「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」
「電卓を作りたいという妄想」はその後も続いているのだが、まだ決心したわけではない。とりあえず今は電子工作系の知識もつけておこうと書店に行き、タイトルに「電子回路」とついている本を何冊か大人買いしてきた。
今日紹介する「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」は「ワインバーグの場の量子論」と併読していた。
広くとらえればこの分野は「電磁気学」なのでブログでは物理・数学のカテゴリーなのかもしれないが、物理学科では学ばない内容なので「電子工学」というカテゴリーを追加した。今後「とね日記」は工学部系にも踏み込んでいく。
本書の前半はアナログ回路を構成する電子部品、後半はデジタル回路を構成する電子部品について解説されている。タイトルは「これならわかる!電子回路」なのだが、これは誤解を招きやすい。「これならわかる!電子部品」というタイトルにしたほうがよいと思った。
前半のアナログ回路では抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、コイルなどアナログ回路を構成する基本的な電子部品がとても詳しく解説される。それぞれの部品はさらに細分化され、構造や特徴など「これでもか!」というほど詳しい。各部品(特にトランジスタ)の構造の説明のところで電子がどのように流れるか、電圧はどのように変化するかということが説明されているので、それを「回路」と呼ぶのならば、本のタイトルどおりなのだと思う。
前半は最後のところで「オペアンプ」の説明で終わる。「オペアンプを使った回路」の項で「増幅器」のほか、微分回路と積分回路、対数演算回路と指数演算回路が紹介されているのがおもしろかった。アナログ回路だけでこういう回路ができるのは知っていたが、きちんと理解したのは今回が初めてである。物理学科の電磁気学ではせいぜいRLC回路くらいしか学ばないので、トランジスタやダイオードが加わった回路は新鮮に感じられる。
後半はデジタル回路とそれを構成する電子部品の説明だ。基本論理回路(AND, OR, NOT, XOR, NOR, NAND)の説明やフリップフロップ回路、シフトレジスタなどは、電卓制作妄想にとらわれている僕にとってはありがたい内容だ。
あと興味深く読めたのはIC、LSI、半導体メモリ、マイクロプロセッサ、ロジックLSIなどの構造や種類、動作についての説明だ。パソコンの中の部品の役割は知っていたが、それらの内部の構造や動作を学んだのは初めてだった。メモリーでたかだか1ビットの情報がどのように記憶されるのか、それをどのように読みだすのか、揮発性メモリーとフラッシュメモリーのような不揮発性メモリーはどのように構造が違うのかなどを知るのはとても新鮮だった。マイクロプロセッサについても、たくさん種類があることは知っていたが、ひとつひとつ具体的な分類で学ぶと日頃の雑多な知識が整理されてよい。
このようなレベルでとらえなおすと、今どきのハイスペック・パソコンの16Gバイトのメモリーや、2Tバイトのハードディスク、インテル Core i7-3930K (6コア/定格3.20GHz)はもちろんのこと、20年前のパソコンでさえとてつもないものだと気付かされるのだ。(ちなみに僕が普段使っているデスクトップPCはシングルコアPentium 4 2.8GHz、2Gバイトメモリー、内蔵HDDは40Gバイト、外付けHDDは250Gバイトである。6コアのPC欲しいけど、今のところ必要ないし。。。とりあえず内蔵HDDを120GバイトのSSDに換装するのがいいかもしれない。)
その後は太陽電池、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL、FED、CDやDVD、SuicaなどのICカードなどについての説明が始まる。僕にとってこれらは「電子部品」というより既に「電子機器」なのだが、本書では「さまざまな電子回路」という章におさまっている。各機器の説明を読んでみると、それらの機器がどのように構成され、電子がどのように流れるかが示されているからやはり「回路」の説明になってはいるのだ。
「回路」という言葉は、部品と部品をどのようにつないでいくかという意味に一般的にはとらえられているのだから、本のタイトルはやっぱり「これならわかる!電子部品」がいいと思った。
それぞれの半導体技術の発展に貢献した学者、開発者の略歴も紹介されている。僕にとっては知らない人がほとんどだったので大いにためになった。
毎日使っている家電製品やパソコンが、どのような部品から作られているのかをとても詳しく知ることができるので、理数系に限らず一般の方にもお勧めできる本である。昨年12月に刊行されたばかりなので内容も新しい。
電子回路そのものについては詳しく学べなかったので、今後読む本で知識をつけていこう。僕がハンダゴテを注文し、秋葉原の電気街をうろつく日はそう遠くないのかもしれない。
関連記事:
電卓を作りたいという妄想
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/01cf6bc6669bf0956a792bce292f97f1
関連ページ:
秋月電子通商
http://akizukidenshi.com/
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「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」
第0章 電子回路の基礎知識
- 電圧と電流
- 電気回路と電子回路
- 電子回路の構成要素
Coffee Break:「電界」と「電場」はどう違う?
