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常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 下 「研究者もどき」がつくる「教科書もどき」

2014年08月08日 18時06分24秒 | 学校で教えてくれないコト
常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 下 「研究者もどき」がつくる「教科書もどき」

内容紹介
山川日本史のダメさを具体例をあげて批判。内容詳細と目次はこの記事の末尾を参照。

著者について
倉山満(くらやま・みつる)
1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。
1996年、中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程を修了。
在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、同大学で日本国憲法を教え、現在に至る。
2012年、希望日本研究所所長を務める
著書に、『誰が殺した?日本国憲法!』(講談社)、『財務省の近現代史』(光文社)、
『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』(扶桑社)、
『間違いだらけの憲法改正論議』(イーストプレス)などがある。


下巻は第一次世界大戦以降から第二次世界大戦終戦、朝鮮戦争までをカバーしている。日清戦争から第一次世界大戦までは上巻の範囲だが、「戦争」というくくりで今回の記事に含めることにした。

倉山先生は「歴史教科書は事実を捻じ曲げてでも、自国に有利になるように書くのが世界標準で、日本史の教科書もそうすべきだ。」と主張しているくらいだから、もちろん左寄りでも中道派の人物ではない。それでは右寄りなのか?軍国主義的な人なのか?それとも反中国、反韓国の感情に支配されている人なのか?また政治的には集団的自衛権を認めるように憲法解釈を変更した安部政権支持派なのだろうか?

人は相手のことをそのように「タイプ」に分けて理解したがるものだ。本書を読み始めたとき僕もそのような気持をもっていた。

自分の常識や感覚に反する本は読まないのが普通だと思う。本書は内容紹介や表紙だけ見ても自分の歴史観と全く違うことが書いてあることが明らかだった。つまり僕は違う視点から考えてみるのもよさそうだということで読んでみたわけだ。8月なので日本がたどってきた戦争の時代を再考してみたいし、こういう本は普段は手に取ることもないからよい機会なのだ。

下巻は次の章から構成されている。

はじめに--麻生太郎氏が明らかにした断末魔の歴史教育
第1章:「無法地帯・中国」は昭和史の基本
第2章:満洲事変の反省を妨げているのはダメな教科書である
第3章:「日中戦争」は存在しない
第4章:なぜ、日米は大東亜戦争で戦わなければならなかったのか
終章:誰が第二次世界大戦の勝者だったのか


上巻、下巻を読み終えてまずわかったのは、倉山先生は上で述べたタイプのどれでもないということなのだ。安倍政権を支持されていることが軽く書かれていたが、ご自身の政治的な主張をしているわけではない。本書はあくまで山川日本史教科書の不備を洗い出し、抜け落ちてしまっている日本史上の出来事を解説することで、倉山先生がお考えになっているという意味での「正しい歴史観」を紹介しているのだ。倉山先生は軍国主義者でもない。一般的に名将としてとらえられている山本五十六のことも「負けるはずのない戦いに負けた愚将」として紹介している。

教科書から欠落している出来事については、ほとんどすべて僕は納得した。「なるほど、そういうことって起きがちだよな。」と思ったわけである。しかし、出来事に対しての受け止め方と解釈という点では、納得できたこともあれば違和感や反対意見を持った点もたくさんあった。全部書くわけにはいかないので、気になったことだけをピックアップしてみよう。


1)日本に「軍部」は実在しなかったという主張について

え?というのが大方の人のリアクションだろう。「軍部」が権力を持ち、政府や議会の反対を押し切って中国大陸での戦闘を開始したというのが一般的な歴史認識だ。ところが倉山先生は「軍部」というものはなかったとお書きになっている。それは「軍部」という名前の組織があったわけはないということもあるが、満洲事変以前から日本の陸軍と海軍は予算を取り合っていたため仲が悪く、対立していたから一枚岩で行動していなかったからというのがその理由なのだそうだ。陸軍内部にしてもいくつもの派閥があって対立していて統一した行動がとれていなかったのだという。また中国大陸に展開している現場の軍隊と、東京におかれた軍令部の意識もかけ離れていて、軍令部は政権のほうにばかり目が向いていて、現場でおきている問題が報告されても、ほとんど理解せず適切な命令を下すことがなかったそうだ。「関東軍を苦しめたのは東京の政府だった。」と本書には書かれている。これはいかにもありそうだと僕は納得させられた。

