上坂研究室のできごと

岐阜大学 上坂研究室の(HPから漏れた?)活動を紹介します。

表面技術協会第140回講演大会(福岡工業大学)

2019-09-18 14:14:29 | 日記

 表面技術協会の第140回講演大会(福岡工業大学)に上坂GからM2の池田と倉田が参加しました.

 

1日目のセッションで発表する倉田

倉田:私の研究では接着面近傍の樹脂の極性と付着性に関する報告をさせていただきました。

今回の講演大会では,私と同じく接着の主要因のうち物理的結合に関しての報告で

接着面の極性に関して調査している方が多くいらっしゃりましたので紹介させていただきます.

 

「大気開放型プラズマ処理によるフッ素樹脂の接着性向上」(発表者 阪大院工 西野様)

この内容は接着性が乏しいとされるフッ素樹脂に対して

大気圧プラズマ処理を行うことによるAgインク膜との接着強度への影響を調査したものでした.

プラズマ処理の有無でその接着強度は0.04N→0.54Nと向上している結果が出ており

その原因はプラズマ処理により接着界面に極性基が導入されたため,

接着形態が強固になっているのではないかと考えられていました.

私の研究でも樹脂の引きはがし強度の差は,接着面近傍への極性基の偏在量の差

もしくは接着面の極性に依存すると考えており,

この発表と同様の傾向があると考えられたため強く印象に残りました.

 

また,接合形態の中で物理的結合以外に着目した発表もありましたのでこちらも1つ紹介させていただきます.

「粗面化Cuめっきを活用した鉄鋼-樹脂間の異種材料接合-長期信頼性評価-」(発表者 信大院総合理工 岩下様)

この内容はマルチマテリアル化のための異種材料間の接合技術のなかで

特に鉄鋼と樹脂のインサート成形法においてCuめっき膜を鉄鋼表面に形成した場合での

長期信頼性についての評価を行ったものでした.

ISO19095の高温高湿試験後における接合強度評価では

粗面化めっきを形成した場合で高い初期接着強度が得られており,

2000h後においても40MPa以上の高い接合強度が保たれていることが確認されました.

界面観察の結果から粗面化めっきの凹凸に樹脂が完全にインサートされていることが確認されており,

このことが高い接合強度を保った要因であると考察されていました.

私も以前,引きはがし強度に与える機械的結合の影響について調査したことがあり,

樹脂が十分に金属側の凹凸に入り込んでいる場合では,相手材が粗面であるほど

引きはがし強度が上昇することを確認しておりました.

 

今回の講演大会では,自分と同じ観点からの報告と違う観点からの報告があり

多くの有意義な発表を聴くことができました.特に物理的結合の観点から付着性を論じるのに

樹脂の極性に注目した報告をされており,自分の方向性が間違っていないと感じられました.

 

 

2日目のセッションで発表する池田

 

池田:私は金属球とSi-DLCの摩擦について発表しました。

自身の研究と関わりが深いと感じた,面白いと感じた報告をいくつか紹介させて頂きます.

 

まずは自身の研究に関連した超低摩擦に関するもので,

「ta-C(:H)膜の超低摩擦発現による膜質変化」(岡山工業技術センター 國次様)

「Effect of surface contact area on ultralow friction of ta-C:H film」(岡山理大院工 Muhammad Aminurul Helmy様)

Siを含有しないta-C:H膜の超摩擦現象(μ=0.01-0.03程度)についての報告をされていました.

1件目では超低摩擦となった場合の摺動痕を分光エリプソメトリーにより分析をすると共に摺動による表面の変質をモデル化し考察されていました.

その中でも気になったのは,分光エリプソメトリーの結果から摺動痕上層はsp2結合成分の増加が考えられるということでした.

私も摩擦面のグラファイト構造の割合・量を増加させることが摩擦係数の低下に繋がるのではないかと考えており,とても気になりました.

実験の系としてはDLC-DLCの摩擦であり私とは少し違うものですが,

超低摩擦が発現した環境は窒素環境かつほぼ湿度の無い環境ということで,まずは私の系でこの環境に近い所で実験してみたいと考えました.

2件目も同様にta-C:H-ta-C:Hかつ乾燥窒素下ですが荷重を変えながらの摩擦試験とのことでした.

下図(予稿から引用させて頂きました)のような結果となっており,荷重が40-60Nの間のみ摩擦係数が低下するという現象が見られました.

超低摩擦のためには適切な荷重が存在し,つまりは接触圧力等の接触状況も大きく影響することを改めて確認しました.

今まではDLCや環境は変化させてきましたが,摩擦試験条件を変化させたことが無かったため,次の実験の方向性として摩擦条件の変化も必要であると考えました.

 

 

次に当研究室と関わりの深い兵庫県大 田中先生の下で,

「MVP 法を用いた CH4-H2 混合ガスからの炭素膜の作製」(兵庫県立大学院 大久保様)

MVP法を用いた炭素膜の生成についての研究で,CH4-H2混合ガスによる実験を行ったところ,

その条件によって生成物の形状が変化(フラワー状,ファイバー状,棘状,膜状)するという報告でした.

