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とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
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中性子星の合体による重力波観測か?(LIGOとVirgo)

2017年08月26日 16時00分41秒 | 物理学、数学
合体する中性子星から放出される重力波(想像図)


そもそも「重力波って何?」という方やこれまでの経緯をご存知ない方はまず「重力波の直接観測に成功!」という記事をお読みいただきたい。昨年2月に発表されたこの100年でいちばん大きな科学ニュースである。そしてこれはブラックホールどうしの合体によって起きた重力波だ。現在までに3回観測されている。そして最近になって新たな「噂」が流れ始めたのである。


すでにツイッター上で噂が飛び交っている。どうやら今度は中性子星どうしの合体による重力波が初観測されたらしい。恒星はある程度より質量が大きい星だと超新星爆発、そしてそれよりも質量が小さいと中性子星という非常に高密度で小さい星に圧縮されてその終焉を迎える。噂によるとお互いに回りあう2つの中性子星(連星中性子星)がだんだん距離を縮めていき、合体したときに発生する重力波が観測されたそうなのだ。

重力波の発生原因がブラックホールなのか中性子星なのかは、観測された重力波を重力理論(一般相対論)から予想される波形と比べることでわかる。この波形は重力理論(一般相対論)に基づき、スパコンでシミュレーションして得られる。(解説はこちらでどうぞ。)




そして昨日8月25日、観測していた当事者のひとつLIGOがこのページから次のようなニュースを発表した。当事者が発表すると、噂はそれ以上のものになる。でも正式な詳細報告はまだだ。楽しみにして待つことにしよう。

A very exciting LIGO-Virgo Observing run is drawing to a close August 25
25 August 2017 -- The Virgo and LIGO Scientific Collaborations have been observing since November 30, 2016 in the second Advanced Detector Observing Run ‘O2’ , searching for gravitational-wave signals, first with the two LIGO detectors, then with both LIGO and Virgo instruments operating together since August 1, 2017. Some promising gravitational-wave candidates have been identified in data from both LIGO and Virgo during our preliminary analysis, and we have shared what we currently know with astronomical observing partners. We are working hard to assure that the candidates are valid gravitational-wave events, and it will require time to establish the level of confidence needed to bring any results to the scientific community and the greater public. We will let you know as soon we have information ready to share.

日本語訳(by とね)
LIGOとVirgoによる非常にエキサイティングな観測が終わりに近づく(8月25日)
2017年8月25日 -- 2016年11月30日からLIGOとVirgoでは科学的な協力をして観測を行ってきました。そして「O2」と呼んでいる2回目のAdvanced LIGO検出器による観測、つまり重力波の探索をするために、まずLIGOの2つの検出器で、そして次に2017年8月1日にはLIGOとVirgoの装置を一緒に稼働させました。その後、予備解析をしている段階でLIGOとVirgoの双方で重力波と考えられるいくつかの候補が検出されてきました。そして私たちは現在までに知り得たことを複数の天体観測パートナーと共有したところです。現在、これらの「候補」が確かに重力波の発生であるということを確認している最中です。科学コミュニティおよび広く一般の方に結果をお伝えするための確証を得るまでには、もう少し時間が必要です。皆さまと情報を共有する準備が整い次第、お知らせいたします。


LIGOはアメリカ大陸の離れた2か所に建設された観測施設、そしてVirgoはイタリアのピサ郊外に建設された観測施設である。(参考:Virgoを訪ねるサイエンスツアー

LIGOホームページ:
https://www.ligo.caltech.edu/

Virgoウェブサイト:
http://www.virgo-gw.eu/

けれどもこのプレスリリースに「中性子星」という言葉はでてこない。しかし、少なくとも重力波は観測されたようである。昨年2月の「ブラックホール合体による重力波の初観測」以来、3回観測されたことが発表されているから、今回あえて「発表する」と告知したことで、ブラックホールの合体以外による重力波だと期待されているのだ。そして、今回の重力波検出と同時に、別の天文台で電磁波が観測されたということも、噂の信ぴょう性を高めている。

どのような噂が流れているについては、次のページをお読みいただきたい。

新しい種類の重力波の噂が広まっていることを確認(ネイチャー誌)
中性子星の衝突が検出された可能性があるというゴシップに天文学者たちが慌てている
http://www.nature.com/news/rumours-swell-over-new-kind-of-gravitational-wave-sighting-1.22482