しかし、これで「軍部」が実在しなかったということにはならないと僕は思う。たとえ内部の統制がとれていなかったとしても、国民や外国から見れば日本の陸軍と海軍を合わせたものが「軍部」であることに変わりはない。また倉山先生は「軍部」が存在しな以上、陸軍と海軍が統一した意思として中国大陸への進出(侵略)の考えを持っていなかったことになるから「軍部」が自らの意思で戦闘を開始したわけではないとお書きになっている。僕はこれも違うと思う。軍内部から見ればそういうことになるだろうが、国民や外国から見れば結果がすべてであり、日本軍による戦闘だということに変わりはないと思うのだ。

また戦前の軍国主義教育のことも忘れてはならない。次のページでは戦前に使われていた国定教科書の内容を読むことができるが、軍国主義教育によって国民は一枚岩になり戦争への協力を義務づけられた。このような教科書を強制したのは陸軍と海軍の全体意思しか考えられないと僕は思うのだ。本書には『「鬼畜米英」と「対米開戦」を主導したのは世論と民意である。』と書かれているが、世論と民意は軍国主義教育と政府に統制された新聞報道によって意図的に作られた国民感情であることを付け加えなければならない。

国民学校期「国語教科書」総目録(総目次)
(このページの下のほうに小学校各学年の国語の教科書へのリンクがある。)
http://www.geocities.jp/sybrma/103kokumingakkou.kokugo.html


倉山先生はまた日本の政党政治のほうが強かったから軍部の圧力に負けたということはあり得ないとお書きになっている。それは予算の権限を持っているのは大蔵省で、陸軍や海軍はその決定に従わなければならなかったからだと説明している。そして一部の青年将校によっておこされた5・15事件や2・26事件によって首相や大臣が暗殺されたのだ。倉山先生はこれを「軍としてのの意思ではない。」としているが、僕はこれも違うと思う。暗殺されるかもしれないという恐怖は戦争遂行への強烈な圧力になったことは間違いない。


2)「日中戦争」は存在しないという主張について

満洲事変以前の中国は無法地帯、内戦状態で、国家の体をなしていなかったという本書の説明は正しいと思う。だからこの時期は「日中」の国家間関係というものは成り立たなかった。中国に「政府」というひとつの窓口は存在せず、また国境線も定かでなくどこまでを中国と呼んでよいか誰にもわからない状況だったという。
このようなわけで「日中戦争」という呼び方をすると歴史を正しく理解することができなくなる。正しくは戦闘が拡大してく経過に従って「北支事変」、「支那事変」、「大東亜戦争」と呼ぶのだという。「事変」という呼び方は国家間の戦争でない戦闘のときに使うそうだ。

このあたりの説明は概ね納得するが、この当時中国がまともな国家でなかったとしても、戦闘が繰り広げられた地域は中国大陸で戦争は日本人と中国大陸の人たちの間で行われたのだから「日中戦争」という呼び方をしてもいいんじゃないかと僕は思う。でも戦闘の拡大を明確にするのならば「北支事変」、「支那事変」、「大東亜戦争」と呼ぶほうが理解しやすい。(支那という言葉は現在では差別用語なので教科書では使えないとは思うが。)本書ではさらに「中国は国ではなかったのだから、日中戦争は戦争ではなかった。」と説明している。国際法上は戦争ではないわけだが、「事変」と呼んでいる戦闘行為と戦争を区別することにどのような意味があるのか僕としては甚だ疑問だ。


