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(*)掲載誌:大図研 大阪支部報. No.167, 2003.7
--(ここから転載)-----------------------
カナダ図書館訪問記--地方都市編.1,ケロウナ--
久保山 健(大阪大学附属図書館・本館)
1.はじめに
2003年1月にスキー旅行の折りに訪ねた、カナダ西部の町、ケロウナ(Kelowna) の図書館を紹介します。ただ、最初にお断りしておきますが、見学目的で訪ねたわけではなく、個人的な調べもののために訪ねたものです。
ここで紹介するのは、私が実際に訪ねたことと、持ち帰ったパンフレット、そして、その後、旅行中に出会った近くの町の小学校教員からお聞きした話を元にしています。
2.ケロウナの概要
ケロウナは、バンクーバーから東へ約400kmに位置しています。人口は約10万人で、比較的大きな町と言えます。
おおざっぱに言うと、その地方はオカナガン(Okanagan)と呼ばれています。私が訪ねたケロウナ図書館も Okanagan Regional Library の一分館のようです。図書館の利用に関しても、違う町同士で何らかの相互協力活動があるそうです。
ただ、それらの町も日本的感覚ではかなり離れていて、バーノン(Vernon)は、ケロウナから北へ約50km(和歌山を起点にすると大阪程度)。カムループス(Kamloops)は、バーノンから西北西へ約120km(大阪から城崎程度)。そして、オカナガンとは言えないような気がしますが、レベルストーク(Revelstoke)は、バーノンから北東へ約150km(大阪から福井程度)です。
ちなみに、話を伺った小学校教員の方とは、カムループスのB&B(朝食付き民宿)でお会いしました。彼はバーノン在住で、奥さんと小旅行でそこに来られていたようです。また、子どもに図書館の使い方も教えているとおっしゃっていました。朝食を取りながら、そんな話を聞いたわけです。
3.訪問目的
「目的」と言うほど大げさなものではないかもしれませんが、それは、とある日のケロウナの地方紙を見ることでした。
1年余り前の9月にも旅の最後としてケロウナに滞在していました。その日も朝の飛行機に乗り、バンクーバー経由で帰国する予定でした。しかし、その日というのはアメリカがテロ攻撃を受けた日だったのです(注1)。
宿のテレビで煙をあげているワールド・トレード・センターを見てはいました。けれど、詳細は分からず、比較的早い時間のフライトでしたし、ともかくクルマで空港へ向かいました。空港に着いて、レンタカー会社のおばさんに「バンクーバー空港も閉鎖だって。クルマを返却する前に(また使うことになるだろうから)チェックインカウンターに並びなさい」と言われました。僕はこの時には旅客機がハイジャックされたとは知らなかったはずですが、空港閉鎖ということを何となく受け入れていたのは、今思うと不思議です。おそらく、クルマの中で聞いたラジオのDJの様子から("unbelievable"を連呼していたことくらいしか理解できませんでしたが)尋常ではないことを感じ取っていたのかもしれません。
この時、空港のロビーで取材中と思しき男性と話をしました。彼は自分がケロウナの地方紙の記者だと言っており、彼が何を書いたのか、その町で何が起こっていたのかを知りたいと、その後感じていたのです。これが訪問目的です。
(注1)本当はその前日に帰国予定でしたが、あいにくバンクーバー行きの便が機械トラブルで欠航してしまい、滞在を延長せざるを得なくなりました。その結果、大事件に巻きこまれたわけです。
4.訪問記
さて、調べたいことは分かっていただいたと思いますが、肝心の新聞の名前は分かりません。そういう状況で調べものにきました。
ケロウナの図書館は町の中心部にあります。外観は写真の通りで、2階建てです。
新聞コーナーは1階にありました。書架にして2本分あったかと記憶していますが、意外と多いという印象を持ちました。
肝心の新聞は自分では見つけられないので、すぐそばのブースにいた若い女性に「ケロウナの地方紙を探しています。ただ、名前は分からないんだけど。」と尋ねました。すると、「それは、"Kelowna Daily Courier" ですね。こちらにどうぞ。」と案内してくれました。しかし、僕が探していたのは1年余り前のものなので、「いや、実は9.11.(ナインイレブン)の翌日のを見たいんです」と言うと、2階に上がってそこで尋ねるように言われました。