この記事の中では、今回の重力波はこの写真の中、左に写っているぼやけた星の方向から来ていると書かれている。(このぼやけた星のように見えるのは、うみへび座のNGC 4993という銀河だ。)



記事によると噂はこのようにして広まったそうだ。

On 18 August, astronomer J. Craig Wheeler of the University of Texas at Austin began the public rumour mill when he tweeted, “New LIGO. Source with optical counterpart. Blow your sox off!” An hour later, astronomer Peter Yoachim of the University of Washington in Seattle tweeted that LIGO had seen a signal with an optical counterpart (that is, something that telescopes could see) from a galaxy called NGC 4993, which is around 40 million parsecs (130 million light years) away in the southern constellation Hydra. “Merging neutron-neutron star is the initial call”, he followed up. Some astronomers who do not want to be identified say that rumours had been privately circulating before Wheeler’s and Yoachim’s tweets.

日本語訳(by とね)
8月18日、オースティンのテキサス大学の天文学者のJ.Craig Wheelerは、次のようにツイートして噂を広め始めた。「新生LIGO。発生源は光学的なカウンターパート(観測された対象ともとれる)。まったく驚かされる!」1時間後、シアトルのワシントン大学の天文学者のPeter Yoachimが「うみへび座の中の南側に位置するNGC 4993と呼ばれている4000万パーセク(1.3億光年)離れた銀河から光学的に見える対象(つまり天体望遠鏡で観測可能な何か)のシグナルをLIGOが観測した。」とツイートした。そして彼は「中性子星どうしの合体の知らせは初めてだ。」と補足。個人を特定されたくない他の何人かの天文学者たちの間でもWheelerとYoachimのツイートが発せられる前に、この噂は個人的なツイートとして回っていた。

その後、WheelerとYoachimはコメントを取り下げ、Wheelerは「Right or wrong, I should not have sent that tweet. LIGO deserves to announce when they deem appropriate. Mea culpa,(それが正しかろうが間違いであろうが、私はあのようなツイートをすべきでなかった。適切だと判断した段階で、LIGOから発表するのが正しいことだ。謝罪させていただきます。)」とツイートしている。

Wheeler博士のホームページ: http://www.as.utexas.edu/~wheel/
Wheeler博士のツイッター: @ast309

Yoachim博士のホームページ: http://staff.washington.edu/yoachim/
Yoachim博士のツイッター: @peteryoachim


ブラックホールの合体によって発生する重力波はこのようなイメージである。



これが中性子星どうしの合体だとすると、このようなイメージになる。






「連星中性子星の合体」だという正式発表はまだされていない。今後の報告を楽しみに待つことにしよう。

アンケートをしたところ、このようになった。アンケート結果のツイートはここ



噂は期待感によって増幅され、すでに十分広まっている。僕がわざわざ記事にする必要はないのかもしれないが、ツイッターを使っていない人もいるから、記事にさせていただいた。

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2027年8月27日に追記:

その後、ネイチャー誌から次の有料記事が公開された。今回の「噂」の重力波とは関係ない。ブラックホール対が、連星から生じているのかどうかという話。ブラックホール合体現象のスピン特性から、この問題を調べる試みだという。

Distinguishing spin-aligned and isotropic black hole populations with gravitational waves
連星ブラックホールの起源を重力波から突き止める(Nature2017年8月24日)
http://www.nature.com/nature/journal/v548/n7668/abs/nature23453.html?lang=en

この記事にはこれまでに発表された3回のブラックホールの合体が起源の重力波と、2017年1月14日に観測されたGW170104という重力波から計算される回転軸の角度の分散に関するグラフと表が添付されている。






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関連記事:

重力波の直接観測に成功!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a8439e8e4d81d7873422737d7bd1640d

ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開:真貝寿明
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/88bf1600687ece47464c862fefe53103

重力波は歌う:アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち:ジャンナ ・レヴィン
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/1cb9b432d55f420797c4f00d02246b6e

日本物理学会2016年度公開講座 「一般相対性理論と宇宙 -重力波研究の最前線-」
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d39ec747fb47e0c8418e7e167e2f60c4


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