上坂研究室のできごと

岐阜大学 上坂研究室の(HPから漏れた?)活動を紹介します。

2019第80回応用物理学会秋季学術講演会(古橋)

2019-09-24 21:39:52 | 日記
第80回応用物理学会秋季学術講演会に上坂GからM2の古橋が参加しました.


2日目のセッションで発表する古橋

私は前回の応用物理学会に引き続き,
プラズマCVDで合成されるa-C:H膜の構造に及ぼす高密度プラズマ化の影響について報告いたしました.

また,応用物理学会に参加するにあたり他の方の発表も聴講したのでいくつか紹介させていただきます.

1. 異なる希釈ガスを用いたRF低圧テトラメチルシランプラズマにおける電極への入射イオンの質量分析 (千葉工業大学 鈴木様)
異なる不活性ガスで希釈されたTMSガスを用いて成膜した場合に電極に入射する炭化水素イオンの測定の結果について報告されていました.
不活性ガスであるHe, Ar, Neのうち,Heを用いた場合イオン量が一番多い結果となっており,
希釈ガスによってもイオン量を大きく変化させることができると知りました.
また,オリフィスを用いた炭化水素イオンの検出方法は以前上坂先生から伺っており,
オリフィスを実際に用いて実験している方のお話を直接聞くことができ良かったです.

2. 水素化アモルファス炭素膜の構造と電気伝導特性の関係   (東京工業大学 富所様)
a-C:H膜の構造と電気伝導特性の関係性についての報告がされていました.
この報告の中で膜中の水素含有量の減少に伴い活性化エネルギーが上昇するという報告がありました.
私の別の研究テーマでは,膜中の水素含有率とsp3結合比率が相殺してダングリングボンド量に変化がみられない結果となっていました.
この結果はこの発表と異なる傾向を示しています.今回の応物の場ではその原因について判明させることができませんでしたが,
発表者の富所様に参考文献をいくつか教えていただいたので読んでたいと思います.

3. トーンバーストフローティングプローブ法によるイオンフラックスとプラズマ密度の測定 (東京電機大学 片平様)
プラズマ密度を測定する技術であるラングミュアプローブ法(LP法)にかわる手法について報告されていました.
トーンバーストフローティングプローブ法はプローブに電流を流さずに測定が行えるため,
LP法のように絶縁物がプローブにコートされ誤差が生じるようなことがないそうです.
私の研究では,イオンフラックスを試験片に流れる電流値から概算していますが,
しっかりとイオンフラックスやプラズマ密度の測定をする手法として,
PL法以外にもこのような計測方法があることを知り,勉強になりました.


今回は会場が北海道ということもありグルメを思う存分楽しんできました.
大好きないくらを器いっぱいに盛ってもらえて幸せでした.
一時間以上待って食べたジンギスカンもスープカレーも全てが美味しかったです.
  
 


次は修論にむけて頑張っていきたいと思います.

M2 古橋




2019第80回応用物理学会秋季学術講演会(古田)

2019-09-24 17:09:07 | 日記
2019第80回応用物理学会秋季学術講演会(北海道大学)に上坂GからM2の古田と古橋で参加しました.

私は工具の膜厚分布に沿った除膜技術の開発を目的として, 
MVP法と熱電子放出フィラメントを組み合わせた
金属丸棒に対するエッチング分布の制御性について報告いたしました.


以下、自身の研究と関わりが深いと感じた,面白いと感じた報告を
いくつか紹介させて頂きます.

①『変調パルス電力マグネトロンスパッタリングのパルス/パワー制御とプラズマ発光分光』(東京工芸大 中込様)
この研究ではアーキング抑制に優れる変調パルス電力方式を使った
マグネトロンスパッタリングのスパッタ特性を知ることを目的として
プラズマ発光の計測の結果を報告していました.
Tiターゲットに対して,Ar雰囲気2Paの条件下で出力電流を変化させたときの
発光分光の結果が下の図になります.電流値が約190 Aで,Ti+原子の発光強度の上昇は頭打ちとなり、
代わってAr+の発光強度が急激に強くなっています。
その考察として自己スパッタリングが起きていることが挙げられていました.
私の研究では,MVP法とフィラメントの熱電子放出によって除膜を行っていますが,
マイクロ波の出力を上げていくと除膜レートが高くなるという予想に対して,
出力を大きくしすぎると除膜レートが上昇しなくなります.
それは今回の報告と同様に,電源の出力を上げたことによる自己スパッタリングが起きている可能性があるため
発光分光を用いて今後調査したいと思いました.
(第80回応用物理学会予稿集 20a-B11-6)

