KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

奥秩父、一泊二日ならず

2013年11月04日 | ロングトレイル

日程:2013年11月2日(金)~4日(月・祝) 
行程:主脈縦走(瑞牆山荘から瑞牆山、金峰山、甲武信岳、雲取山を経て奥多摩駅まで) 単独

 11月頭の三連休は当初、山を離れて長年の懸案だった自転車(ミニベロ)による本州横断(太平洋~日本海)を決行するつもりだったが、天気予報に阻まれ敢え無く断念。
 代わりに、最近ヤマレコなどで話題の奥秩父主脈の早駆けに挑戦する。
 西は瑞牆から東は雲取まで、その距離約70km。普通の山歩きなら三泊四日あるいはそれ以上かけて歩くコースだが、できれば一泊二日でやってみたい。
 で、このコース。人それぞれ自己ルールに基づいてトライしているようだが、私は自分に次のルールを設定した。

 1.横浜から公共交通機関を使って一泊二日で帰ってくる。

 2.営業小屋には泊まらず、テント泊で行く。
 3.主脈から少し外れた瑞牆山、五丈岩、北奥千丈も含む。雲取からは石尾根経由で奥多摩駅まで歩く。

 トレランやってるツワモノなら、ほぼ24時間ぶっ通しで完走してしまうらしいが、とてもじゃないが今の自分にはできそうもない。
 せめて一泊二日なら・・・う~ん、言ったはいいが、できるのか?

一日目 天候:一時
 瑞牆山荘10:05~30-瑞牆山12:12-金峰山16:12-北奥千丈岳18:53-国師岳-東梓21:30

 土曜の始発の特急で韮崎駅下車、午前8時30分過ぎ。三連休とあって、なかなかの人出だ。
 暖冬の昨今、まだこの時期は積雪は無いと見込んだが、それでもシェルター(アライの「ライズ1」)、ダウンの3シーズン・シュラフや防寒着などを持つとザックはそうコンパクトにならず、36Lのものにした。
 靴はファイブ・テンのアプローチ・シューズ「Camp4」。念のため、軽アイゼンも持っていく。

 最初のバスは8時50分に出発で、スタート地点の瑞牆山荘へ着くのは10時過ぎ。
 一泊二日でやるには初日から大きなロスタイムで、これだけ人がいるなら声かけてタクシーの相乗りが正解かもしれない。
 この一週間の仕事疲れと朝から電車、バスと立ちっぱなしで珍しく乗り物酔いしてしまい、調子が悪いスタートとなる。

 瑞牆山荘前で20分ほど休むが、秋も深まり、今日はけっこう空気が冷たい。
 青い空と黄色い針葉樹のコントラストが美しい中、シングル・ストックの早歩きでスタート。

  

 30分ほどで富士見山荘着。水場でプラティパス大(2.5L)を満タンにし、そのまま瑞牆方面へ。
 途中、小川山分岐の所に余分な荷物をデポし、最低限の荷だけ持って瑞牆山頂までピストン。
 かつて登った大ヤスリ岩のハイピーク・ルートには今日も1パーティー取り付いていて、皆の注目を集めていた。

 賑わう山頂では数枚写真を撮り、ほぼタッチ&ゴーで先を急ぐ。
 瑞牆山は往復すると2~3時間余計にかかるため、主脈タイム・トライアルでは割愛されているようだが、やはり百名山の一つだし、自分としてははずせない気がした。
 瑞牆の登り下りでたぶん50人以上は抜いただろう。もっとも他の人たちはまったく急いでいるわけではないのだが・・・。

  
(左)瑞牆山頂                                         (右)山頂から見た大ヤスリ岩。クライマーが登っているのわかる?

 分岐でデポしておいた荷を回収し、大日岩へショートカット。
 おそらくあまり歩かれていないコースだろうが、道は思いのほかハッキリしていて、途中には小川が流れる静かなテン場もあった。
 周りに誰もいないので、念のため熊鈴とホイッスルを鳴らしながら行く。

 大日岩で主脈縦走路に合流。晩秋の日没は早く、既に西陽が射し始める。
 
 五丈岩に到着。
 金峰山は今回で三回目。いずれも晩秋から初冬にかけての時期に来ているが、五丈岩に登るのは初めてだ。
 ザックを基部に置いて空身で取付く。

 思ったよりもテクニカル。まぁ少しでもクライミングをやっていれば何てことないと思うが、落ちたら痛いしギャラリーも多いので恥ずかしいし。
 マントル、スメア、微妙なバランスなどインドア・ジムの6~5級はあるんじゃないか?
 岩のてっぺんに立つと金峰山頂にいたオバチャンたちから茶色い(?)声援をもらった。