3)満洲事変について

通常、教科書では「満州」と表記するが本書での表記は「満洲」なので、僕の記事でもこれに従うことにする。

中国大陸で陸軍が戦闘を開始することになった直接のきっかけが満州事変だ。これは後に満洲国となる地域に日本人(一般市民としての朝鮮人)が居留していて、邦人保護のために関東軍が駐留していた。本書の説明によると、この地域の日本人に対して中国人は反感を抱いていいたために日本人はたびたび暴力をうけたり殺害されていたそうだ。関東軍はこれに対して危機感をつのらせ、東京の軍令部に「反撃命令」を打診するが軍令部は政権に取り入ることばかり考えていて現場からの悲痛な要求にいっこうに耳を貸してくれなかったという。満洲の軍閥による日本人の殺害は激しさを増し、我慢しきれなくなった関東軍が軍令部からの指令を待たずに「暴発して」戦闘を開始したのが満洲事変の発端だったと本書では説明されている。戦況はまたたく間に拡大し全面戦争へと突入していくことになった。

「邦人保護のために始める戦闘」は最近よく耳にする。ガザやウクライナの惨状を見て明らかなように戦場というのは混乱を極めていて、どちらが先に攻撃したかという理屈や弁明はお互い自分に有利なことを主張するだけでほとんど意味がないと僕は思う。戦争というのはこうやって始まるのだなということが本書の説明でよく理解できた。山川日本史ではここまでの実情を読み取ることはできない。危ない地域には民間人であれ軍隊であれ近づかないほうがよいのは明らかだ。現在中国には日本企業の社員を始めとして多くの日本人が住んでいるが、自衛隊が駐留していないから軍事衝突をまぬがれているのだと僕は思った。そのかわりに反日デモなどで事務所や店舗が襲撃されたり、現地に住む日本人が暴力を受けることになってしまっているわけであるが。。。

本書では満州事変がどのようにして始まったかということについて、詳しく説明しているが、かといってそれを現在の状況に結びつけて「自衛隊を増強したほうがよい。」、「自衛のための対策をしっかり講じるべきだ。」などという主張をしているわけではない。あくまで教科書の不備を補うにとどめた記述がされている。

それではなぜ、当時日本人(この時点ではほとんどが朝鮮人)がその地域に居留していたのだろうか?それは日清戦争から日露戦争に至る過程でそうなったというのが大まかな説明だ。それではなぜ日本は日清戦争や日露戦争をしたのだろうか?本書の上巻に書かれていることの概略を書くと次のようになる。

日清戦争:1894年(明治27年):朝鮮国内の甲午農民戦争をきっかけに6月(5月)朝鮮に出兵した日清両国が8月1日(7月1日)宣戦布告にいたった。本書の上巻ではロシアの脅威を強調しており、日本としては朝鮮と国交樹立を望んでいたが、朝鮮は国内の紛争によりそれができない状態。北緯39度線を超えてロシア(そして中国)の支配が及ぶと日本への脅威は増すので、朝鮮出兵やむなしという状況だと説明されている。そして日清が朝鮮で交戦するに至った。日本が勝利した結果、遼東半島、台湾、澎湖諸島が日本に譲られた。満洲は遼東半島を含めその北側に広がる広大な地域である。

日露戦争:1904年(明治37年):大日本帝国とロシア帝国との間で朝鮮半島とロシア主権下の満洲南部と、日本海を主戦場として発生した戦争である。日本が勝利したことにより、南満洲鉄道を獲得するなど満洲における権益を得ることとなった。

この後、第一次世界大戦後にドイツが山東省に持っていた権益を日本が引き続き、一般の日本人(この時点ではほとんどが朝鮮人)満洲に居留し始めることになった。

そして数多くの日本人が満洲に居留するようになったのは日本政府の国策として行われた「満蒙開拓移民」によるものだ。1931年の満州事変以降に日本からの満州国への移民が本格化1936年、広田内閣は「満州開拓移民推進計画」を決議し、1936年から1956年の間に500万人の日本人の移住を計画、推進したためである。