②『高輝度ファセットレス電子源の実現に向けた表面炭素修飾』(日立研開 松永様)
この研究では結晶性の電子源表面を非晶質カーボンを修飾することで
電子放出パターンが下図のAからBのように均一に変化したことでファセットレス電子源が実現されたという報告がされていました.
実用化するという点においては,非晶質カーボンを取り付けて長時間使用すると
カーボンが剥離する問題点があり、質疑応答において剥離が起こる原因について様々な考察がなされていました.
(カーボンに対するイオン衝突によるもの,電流が結晶材料とカーボンの界面を流れたことによるカーボンの組成変化)
こう言ったやり取りを直に聞けることも学会に参加する醍醐味であると感じました.
(第80回応用物理学会予稿集 19a-E312-2)

③『ArイオンとArクラスターイオンビームによる金属膜と有機膜へのエッチングの影響』(発表者 東芝テック研究開発センター 關 様)
有機絶縁膜をArイオンとAr-ガスクラスターイオンでエッチングし、
2つのエッチング方法が有機膜に与えたダメージを報告していました.
結果としてXPSでAr-ガスクラスターイオンを用いることで有機物に対して
影響を与えずに測定ができるというものでした.
(エッチング後にArイオンではベンゼン環のピークが消えるのに対して、
Ar-ガスクラスターイオンはピークが残る)
試料への影響が少ないエッチング方法として興味深いと思いました.
研究を進めるうえで測定方法が試料に与える影響を考慮して
評価を行うことが重要であると再確認することができました.

1日目の夜には千葉工大の学生と夕食をともにし
互いの研究室生活について話したりと楽しい時間を過ごせました.

2日目はスープカレーを食べました。ブロッコリーがおいしいと思ったのは初めてで
北海道の野菜の美味さに感激しました

北海道神宮でお参りしてきました
一時間並んだラーメン店:すみれと雪風

北海道の美味いものを食べてリフレッシュすることができたので
残りの学生生活もわずかですが
成果を残せるよう頑張っていきたいと思います。
M2 古田






表面技術協会第140回講演大会(福岡工業大学)

2019-09-18 14:14:29 | 日記

 表面技術協会の第140回講演大会(福岡工業大学)に上坂GからM2の池田と倉田が参加しました.

 

1日目のセッションで発表する倉田

倉田:私の研究では接着面近傍の樹脂の極性と付着性に関する報告をさせていただきました。

今回の講演大会では,私と同じく接着の主要因のうち物理的結合に関しての報告で

接着面の極性に関して調査している方が多くいらっしゃりましたので紹介させていただきます.

 

「大気開放型プラズマ処理によるフッ素樹脂の接着性向上」(発表者 阪大院工 西野様)

この内容は接着性が乏しいとされるフッ素樹脂に対して

大気圧プラズマ処理を行うことによるAgインク膜との接着強度への影響を調査したものでした.

プラズマ処理の有無でその接着強度は0.04N→0.54Nと向上している結果が出ており

その原因はプラズマ処理により接着界面に極性基が導入されたため,

接着形態が強固になっているのではないかと考えられていました.

私の研究でも樹脂の引きはがし強度の差は,接着面近傍への極性基の偏在量の差

もしくは接着面の極性に依存すると考えており,

この発表と同様の傾向があると考えられたため強く印象に残りました.

 

また,接合形態の中で物理的結合以外に着目した発表もありましたのでこちらも1つ紹介させていただきます.

「粗面化Cuめっきを活用した鉄鋼-樹脂間の異種材料接合-長期信頼性評価-」(発表者 信大院総合理工 岩下様)

この内容はマルチマテリアル化のための異種材料間の接合技術のなかで

特に鉄鋼と樹脂のインサート成形法においてCuめっき膜を鉄鋼表面に形成した場合での

長期信頼性についての評価を行ったものでした.

ISO19095の高温高湿試験後における接合強度評価では

粗面化めっきを形成した場合で高い初期接着強度が得られており,

2000h後においても40MPa以上の高い接合強度が保たれていることが確認されました.

界面観察の結果から粗面化めっきの凹凸に樹脂が完全にインサートされていることが確認されており,

このことが高い接合強度を保った要因であると考察されていました.

私も以前,引きはがし強度に与える機械的結合の影響について調査したことがあり,

樹脂が十分に金属側の凹凸に入り込んでいる場合では,相手材が粗面であるほど

引きはがし強度が上昇することを確認しておりました.

 

今回の講演大会では,自分と同じ観点からの報告と違う観点からの報告があり

多くの有意義な発表を聴くことができました.特に物理的結合の観点から付着性を論じるのに

樹脂の極性に注目した報告をされており,自分の方向性が間違っていないと感じられました.

 

 

2日目のセッションで発表する池田

 

池田:私は金属球とSi-DLCの摩擦について発表しました。

自身の研究と関わりが深いと感じた,面白いと感じた報告をいくつか紹介させて頂きます.

