昨日投稿した「ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環: ダグラス・R. ホフスタッター」という本の記事の中で、僕が大学生だった1985年頃に売られていたパソコンのことを紹介していた。今日はパソコンではなくポケコンである。大学の授業で使っていた機種(SHARP PC-1450)をヤフオクで見かけて懐かしくなり、思わず落札させていただいた。ヤフオクで購入したポケコンはこれで8台目だ。
ポケコンとはもちろんポケットコンピュータの略称である。関数電卓やグラフ関数電卓、プログラム関数電卓などは相変わらず新しい機種が発売されているが、ポケコンという製品は開発、製造されなくなってしまっている。
昨今はポケコンを知らない若者がいるに違いない。半分くらいの学生は知っているかな?理工系なら7割くらいの学生は、そういうものがあったということくらいはきっと知っているだろうと思い、4年前にツイッターでアンケートをとってみたところ37人の方から回答をいただいた。(アンケートのツイートを見る)
なんと7割の理工系学生がポケコンを知らない。。。世代間ギャップはこのようなことにもあらわれている。
僕は数学を専攻(応用数学科)していたわけだが、ポケコンを買わされることになった授業が何なのかよく覚えていない。おそらく3年生のときの計算機演習だと思う。メインは大型計算機を使ったFortranの実習、そして付加的な形でポケコンを使っていたのだろう。ニュートン法による方程式の数値解を求めたり、行列の固有値や行列式の値を計算していたのだと思う。いや、ポケコンを使っていたのは1、2年生のときの必須科目だったのだろうか?記憶は飛んでしまっている。しかし、この機種が発売されたのは1985年であるし、PC-1450という型番はしっかり覚えているから3年生のときに違いない。
世の中にはレトロ電卓マニアがいるが、僕もその一人だ。特に関数電卓、プログラム関数電卓系が好みである。CASIOかSHARPかと言われればCASIO派である。それは大学生、いや高校生の頃から同じだった。
その流儀でいえば僕はCASIOのポケコンを買っていたはずである。しかし、「ポケコン(ポケットコンピュータ)の世界へようこそ!」という歴代のポケコン一覧がトップページにあるサイトを見て、なぜSHARPの製品を買ったのかわかった。それは「関数電卓モード搭載」という条件にこだわっていたからである。
1983年から1985年に発売されたCASIOのポケコンには関数キーがない。CASIOのポケコンで関数キーがつくのは1987年以降である。SHARPの製品にしたのは関数電卓っぽく使うことができるからだった。
マニアにはそれぞれこだわりがある。僕がポケコンに求める条件は、次のようなものだ。
- アルミ筐体で1970年代の電卓の雰囲気をかもしだしていること
- 薄型であること
- 関数電卓モード、関数キーがついていること
- 表示行数はできれば2行以上
- アルファベットキーの並びは長方形であること(このサイズだとブラインドタッチ入力はできないから、コンパクトな配列のほうがよい)
- CASIOかSHARPかについてのこだわりはない
これらの条件を満たしている製品はとても少ないことがわかる。SHARP PC-1450 (1985)とCASIO FX-860P (1987)は、まさに僕の好みにマッチしているのだ。特にSHARPのほうは実際に使っていたから懐かしい。
拡大
拡大
その後も新製品が発売されたが、機能と性能が向上していったものの、本体の厚みが1.5~2倍増し、筐体がプラスチックになったりして(僕にとっては)あまり魅力がなくなってしまった。
ポケコンとしたくくりで、最後に製品化されたのはSHARP PC-850V (2002)とSHARP PC-850VS (2009)である。BASIC言語のほかC言語でプログラミングできる機種だ。(両者は同じスペック、VSのほうは学校教育用で一般には販売されないモデル)数年前まで新品のものが販売されていた。現在は中古品しか買えない。
拡大
拡大
操作マニュアル
懐かしいものをせっかく手にしたのだから、プログラミングして遊んでみよう。
SHARP PC-1450 (1985)
SHARPのポケコンのほうは、どうにか操作手順を思い出すことができた。ネット上には、この製品の操作を知ることができるマニュアルが公開されていることがわかった。ただし、後継機種(SHARP PC-1460 (1986))のもので英語版である。
SHARP PC-1460 manual