このような流れで無法地帯の中国に日本人が住むようになり、日中の戦闘のきっかけとなってしまったわけだ。戦争は邦人保護の名のもとに始まった経緯がよく理解できる。

1933年~1945年当時の日本のが支配していた地域(赤)と満洲国の位置



4)マレー半島、シンガポール、香港、ビルマ(ミャンマー)、インドネシア、フィリピンでの戦闘行為について

太平洋戦争当時、マレー半島とシンガポール、香港、ビルマ(ミャンマー)はイギリス領、インドネシアはオランダ領、フィリピンはアメリカ領だった。本書ではこれらの地域を日本が「侵略」したわけでなく、これらの地域を舞台に米・英・蘭と戦争をしたのだという説明がされている。これには納得できなかった。実際に行われていたのはこれらの地域の住民の殺害が行われていたからだ。つまり不慣れな地域での道案内を住民に命じることがあり、道案内が終わると敵に自分の隊の場所を密告されないように道案内をしてくれた住民を殺害することが通常行われていたからだ。これは数年前にNHKで放送されていたドキュメンタリー番組で元兵士が証言していた。占領していた国に対してではなく、その地域の住民の反日感情をもたらす形での駐留は「侵略」と呼ぶのが自然だ。


5)広島と長崎に落とされた原子爆弾、東京をはじめとする大空襲について

山川日本史をはじめ、他社の日本史の教科書にはもちろん原爆や大空襲についての記述がある。そして倉山先生の著書ではこれら民間人を無差別に殺傷する攻撃は、国際法違反であることが明確に示されている。日本史の教科書には国際法違反であることは書かれていなので書くべきだ。この点において僕は倉山先生のお考えに賛成だ。


6)ポツダム宣言について

山川日本史をはじめ、日本の歴史教科書では「ポツダム宣言を受諾したことにより日本は無条件降伏した。」という説明がされている。実はこれは正しくない。ポツダム宣言全文を読むかぎり、無条件降伏したのは日本の軍隊だけのことであり、日本政府や国民に認められるべき条件などが規定されている。それらの条件とは「軍需産業以外の平和産業の維持」、「将来の国際貿易への参加を許可」、「日本政府に対し民主主義の強化の妨げになる障壁を除去すること」、「言論、宗教の自由や基本的人権を尊重すべきこと」などである。そして重要なのは、これが日本に対してだけでなく連合国に対する拘束となっていることが明確に宣言されていることだ。教科書だけの記述では、日本が連合国のどんな要求も無条件にのまなければならないような印象をもってしまう。この点については僕は倉山先生のお考えを支持したい。

参考ページ:ポツダム宣言の全文が教科書に掲載されていない理由が悲しすぎる
http://matome.naver.jp/odai/2136232117008395701


このほかにも非常にたくさんの事があげられている。とてもここでは紹介しきれないのでこれくらいにしておこう。

このように本書は教科書に書くことができないタブーを取り上げているだけでなく、教科書執筆者や日本史学会、そして下巻の冒頭では麻生財務大臣をバカ者呼ばわりしている。高校で歴史を教えている先生方や教科書検定をしている文部科学省も苦々しい思いをしていると思う。こんなに敵ばかり増やしてこの先生は大丈夫なのだろうか?大人なのだからもう少し穏やかな言い方をしたほうがいいのにと僕は思うわけである。

とはいえ倉山先生もバカではないから、訴えられるのを覚悟で過激な発言をしているわけだ。読者としては今後の成り行きを見守ることにしよう。

なお、教科書に書かれていない出来事を倉山先生はどのように得ていたかということについて最後に述べておきたい。それは特殊な文書を発見したわけでなく、ごく普通に得られる資料をもとにしているだけなのだそうだ。そして先生が強調しているのはそれぞれの時代に直接作成された「一次史料」が大切であるということだ。その出来事を直接経験していない人物が後になって書いた史料にはその人の先入観や事実の歪曲が含まれてしまうからである。倉山先生の最近の活動はホームページをご覧になるとよい。(ブログを読むと先生どうも「バカ!」や「アホ!」を連発するタイプで、僕としてははかなり引いてしまうが。)

倉山満先生のホームページ:
http://office-kurayama.co.jp/

倉山先生の著書を検索:
単行本 Kindle版


常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 上 「アカ」でさえない「バカ」なカリスマ教科書
常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 下 「研究者もどき」がつくる「教科書もどき」