 

まずは自身の研究に関連した超低摩擦に関するもので,

「ta-C(:H)膜の超低摩擦発現による膜質変化」(岡山工業技術センター 國次様)

「Effect of surface contact area on ultralow friction of ta-C:H film」(岡山理大院工 Muhammad Aminurul Helmy様)

Siを含有しないta-C:H膜の超摩擦現象(μ=0.01-0.03程度)についての報告をされていました.

1件目では超低摩擦となった場合の摺動痕を分光エリプソメトリーにより分析をすると共に摺動による表面の変質をモデル化し考察されていました.

その中でも気になったのは,分光エリプソメトリーの結果から摺動痕上層はsp2結合成分の増加が考えられるということでした.

私も摩擦面のグラファイト構造の割合・量を増加させることが摩擦係数の低下に繋がるのではないかと考えており,とても気になりました.

実験の系としてはDLC-DLCの摩擦であり私とは少し違うものですが,

超低摩擦が発現した環境は窒素環境かつほぼ湿度の無い環境ということで,まずは私の系でこの環境に近い所で実験してみたいと考えました.

2件目も同様にta-C:H-ta-C:Hかつ乾燥窒素下ですが荷重を変えながらの摩擦試験とのことでした.

下図(予稿から引用させて頂きました)のような結果となっており,荷重が40-60Nの間のみ摩擦係数が低下するという現象が見られました.

超低摩擦のためには適切な荷重が存在し,つまりは接触圧力等の接触状況も大きく影響することを改めて確認しました.

今まではDLCや環境は変化させてきましたが,摩擦試験条件を変化させたことが無かったため,次の実験の方向性として摩擦条件の変化も必要であると考えました.

 

 

次に当研究室と関わりの深い兵庫県大 田中先生の下で,

「MVP 法を用いた CH4-H2 混合ガスからの炭素膜の作製」(兵庫県立大学院 大久保様)

MVP法を用いた炭素膜の生成についての研究で,CH4-H2混合ガスによる実験を行ったところ,

その条件によって生成物の形状が変化(フラワー状,ファイバー状,棘状,膜状)するという報告でした.

当研究室では主にCH4やC2H2,Ar(+TMS)でDLC成膜を行っていますが,

同じ成膜手法でArをH2に変えると生成されるものがこういった変化をするのかと驚きを感じました.

また成膜ガスにArを入れているのはプラズマを生成しやすくする程度にしか考えられていませんでしたが,

この結果を見てその他にもさまざまな効果あると考えられ,勉強不足を感じました.

 

摩擦に関するものではありませんが,

「Pin/Disk 試験機および AE を用いた DLC 膜の密着力評価法の標準化」(宇都宮大学 馬渕様)

「AE 信号の周波数解析による DLC 膜の剥離要因解析」(宇都宮大学 谷田貝様)

DLCの密着力評価に関するもので,現在行われているスクラッチ試験やロックウェルの圧痕を観察する手法に続く新たな評価手法を報告されていました.

Pin/Diskでのステップ荷重摩擦試験にAEセンサを用いてその振動を計測することで膜の剥離を検出するという手法で,

この剥離による評価が密着力と良い相関を示すとのことでした.

また,計測された振動の周波数から剥離のモード(摩滅・割れなど)を推定することも進められており,数年でのISO化を目指すということで今後の気になる研究だと感じました.

 

 

 

また,1日目の夜に兵庫県立大学の田中先生
と名城大学の太田先生に夕食をご馳走になりました.

 

学生だけではとても手が出せないような高級なご飯をいただきました.

写真はイカの活け造りです.今まで食べたイカの中で一番美味しかったです.

田中先生,太田先生,ごちそうさまでした.

 

学会後は博多周辺の観光をしてきました.頑張った後のご褒美ですね.

やはり博多といえばラーメンですね.

明太子入りのちゃんぽんです.今回の日程では麺率が高かったです.

福岡空港で食べたとんかつ定食です.白いご飯は久しぶりでした.

海浜公園です.九月なのであまり人はいませんでした.


太宰府天満宮のそばにあった博物館に山笠が置いてありました.こんなに大きいとは・・

ももち浜でいい写真が取れました.海辺は風もあって涼しかったです.

福岡タワーからみた街並み.夜景も綺麗とのことでした.

地上125mで引く天空ガチャ.池田君は電車を当ててました.

 

3年あった研究室での学生生活も残すはあと半年となります.

残りの学生生活,修論に向けて頑張っていきます.(池田・倉田)

 

 


2019年日本機械学会年次大会@秋田

2019-09-18 14:03:40 | 日記

9月9日(月)から9月11日(水)まで秋田大学で開催された日本機械学会年次大会にM1の山下と吉田が参加しました.