階段で上がると、正面にカウンターがあり、そこで用件を伝えました。そうすると、マイクロフィルムがあるとのことで、マイクロフィルムのリーダーのところで待つように言われました。10万人都市の地方紙にマイクロフィルムがあるのかと思いながら、しばらく待つと、それを持ってきてくれました。マイクロフィルムをセットして、使い方を教えてくれました。
ほどなく、9月12日を見つけました。1面は衝撃的な写真。中ほどに探していた記事を見つけました。見出しは、小さく "TRANSPORTATION" 。続けて、"Operations grind to halt at airport"(「飛行機の運航 停止される」かな)との見出しがありました。小さな写真付きでした。
本文は、このように始まっています。"飛行機に搭乗予定の人は今日ケロウナ空港から飛ぶことができるかどうか確認すべきだ。火曜日に合衆国で起きたテロ攻撃のため、全ての便が地上待機となっている。"続いて、カナダ交通省の話に、前日のバンクーバー空港の状況が書かれています。そして、ケロウナ空港での何人かの乗客の話とケロウナ空港の状況。最後に、いつもより多くの乗客が訪れたバスターミナルのことが書かれています。
写真は、到着便と出発便の案内モニターを見上げている二人の女性を後ろから撮ったものです。僕も同じものを眺めていたわけで、その二人はある意味で同じ日の自分でもあるのです。説明文によると、一人は「**・マキ」さんで、日本人のようです。他にも日本人がいたんですね。
他の記事もざっと眺めて、2枚プリントアウトしました。料金は1枚25セント(約20円)でした。
5.Telecirc (自動通知・更新システム)
この地域の図書館は、Telecirc(テレサークと発音するのでしょうか)というユニークなことを行っています。それはコンピュータが自動で各利用者宅へ電話をかけて、お知らせなどをしてくれるというものです。上記の小学校教員からお聞きして、少々驚きました。
電話されるケースというのは、(1) 予約した資料が借り出しOKになった時、またどの分館でということも。(2) 借り出した資料の返却期限が5日以上過ぎたことを知らせる時(注2)などです。
電話をかける時間は、月曜から土曜日の、朝8時から夜9時の間です。不在だったり、話し中で電話に出られなかった場合は、5日に渡って5回の電話ののち、お知らせが郵送されます。
また、誰に電話しているのかどうかは名前で区別されるそうです。日本人や中国人の名前もコンピュータが発音してくれるのかは不明ですが。なお、プライバシーの観点から、資料の名前等は伏せられます。
このような仕組みを使っている図書館を初めて知りましたので、興味深かったです。
(注2)単行本の借り出し期間は21日、4冊まで借りられます。延滞の罰金は1冊1日当たり25セント(約20円)、最大で7ドル(約560円)(ペーパーバックは5ドル(約400円))。延滞期間が6週間になると、紛失と見なされ、利用者に請求される。罰金の合計が20ドル(約1600円)に達すると、借り出しが不可になる。
6.おわりに
幸い機会に恵まれ、こうして調べものを達成できました。やはり、思い出すと、同じ日に空港にいて、自分も飛行機に乗ろうとしていただけに、その出来事はたいへん身近に感じました。目の前で実際に起きたようなものです。
空港では他の乗客とともにテレビのニュースを見ていました。主にはフライト情報を求めていたのですが、事件を伝える "passenger flight" という言葉が「旅客機」を意味するとは信じられず、近くにいたおじさんに確認したりもしました。
というわけで、今回の訪問で自分の周りに起きたことを振り返ることができたので、有意義な訪問となりました。
(参考) Web site : orl.bc.ca
--(以上、転載)-----------------------
(*)転載元:http://dtkosaka.web.fc2.com/2002-2009/200307-no168.html
(*)移転先:https://58eba2c6-a-62cb3a1a-s-sites.googlegroups.com/site/dtkosakaweb/dtko168_20030713.pdf?attachauth=ANoY7cpUcKMQ83KdQUhhzhKTIi_IR14ZdZ5-D11J4o-JEpyRh1vK_xokuCt1TT0utsssBaXbNnkCWlqh2fVLg-1FsQL4jGJ5cVIq9UfbSsThiHfZbxqK1vsmSJLdZp6dhr0ArE3cnB2BSfvHCUhmvDAr2hQ-W-aXBWzy55otDs5RXNEruA1w-jJcsFK6E8A6p1Nc2tVfIpS0cohGqwAWzEz-Fhb_CcsV9Q%3D%3D&attredirects=0
