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初級講座弦理論 発展編:B.ツヴィーバッハ

2013年12月01日 14時40分35秒 | 物理学、数学

初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ

内容
MITの学部学生向けの講義から生まれた教育的な弦理論の教科書。

“発展編”では、“基礎編”で詳述した量子弦の基礎概念を背景に置いて、弦理論の多様な発展的側面を概観する。D‐ブレインと開弦を利用したYang‐Mills場の構築や、弦のKalb‐Ramondチャージ、T双対性の概念について説明し、D‐ブレインの電磁場を考察する。更に、弦理論を利用した素粒子モデルやブラックホールの統計力学、AdS/CFT対応などの応用的な話題を紹介する。共変な量子化についても簡単に言及し、最後の部分では弦のダイヤグラムを用いて弦の相互作用やループ振幅を論じる。“発展編”は超弦理論の入門書となっている。


日本語版の翻訳者略歴
樺沢宇紀
1990年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻前期課程修了。(株)日立製作所中央研究所研究員。1996年(株)日立製作所電子デバイス製造システム推進本部技師。1999年(株)日立製作所計測器グループ技師。2001年(株)日立ハイテクノロジーズ技師


理数系書籍のレビュー記事は本書で237冊目。

「発展編」は実に刺激的だった。まるで50年後の物理の教科書だ。でもこんな世界が本当にあるのだろうか?という感じである。

大栗先生の超弦理論入門」で取上げられていた「AdS/CFT対応」や「クォーク-グルーオンプラズマ」、「ブラックホールのエントロピー問題」、「超弦理論による素粒子の標準理論の再現」など専門的でホットな事柄が、このような入門書でわかるようになるのだろうか?もし本当にわかるのだとしたら素晴らしいではないか。定性的な理解にとどまるのか、それとも定量的に理解できるようになるのかについても気になるところ。そのような気持で読み始めた。

基礎編」では弦および弦が存在する26次元または10次元の時空の物理的性質がテーマで、この「発展編」ではそこからどのような物理現象が導き出されるかということが解説される。

章立ては次のとおり。(詳細目次はこの記事のいちばん下を参照。)

第15章:D‐ブレインとゲージ場
第16章:弦のチャージと電荷
第17章:閉弦のT双対性
第18章:開弦およびD‐ブレインのT双対性
第19章:電磁場を持つD‐ブレインとT双対性
第20章:Born‐Infeld理論とD‐ブレインの電磁場
第21章:弦理論と素粒子物理
第22章:弦の熱力学とブラックホール
第23章:強い相互作用とAdS/CFT対応
第24章:弦の共変な量子化
第25章:弦の基本的な相互作用とRiemann面
第26章:弦のダイヤグラムの構造とループ振幅

第24章の「弦の共変な量子化」は難しく、僕の理解度は6割程度、しかしその他の章はじゅうぶん理解でき、理解度は9割以上だったと思う。つまり読む価値はあった。

本書は標準的な場の量子論の教科書よりは読みやすい。「発展編」では難しい数式導出で「証明」が必要になる箇所は導出を省略し、文章による説明で済ませていることによる。厳密性には欠けるが「入門書」なのだから仕方がないことだ。


第15章:D‐ブレインとゲージ場

この章では空間を25次元とする弦理論として話が進む。D‐ブレインは「基礎編」でも紹介されたが、この章に登場するのはp次元のDp‐ブレインや、それに接続する開弦の物理現象だ。ブレインや弦は原子でできているわけではないので「物体」と呼んでよいのか疑問が残るが、ともかくpが1から25の値を取るp次元の物体がいきなり登場することに頭がクラクラしてくる。そんな世界って本当にあるのだろうか?とりあえず疑問を丸呑みして読む必要がある。D3‐ブレインは私たちの住む3次元世界のことだ。

まずD‐ブレインに接続している開弦の量子化を行う。次に2つの平行なDp‐ブレインを仮定するとそこには相互作用をするゲージ場(Maxwell場)が出現するのだ。さらにN個の重なり合ったDp‐ブレインは、質量のないU(N)ゲージ場を持つことが導かれる。また異なる次元数を持つ平行なD‐ブレインが考察される。