  
 (左)五丈岩                                         (右)金峰山頂

 金峰山荘に下りていく団体さんを尻目にさらに先を急ぐ。夕暮れと共に気温がグッと下がってくる。

 朝日岳の手前、鉄山で完全に日が暮れ、ヘッデンを出す。
 長年、山を歩いてきたが、いつもこの夕暮れから夜にかけての時間が一番心細く不安になり、むしろ完全に夜になってしまった方が開き直れる。

 夜の大弛峠着。この時期、まだ車でここまでアクセスできるとあって多くのテントで賑わっている。
 この時間に先へ向かうとあらぬところからお咎めを受けそうなので、小屋の前はそっとスルー。

 この先、国師まではよく整備された木の階段の道。段差もそれほど高くないので、疲れた脚には助かる。
 分岐に着き、ザックを置いて北奥千丈岳までピストン。やはり奥秩父最高峰は踏んでおかないと。

  
 (左)夜の奥秩父最高峰                                  (右)東梓先の樹林帯で仮眠をとる。

 国師を過ぎると鬱蒼とした樹林帯の道。
 間隔を置いて木々に付けられたテープをヘッデンで照らしながら進むが、けっこう倒木などもあり、うっかりすると道をすぐに見失ってしまう。
 迷った時はすぐ引き返して正しい道を見つけたが、ペースは二の次でとにかく慎重に進む。

 できれば初日に甲武信小屋まで足を延ばしてそこで仮眠をとりたかったが、東梓の辺りで「甲武信まであと3時間」の標識を見て心が折れる。
 平坦な場所を見つけてライズ1を張り、昼の行動食の残りと温かいスープだけ飲んでシュラフにもぐった。行動時間約11h。


二日目 天候:時々
 東梓3:30-甲武信岳5:40-雁坂峠8:50-笠取山11:34-唐松尾山13:30-将監峠14:46-飛龍山-狼平手前18:35

 睡眠サイクルを考えて昨夜は22時に寝て今朝は2時起き。たった4時間の睡眠だが、疲れは思ったより取れて、眠くない。
 そそくさと撤収し、出発。

 甲武信への登りでは、暗い中、早くも逆方向からの登山者数名と擦れ違う。
 こんな時間から行動するなんて。やはり雲取からのタイム・トライアルだろうか?
 何気に聞いてみると「まさか!違いますよ。」との返事。

 日の出前に甲武信岳到着。
 3時間と見込んでいたが、2時間で着いたのは嬉しい誤算。昨夜の時点で諦めかけていた一泊二日が再び「行けるかも?」という希望に変わった。
 ただ、遠くに見える富士山に怪しい笠雲がかかっているのが気にかかる。

  
 (左)甲武信岳山頂。まだ暗い。                             (右)遠くに富士山。頂上付近は小さく笠雲に覆われていた。

 甲武信小屋で見込んでいた水の補給もこの時期、思いのほか消費が少なく、そのままスルー。
 木賊山のピークは以前踏んでいるのでここは巻き、西破風、東破風を通って雁坂峠へ。

 この辺りから特に意識はしていないが、単独の女性と前後して進むようになる。
 とても美人の山ガールだが、歩きはかなり達者。テント持ちで私よりザックも一回り大きい。
 自分も歳の割にはまだ少しは歩ける方かなと自負していたが、ちょっと気を抜くとあっという間に離されてしまうほど強い。
 ま、追いかけてたわけじゃないけど・・・。
 旅は道連れではないが、長く単調な奥秩父の後半戦にあってポイントごとに顔を合わせて会話できるのはイイ刺激となって助かった。

 気持ちの良い雁峠、笠取山の鉄砲登り、長く嫌気が差す唐松尾山の登りをこなして将監峠へ。
 途中で大きな鹿を見る。尻だけフサフサと白い毛に覆われ、何とも言えない美尻の雄鹿だった。
 今日は将監小屋でテント泊という彼女にまたまた心が折れそうになるが、ここは気持ちを鬼にして(?)別れる。

