とね日記

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2018年 ノーベル物理学賞はアシュキン博士、ムル博士、ストリックランド博士に決定!

2018年10月03日 00時19分16秒 | 物理学、数学
スウェーデンの王立科学アカデミーは2日、今年のノーベル物理学賞を、米ベル研究所のアーサー・アシュキン氏と仏エコールポリテクニークのジェラール・ムル氏、カナダ・ウォータールー大学のドナ・ストリックランド氏の3人に贈ると発表した。レーザー物理学分野での貢献が評価された。女性研究者の物理学賞の受賞は、マリー・キュリー氏らに次ぎ3人目。

The Nobel Prize in Physics 2018
https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2018/summary/

Announcement of the Nobel Prize in Physics 2018



今年はレーザー物理学の分野で受賞が決まった。発表では次のようなスライドが映されている。

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この分野はまったく僕の守備範囲外なので、解説や意味がある記事をほとんど書けない。わかりやすい解説は日本科学未来館や科学雑誌Newton、日経サイエンス、そしていずれ刊行されるブルーバックス本に期待することにしたい。

2018年ノーベル物理学賞:レーザー光を用いた光ピンセットと,高強度・超短パルスレーザー生成手法を開発した3人に(日経サイエンス)
http://www.nikkei-science.com/?p=57318

光(電磁波または光子)は質量がゼロなのに圧力をもたらすのは不思議だと思うかもしれないが、説明は次のページに書かれている。

光の圧力[輻射圧、放射圧](FNの高校物理)
http://fnorio.com/0118light_pressure0/light_pressure0.html

光の放射圧(ウィキペディアの記事)は1871年にジェームズ・クラーク・マクスウェルによって理論的に導かれ、1900年にピョートル・ニコラエヴィッチ・レベデフによって、また1901年にエルンスト・フォックス・ニコルスとゴードン・フェリー・ハルによって実験的に証明された。


僕ができるのは、発表のタイミングで公開されたプレスリリースを和訳することくらいである。

プレスリリース(英語):
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/10/press-physics2018.pdf

日本語訳:

2018年ノーベル物理学賞

"レーザー物理学の分野での画期的な発明に対して”

アーサー・アシュキン
ベル研究所(米国)

"光学的ピンセットおよびその生物学的システムへの応用に対して"

ジェラール・ムル
エコール・ポリテクニック(フランス)
ミシガン大学(米国)

ドナ・ストリックランド
ウォータールー大学(カナダ)

"高密度、超短光学パルスの手法に対して"


光でできたツール

今年の名誉は革命的なレーザー物理学の分野における発明である。とてつもなく小さいオブジェクトと驚異的なスピードのプロセスが新しい光において見ることができるようになった。高精度の装置が、研究や数多くの産業と医療への応用について、未開拓な領域への扉を開いた。

アーサー・アシュキンは光ピンセットを発明し、そのレーザー・ビームの指で粒子や原子、ウィルス、そして生きたままの細胞をつかむことを可能にした。この新しいツールはアシュキンに光の放射圧によって物体を動かすという昔のSFの夢を思い起こさせたのだろうか - 彼はレーザー光線で小さな粒子をビームの中心まで押して、固定することに成功した。光ピンセットが発明されたのだ。大きなブレイクスルーが訪れたのは1987年、アシュキンが生きた状態のバクテリアを壊さずに光ピンセットで捕獲したときのことだ。彼はすぐ生物学的システムの研究を開始し、光ピンセットは今では生命の機械的な側面(machinery of life)の調査に広く使われるようになっている。

ジェラール・ムルとドナ・ストリックランドは、これまで人類が生成したことがないほど最も短く最も高密度のレーザー・パルスへ至るための道を舗装した。彼らの革命的な論文は1985年に公表され、ストリックランドの博士論文の基礎となった。巧妙なアプローチを使うことで、彼らは超短高密度レーザー・パルスを増幅材料を破壊することなく生成することに成功した。彼らはまずピーク出力を抑えるためにレーザー・パルスを時間的に伸ばしてから増幅し、そして最後に圧縮した。もしパルスが時間的に圧縮されて短くなれば、より多くの光が同じ小さな領域に一緒にまとめられ、パルスの密度は劇的に増えることになる。ストリックランドとムルはチャープ・パルス増幅(CPA)という新しい手法を発明し、ほどなくそれは高密度レーザーのスタンダードになった。それは最もシャープなレーザー・ビームを用いるもので、毎年数百万回も行われる外科手術による視力の矯正(レーシックのこと)に使われる。応用できる全く未開の領域の数は計り知れない。けれども、世に知られたこれらの発明の数々は、人類のための最大の恩恵というアルフレッド・ノーベルの最高の精神の中で、現在もなおミクロの世界での探索を可能にしてくれているのだ。