(*)掲載誌:大図研 大阪支部報. No.167, 2003.7
--(ここから転載)-----------------------
カナダ図書館訪問記--地方都市編.1,ケロウナ--
久保山 健(大阪大学附属図書館・本館)
1.はじめに
2003年1月にスキー旅行の折りに訪ねた、カナダ西部の町、ケロウナ(Kelowna) の図書館を紹介します。ただ、最初にお断りしておきますが、見学目的で訪ねたわけではなく、個人的な調べもののために訪ねたものです。
ここで紹介するのは、私が実際に訪ねたことと、持ち帰ったパンフレット、そして、その後、旅行中に出会った近くの町の小学校教員からお聞きした話を元にしています。
2.ケロウナの概要
ケロウナは、バンクーバーから東へ約400kmに位置しています。人口は約10万人で、比較的大きな町と言えます。
おおざっぱに言うと、その地方はオカナガン(Okanagan)と呼ばれています。私が訪ねたケロウナ図書館も Okanagan Regional Library の一分館のようです。図書館の利用に関しても、違う町同士で何らかの相互協力活動があるそうです。
ただ、それらの町も日本的感覚ではかなり離れていて、バーノン(Vernon)は、ケロウナから北へ約50km(和歌山を起点にすると大阪程度)。カムループス(Kamloops)は、バーノンから西北西へ約120km(大阪から城崎程度)。そして、オカナガンとは言えないような気がしますが、レベルストーク(Revelstoke)は、バーノンから北東へ約150km(大阪から福井程度)です。
ちなみに、話を伺った小学校教員の方とは、カムループスのB&B(朝食付き民宿)でお会いしました。彼はバーノン在住で、奥さんと小旅行でそこに来られていたようです。また、子どもに図書館の使い方も教えているとおっしゃっていました。朝食を取りながら、そんな話を聞いたわけです。
3.訪問目的
「目的」と言うほど大げさなものではないかもしれませんが、それは、とある日のケロウナの地方紙を見ることでした。
1年余り前の9月にも旅の最後としてケロウナに滞在していました。その日も朝の飛行機に乗り、バンクーバー経由で帰国する予定でした。しかし、その日というのはアメリカがテロ攻撃を受けた日だったのです(注1)。
宿のテレビで煙をあげているワールド・トレード・センターを見てはいました。けれど、詳細は分からず、比較的早い時間のフライトでしたし、ともかくクルマで空港へ向かいました。空港に着いて、レンタカー会社のおばさんに「バンクーバー空港も閉鎖だって。クルマを返却する前に(また使うことになるだろうから)チェックインカウンターに並びなさい」と言われました。僕はこの時には旅客機がハイジャックされたとは知らなかったはずですが、空港閉鎖ということを何となく受け入れていたのは、今思うと不思議です。おそらく、クルマの中で聞いたラジオのDJの様子から("unbelievable"を連呼していたことくらいしか理解できませんでしたが)尋常ではないことを感じ取っていたのかもしれません。
この時、空港のロビーで取材中と思しき男性と話をしました。彼は自分がケロウナの地方紙の記者だと言っており、彼が何を書いたのか、その町で何が起こっていたのかを知りたいと、その後感じていたのです。これが訪問目的です。
(注1)本当はその前日に帰国予定でしたが、あいにくバンクーバー行きの便が機械トラブルで欠航してしまい、滞在を延長せざるを得なくなりました。その結果、大事件に巻きこまれたわけです。
4.訪問記
さて、調べたいことは分かっていただいたと思いますが、肝心の新聞の名前は分かりません。そういう状況で調べものにきました。
ケロウナの図書館は町の中心部にあります。外観は写真の通りで、2階建てです。
新聞コーナーは1階にありました。書架にして2本分あったかと記憶していますが、意外と多いという印象を持ちました。
肝心の新聞は自分では見つけられないので、すぐそばのブースにいた若い女性に「ケロウナの地方紙を探しています。ただ、名前は分からないんだけど。」と尋ねました。すると、「それは、"Kelowna Daily Courier" ですね。こちらにどうぞ。」と案内してくれました。しかし、僕が探していたのは1年余り前のものなので、「いや、実は9.11.(ナインイレブン)の翌日のを見たいんです」と言うと、2階に上がってそこで尋ねるように言われました。
階段で上がると、正面にカウンターがあり、そこで用件を伝えました。そうすると、マイクロフィルムがあるとのことで、マイクロフィルムのリーダーのところで待つように言われました。10万人都市の地方紙にマイクロフィルムがあるのかと思いながら、しばらく待つと、それを持ってきてくれました。マイクロフィルムをセットして、使い方を教えてくれました。