  
 (左)日本三大峠の一つ、雁坂峠                            (右)笠取山の一気登りはキツかった。

 飛龍山へのトラバースで二回目の夕暮れとなる。
 高低差はそれほど無いがひたすら長く感じ、疲れる。
 さらに飛龍山の辺りで雨が降り始める。ヘッデンでさらに歩き続けるが、雲取まではまだ遠い。
 この辺り、崩壊した斜面の上に板を渡した道やブッシュに覆われた細いトラバース道で、暗い中たびたび右足を空間に踏み外し、何度か転げそうになる。

 何とか雲取山頂の避難小屋までと思ったが、雨脚も強くなり、あと3時間はかかりそうな雰囲気に敢え無く断念。
 適当な平地を見つけて二回目のビバーク。この日の行動約15h。


三日目 天候:
 狼平手前6:35-雲取山頂8:00~50-石尾根-奥多摩駅14:50

 昨夜は至近距離で鹿の鳴き声がビービーとうるさかった。おそらく不意の不審者に「こんな所で寝てんじゃないよ。」と文句を言っているのだろう。
 一泊二日はならず、さらに朝起きると雨で、既に心は折れている。今日はもうのんびり行こう。

 それでも撤収し歩き始めると、にわかに朝陽が射し込んできた。
 雨だったらトットと最短コースで降りるつもりだったが、これも神の思し召しか。やはり最後まで諦めず、雲取からは長い石尾根経由で下山しよう。

 結局、二回目のビバーク地は狼平のすぐ手前で、そこから雲取まで1時間半ほどで着いてしまった。
 山頂ではゆっくり朝食や写真で小一時間も費やしてしまう。

  
 (左)朝の狼平。オオカミはいないがシカはたくさんいる。            (右)雲取山頂
 
 
 石尾根は小さなアップダウンがあり、疲れた脚には結構こたえる。
 この時期、鷹ノ巣山から六ツ石山の間が素晴らしい紅葉だったが、それでもこの長い尾根の間で四人ほどしか擦れ違わなかった。

  
 (左)石尾根を下っていく。                                (右)鷹ノ巣避難小屋

 ようやく舗装路に下りてからも駅までは意外と距離がある。
 結局、最終日はほぼコースタイムどおり。二泊三日では並の記録だが、それでも最後まで歩き通せたので満足だ。

 最後は奥多摩駅前で山女魚の塩焼き(500円)と缶ビールで〆。

  
 (左)ゴールの奥多摩駅                                  (右)山女魚の塩焼きが自分への完歩賞?

【感想】
・終わった直後は二泊三日でも十分だと思ったが、季節やコース、装備等をもう少し真面目に考えれば一泊二日は十分に可能。来年リトライするかも。
・睡眠時間は4時間も取れば疲労は回復することがわかった。
・奥秩父は高低差も少なく、ほとんどがフカフカの樹林帯の道なので、脚に優しい。
・もう歳なのでトレランを本格的にやろうと思わないが、ライト&ファストは今後の自分のテーマとして面白いと思った。

その他、参考までに私が素晴らしいと思った記録をいくつか。
既に何度もトライしている奥秩父の達人 http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-68109.html
ビール飲みながら完全一泊二日は凄い http://blogs.yahoo.co.jp/pilbara_00/65687833.html
究極はこの人。冬の奥秩父全山三日も! http://exploremylimits.blog.fc2.com/blog-entry-37.html 

写真集・晩秋の奥秩父主脈縦走



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2 コメント

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Unknown (ぴょん太郎)
2013-11-15 13:14:50
現場監督さんこんにちは。
素晴らしい苦行!!
読んでいてすっきりしました。おつかれさまでしたm(_ _)m

山小屋泊であればテントと防寒対策の重さがないので、1泊2日は余裕をもってできたのではないでしょうか!?
といっても、現場監督さんの流儀に反するとおもいますが、、、、
しかし、ちょいMオヤジ的には、すごくそそられるルートですね(笑)
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Unknown (現場監督)
2013-11-19 06:25:11
ぴょん太郎さん、こんにちは。

いやいや、それほど苦行ではないです。
今回、まったく走らないでこんな感じですから、もう少し暖かい時期に装備を切り詰めていけば一泊二日は(楽勝とはいわないけど)そこそこイケるはずです。

自分では何となくスッキリしないので、来年コースも余計なピークは除いて最短距離で再チャレンジするつもり。
なかなかいいトレーニングとなりますので、ぴょん太郎さんもぜひ。
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