KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

奥秩父・鶏冠谷右俣(ロング・バージョン)

2017年08月26日 | 沢登り
5日程:2017年8月26日(土)日帰り
天候:時々
行動:単独
行程:西沢渓谷入口6:30-鶏冠谷出合7:20~40-魚止めの滝7:50-逆「く」の字滝8:40-右俣25m滝9:15-40m大滝11:15-源頭部13:15-甲武信岳14:15~45-戸渡尾根・徳ちゃん新道-西沢渓谷入口18:05
使用:キャラバン「奥利根」(フェルトソール)
 
 今年の夏は天候不順続き。この週末もすっかりジムでお茶を濁すつもりだったが、直前になり予報が好転。急遽、夏らしく(?)沢登りに出かけることにした。
 奥秩父の沢は久し振り。たぶん2005年にタケちゃんと行った東のナメ沢が最後だったような気がするので12年振りか?
 
 鶏冠谷はこれまで二回単独で遡行しているが、いずれも左俣。
 左俣の場合、下山はチョイ悪の鶏冠尾根となるが、もうそんな気力もないので、今回はまだ行ったことのない右俣へ。
 右俣はネットでも多くの記録があるが、そのほとんどが奥の二俣、40m大滝手前で遡行を打ち切り、右側の戸渡尾根へ上がるお手軽バージョンだ。
 理由としては、その後も同じようなナメ滝が延々と続き、最後の詰めのザレが悪いからということだが、今回自分は故・タケシ師匠の意志を重んじて源頭部まで詰め上げ、さらに甲武信岳まで足を延ばす「ロング・バージョン」とした。
 
 土曜未明に横浜の自宅を出発。
 圏央道開通のおかげで奥秩父も近くなった。前夜発ではなく、当日早朝発で十分。
 朝6時には無料駐車場に着き、30分後には出発。
 最近はフリーやボルダーの人気が高く、泥臭いアルパインや沢登りは人気薄かと懸念していたが、奥秩父に関してはけっこう沢登り組が健在で、ちょっと嬉しくなった。
 
 林道を進み、田部重治の文学碑の所から左下へ進む。
 車好きだった氏を想って、この奇妙な形の石碑となったようだが、何か違和感を感じるのは自分だけか。

  

 車の形をした田部重治の文学碑(左)と看板に偽り無しの鶏冠谷出合(右)

 ヌク沢出合を過ぎ、やがて二俣。吊橋を渡って、すぐ右側が東沢の入渓点。
 昔は立入禁止の表示や張り綱がしてあったと記憶しているが 今はこの先の鶏冠山が山梨百名山に選ばれてから公的にもオープンとなったらしい。
 
 河原伝いにも行けるが、右岸に巻道があったので、それ使って進んで行くとすぐに鶏冠谷出合。標識もあり、一目瞭然。
 ここで準備。後続パーティーもやってくる。(東沢釜の沢、鶏冠尾根、鶏冠谷右俣の計三組。)
 
 中年男性二人組とほぼ同時に鶏冠谷入渓。
 陽射しがイマイチで、最初のうちは暗い雰囲気。岩とフェルトの感触を確認しながらゆっくり行く。
 
 流れのある大きなゴーロ状を少し進むと「魚止めの滝」12m。
 改めて見ると、けっこう立っている。以前、左俣遡行の時はロープ無し、上部はA0で突破したが、もはやそんな気力無し。
 おとなしく左岸から巻く。
 
  
 出だしのゴーロ帯(左)と魚止めの滝(右)
 
 左から奥ノ飯盛沢が入る所の三段ナメ滝も久し振りに見ると印象が違った。改めて見るとなかなか見事。
 ツルツルで正面突破は無理なので、ここも左岸からサッサと巻く。
 二人組は足並みが揃っていて、けっこう早い。こちらが写真など撮っていると、すぐに見えなくなってしまう。

  
 奥ノ飯盛沢出合付近のナメ滝を行く先行二人組
 
 続いて下部ハイライトの、逆「く」の字滝。20m。
 最近、ネットの記録では「逆さくの滝」とか書かれていて、最初「さかさくの滝?」と読んで随分違和感を感じたが、これは『逆さ「く」の字の滝』の意味だった。
 日本語は難しい。やはり『逆「く」の字滝』でいいんじゃないかと個人的には思う。
 
