
ガータゴヤの滝 30m

 ここも巻きかなと思いつつ、登れそうなラインを探ってみる。すると、滝の左端が何とかシャワーを避けて登れそう。
 で、右下から左上へ斜めトラバース気味にまず上がってみる。

 近くに寄って改めて観察すると、正面ど真ん中のラインも水勢激しいが、よく見ると階段状になっている。・・・これはイケるかも。
 そのまま軌道修正し、正面に取り付く。

 途端に物凄い滝つぶてが身体中にバチバチバチッと当たり、その水圧に思わず跳ね返される。だが、これで逆に心に火が付いた。

 一旦下がってゴアのジャケットを着込んで再トライ。
 水モロ被りになりながら中段を突破!
 躊躇してたら負けるので、一気に越える。
 
 最後の上段の所で一息ついたら、汚れたスリング付きの残置ハーケンを発見!
 確かにランナーを取るならここしかないが、しかしこの滝のど真ん中でよくハーケンを打ったな。先人の奮闘に感嘆する。
 こちらはロープ無しなので、ここで足を滑らせたらシャレにならない。
 最後は慎重にホールド、スタンスを拾って無事クリア。

   ガータゴヤの滝、一人でできるもん!(クリックして拡大

 
実際ここは登ってみると滝自体はせいぜい3級+。でもシャワーが5級!
 夏の暑い時期、気合を入れて取り付けばけっして難しくはない。

 そこを越えると左側に鎖の付いた滝。
 何でこんな上部の滝に鎖が?と一瞬思うが、おそらくこれは沢を遡行しなくてもガータゴヤの滝を見られるように稜線から下ろして付けたものだろう。

 この先、大きな滝は無く、丹沢らしくない(?)開けた穏やかな流れが続く。
 驚いたことにこの辺りでも小さいながら魚影がすばやく走るのを見かける。

 ようやく水涸れとなり、そのまま本流通しに詰めれば良かったが、ふと見ると右手に微かな踏み跡を発見。
 ま、どこでもいいかと急な樹林帯を登り詰め、稜線に出てからもさらに踏み跡を西側へひたすら歩いていくと姫次へ出てしまった。

 これが、姫次から直接、早戸川林道へ下りられる道なのだろうか?
 ただ、赤テープも目印も無く、ケモノ道のような踏み跡だけが頼り。
 今回、二万五千分の一の地図など持ってこなかったのでルーファイの悪い自分はまずやめておいた方が無難かなと思い、予定どおり蛭ヶ岳まで行き、そこから下ることにする。

 時間が押してきたので、蛭ヶ岳まではやや早歩きモード。
 長い木の階段をゼーゼー言いながら到着。
 山頂にはトレランらしき単独行者が一人、小屋も閉まっているようで静かだ。

  

 ここからの下山は古い登山地図にはない市原新道というのを使おうと考えていたが、特に標識が無く、降り口がわからない。
 仕方なく、山頂から丹沢山寄りに少し下って「中ノ沢」を下降することにした。

 中ノ沢の上部はかなりガレていて、複数の人数で下る場合は落石に注意。

 しばらく源頭のガレを下っていくと、やがてF4・10m涸滝が現れる。
 110ルートに「登りは快適」と書いてあったので、そのままクライムダウン。特に問題無く下れた。

 続いてF3(8m)。ここもクライムダウン。
 ホールドを選んで慎重に下りていくが、下の方がちょっとビミョー。
 滝の弱点を拾いながらトラバース気味に下っていくが、あと数mという所で突然足下にあった木がメキメキッとスローモーションのように崩れ、転落。
 顔面を守ろうととっさに右手を着いて、小指を思いっきりガレた岩場に打ち付けてしまった。

 一瞬、完全に折れたと思ったが、ヘンな形には曲がっていない。
 手先から肘にかけて派手に擦ってしまったが、大きな出血は無い。頭も足も大丈夫なので良かった。

 その先でさらに悪そうなトイ状の滝があったが、さすがに今度はやめておこうと、脇の斜面から巻いた。
 水流が出てきてからはなるべく沢通しに下り、厄介そうな小滝が出てくるとそこだけは小さく巻くようにしてひたすら下る。

 下りといっても中ノ沢も結構長い。
 夕暮れと共に沢も次第に暗くなり、指の痛さもあって何とも辛い下降となる。
 
 この辺りはあの「ましらさん」が熊と遭遇したエリアでもあり、また沢の下降中は特にバッタリという可能性が高いのでホイッスルを鳴らしながら進む。
 ヨレヨレになりながら、ようやく早戸川本流と合流した時はホッとした。

 だが、ここから車を置いた場所まで、まだ遠い。
 さすがに帰りは沢伝いにゴルジュや大岩を越えて行く気になれず、左手の伝道を使う。

  

 途中、「貞子」が住んでいそうな廃屋の造林小屋など見送りながら、小一時間の山道歩き。ようやく早戸林道へ出て長い一日が終わった。 
 心配していたヒルは今回一匹にちょこっと食われただけだった。
 

 原小屋沢、人気があるとはいえ丹沢最奥の秘境感もあって、やはりいい沢だった。


写真集「裏丹沢・原小屋沢」



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (juqcho)
2014-09-07 15:28:46
ヒル、やはり出ましたか...。(←ポイントそこか?)

指は大丈夫でしたでしょうか。くれぐれもお大事に。
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ヒルナンデス? (現場監督)
2014-09-07 22:39:18
ヒル、出ましたよ。(ポイントそこじゃないでしょ!)

でも一匹だけでした。鹿も見かけなかったし、季節的なものでしょうか。

指は何とか。歳と共に小さな故障が絶えません。
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Unknown (ぴょん太郎)
2014-10-27 16:16:14
単独での沢登りは、沢登りを一度もやったことがないド素人の僕から見てもかなり危険度が高いような気がしますが、そんな危険かつ困難な事をさらっとやってしまうところは、さすがは現場監督さんです。すごいです。
最近、危険なスリリングな事を避けがちだったので、この記事を拝見させていただき気持ちが奮起いたしました。大怪我しないように細心の注意を払いつつ僕も頑張ります(笑)
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Unknown (現場監督)
2014-10-28 12:14:51
ぴょん太郎さん、ごぶさたしてます。
こちらもバタバタしておりますが、ぴょん太郎さんの活動はずっとチェックしてますよ~。

沢でも岩でも自分には師匠と呼べる友人がいて、自分はヘタの横好きでやらせてもらってます。まだまだ生涯修行の身です。
でも沢はやっぱ怖いというか奥が深いですね。レベルにもよりますが、総合力という点では岩や冬山より上のような気がします。
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