この章で取上げられる25次元空間はコンパクト化されていないこと、つまりユークリッド的な空間であることに注意しよう。

第16章:弦のチャージと電荷

この章で学ぶのは弦理論版、超弦理論版の電磁気学である。これによってD‐ブレインの物理がますます具体的になり真実性が帯びてくる。なんと弦が「チャージ(荷量)」を持つようになるのだ。このチャージは電荷を一般化したようなものでKalb-Ramon場に結合する弦が持っている。点粒子がMaxwell場に結合するときその粒子は電荷を持っているわけなので、同じ理屈を弦にも当てはめるわけだ。

電磁気学のMaxwellゲージ場はA_μという1次元のベクトル場であらわされるが、Kalb-Ramond場と弦の結合によって導かれる場はB_μνという2階の反対称テンソル場となる。大雑把な言い方をすれば私たちの世界の電磁場を一般化したような場が弦理論の25次元空間や超弦理論の9次元空間に存在しているのだ。

弦のチャージは弦に沿ったカレント(流れ)として可視化できる。弦は弦のチャージの保存を破ることなくD‐ブレインに端点を接続できる。弦の端点は電荷を持ち、そこからD‐ブレイン内に生じる電場線が弦のチャージを運ぶからである。

超弦理論におけるある種のD‐ブレインは、閉じた弦に起因するRamond-Ramond場に対するチャージを担う。チャージを持っていて、空間次元がコンパクト化の方向に限定されているようなブレインは、低次元の観測者にとって、Ramond-Ramond場から次元低減によって生じているMaxwell場に対して電荷を持つ点粒子のように見える。

第17章:閉弦のT双対性

空間次元が円に巻き取られると、閉弦には2種類の影響が及ぶ。閉弦の円に沿った方向の運動量は量子化され、また閉弦が円を周回するように巻き付いた新た状態も現れる。運動量と巻き付き状態の、円の半径の関数としての相補的な挙動により驚くべき対称性(T対称性)が生じる。閉弦の理論において、円の半径がRのときの物理は、円の半径がα’/Rのときの物理と区別がつかなくなるのだ。この等価性は、すべての交換関係を考慮した2つの理論の間の演算子写像を示すことによって証明される。

第18章:開弦およびD‐ブレインのT双対性

T双対性はDp‐ブレインのひとつの空間座標が円に巻き取られている世界を、それと双対な半径を持つ円の上の決まった位置にD(p-1)‐ブレインがあるような、見た目は異なるけれども等価な世界へと関係づける。第1の世界では、開弦は円に沿った運動量を持つことができるが、そのまわりを巻くことはできない。第2の世界では、開弦は双対な円に沿った運動量を持てないが、その円に巻き付くことができる。そしてMaxwellゲージ変換を利用して、円の上において、ゲージ場の線積分



の値が周期的に同定されることが示される。Dp‐ブレインの、円に巻き付いている方向に沿ったゲージ場のホロノミーは、T双対性によって、双対な円の上のD(p-1)‐ブレインの角度位置に関係づけられることになる。

第17章と第18章で弦理論や超弦理論が持つT双対性という事実によって次元の異なる2つの世界で対応付けがされる互いに等価な物理法則が存在することが説明される。第18章では量子力学で導かれる「アハラノフ-ボーム効果」の存在も示されている。ただしこれら2つの章では弦理論を使って解説されていること、余剰次元は1つの次元だけで円筒形に巻かれるコンパクト化を使った解説が行なわれている。

第19章:電磁場を持つD‐ブレインとT双対性

この章ではD‐ブレインがその世界領域(多次元化された世界面)において電場や磁場を持つ状況について学ぶ。開弦の端点はこれらの電磁場に結合する。T双対性を利用して、電場を持つD‐ブレインが電場を持たずに移動しているD‐ブレインと物理的に等価であることが示される。D‐ブレインが光速より速く移動できないという制約は、電場の強度がある最大値を超えないことを意味している。また、磁場を持つDp‐ブレインがT双対性により、磁場を持たずに傾いているD(p-1)‐ブレインと等価であることも;示される。それはDp‐ブレインにおける磁場が、溶解したD(p-2)‐ブレインの分布によって生成されるものととらえてもよい。