 


なお社会人の勉強しなおし用として2009年以降山川出版から刊行された「もういちど読む」シリーズの日本史と近代史の教科書は倉山先生の師匠の鳥海靖先生がお書きになったもので、教科書にくらべて真実の歴史に近い記述になっているそうだ。アマゾンのレビューでは「教科書がカラーなのにこちらは白黒だ。」とか「記述量が教科書にくらべて少ない。」など不評だったので「山川の日本史と世界史の教科書」の記事では紹介しなかった。

お読みになりたい方はこちらからどうぞ。倉山先生によると山川出版も教科書の記述の不十分さを認識していて、これが山川出版として刊行できるぎりぎりの線なのだそうだ。ただし、よほど注意して読まないと教科書との違いは一般読者には区別がつかないと思う。

もういちど読む山川日本史
もういちど読む山川日本近代史
もういちど読む山川世界史

「もういちど読む」シリーズのKindle版を: 検索する


関連記事:

常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 上 「アカ」でさえない「バカ」なカリスマ教科書
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/40a0cb741b590199b3ab52dd253b37e7


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常識から疑え! 山川日本史 近現代史編 下 「研究者もどき」がつくる「教科書もどき」



内容紹介(下巻)
歴史の教養なくして、世界のなかで自国がどんな立場に置かれているかを知ることはできません。ということは、世界のなかでどうやって自国がサバイバルしていくかを考えることもできません。歴史教育が機能していないということは、そういうことになるのです。
そもそも、日本はなぜ中国大陸に進出して行ったのか?/当時の中国は国際法違反の常習犯、まともな国家にあらず/日本に「軍部」は実在しなかった/日本の政権中枢でもコミンテルンが暗躍→こんな基本のことさえ 絶対に書けない山川日本史!その明快な理由がズバリ分かります!!
その他にも本書で明らかになる歴史の真実の数々。

◎ ロンドン海軍軍縮条約は、実は日本の外交上の大きな成果
◎ 絶対に「満洲」という正しい表記はしない、というのが教科書のルール。政治的配慮から不正確な表記をするのも、ある意味ではいかにも教科書的
◎ 満洲事変という日本の運命を決めた大事件に関して、はたして日本の教科書は、日本人が反省するための素材を提供できているのか。まずはその点が問われなければならないはず
◎ ソ連はもう前世紀になくなった国だというのに、未だに批判的なことを書けない
◎ 当時の日本が侵略戦争を行ったなど、褒めすぎ。本当に侵略だったら、もう少しまともな計画があるはず。同じ時代のヒトラーやスターリンがどれだけ開戦前に緻密な陰謀を巡らせているかを知れば、比較にすらならないとわかる

山川教科書の罪は嘘を書いていることではない。重大な本当のことを書いていないことなのだ
歴史教科書問題の根源を見事に暴ききった倉山先生の戦中、戦後史の決定版!
教科書づくりを支配している実にお粗末な法則
一、教科書の編纂者は、とにかく文句をつけられるのがイヤ。
二、二十年前の通説を書く。
三、イデオロギーなど、どうでもいい。
四、書いている本人も何を言っているのか、わかっていない。
五、下手をすれば書いていることを信じていない。
六、でも、プライドが高い権威主義的記述をする。
七、そして、何を言っているのかさっぱりわからない。

目次

はじめに--麻生太郎氏が明らかにした断末魔の歴史教育

第1章:「無法地帯・中国」は昭和史の基本
- 国家の体をなしていない中華民国
- 中国侵略の共同謀議は「不可能犯罪」である
- 教科書に書けない南京事件
- 誰も答えられない「What is China?」という問い

第2章:満洲事変の反省を妨げているのはダメな教科書である
- こんなに強かった日本の政党政治
- 関東軍を苦しめたのは東京の政府だった
- 実は日本の権益を認めていた「リットン報告書」