二人は第25回卒研コンテストで発表し,吉田が最優秀賞を頂きました!

年次大会に参加するにあたり、他の方の発表も聴講しました.

聴講して面白いと感じた研究(吉田)

東海大の小谷晋平さんが浮動ブッシュ軸受けの油膜観察に関する研究を行っていました.
この研究は,従来方法の高速度カメラでは観察できなかったブッシュ軸受けの回転数の飽和領域の油膜をX線CTで観察するというものでした.
この新しい方法を用いて油膜を観察することで飽和してしまう原因と改善策が提案されていました.

大分大学の本田拓郎先生は水溶性切削液へ酸化グラフェンを添加した際の切削性に関する研究を発表されていました.
この研究は,熱伝導率が小さいステンレス鋼などの難削材の加工性能を向上させるため,冷却作用に優れる水溶性切削液に酸化グラフェンを添加して切削力を評価するというものでした.
酸化グラフェンを添加することにより,摩擦係数が低下し,切削力やびびり振動が低下することが示されていました.

聴講して面白いと感じた研究(山下)

豊田工業大学の古谷克司先生は月の岩石のワイヤソー切断加工技術に関して発表されていました.
この加工は切断装置を軽量化して,低剛性の装置を振動させながら行う切断加工です.
この方法により従来の超音波振動加工と比較して大きなエネルギや多数のアクチュエータを使わずに宇宙空間での加工が可能であると提案されていました.

足利大学の田村昌一先生は圧延チタン合金のドリル加工に関して発表されていました.
当該材料は異方性を持つことから,2枚刃ドリルでの穴あけ加工では切削抵抗が変動し,加工面品位が低下します.
そこで,ドリルの切れ刃を2枚刃から3枚刃に変更し,3枚刃ドリルによる切削力変動の抑制について調査されていました.


年次大会3日目は,企業展示や学生交流会にも参加しました.

企業で働いている技術者の方や他大学の学生と交流し,有意義な時間を過ごすことができました.

また,発表以外に観光も楽しみました.

「なまはげ館」でなまはげを試着する山下


「潮瀬崎」にある「ゴジラ岩」
ゴジラに見える、、、?

懇親会ではたくさんの地酒を楽しみました.
今回の発表を通して,それぞれの良い点・悪い点が分かったので次の発表では今回より良い発表ができるよう,ブラッシュアップして研究を進めたいと思います.

記事
山下,吉田


応用物理学会第13回プラズマエレクトロニクスインキュベーションホール@国立中央青少年交流の家 (9/8-10)

2019-09-17 16:05:04 | 日記

静岡県御殿場市の国立中央青少年交流の家にてプラズマの勉強会である,9/8-10の三日間にわたり応用物理学会が主催の
プラズマエレクトロニクスインキュベーションホールが開催されました.
私たちの研究室からは上坂グループのM1(清藤,川村)が参加いたしました.
講習会を通してプラズマの基礎から応用開発を学ぶことができ,懇親会で参加した若手の研究者,学生の方々との交流を深めることができました.

開催会場


講義室の様子.3日間を通して6名ものプラズマのスペシャリストの方々による講義が行われました.先生方の講義から,プラズマの基礎から応用までの理解を深めることができました.


1日目の夜は参加者によるポスターセッションを行いました.


二日目は天気にも恵まれ,雄大な富士山の姿を拝むことが出来ました.

参加者の感想

清藤
今回の講習会を通して,外部のプラズマを研究する学生の方々や先生方と交流することができ,今後の研究へのモチベーションが高まりました.

講師の方々の講義はどれも今後の研究に生かすことの出来るとてもすばらしい内容でした.私は現在プラズマシミュレーションの研究を行って

いるため,特に東京農工大学の西田先生によるプラズマシミュレーションに関する講義は,プラズマシミュレーションの基礎をしっかりと学ぶ

ことができ,非常に興味深い内容でした.プラズマのモデリング手法で流体近似,粒子の運動理論におけるそれぞれのメリットデメリットを知

ることが出来ました.ポスターセッションでは,岩手大学の方のプラズマを用いた果物の早熟の防止など,プラズマを用いた様々な研究を知る

ことが出来ました.

川村

今回の講習会は様々な方のお話を聞くことができ,非常に勉強になりました。自分はプラズマでの表面加工技術についての研究ですが、

プラズマを医療や農業、ナノ領域への応用と、普段自分が関わることのない分野のお話を聞くことでより新しい観点からプラズマを

考えることができました。東北大学の金子先生の気液界面プラズマの講義では、プラズマを液体に照射することで液体の成分が変化が

起こるという化学的な要素も含まれたお話で興味深い内容でした.