第1章 抵抗・コンデンサ・コイル
- 抵抗の基礎
- 抵抗に関する基本法則
- 抵抗の種類
- コンデンサの基礎
- コイルの基礎
- コイルに関する基本法則
Coffee Break:コンピュータの変遷(略年表)
第2章 半導体・ダイオード
- 半導体について
- ダイオードについて
Coffee Break:スーパーコンピュータと量子コンピュータ
第3章 トランジスタ
- トランジスタの歴史
- 接合型トランジスタの歴史と製法
- プレーナ型トランジスタ
- トランジスタの種類
Coffee Break:CCDで宇宙を観る
第4章 オペアンプ
- オペアンプの基礎
- オペアンプを使った回路(増幅器、加算器と減算器、微分器と積分器、対数演算器と指数演算器)
Coffee Break:イタリック体(斜体)について
第5章 デジタル回路の基礎知識
- デジタル回路の基礎
- 基本論理回路
- 論理回路のいろいろ
- 正論理と負論理
- フリップフロップ回路
Coffee Break:なぜコンピュータは2進法を使うのか
第6章 IC、LSI
- 集積回路の基礎
- 半導体メモリ
- マイクロプロセッサ
- その他のIC
Coffee Break:ナノエレクトロニクス
第7章 半導体の最先端技術
- 先端技術の紹介
Coffee Break:遺伝的アルゴリズム
第8章 さまざまな電子回路1
- 現代社会を支える電子回路
- 新しい半導体
- シリコン太陽電池
- 液晶ディスプレイ
- プラズマディスプレイ
- 有機EL
- FED
- 大容量記録メディア
Coffee Break:高速通信規格「LTE」とは
第9章 さまざまな電子回路2
- ホール素子
- SQUID
- 光集積回路
- 非接触型ICチップ
- センサ
- プリント基板
- フィルタ
- アンテナ
- 電気二重層キャパシタ
- 燃料電池
Coffee Break:ワイヤレス給電とは
用語解説
索引
「電卓を作りたいという妄想」はその後も続いているのだが、まだ決心したわけではない。とりあえず今は電子工作系の知識もつけておこうと書店に行き、タイトルに「電子回路」とついている本を何冊か大人買いしてきた。
今日紹介する「史上最強図解これならわかる!電子回路:菊地正典」は「ワインバーグの場の量子論」と併読していた。
広くとらえればこの分野は「電磁気学」なのでブログでは物理・数学のカテゴリーなのかもしれないが、物理学科では学ばない内容なので「電子工学」というカテゴリーを追加した。今後「とね日記」は工学部系にも踏み込んでいく。
本書の前半はアナログ回路を構成する電子部品、後半はデジタル回路を構成する電子部品について解説されている。タイトルは「これならわかる!電子回路」なのだが、これは誤解を招きやすい。「これならわかる!電子部品」というタイトルにしたほうがよいと思った。
前半のアナログ回路では抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、コイルなどアナログ回路を構成する基本的な電子部品がとても詳しく解説される。それぞれの部品はさらに細分化され、構造や特徴など「これでもか!」というほど詳しい。各部品(特にトランジスタ)の構造の説明のところで電子がどのように流れるか、電圧はどのように変化するかということが説明されているので、それを「回路」と呼ぶのならば、本のタイトルどおりなのだと思う。
前半は最後のところで「オペアンプ」の説明で終わる。「オペアンプを使った回路」の項で「増幅器」のほか、微分回路と積分回路、対数演算回路と指数演算回路が紹介されているのがおもしろかった。アナログ回路だけでこういう回路ができるのは知っていたが、きちんと理解したのは今回が初めてである。物理学科の電磁気学ではせいぜいRLC回路くらいしか学ばないので、トランジスタやダイオードが加わった回路は新鮮に感じられる。
