PM7:00に2PMの事を考える

クリームソーダ的宇宙

アナウンサー!冬物語chapter.14

2014-04-01 12:00:00 | アナ冬

久々の更新になってしまいました(p_-)

(自身がどこまでUPしたか忘れ、過去エントリー読み返たというw)

冬は終わりますが無関係に進行しますのでよろしくおねがいします~!

更新しない中、コメントくださったりツイッターフォローしてくださった方々、本当にありがとうございます。書く支えになります。

では、どうぞ。

 


(chapter.14)

 

右太郎、玉澤、ハルナとの食事会を終えたレイは、定宿としている六本木のホテルへと戻った。

酒宴は盛り上がり、3人は二次会へ繰り出したようだ。

玉澤がハルナにちょっかいを出しそうな雰囲気があり、それがレイは気になったが、

賛成から飛行機をキャンセルしたというメール以降、連絡が取れないことのほうが気になった。

時計は深夜零時を回っている。

賛成はもうホテルの部屋に帰っているだろうか?

心配だ。

部屋のドアを開ける。

室内は真っ暗だ。

灯りを付けようとすると、部屋の奥からレイ、と、自分を呼ぶ賛成の声がしたような気がして、

レイはそのまま灯りも付けず、薄いレースのカーテンごしに入る外の鈍い光だけを頼りに部屋の奥へと進んだ。

「賛成…?いるの…?」

賛成はベッドの上にあおむけになっていた。

左手の手のひらを天井に向け額の上に置いている。

暗くて良く見えないが、半分眠っているのだろうか?

レイは毛布を掛けようと近寄った。

すると、

「レイ」

賛成の手がレイの手首を掴んだ。

「…起きてたの?」

「うん…」

賛成の瞳はうつろに天井を見つめている。

「電気もつけないで…どうしたの」

「…うん…」

その瞳の奥は空虚だ。

実家でなにか、大変なことがあったんだ

レイは体験的にか、本能的にか、そう思った。

「話せる…?」

「ああ…」

賛成はゆっくりと起き上がるとベッドに腰掛け、頭の中で、今日屋敷で聞いたことを反芻する。

執事の黒井から聞き出した、自分と瓜二つな姿の異母兄弟・成哉の、出生の秘密。

18年前のある日、黄桜家で起きた出来事について…。

整理しきれていない出来事をポツリポツリと言葉を選びながら口にする…。

 

―18年前、冬―

白い雪が舞う中、黒塗りのベンツが黄桜家の玄関に停まった。

玄関前には若き日の執事・黒井が傘を差し立っていた。

運転手がベンツの後ろのドアを開けると、そこから赤ん坊を抱えた小柄な女性が出てきた。

突然車にのせられたのかこんな寒さの中、コートも羽織っていない。

黒井は赤ん坊の顔を覗き込んだ。

女性の細い両腕に自然と力が入る。

あたたかいおくるみに包まれたその赤ん坊は、濁りのない白目にくっきりとした大きな黒い瞳を縁どらせ、黒井を見つめ返した。

強面に見える黒井だが、その表情は意外にも優しく、女性は意外だな…と思った。

―黄桜の顔だ。

黒井は思う。

そして黒井は無邪気な赤ん坊を見つめながら、

これからこの赤ん坊に待ち受けるであろう、重い枷(かせ)について思いをめぐらし心を痛めた。

 ・

彼女は赤ん坊を抱えたまま屋敷へと招かれ、リビングへと通された。

ひとめで年代物とわかるシャンデリアや皮のソファ、その他手入れの行き届いた豪奢な家具や調度品…。

古いものほど手間も維持費もかかる。

おおきな暖炉はパチパチと音を立てながら部屋を暖かく潤していた。

彼女は部屋をじっくりと見渡す。

そして思い出していた、かつて自分が女優だったころ演じた、「鹿鳴館」の顕子役のことを。

豪華なドレスをまとって華族の娘を演じていたあの頃。

あれはこんな屋敷を舞台に繰り広げられる物語だった。

女優をしていたのはたった2,3年前のことなのに、それは遥か昔のことに感じられた。

そう、この屋敷の女主人・黄桜良子同様、

彼女もまた、女優だった。

(イメージ画像)

「わたくしは執事の黒井と申します。どうぞ、こちらにお座りください」

さっきの強面の男が名乗った。

「あの…、わたし…」

「杏子様、ご心配はいりません、さあ…」

杏子―、それが彼女の名前だ。

ソファに座るように促されるが、杏子は目線をすこし送っただけで、赤ん坊を抱え立ったまま窓の外をみつめた。

広い庭は英国式だ。

朝からチラチラと降る雪におおわれ一面うっすらと雪化粧をまとっていた。

常緑樹の緑に白が映える。都会の真ん中にあってここだけが、なにかの物語の一部のようだった。

―こんな屋敷がこの世に存在するのか。

それは寓話的な美しさに満ちていて、彼女の感受性を刺激する。

腕のなかで赤ん坊がキャっと声を出して笑った。

そして我に返る。

―この子を守らなければ。

この大切なものだけは守らなければ。

その時、応接間の扉が静かに開く。

そこには表情のない黄桜良子が立っていた。

 

(つづく)

 

 


 

「アナウンサー!冬物語」は下記からの続編です。

「アナウンサー!春物語」 第1話はこちらから→

 

 http://blog.goo.ne.jp/ktam7pm/e/df22f4138795fe59124c72c361afa9bc

 

つぎに「抱きしめて!聖夜(イブ)」 第1話はこちらから→

http://blog.goo.ne.jp/ktam7pm/e/7637959c3f1ee9d122d1df584f237758

 

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※この物語はフィクションであり実在の人物とは一切関係ありません。