第20章:Born‐Infeld理論とD‐ブレインの電磁場

この章では線形なMaxwell理論を修正したBorn-Infeld理論という非線形電磁力学が導入される。この理論は電場の大きさに最大値があるという制約が組み込まれていて、点電荷が持つ静電的な自己エネルギーが有限になる。(つまり繰り込み理論が不要。)そしてT双対性を利用して、D‐ブレインの世界領域における電磁場がBorn-Infeld理論に支配される理由が説明され、この理論における電磁場のハミルトニアンやラグランジアンが計算される。つまりD‐ブレインの存在によって導かれるのは非線形電磁気学なのだ。

第21章:弦理論と素粒子物理

この章ではIIA型の超弦理論を前提とし、2つのD6‐ブレインを交差させた配置を設定することにより、素粒子物理に対するひとつの弦モデルが定義される。ブレインの交差部分における開弦状態から、カイラルフォルミオンが自然に与えられるが、これは素粒子の標準模型において鍵となる構成要素である。しかしこの段階では標準理論には含まれない粒子が3つでてきてしまう。さらにオリエンティフォールド平面(ブレイン)という鏡像ブレインを導入することによって3つの余分な粒子は出てこなくなりゲージボゾンとカイラルフォルミオンのスペクトルが無質量な形で出ることで、標準理論は非可換ゲージ対称性や物質粒子が3世代あることも含めて完全に再現されることになる。

コンパクト化のモデュライは調整可能なパラメーターであり、ここから不都合な無質量スカラー場が生じてしまうが、これを安定化させてスカラー場に質量を与える必要がある。磁束コンパクト化によってモデュライの安定化が達成され、弦の真空モデルに関する広大な景観(ランドスケープ)が得られる。真空エネルギーが、現在観測されている値に整合するような真空の存在は、統計力学的に見てもっともらしいものになる。

この章で用いられるのはIIA型の超弦理論で、余剰次元はコンパクト化された6次元トーラスT6である。6次元トーラスは3つの2次元トーラスT2の積として書くことができ、解説は交差する2次元トーラスを使って行なわれている。

またこの章の「素粒子物理の弦理論モデルの概観」という節では、5つの超弦理論のモデルとM理論、そしてE8xE8ヘテロ型の超弦理論モデルで予想されるCalabi-Yau空間というコンパクト化された余剰次元空間について概説し、この章で前提とした6次元トーラス(6次元ドーナツの表面)による交差ブレインモデルだけが標準理論を構築するためのモデルではないことに言及している。

標準理論を再現できることはよくわかったが、6次元トーラスと鏡像ブレインを採用するのはどうも人為的だという感が否めないと僕には思えた。けれども超弦理論の空間次元数は9で、私たちの空間次元数の3を引くと余剰次元は6になる。6次元の対称的なトポロジーによって標準理論が導かれることは人為的だと言い切ってしまうのも言い過ぎのような気がするのだ。

第22章:弦の熱力学とブラックホール

この章はブラックホールの熱力学、つまりホーキング放射やエントロピー問題の解明につながる解説がされている。

弦の熱力学は、弦の取り得る量子状態の数がエネルギーに対して指数関数的に増大するという性質に支配される。そのような増加率を、大きな整数の分割パターンの数をかぞえることによって推定する。エントロピーの挙動から、高エネルギーにおいて温度が有限の定数、すなわちHagedorn温度に近づくことが導かれる。(ブラックホールの温度はある一定以上の温度には上昇しない。)それらがボゾン的な開弦について有限温度における単一弦の分配関数を計算する。そして弦の状態数をいかにしてブラックホールのエントロピーの統計力学的な導出に利用できるかが説明される。弦モデルによる計算結果はSchwarzschildブラックホールのエントロピーと定性的に一致し、ある種の荷電ブラックホールのエントロピーと定量的に一致することが示される。

統計力学をきちんと学んだ人にとっては読みやすい章だ。この章でブラックホールのエントロピーがブラックホールの体積ではなく面積に比例していることが示唆される。ただし本書では厳密な証明が与えられているのではないこともわかった。またホーキングパラドックスがこの章で解決されているわけではない。「NHKスペシャル「神の数式」第2回:宇宙はどこから来たのか」ではブラックホール中心でCalabi-Yau空間の中を運動するD‐ブレインによって熱が発生することがCG化されていたが、この章ではCalabi-Yau空間もD‐ブレインも出てこない。