後半はデジタル回路とそれを構成する電子部品の説明だ。基本論理回路(AND, OR, NOT, XOR, NOR, NAND)の説明やフリップフロップ回路、シフトレジスタなどは、電卓制作妄想にとらわれている僕にとってはありがたい内容だ。
あと興味深く読めたのはIC、LSI、半導体メモリ、マイクロプロセッサ、ロジックLSIなどの構造や種類、動作についての説明だ。パソコンの中の部品の役割は知っていたが、それらの内部の構造や動作を学んだのは初めてだった。メモリーでたかだか1ビットの情報がどのように記憶されるのか、それをどのように読みだすのか、揮発性メモリーとフラッシュメモリーのような不揮発性メモリーはどのように構造が違うのかなどを知るのはとても新鮮だった。マイクロプロセッサについても、たくさん種類があることは知っていたが、ひとつひとつ具体的な分類で学ぶと日頃の雑多な知識が整理されてよい。
このようなレベルでとらえなおすと、今どきのハイスペック・パソコンの16Gバイトのメモリーや、2Tバイトのハードディスク、インテル Core i7-3930K (6コア/定格3.20GHz)はもちろんのこと、20年前のパソコンでさえとてつもないものだと気付かされるのだ。(ちなみに僕が普段使っているデスクトップPCはシングルコアPentium 4 2.8GHz、2Gバイトメモリー、内蔵HDDは40Gバイト、外付けHDDは250Gバイトである。6コアのPC欲しいけど、今のところ必要ないし。。。とりあえず内蔵HDDを120GバイトのSSDに換装するのがいいかもしれない。)
その後は太陽電池、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL、FED、CDやDVD、SuicaなどのICカードなどについての説明が始まる。僕にとってこれらは「電子部品」というより既に「電子機器」なのだが、本書では「さまざまな電子回路」という章におさまっている。各機器の説明を読んでみると、それらの機器がどのように構成され、電子がどのように流れるかが示されているからやはり「回路」の説明になってはいるのだ。
「回路」という言葉は、部品と部品をどのようにつないでいくかという意味に一般的にはとらえられているのだから、本のタイトルはやっぱり「これならわかる!電子部品」がいいと思った。
それぞれの半導体技術の発展に貢献した学者、開発者の略歴も紹介されている。僕にとっては知らない人がほとんどだったので大いにためになった。
毎日使っている家電製品やパソコンが、どのような部品から作られているのかをとても詳しく知ることができるので、理数系に限らず一般の方にもお勧めできる本である。昨年12月に刊行されたばかりなので内容も新しい。
電子回路そのものについては詳しく学べなかったので、今後読む本で知識をつけていこう。僕がハンダゴテを注文し、秋葉原の電気街をうろつく日はそう遠くないのかもしれない。
関連記事:
電卓を作りたいという妄想
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/01cf6bc6669bf0956a792bce292f97f1
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第0章 電子回路の基礎知識
- 電圧と電流
- 電気回路と電子回路
- 電子回路の構成要素
Coffee Break:「電界」と「電場」はどう違う?