 この滝は最初の時、最上部で足を滑らせ下の釜まで20m不覚のウォーター・スライダー(早い話が「滑落」)した覚えがある。
 その時は軽い打撲程度で、そのまま最後まで遡行を続けたが、何となく自分の中でトラウマとなっていて気が抜けない。(ちなみに二回目は緊張しつつもソツなくクリア)
 
 その時のヌメリ具合や水量にもよるが、本日はすこぶる快適。
 下部は問題なくスタスタ上がり、屈曲部で軽くレスト。右側からはお助け用に残置スリングが数本垂れ下がっていて、それを頼りに右上にも抜けられるが、ここは自然の形に沿って逆「く」の字型に行く。
 右側の出っ張った岩を使ってレイバック風に進み、最後のほんの一歩が滑りそうで緊張するが、フリーで突破。

 
 鶏冠谷下部のハイライト、逆「く」の字滝。20m。上部にはお助け用の残置スリング数本あり。

   
 
 逆「く」の字の上は、大きく左岸の土砂が崩れ、倒木が景観を損ねているが、いずれまた自然の力で掃除されるかもしれない。 
 その後はちょっとしたゴルジュ、そしてナメ、ナメ滝と続く。

  
 
 やがて鶏冠谷の二俣。予定どおり右俣へ。
 右俣はすぐ前衛の4m滝、その上に顕著な25m大滝かが懸る。
 左からも巻けるらしいが、今回はセオリー通り右(左岸)から大高巻きとする。
 ぐるっと遠回りするようにして高さを稼ぎ、後は滝の落口に向かって水平トラバースだが、頼りになる灌木の間が空き、斜面も崩れやすい箇所がある。
 落ちれば20mぐらい急な斜面を滑落することになるので、注意が必要。大きく巻き過ぎて沢へ戻るのに懸垂したという話もある。
 
 4m倒木の滝。
 倒木が無いと登れないと某記録に書いてあったので、敢えて木を使わないようにしてトライ。
 右側の岩にサイドガバやアンダーホールドが豊富にあり、面白く登れる。
 ただ木が絶大な安心感を与えてくれていることは確か。

  
 右俣に入ってすぐの25m大滝は左岸から大高巻き(左)。4m倒木滝は倒木無しでも登れる。(右)
 
 30m多段滝。
 直登は無理そうだったので、右から小さく巻く。ここも絶対に足を滑らせてはならないポイント。
 この後、しばらくナメとナメ滝がこれでもかといった具合にしつこく続く。

  
 30m多段滝は右から小さく巻く(左)。右のナメ滝は左側のコンタクトラインを直登。
 
 やがて二俣。水量は左1:右2。
 水量では当然右だが、よく見ると左奥にけっこう大きな滝が落ちており、こちらが本流かと一瞬迷う。
 近づいてみると左側の大滝は高さ約20m。威圧的だがよく見ると意外と中央が階段状で、登れる人なら直登できそうだ。
 タケちゃんの記録では大滝は40m、直登はまず無理と書いてあったので、この滝は件の滝ではないだろうと判断。
 一旦戻って、右側の本流に復帰する。この二俣についてはあまり他の記録には書かれていないので、ここでは「ニセの二俣」と呼ぶことにする。

  
 
 少し行くと、またも二俣。今度は水量比1:1だ。
 ちなみにこの二俣から奥に40m大滝が見えるとあるが、私には見えなかった。
 試しに左俣を少し上がると曲がった先に大滝出現。間違いなくここが「鶏冠谷右俣の二俣」だろう。

   右俣の40m大滝
 
 通常はここで打ち切り、右の支沢から戸渡尾根へ上がってしまうようだが、今回はできるだけ源流まで詰めるので、そのまま大滝へ。
 直登は無理なので、セオリー通り左岸を巻く。よく見ると踏跡があるが、少しわかりにくいかも。
 下から見るとなんてことない巻きの傾斜も上に上がるとけっこう高度感あり、ここも絶対落ちれない場所。
 