第23章:強い相互作用とAdS/CFT対応

この章で解説されるのは量子色力学(QCD)を成り立たせる強い相互作用(強い核力)と5次元の双極型時空である反de Sitter時空の中で成り立つ重力理論に物理的な等価性があるという驚くべき事実が解説される。これは「AdS/CFT対応」と呼ばれている。この理論によって「クォーク-グルーオンプラズマ」の性質が説明され、この現象は超弦理論の正当性を示す1つの証拠とされている。

弦理論は強い相互作用に対する多くの洞察をもたらす。回転する開弦の量子状態は、強粒子励起の鍵となる性質を備えている。伸びている弦のエネルギーは、話されたクォーク-反クォーク対のポテンシャルエネルギーの挙動とよく整合する。さらに驚くべきことに、ある種のゲージ理論に対して物理的に等価な閉弦の理論が見出される。その閉弦はゲージ理論が存在する空間を境界として持つような、次元がひとつ高い空間の中を伝播する。この等価性の主要な例はAdS/CFT対応であるが、これは4次元時空(すなわち私たちの住む時空)における超対称SU(N)ゲージ理論が、5次元の反de Sitter時空AdS_5を含む時空におけるIIB型の超弦理論によって完全に等価になっていることを示している。この対応関係をじゅうぶんに理解するための背景として、反de Sitter時空と、これに関連する双極型空間の幾何を詳しく調べる。この対応を利用することにより、最近発見されたクォーク-グルーオンプラズマの性質を、反de Sitter時空におけるブラックホールの性質と関係づけて説明することが可能になる。

第24章:弦の共変な量子化

弦理論のLorentz共変な量子化においては、すべての弦座標X~μ(τ,σ)が同等に扱われる。物理的な状態を選ぶためにVirasoro演算子の部分集合によって設定される制約を適用する。得られるじょうたいは自動的に時間のラベルを備えるので、ハミルトニアンは時間発展を生成しない。最後にPolyakov作用を記述し、それが古典的には南部-後藤作用と等価であることが示されている。

これまでの章では光錘座標と光錘ゲージを利用して弦の量子化を行なってきた。しかしこれではLorentz対称性を明白な形にすることができない。この章で解説される「Lorentz共変な量子化」によってはじめてこれが明白になるのだ。通常の量子力学では粒子の位置は演算子となる一方、時間はパラメーターのまま残る。しかしLorentz共変な量子化においては時間x0も粒子の位置と同等に扱われ、演算子となるのだ。これを出発点として、これまで解説されてきた弦の物理に対してどのような制限を課し、修正されるべきかがこの章で解説される。

第25章:弦の基本的な相互作用とRiemann面

素粒子物理学や場の量子論では、粒子どうしがどのように相互作用されるかについて調べるのだが、弦どうしはどのように相互作用し、それが私たちにとって粒子の相互作用として認識されるのだろうか?これがこの章のテーマである。

相互作用に関与するそれぞれの開弦の世界面はRiemann面と見なされ、相互作用仮定は、それらのRiemann面のモデュライ空間を構築するように見なされる。相互作用をする光錘世界面に対する正準表現を与えるために、共形写像が利用される。開弦タキオンの相互作用に関する有名なVeneziano振幅が紹介される。

弦理論の前史は1970年頃、CERNの理論家G・ベネツィアーノや鈴木真彦の発見から始まった。200年前のオイラーによるベータ関数と呼ばれる関数:B(u,v)≡Γ(u)Γ(v)/Γ(u+v)を導入すれば、Venezianoによる散乱振幅をA(s,t)=B(-α(s),-α(t))と表わされることを偶然発見したのが弦理論誕生の瞬間だったのだ。

この章の解説で利用されるのは複素解析で紹介される「Riemann面」の「共形写像(等角写像)」だ。これについては「ヴィジュアル複素解析:T.ニーダム」で詳しく解説されているので、この章をお読みになる前に読んでおくとよいだろう。Riemann面は複素平面なので物理的に実在するものではない。この章ではあくまで問題を解く道具としてRiemann面の共形写像を利用しているわけである。

第26章:弦のダイヤグラムの構造とループ振幅

この章では重力の紫外発散、つまり重力が無限大になる問題を弦理論でどのように解決されているかが論じられている。解決というより、そもそも弦理論にはこの問題が存在しないのだ。