アーサー・アシュキン, 1922年米国ニューヨーク生まれ, Ph.D. 1952(コーネル大学)
https://history.aip.org/phn/11409018.html

ジェラール・ムル, 1944年フランス、アルベールビル生まれ, Ph.D. 1973
http://www.polytechnique.edu/annuaire/en/users/gerard.mourou

ドナ・ストリックランド, 1959年カナダ、ゲルフ生まれ, Ph.D. 1989(ロチェスター大学)
https://uwaterloo.ca/physics-astronomy/people-profiles/donna-strickland


アシュキン博士、ムル博士、ストリックランド博士、物理学賞受賞おめでとうございます。


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英語原文:

The Nobel Prize in Physics 2018

"for groundbreaking inventions in the field of laser physics”

Arthur Ashkin
Bell Laboratories, Holmdel, USA

"for the optical tweezers and their application to biological systems"

Gerard Mourou
Ecole Polytechnique, Palaiseau, France
University of Michigan, Ann Arbor, USA

Donna Strickland
University of Waterloo, Canada

"for their method of generating high-intensity, ultra-short optical pulses"

Tools made of light

The inventions being honoured this year have revolutionised laser physics. Extremely small objects and incredibly rapid processes are now being seen in a new light. Advanced precision instruments are opening up unexplored areas of research and a multitude of industrial and medical applications.

Arthur Ashkin invented optical tweezers that grab particles, atoms, viruses and other living cells with their laser beam fingers. This new tool allowed Ashkin to realise an old dream of science fiction - using the radiation pressure of light to move physical objects. He succeeded in getting laser light to push small particles towards the centre of the beam and to hold them there. Optical tweezers had been invented. A major breakthrough came in 1987, when Ashkin used the tweezers to capture living bacteria without harming them. He immediately began studying biological systems and optical tweezers are now widely used to investigate the machinery of life.

Gerard Mourou and Donna Strickland paved the way towards the shortest and most intense laser pulses ever created by mankind. Their revolutionary article was published in 1985 and was the foundation of Strickland’s doctoral thesis. Using an ingenious approach, they succeeded in creating ultrashort high-intensity laser pulses without destroying the amplifying material. First they stretched the laser pulses in time to reduce their peak power, then amplified them, and finally compressed them. If a pulse is compressed in time and becomes shorter, then more light is packed together in the same tiny space - the intensity of the pulse increases dramatically. Strickland and Mourou’s newly invented technique, called chirped pulse amplification, CPA, soon became standard for subsequent high-intensity lasers. Its uses include the millions of corrective eye surgeries that are conducted every year using the sharpest of laser beams. The innumerable areas of application have not yet been completely explored. However, even now these celebrated inventions allow us to rummage around in the microworld in the best spirit of Alfred Nobel ? for the greatest benefit to humankind.

Arthur Ashkin, born 1922 in New York, USA. Ph.D. 1952 from Cornell University, Ithaca, USA.
https://history.aip.org/phn/11409018.htmll

Gerard Mourou, born 1944 in Albertville, France. Ph.D. 1973.
target="_blank">http://www.polytechnique.edu/annuaire/en/users/gerard.mourou

Donna Strickland, born 1959 in Guelph, Canada. Ph.D. 1989 from
University of Rochester, USA.
https://uwaterloo.ca/physics-astronomy/people-profiles/donna-strickland
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2 コメント

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レーザー (hirota)
2018-10-03 13:20:11
レーザー光で透明な小物体を浮かす事は相当昔に聞いた話だけど細胞にも使うようになったのかー。
記憶をあさって原理図を思い出すと、透明球の端にビームがあたると球側に屈折した反動で球はビームに吸い寄せられる…といった所でした。
パルス圧縮の方は、知ってる方法では波長によって伝搬速度が違う分散性媒質に光を通すと波長に依存した位相差が付いてパルス変形が起こる…でしたが、図を見ると新方法では回折格子で波長分離して光路差を付けることでパルス変形するみたいで自由度が大きそうです。
Re: レーザー (とね)
2018-10-04 00:04:17
hirotaさんへ
さすが知識の幅が広いです!いつの間にやらこんな凄いことが実現していたのをいきなり知ると日進月歩でついていけない感が増します。
レーシックなどは、日常生活では当たり前の手術ですし、レーザー治療であることは知っていましたが、一般的なレーザーとの違いやしくみなど考えたことがありませんでした。マクスウェルが放射圧を理論的に予想した人だということも今回初めて知りました。

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