第1章 抵抗・コンデンサ・コイル
- 抵抗の基礎
- 抵抗に関する基本法則
- 抵抗の種類
- コンデンサの基礎
- コイルの基礎
- コイルに関する基本法則
Coffee Break:コンピュータの変遷(略年表)
第2章 半導体・ダイオード
- 半導体について
- ダイオードについて
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第3章 トランジスタ
- トランジスタの歴史
- 接合型トランジスタの歴史と製法
- プレーナ型トランジスタ
- トランジスタの種類
Coffee Break:CCDで宇宙を観る
第4章 オペアンプ
- オペアンプの基礎
- オペアンプを使った回路(増幅器、加算器と減算器、微分器と積分器、対数演算器と指数演算器)
Coffee Break:イタリック体(斜体)について
第5章 デジタル回路の基礎知識
- デジタル回路の基礎
- 基本論理回路
- 論理回路のいろいろ
- 正論理と負論理
- フリップフロップ回路
Coffee Break:なぜコンピュータは2進法を使うのか
第6章 IC、LSI
- 集積回路の基礎
- 半導体メモリ
- マイクロプロセッサ
- その他のIC
Coffee Break:ナノエレクトロニクス
第7章 半導体の最先端技術
- 先端技術の紹介
Coffee Break:遺伝的アルゴリズム
第8章 さまざまな電子回路1
- 現代社会を支える電子回路
- 新しい半導体
- シリコン太陽電池
- 液晶ディスプレイ
- プラズマディスプレイ
- 有機EL
- FED
- 大容量記録メディア
Coffee Break:高速通信規格「LTE」とは
第9章 さまざまな電子回路2
- ホール素子
- SQUID
- 光集積回路
- 非接触型ICチップ
- センサ
- プリント基板
- フィルタ
- アンテナ
- 電気二重層キャパシタ
- 燃料電池
Coffee Break:ワイヤレス給電とは
用語解説
索引
http://www.linear-tech.co.jp/designtools/software/#LTspice
紹介いただき、ありがとうございました。
実用(本物)のシミュレータです。
> せっせと(ソケット間を)半田付けしていけば、いつか電卓が出来るかも。
根気と体力とお金が勝負ですね。
http://www.semicon.toshiba.co.jp/list/index.php?p=&h=&sort=12%2Casc&code=param_504&lang=ja&cc=0d%2C1d%2C2d%2C3d%2C4d%2C5d%2C6d%2C7d%2C8d%2C9d%2C10d%2C11d%2C12d
ここでDIP14(or 16)タイプの外形のICを選んで、ソケットも購入して、アトは伊澤先生の回路図を見ながらせっせと(ソケット間を)半田付けしていけば、いつか電卓が出来るかも。関東なら秋葉原、関西なら日本橋(?)、地方在住なら通信販売で購入できるかな?
http://akizukidenshi.com/catalog/
一生遊べますね、お金さえあれば。
T__NAKAさんのようなプロの方からコメントいただき、うれしいです。ありがとうございます。
この本はとても覚えきれないほどいろいろな部品のことが書いてあるのでとてもよかったです。SuicaやICカードのような近年使われるようになった部品の構造や動作が説明されているのもためになりました。
> 実際に「電卓」を作るとなると、~そういう部分も書いてあるなら、かなり買いでしょう。
電卓の論理回路について、そこまで詳しく解説した本はこれまで見たことがありません。絶版になっている「電卓技術教科書」のような本が最新のロジックLSIを前提にした形ででてくればいいのになと思っています。その点、井澤先生のこのページはとても参考になります。
http://laputa.cs.shinshu-u.ac.jp/~yizawa/logic2/
「トランジスタ電卓」を作りたいというのは、今のところあくまで「妄想」ですが、妄想はさらに膨らみ、「トランジスタ関数電卓」にまで成長しています。(笑)
電子回路の勉強は、この本の後はTINA 9という回路シミュレーターのCDが付属している技術評論社の『電子回路の「きくみ」と「基本」』という本を読み始めました。あとこのシリーズの『デジタル回路の「しくみ」と「基本」』を終えてから、学研の電子ブロック(復刻版EX-150)」あたりで遊んでみようと思います。
実際に作ってみたい「電子おもちゃ」も2つほど頭に浮かんでいます。ハンダゴテを使うよりブレッドボードを使って作るのが初心者向きかもしれませんね。秋月電子通商のHPを見ていると電気街をさまよっている感じがして楽しいです。
今日はちょうど「直流安定化電源」の製品や価格を調べていました。実験用には1つ欲しいですけど、「電子おもちゃ」につけるのだったら「ACアダプター」のようなものでも使えるのかな?と思っていました。ACアダプターはいろいろな電圧のを既に持っているのでプラグに合うジャックを買ってくれば電池の代わりに使えるのでは?と素人の発想で考えていたところです。テスター(ポケット型)はすでに持っています。
また、電子回路は基本的に直流定電圧電源で動きます。電源回路は専門性が強いので、安いDC/DCコンバータ回路で何とかしてしまうのですが、そこまで自作しようとするとちょっと大変になりますね。
さらに、最近のIC は表面実装タイプが多く、ハンダ付け技能が難しいので、素人には敷居が高くなっていることが否めません。。