散乱振幅を高い精度で計算するためには、仮想的な過程を表すループを含むダイヤグラムからの寄与を計算に含めなければならない。Einsteinの重力理論において、そのようなダイヤグラムは紫外発散を引き起こしてしまい、短距離の現象が手に負えない問題になる。弦理論は重力を含んでいるが、こおような紫外発散は存在しない。短距離の過程に対する候補となるようなRiemann面は、それが明らかに安全な長距離現象の記述であると見る解釈をも同時に許容するものになっている。この驚くべき性質を仮想開弦の過程に関するアニュラス(円環面)の場合と、仮想閉弦の過程に関係するトーラス(輪環面)の場合について解説している。

この章で取り上げられているのはファインマン・ダイヤグラムである。トポロジカルな意味で、この章は特に興味深かった。とはいえ進むにつれて難しくなっているので、より発展的な教科書で学ぶ必要があるように思えた。

以上が章ごとの解説である。


全体的な感想:

「発展編」は各章で解説されている個別の事柄についてはよく理解できたのだ。「AdS/CFT対応」や「クォーク-グルーオンプラズマ」、超弦理論による素粒子の標準理論の再現」などについての理解も本書の解説で納得できる。「ブラックホールのエントロピー問題」についても基礎的なところまでは知ることができた。

けれども全体としては特に次の3つの点が疑問として残った。

1)全体像が見えない

26次元時空の弦理論があり、10次元時空の超弦理論は5種類あること、そして5つの超弦理論は11次元時空のM理論を構成していること、それとは別にp次元のDp‐ブレインがあることがわかるのだが、全体としてどうなっているのかが見えてこない。今の段階ではまさに「群盲象を評す。」という状況であることがよくわかった。超弦理論は巨大な象であり、全体像(象?)はまだわかっていない。

2)どのようなコンパクト化を採用するのか?

上の解説でおわかりのように、章によって採用される余剰次元のコンパクト化の手法が異なっている。(コンパクト化がされないケースもある。)それは弦理論を採用するか、5つの超弦理論のうちどれを採用するかという違いに起因することもあるのだろうが、本来余剰次元のコンパクト化の仕方は1つであるはずだ。いったいどれが本当なのだろうか?そのような疑問がどうしても残ってしまう。

3)コンパクト化される余剰次元はどのように決まるのかがわからない?

もともとすべての次元がコンパクト化されていたと想定されているので、この質問は逆なのかもしれないが、現在弦理論や超弦理論の余剰次元の22次元、6次元のうち一部(たとえば1つまたは2つ)だけがコンパクト化されているのならば、なぜ一部の次元だけがコンパクト化されているのかが不明。

この他にも疑問は残っているし、より高度な内容は本書では説明されていないこともわかった。今だに高次元の空間やDp‐ブレインの存在を信じ切ることができないでいるが、超弦理論の入門書としてはとても示唆に富んだよい教科書なので、自分には無理と決めつけないでぜひお読みになっていただきたい。


翻訳の元となったのは2009年1月に刊行された次の本で、これが第2版でKindle版も出ている。

A First Course in String Theory: Barton Zwiebach」(Kindle版



この第2版ではAdS/CFT対応、超弦理論 、orbifold、宇宙ひも、ひも理論のランドスケープ などを新しく網羅したという。

初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ

 


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発売情報:初級講座弦理論 基礎編、発展編:B.ツヴィーバッハ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8acd8a8c69f88d687ccd0290421c6d86

初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6da996449afaf50f8cf0f4f84881da0e

販売状況:日本語の超弦理論・M理論の教科書
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/61e4dd2232d54cf4a5f3da1aeb83975a

発売情報: 弦理論: ディビッド・マクマーホン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6a0d2d2bbb8b1d2803c29204381cc00f


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初級講座弦理論 基礎編:B.ツヴィーバッハ



第15章:D‐ブレインとゲージ場
- Dp‐ブレインと境界条件
- Dp‐ブレインに接続している開弦の量子化
- 平行なDp‐ブレインの間の開弦
- 平行なDp‐ブレインとDq‐ブレインの間の弦