第3章:「日中戦争」は存在しない
- 日本をドイツやイタリアと一緒にする「自虐史観」
- 軍より強かった大蔵省
- ソ連はなくなっても、ソ連の悪口を書けない教科書
- 戦いたくない参謀本部
- 「日中戦争」と言ってしまったら支那事変は理解できない
- 大日本帝国を滅ぼした近衛文麿

第4章:なぜ、日米は大東亜戦争で戦わなければならなかったのか
- 地球の裏側の紛争に口を出すアメリカ
- なかったことにされるゾルゲ事件
- 負けるはずのない戦いに負けた愚将・山本五十六
- 「大東亜共栄圏」という作文
- 山川日本史は国際法と憲法を理解していない

終章:誰が第二次世界大戦の勝者だったのか
- ポツダム宣言受諾は「無条件降伏」ではない
- 日本もアメリカも「敗戦国」である
- 追い詰められるアメリカとサンフランシスコ平和条約の意味
- 「基礎」を大事にすれば歴史がわかる
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4 コメント

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満州国関連の知識は確かにあいまいです。 (T_NAKA)
2014-08-09 10:20:37
「満州」というと石原莞爾という人が浮かんできて、どうもその物語として考えてしまうのです。だから客観的史実というのが苦手ですね。満州事変は彼のシナリオで発生しており、彼の思想である法華ハルマゲドンを起こすために満州国を作ったように思えてしまいます。また226反乱軍を鎮圧したのも石原なんですが、だからと言って統制派でもないのです(反乱軍側の民間指導者・北一輝も法華信者で、515事件関連・血盟団の井上日召も日蓮宗僧侶であるのは妙ですね)。また、(関東大震災直後の1923年9月16日大杉栄を惨殺した)甘粕正彦が満映の2代目理事長に就任しているのも何か陰謀めいたものを感じます。さらに終戦間際には開拓民を残したまま関東軍は撤退してしまい多数の悲劇が発生しました。邦人保護というのは名目に過ぎなかったとも思えてきます。どうもそんな雑多な知識で史実が良く分からなくなっていますね。
そういえば「満州のビート??」http://teenaka.at.webry.info/201311/article_17.html なんて記事を書いていました。。
返信する
Re: 満州国関連の知識は確かにあいまいです。 (とね)
2014-08-09 11:35:11
T_NAKAさん

コメントありがとうございます。
満州事変や満州国については史料に残されていないことが多いし、残っている史料も厖大ですし、筋道をたてて理解するのはとても難しいですね。自然科学と違い、歴史は双方の国の主観に基づいて書かれますから「真実」というものがあってないようなものです。占領する側にとっては「進出」であり、される側にとっては「侵略」です。

石原莞爾について本書では次のように書かれていました。彼が「課長級」だったということを踏まえればT_NAKAさんがお感じになっている不明点も少しクリアになるかもしれません。

「満洲事変を指導した石原莞爾の階級は中佐です。企業で言えばせいぜい課長クラスです。陸軍の中央が政党内閣に媚びへつらって出世を考えてばかりいるなかで、現場にいるただの課長がはじめたのが満洲事変でした。教科書に載る課長など、石原莞爾しかいません。(中略)石原が立てた作戦計画は完璧で、軍事行動を起こす日付と時間さえ入れればそのとおり実行できたというほど優れていました。だからこそ何十倍もの張学良軍を撃破できたのです。」


返信する
ドレスデン爆撃 (T_NAKA)
2014-08-10 10:58:19
この無差別爆撃のことは、恥ずかしながら「スローターハウス5」(カート・ヴォネガット原作)という映画を見るまでは知りませんでした。日本では米軍による空襲のことは良く語られるのですが、ドイツでも同じようなことが行われていたことをご存知でしょうか?連合軍側の非人道性をもっと追求してもよいのかもしれません。
返信する
Re: ドレスデン爆撃 (とね)
2014-08-10 12:29:43
T_NAKAさん

「ドレスデン爆撃」のことは知りませんでした。アメリカだけでなく連合軍もドイツに無差別爆撃をして何万人もの命を奪っていたのですね。アメリカによる空襲もそうですが、政治的な決定でこのように無慈悲な一般人への殺戮が行われたことに憤りを感じます。
返信する

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