リメンバー 石井紘基

故石井紘基議員の存在を過去のものにしてはならない。石井紘基の業績と遺志を伝えていくBLOG

日本の経済成長率は公的支出の反映

2005年05月07日 | 石井紘基の著書から
「骨太の方針」は、不良債権処理を行う「集中調整期問」は経済成長率がゼロまたは一%程度にとどまらざるをえない、と述べている。この「構造改革」と経済成長率との関連には矛盾があることにも触れておかなければならない。

この辺の記述は、「集中調整期間」中は高い経済成長が望めないことを、あらかじめ断っておくつもりであるためのようにも見えるし、逆に公共投資とは別の形で需要政策をとり続けることによって現状の国内総生産〔GDP)水準の維持を宣言する意図のようにもとれる。いずれにしても理解困難である。

後にGDPと市場経済との関連において述べるとおり、わが国のGDPはほとんど政府支出の反映という性質を持っている。したがって経済成長率を左右する要素はほとんど公的支出にかかっている。
一方で小泉政府は「新規国債発行を三〇兆円以内」に抑えるほか、公共投資予算等の削減を打ち出している。

また、郵政をはじめ特殊法人等の「民営化」を実行すれば政府の予算支出はさらに減少するはずである。全般に、民営化を含め、構造改革の成果は当面強い「デフレ」要因となる。

こう考えると、「成長率ゼロまたは1%」という期待はどこから出てくるのだろう逆に、政府予算規模の水準を維持するとすれば、それは財政の構造改革との矛盾を来す。

はたせるかな昨年11月五日、「骨太の方針」からわずか四カ月で内閣府は平成13年度の成長率見通しを、プラス1.7からマイナス○・9に下方修正した(もっともこれは予算規模の縮小からきたというより、構造改革の迷走によるものであろうが…。

もし本当に「民需主導」、すなわち経済の資源を行政の分野から市場に向けて大規模に移転するのであれば、わが国の中央政府支出(260兆円を当面の三年ほどのあいだにせめて米国の国家予算並み(190兆円)の規模に縮小するべきであろう。

そうなれぱ、市場経済体制が形成されるまでの「革命」期間におけるGDPは大幅に縮小し、成長率は大幅なマイナスになるはずだ。成長率はGDP数値の対前年度比であるから、大規模予算の配分で国民生活が維持されるわが国のような官制経済体制下では、成長率は必ずしも経済の実態を反映するものではない。

したがって、「骨太の方針」が成長率にこだわるのは自家撞着である。財政規模の縮小は当面、必然的にマイナス成長をもたらすのがわが国のシステムなのであるから、そのことを明確にしたうえで改革に着手しなければ、それは生きた市場のマインドに大きな打撃を与える。

この点について小泉氏は理解を欠いている。小泉氏はむしろ、構造改革の期間中は財政規模を大幅に縮小し、それに連動して成長率が下がること、そしてこれは景気の実勢を反映するものではないことを明確に主張すべきなのである


ー日本が自滅する日ー 序章より