http://pocketcomputerworld.free.fr/Manuals/PC-1460.pdf
なお、Windowsで動作するエミュレータを見つけた。
エミュレータの公開ページを開く
CASIO FX-860P (1987)
後継機種のCASIO FX-890P (1992)の操作マニュアルは実物を持っている。プログラミングの箇所の説明は、ほぼそのまま使えることがわかった。あと、ネット上に公開されている後継機種のCASIO FX-870P (1992)のマニュアルも利用できる。リンクを開いて写真をご覧いただくとわかるが、FX-870PやFX-890Pの本体はFX-860Pよりもだいぶ分厚い。
FX-870P/VX-4 マニュアル
http://luckleo.cocolog-nifty.com/pockecom/VX-4/HTML/fx-870p_manual_jp.html
ポケコンが流行利始めていた頃、私自身はプログラミングを全く知りませんでした。
購入な関数電卓として入手したFX-502Pが、プログラムを初めて作って、プログラミングの味見をチョットしたくらいでした。
まともにプログラミングをしたのは、就職した後30歳を過ぎて、必要に迫られてPCでプログラムを覚えた後のことです。
そんなわけで、ポケコンは完全に守備範囲外でして、ポケコンをすっ飛ばして実験用にプログラム電卓でプログラムを作って利用していました。
今振り返って「そういえばポケコンが全盛の時代が有ったなぁ」と思い、3年ほど前に以下のような記事をアップしています。
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-690.html
当時は、プログラム電卓、ポケコン、PCのが混在していて、カシオは安価なPCという位置づけでポケコンともプログラム電卓ともつかない製品を投入しており、当時はプログラム関数電卓やポケコンの型式がともに FX-xxx といったように区別がなかったようです。
ポケコンは私にとっては憧れのデバイス、とねさんのようにポケコンでプログラムを組むのは憧れの友達でした。
ポケコンは守備範囲外だったのですね。
大学生の時に学校で買わされなければ、僕は使っていなかったと思います。BASIC言語の命令がショートカットのように入力できたとはいえ、1行表示でプログラムするのは(特にデバッグのとき)大変でした。すでにPCもありましたから、PCでプログラムするほうがずっと楽です。
その後、ポケコンはすたれ、プログラム関数電卓のほうは生き残りました。ポケコンがもてはやされたのは10年間くらいでしたね。
とはいえ、見た目にはカッコいい商品ですから、時々持ち歩いて、作業中のパソコンの横に置いて見知らぬ周囲の人にアピールしています。
ところでこの記事を書いているときに気がついたのですが、CASIOの関数電卓の型番は fx- のようにアルファベットの小文字で始まりますが、ポケコンの型番は FX- のように大文字を使うのが正式な表記のようです。製品カタログや製品マニュアルも FX- は大文字表記で印刷されています。
大文字の FX は、プログラム関数電卓である FX-502P, FX-602P, FX-603P にも採用されています。
なので、大文字FXは当初からポケコン用というものでも無さそうです。
FX-602Pの登場の後ですが、
・FX-603Pが登場する前に、ポケコンFX-702Pが発売されました。
・FX-603Pが登場する前にプログラム関数電卓 fx-4000Pが発売されました。
FX-603P が存在するため、ここまでは大文字/小文字が混在しています。
FX-603Pが登場した後は、とねさんが仰るように、
・プログラム関数電卓は小文字の fx で始まる
・ポケコンは大文字の PB, AI, FX などで始まる
といったように、ポケコンは大文字という法則が適用できるようです。
FX-603P だけが法則を破っていると言い換えることも出来ます。実際に内部で採用されているCPUや通信モジュールなどはポケコンクラスの高性能なものを使っているので、FX-603P は電卓の皮を被ったポケコンという独自の位置づけ、渾身の製品だとカシオが考えていた可能性が考えられます。
実際問題 FX-603Pは16年間 (2006年のfx-5800P発売開始まで)販売が継続されていた、長寿命製品だったのも、カシオ渾身の一品との推測を裏付けるものです。
私のようなマニアからみると、501P ~ 603P の型式の頭に大文字の FX- を付けている人は、同じ仲間だと認識し、この字の fx- を付ける人はマニアじゃないと感じる、なんて話もあります(・ω・)
