とね日記

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さよなら僕の夏: レイ・ブラッドベリ

2012年10月04日 21時11分53秒 | 小説、文学、一般書
さよなら僕の夏:レイ・ブラッドベリ

たんぽぽのお酒」の次は続編の「さよなら僕の夏」を読了。

主人公のダグラスは14歳になる前の夏を迎えていた。弟のトムをはじめとする仲間の子供たちを集めて軍隊をつくり、教育委員をしているお年寄りたちに戦いをいどむ生意気で思い込みの激しい少年に「成長」していた。彼は子供たちを縛って未来まで管理するものは「時間」であるとして、その進行を止めるために郡庁舎の大時計を爆竹を使って破壊してしまう。年寄りといっても物分りがよいわけではない。生意気で鼻持ちならない子供たちから襲撃を受け、怒りは収まることがないのだ。

ところがやがて、あることがきっかけでダグラスは敵対していたお年寄りたちのうちの中心人物であるクォーターメインという老人と和解することになり、少年と老人の間で心の交流が生まれる。

ひとは夏が去っていくのを受け入れなければならないように、時の経過を、また年をとることを受け入れなければならない。交流を通じてダグラスとクォーターメインは最後にお互いに相手の視点で、相手の体の中に入って世界を見ることになり、静かに世代間の人生の引き継ぎが行われていく。

本書は「たんぽぽのお酒」が書かれてから50年以上たって出版されている。みずみずしく隠喩に満ちたこの本を書いたのが87歳の老作家、ブラッドベリである。

僕は思うのだ。本書に登場するダグラスも、クォーターメインもそれぞれの時代を過ごしたブラッドベリ自身であるのだということ。そして過ぎゆく夏を惜しむように、彼は幼年期に過ごしたイリノイ州にあった町や人々のことを思いおこし、終りに近づいている自分の人生を惜しんでいたのではないかと。(ブラッドベリは本書を出してから6年後、2012年の6月に逝去した。)

「たんぽぽのお酒」と同様、本書は児童文学でもファンタジー小説でもない。詩的な表現、隠喩の多いブラッドベリ独特の「すらすらと読めない文章」が良いのだか悪いのだか、この2冊が名作なのか駄作なのか僕にはよくわからない。しかしそれでも読み終えると全体的に何かがストンと心に落ちてきて、しみじみとした感情に満たされるのだ。秋の読書には向いているのだと思う。

さよなら僕の夏(出版社による紹介ページ)
http://www.shobunsha.co.jp/?p=1029


日本語でお読みになる方は、こちらからお買い求めください。
たんぽぽのお酒:レイ・ブラッドベリ」(Kindle版)(紹介記事
さよなら僕の夏:レイ・ブラッドベリ

 


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アマゾンのレビューによると、日本語訳や日本語版の装丁が原書の良さを損なっていて残念、とおっしゃっている方もいるようだ。なお原書は日本のAmazonからAudlbleで聴くことができる。

Dandelion Wine: Ray Bradbury」(Kindle版
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また、AudiobookはYouTubeから聴くこともできる。

Dandelion Wine: YouTubeで聴く
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たんぽぽのお酒: レイ・ブラッドベリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c0d012aafe9597bc0fbc4e549a23d04d


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