当研究室では主にCH4やC2H2,Ar(+TMS)でDLC成膜を行っていますが,

同じ成膜手法でArをH2に変えると生成されるものがこういった変化をするのかと驚きを感じました.

また成膜ガスにArを入れているのはプラズマを生成しやすくする程度にしか考えられていませんでしたが,

この結果を見てその他にもさまざまな効果あると考えられ,勉強不足を感じました.

 

摩擦に関するものではありませんが,

「Pin/Disk 試験機および AE を用いた DLC 膜の密着力評価法の標準化」(宇都宮大学 馬渕様)

「AE 信号の周波数解析による DLC 膜の剥離要因解析」(宇都宮大学 谷田貝様)

DLCの密着力評価に関するもので,現在行われているスクラッチ試験やロックウェルの圧痕を観察する手法に続く新たな評価手法を報告されていました.

Pin/Diskでのステップ荷重摩擦試験にAEセンサを用いてその振動を計測することで膜の剥離を検出するという手法で,

この剥離による評価が密着力と良い相関を示すとのことでした.

また,計測された振動の周波数から剥離のモード(摩滅・割れなど)を推定することも進められており,数年でのISO化を目指すということで今後の気になる研究だと感じました.

 

 

 

また,1日目の夜に兵庫県立大学の田中先生
と名城大学の太田先生に夕食をご馳走になりました.

 

学生だけではとても手が出せないような高級なご飯をいただきました.

写真はイカの活け造りです.今まで食べたイカの中で一番美味しかったです.

田中先生,太田先生,ごちそうさまでした.

 

学会後は博多周辺の観光をしてきました.頑張った後のご褒美ですね.

やはり博多といえばラーメンですね.

明太子入りのちゃんぽんです.今回の日程では麺率が高かったです.

福岡空港で食べたとんかつ定食です.白いご飯は久しぶりでした.

海浜公園です.九月なのであまり人はいませんでした.


太宰府天満宮のそばにあった博物館に山笠が置いてありました.こんなに大きいとは・・

ももち浜でいい写真が取れました.海辺は風もあって涼しかったです.

福岡タワーからみた街並み.夜景も綺麗とのことでした.

地上125mで引く天空ガチャ.池田君は電車を当ててました.

 

3年あった研究室での学生生活も残すはあと半年となります.

残りの学生生活,修論に向けて頑張っていきます.(池田・倉田)

 

 


2019年日本機械学会年次大会@秋田

2019-09-18 14:03:40 | 日記

9月9日(月)から9月11日(水)まで秋田大学で開催された日本機械学会年次大会にM1の山下と吉田が参加しました.


二人は第25回卒研コンテストで発表し,吉田が最優秀賞を頂きました!

年次大会に参加するにあたり、他の方の発表も聴講しました.

聴講して面白いと感じた研究(吉田)

東海大の小谷晋平さんが浮動ブッシュ軸受けの油膜観察に関する研究を行っていました.
この研究は,従来方法の高速度カメラでは観察できなかったブッシュ軸受けの回転数の飽和領域の油膜をX線CTで観察するというものでした.
この新しい方法を用いて油膜を観察することで飽和してしまう原因と改善策が提案されていました.

大分大学の本田拓郎先生は水溶性切削液へ酸化グラフェンを添加した際の切削性に関する研究を発表されていました.
この研究は,熱伝導率が小さいステンレス鋼などの難削材の加工性能を向上させるため,冷却作用に優れる水溶性切削液に酸化グラフェンを添加して切削力を評価するというものでした.
酸化グラフェンを添加することにより,摩擦係数が低下し,切削力やびびり振動が低下することが示されていました.

聴講して面白いと感じた研究(山下)

豊田工業大学の古谷克司先生は月の岩石のワイヤソー切断加工技術に関して発表されていました.
この加工は切断装置を軽量化して,低剛性の装置を振動させながら行う切断加工です.
この方法により従来の超音波振動加工と比較して大きなエネルギや多数のアクチュエータを使わずに宇宙空間での加工が可能であると提案されていました.

足利大学の田村昌一先生は圧延チタン合金のドリル加工に関して発表されていました.
当該材料は異方性を持つことから,2枚刃ドリルでの穴あけ加工では切削抵抗が変動し,加工面品位が低下します.
そこで,ドリルの切れ刃を2枚刃から3枚刃に変更し,3枚刃ドリルによる切削力変動の抑制について調査されていました.


年次大会3日目は,企業展示や学生交流会にも参加しました.

企業で働いている技術者の方や他大学の学生と交流し,有意義な時間を過ごすことができました.

また,発表以外に観光も楽しみました.

「なまはげ館」でなまはげを試着する山下


「潮瀬崎」にある「ゴジラ岩」
ゴジラに見える、、、?

懇親会ではたくさんの地酒を楽しみました.
今回の発表を通して,それぞれの良い点・悪い点が分かったので次の発表では今回より良い発表ができるよう,ブラッシュアップして研究を進めたいと思います.

記事
山下,吉田