第16章:弦のチャージと電荷
- 基本的な弦のチャージ
- 弦のチャージの可視化
- D‐ブレインに接続する端点を持つ弦
- D‐ブレインのチャージ

第17章:閉弦のT双対性
- 双対対称性とハミルトニアン
- 閉弦の巻き付き
- 左進波と右進波
- 量子化と交換関係
- 状態の制約条件と質量公式
- コンパクト化(次元低減)と閉弦の状態空間
- スペクトルの驚くべき一致
- 全量子対称性としてのT双対性

第18章:開弦およびD‐ブレインのT双対性
- 開弦のT双対性
- U(1)ゲージ変換
- 円におけるWilsonライン
- D‐ブレインと開弦とWilsonライン

第19章:電磁場を持つD‐ブレインとT双対性
- 開弦に結合するMaxwell場
- 電場を持つD‐ブレイン
- 磁場を持つD‐ブレイン

第20章:Born‐Infeld理論とD‐ブレインの電磁場
- 非線形電磁力学の枠組み
- Born-Infeld理論
- Born-Infeld理論とT双対性

第21章:弦理論と素粒子物理
- 交差する2つのD6‐ブレイン
- D‐ブレインと標準模型のゲージ群
- 開弦と標準模型のフォルミオン
- 交差するD‐ブレインと標準模型
- 素粒子物理の弦理論モデルの概観
- モデュライの安定化と真空モデルのランドスケープ

第22章:弦の熱力学とブラックホール
- 統計力学の復習
- 分割の数と量子バイオリン弦
- Hagedorn温度
- 相対論的な粒子の分配関数
- 単一の弦の分配関数
- ブラックホールのエントロピー
- ブラックホールの状態の勘定

第23章:強い相互作用とAdS/CFT対応
- 序論
- 中間子と量子回転弦
- 伸びた有効弦のエネルギー
- ゲージ理論のNが大きい極限
- 質量を持つ源の重力効果
- AdS/CFT対応への動機付け
- AdS/CFT対応におけるパラメーターの関係
- 双極型空間と共形境界
- AdSの幾何とホログラフィー
- 有限温度におけるAdS/CFT対応
- クォーク・グルーオン・プラズマ

第24章:弦の共変な量子化
- 序論
- 開弦のVirasoro演算子
- 量子力学的な状態への制約(補助条件)
- Lorentz共変な状態空間
- 閉弦のVirasoro演算子
- Polyakov弦作用

第25章:弦の基本的な相互作用とRiemann面
- 序論
- 相互作用と観測量
- 弦の相互作用と大域的な世界面
- Riemann面としての世界面
- Schwarz-Christoffel写像と3本の弦の相互作用
- Riemann面のモデュライ空間
- 4本の弦の相互作用
- Veneziano振幅

第26章:弦のダイヤグラムの構造とループ振幅
- ループダイヤグラムと紫外発散
- 円環面(アニュラス)と1ループ開弦
- 円環面(アニュラス)と静電容量
- 非平面の開弦ダイヤグラム
- 4個の閉弦の相互作用
- 輪環面(トーラス)のモデュライ空間

参考文献について
- 文献リスト
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4 コメント

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 (hirota)
2013-12-02 11:30:26
「ゲージ場の線積分�A dx 」の「�」は積分記号ですかね?
返信する
hirotaさんへ (とね)
2013-12-02 20:33:21
hirotaさんへ

文字コードで表示されている箇所は積分記号ではなく「線積分」の記号です。ふつうの積分記号の真ん中に○がついている記号ですね。

この記事をパソコンのブラウザで表示させるとこの記号は正しく表示されるのですが、スマートフォンのブラウザ(僕の場合はiPhoneのSafari)で表示させると文字コードとして表示されてしまいます。
返信する
 (hirota)
2013-12-03 13:43:51
MacのSafariで見ると「�」と表示されてますが、僕がMacのSafariで打ち込むと「∮」ですね。
返信する
hirotaさんへ (とね)
2013-12-03 20:19:03
hirotaさん

僕はMacを持っていないので確認できませんが、同じ文字でもMacでは文字コードが違うのですね。

該当箇所はどの環境でも正しく表示されるように、以下の方法を使って修正しておきました。
Macでこのブログをお読みいただいている方もいらっしゃると思いますので、ご指摘ありがたく思っています。

ブログで数式を表示させる方法:Online LaTeX Equation Editorを利用
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1c47cdc6446b40dbe1f02284ec86da59
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