 40m大滝上でさらに二俣(奥の二俣)。
 水量は1:1。右俣を選ぶ。すぐの三段ナメ滝はルーファイに注意しながら、正面突破。
 
 さらにこの後もしつこいぐらいにナメとナメ滝が続く。
 先の右俣大滝下で打ち切る通常バージョンのパーテイーの記録にもよく「ナメとナメ滝が飽きるほどに続く」と書かれていたりするが、源流まで詰めないと「あなたはまだ鶏冠谷右俣の本当のしつこさを知らない」と言いたい。
 ナメとナメ滝の連続というとまるで「癒し系のデート沢」と勘違いされそうだがそうではなく、神経を使う数回の大高巻きも含めて、この鶏冠谷右俣はある程度経験を積んだ中級者向きだと思う。

 いよいよ水流も細くなり、水枯れ直前の滝は小粒ながら釜に胸まで使ってシャワークライム。
 その上で水も枯れ、いよいよ詰めかと思ったらそれはフェイクで、伏流の後またチョロチョロと水が流れるナメが続く。
 
 最後は枯れ滝を正面突破しようと試みるが、完全に垂直でザックを背負っていると若干被り気味にも感じる。
 先人の古いハーケンと残置スリングが残されているが、今ここまで訪れる物好きな沢屋はそうそういないだろう。
 直登はフリーソロではちょいとリスクを感じ、微妙なトラバースの末、右側の灌木帯とザレの境界線へ逃げる。ここが今回一番イヤな汗をかいた。

  
 
 最後の詰めは鳳凰三山のような白く脆いザレを慎重に上がる。
 単独だからいいが、他にパーティーがいる場合、落石注意だ。
 藪漕ぎゼロで戸渡尾根上部の登山道に出る。
 
 沢の中では曇りがちですっきりしなかった天気もここに来てようやく回復。
 せっかくなので甲武信岳を目指す。
 戸渡尾根と奥秩父縦走路の分岐点の陰に濡れて重くなった沢用品一式をデポし、登り続ける。
 
 甲武信岳山頂は快晴。ここで大休止とする。
 しばらくは数人しかいなくて落ち着いていたが、やがて男女高年者の大所帯パーティーが到着。案の定、シャッター押しを頼まれる。
 しかし人に頼んでおきながらオババが自分でアングルを決めたいのか、なかなかi-phoneをこちらに渡してくれない。
 あのー、こっちも忙しいんですけど。
 「大丈夫です。ちゃんと撮りますから。」と言ってようやく撮影にこぎつけ、撮った写真を確認してもらいようやく無言の「ヨシ!」という判断が下りた。
 代わりに同伴のかわいいオバちゃんがえらく恐縮して「どうもありがとうございました。」と言ってくれたが、こういうオババのように年を取りたくないなぁ。(すみません、グチです。)

  
 
 帰りは分岐点に残したデポを回収し、戸渡尾根、徳ちゃん新道経由で下山。
 しかし、もう少し若い頃は小走りであっという間の下山と思っていたこのルートも久々に歩くと非常に長いっ!
 一昨年、左膝を故障してからトレーニングとしてランニングは一切していないので、体力、持久力の欠如を痛感した。
 
 まぁ今回、鶏冠谷右俣の延長オプションとして源流から甲武信岳ピストンを加えたので、通常のパターンより1.5~2倍はハードだと思う。
 ちなみに古い「改訂・東京付近の沢(白山書房・刊)」によると「前夜発日帰りなら健脚者でも(40m大滝を越え右に入ったなら)適当な所でヤブをこいで戸渡尾根に出る。」とあったので、さらに甲武信岳まで行く自分はまだ世間一般的には健脚とされるのかもしれない。(むしろ年寄りの冷や水の感あり)
 
 最後はヘロヘロになって下山。途中休憩2時間込みで、ほぼ12時間。
 残業にはならなかったが、ふだんヘタなフリークライミングしかしていない自分にはいい運動になった。
 下山後はいつもの「小作」でほうとう。さらに「ほったらかし温泉」で〆。

  


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