ほどなく、9月12日を見つけました。1面は衝撃的な写真。中ほどに探していた記事を見つけました。見出しは、小さく "TRANSPORTATION" 。続けて、"Operations grind to halt at airport"(「飛行機の運航 停止される」かな)との見出しがありました。小さな写真付きでした。
本文は、このように始まっています。"飛行機に搭乗予定の人は今日ケロウナ空港から飛ぶことができるかどうか確認すべきだ。火曜日に合衆国で起きたテロ攻撃のため、全ての便が地上待機となっている。"続いて、カナダ交通省の話に、前日のバンクーバー空港の状況が書かれています。そして、ケロウナ空港での何人かの乗客の話とケロウナ空港の状況。最後に、いつもより多くの乗客が訪れたバスターミナルのことが書かれています。
写真は、到着便と出発便の案内モニターを見上げている二人の女性を後ろから撮ったものです。僕も同じものを眺めていたわけで、その二人はある意味で同じ日の自分でもあるのです。説明文によると、一人は「**・マキ」さんで、日本人のようです。他にも日本人がいたんですね。
他の記事もざっと眺めて、2枚プリントアウトしました。料金は1枚25セント(約20円)でした。
5.Telecirc (自動通知・更新システム)
この地域の図書館は、Telecirc(テレサークと発音するのでしょうか)というユニークなことを行っています。それはコンピュータが自動で各利用者宅へ電話をかけて、お知らせなどをしてくれるというものです。上記の小学校教員からお聞きして、少々驚きました。
電話されるケースというのは、(1) 予約した資料が借り出しOKになった時、またどの分館でということも。(2) 借り出した資料の返却期限が5日以上過ぎたことを知らせる時(注2)などです。
電話をかける時間は、月曜から土曜日の、朝8時から夜9時の間です。不在だったり、話し中で電話に出られなかった場合は、5日に渡って5回の電話ののち、お知らせが郵送されます。
また、誰に電話しているのかどうかは名前で区別されるそうです。日本人や中国人の名前もコンピュータが発音してくれるのかは不明ですが。なお、プライバシーの観点から、資料の名前等は伏せられます。
このような仕組みを使っている図書館を初めて知りましたので、興味深かったです。
(注2)単行本の借り出し期間は21日、4冊まで借りられます。延滞の罰金は1冊1日当たり25セント(約20円)、最大で7ドル(約560円)(ペーパーバックは5ドル(約400円))。延滞期間が6週間になると、紛失と見なされ、利用者に請求される。罰金の合計が20ドル(約1600円)に達すると、借り出しが不可になる。
6.おわりに
幸い機会に恵まれ、こうして調べものを達成できました。やはり、思い出すと、同じ日に空港にいて、自分も飛行機に乗ろうとしていただけに、その出来事はたいへん身近に感じました。目の前で実際に起きたようなものです。
空港では他の乗客とともにテレビのニュースを見ていました。主にはフライト情報を求めていたのですが、事件を伝える "passenger flight" という言葉が「旅客機」を意味するとは信じられず、近くにいたおじさんに確認したりもしました。
というわけで、今回の訪問で自分の周りに起きたことを振り返ることができたので、有意義な訪問となりました。
(参考) Web site : orl.bc.ca
--(以上、転載)-----------------------
(*)転載元:http://dtkosaka.web.fc2.com/2002-2009/200307-no168.html
(*)移転先:https://58eba2c6-a-62cb3a1a-s-sites.googlegroups.com/site/dtkosakaweb/dtko168_20030713.pdf?attachauth=ANoY7cpUcKMQ83KdQUhhzhKTIi_IR14ZdZ5-D11J4o-JEpyRh1vK_xokuCt1TT0utsssBaXbNnkCWlqh2fVLg-1FsQL4jGJ5cVIq9UfbSsThiHfZbxqK1vsmSJLdZp6dhr0ArE3cnB2BSfvHCUhmvDAr2hQ-W-aXBWzy55otDs5RXNEruA1w-jJcsFK6E8A6p1Nc2tVfIpS0cohGqwAWzEz-Fhb_CcsV9Q%3D%3D&attredirects=0
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