てっきり fx-502Pだと信じ込んでいました。所有している502Pを確認したら FX- 。。。
思い込みとは恐ろしいですねぇ。
いつも記事を楽しく読んでおります。
お二人ともカシオ派のようですね。この記事は、昔(1980年代)のことを思い起こさせてくれました。
私の初めてのポケコンは、当時5万円で手に入れた中古のTIー59でした。赤色LEDの表示で、5センチほどの磁気カードでプログラムやデータをローディングでき、数百ステップの設計プログラムをいくつか実行しておりました。学生時代に、生協でTIとHPの展示会があり、TIー59(だったと思う)はほぼ100万円、HPの最高機種が200万円していたのを見ていたので、5万円は、超お買い得でした。ただ、プログラムステップとメモリーの制約で簡単なプログラムしか組めなかったのでがっかりしました。
その後、シャープのPC−1350が売り出され、16KBの増設ICメモリーカードとともに衝動買いしました(値引き交渉して、4万円程だったと思う)。PC−1350は、画期的で目を開かせてくれました。4行表示、グラフィック表示ができ、ベーシックでかなり複雑なプログラミングが可能となりました。ただ、メモリー容量が21KBしかありませんので、大きなプログラムは無理でした。そんな中で、機械学会の蒸気表をプログラムしようと思い、仕事後の夜中に二週間ほど集中し仕上げました。極力モジュール、サブルーチン化してサイズを20KBほどに圧縮できたときの爽快感は今でも忘れません。このプログラムは仕事でも多用しました。ただ、圧力温度指定以外は、探索反復計算のため計算時間が5分ほどかかりました。データを入力してからトイレに行くというのが習慣になりました。このベーシックプログラムを当時の会社のNECのパソコンに移植したのですが、計算精度が悪く断念、メインフレームにフォートランで移植するも、変数を全て倍精度にしても、PC−1350の精度の方が優れていたのには、びっくりしました。電卓恐るべしです。
その後、PC-E550に移行しましたが、PC−1350のの時のような感動は味わえませんでした。E−550も30年近く使いましたが、最近パワースイッチの接触不良でお釈迦入りとなりました。
1983年から、カシオのソーラー関数電卓、fx−995(旧モデル)を使っており、38年経った今もまだ現役です。厚さ3ミリ、電池入らず、優れもののガジェットです。
コメントをいただき、ありがとうございました。
ポケコンというか僕のプログラム電卓デビューもTI-59ですよ。スマホアプリもTI-59のがありますね。(有償アプリですが)
高校生だった当時、TI-59にするかHP-67(YHP-67)にするかずいぶん迷い、この2機種を販売していた新宿の京王デパートへ何度も足を運んだものでした。結局TI-59にしました。プリンタがオプションで買えたというのが大きな理由でしたね。
TI-59については、これまで2つ記事を書いたことがあります。
プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, CASIO fx-602P): iPhoneアプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e462acad2de19fdd92d574078ccff000
プログラム電卓ノスタルジア (TI-59, HP-67): Android携帯アプリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0ad3750a80319805913264169939ea93
HP-67, HP-97については、この記事を書きました。
HP-67, HP-97 for iPad、HP-67 for iPhone
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/838a982f2ed2355c7a8fed4c07a7a9e1
その後も、プログラミング電卓やポケコンを使い続けましたが、「その後、PC-E550に移行しましたが、PC−1350のの時のような感動は味わえませんでした。」とJOE ASHITANOさんがお書きになっているように、後になればなるほど感動はなくなりますね。1970年代、1980年代はじめに、私たちが感じたような感動は強烈でした。
それと同時に、今の若者たちはそのような感動、ワクワク感をちゃんと経験できているか?そして経験できているとしたら、何に対してなのか?と思ってしまいます。