おぐりクリニック

眼科、アレルギー科、漢方外来

ICL, IPCL (眼内コンタクトレンズによる近視治療)の医学的合併症 ①

2022-11-25 | 日記

今回は、ICLを使用する近視手術での医学的合併症についてお話しさせていただきます。

前回お伝えした、手術は成功していても患者さんとしては満足に至らない「患者さんの満足度と、医学的成功の相違」が一番多い術後の問題なのですが、以下に記載させていただくのは純粋に「医学的」問題です。

 

□  レンズの位置のずれ

有水晶体眼内レンズのサイズと目の大きさが合わず、レンズの位置がずれたり回転して視力が低下する合併症があります。

2022年11月現在、どのような医学的検査を行っても、ICLレンズの大きさを患者さんの眼内の「毛様溝」と呼ばれる場所のサイズと100%一致を保証できる測定技術が存在しません

そのためレンズの再固定や交換のための追加手術が必要となることがあるのです。

ところが、「安全な手術と聞いていたのに、何故、再手術が必要なのか理解できない。手術の失敗なのか?」と再処置の必要性を理解いただけない方もおられます。患者さん自身の安全のための追加対応についてはご理解いただく必要があります。

また、手術後に眼の強い打撲や頭部外傷が原因で、レンズの位置がずれることがあり、その場合はレンズの再固定や抜去のための手術が必要になります。レンズがずれたまま放置すると、角膜内皮細胞の減少や感染症を生じる可能性がありますので、早期に再手術対処が必要な場合があります。

 

レンズの位置ずれは安全と言われるICL, IPCL 手術でも比較的起こりやすい問題です。

「眼内コンタクトレンズ」という人工臓器を使用する治療のため、一人一人の身体の「内部のサイズ」が100%測定できる時代となるまでは一定の割合で起こる合併症です。

特に乱視の矯正をする場合に、眼内でレンズの回転やズレが生じると視力が悪くなるため追加手術対応が必要となります。正確なデータは持ち合わせておりませんが、当院の経験では100件に1件程度のレンズ入替手術が一般的に生じていると思われます。

 

□  感染症やアレルギーなど

処方された薬の使用や術後注意事項を怠ると、手術後に感染症が生じる可能性があります。これは外科手術全ての術後に注意が必要な問題です。

適切な処置が遅れた場合は視力障害が生じる可能性があるので、感染症が疑われる症状(痛み、腫れ、強い違和感、視力低下、かすみなど)があった場合は直ちに治療を受けた施設にご連絡ください。

またアレルギー反応が起きた場合は薬や軟膏のご使用を中止し、直ちに治療された施設にご連絡下さい。

 

術後合併症の中でも感染症の一つである「眼内炎」は数万件の手術で1件程度は生じる可能性が言われている重篤な合併症です。と言いますのも。術後の視力障害に繋がる可能性が高いからです。

比較的高齢の方が対象となる白内障手術では5,000件に1件の眼内炎の発症確率が知られています。これに比較すると比較的若手の方が対象となる眼内コンタクトレンズでは発症率は低いと言えます。

 

いずれも、数少ない合併症であっても後遺障害を残さないために、術後の指示された薬の使用や定期健診はお守りください。自己管理不足による不要な合併症を生じないようにご注意いただきたいと思います。

 

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桐谷美玲さんが受けた「ICL」手術の問題

2022-11-21 | 日記

モデルで女優の桐谷美玲さんが公式インスタグラムで、「もともとの視力は0.06でコンタクトやメガネが無いとなにもできなかったの。1週間後の検査では1.5まで回復していました」と、手術が無事に成功したことを報告されています。

前回の当院の配信では、有水晶体眼内レンズ挿入術の目的は、眼鏡やコンタクトレンズを不要、あるいは使用頻度を軽減することです。完全に眼鏡やコンタクトレンズを不要にすることを保証する治療ではないことをお伝えしました。

 

合併症とは異なるかもしれませんが、「患者さんの満足度と、医学的成功は必ず一致しない」点を理解されていないと、手術は成功していても患者さんとしては満足に至らない場合があります。

 

当院では、ICLImplantable Collamer LensIPCLImplantable Phakic Contact Lensの2種類を主に使用しています。有水晶体眼内レンズの利点は視力回復が早いこと、見え方の質が良いこと、強度の近視や遠視、乱視の矯正ができることなどです。

手術は角膜のふちを小さく切開し、そこから眼内にレンズを挿入します。切開部は通常、無縫合で自然にふさがりますが、1~2針縫合することもあります。手術は局所麻酔で行われ、手術時間は両眼で約20分ほどです。

 

ほとんどの方では手術翌日~3日で視力回復を実感できますが、安定するまでには約1ヶ月ほど様子見ていただくようお伝えしております。しかし合併症を生じた場合には、それ以上かかる場合もあります。

100%安全が保障される手術は存在しません

次回は、具体的な医学的合併症についてお話しさせていただきます。

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桐谷美玲さんが受けた「ICL」手術とは?

2022-11-09 | 日記

通常、近視、遠視及び乱視は、眼鏡やコンタクトレンズ、またはレーシックに代表されるレーザー手術などで矯正します。

レーザー手術は軽度から中等度の近視、軽度の遠視及び乱視に効果的ですが、

角膜を「削る」処置であり、すべての患者様がレーザー手術に適しているわけではありません。

 

一方、ICLは手術名ではなくスターサージカル社から発売されている有水晶体眼内レンズの「商品名」です。

例えば、

 

自動車       ―  トヨタ     ―  クラウン

有水晶体眼内レンズ ― スターサージカル ―  ICL

 

というイメージで捉えていただければ良いかと思います。

 

ICLを使用する近視手術では軽度から強度の近視、遠視、乱視の矯正が可能です。

眼内レンズ(IOL)は、以前より白内障手術で取り除いたにごった水晶体の代わりに眼内に挿入する方法などで眼科治療に使用されてきましたが、

有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOLとも呼ばれます)は、健康な水晶体を残したまま眼内に挿入できるようデザインされた眼内へ移植するレンズです。

有水晶体眼内レンズ挿入術の目的は、眼鏡やコンタクトレンズを不要、あるいは使用頻度を軽減することです。

視力を改善して快適に生活していただくことを目的としています。視力の「数値を保証」する治療でもありません。

完全に眼鏡やコンタクトレンズを不要にすることを保証する治療ではありません。

 

「メガネが一定必要であれば、手術を受ける意味がないではなか?」を診察室で質問される方が時々おられます。

「患者さんの日常生活の快適度が高まるが、人によっては必要に応じてメガネを使うほうが快適な場合がある点を理解いただけない方」はこの手術には向かないと思われます。

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桐谷美玲さん、ICL手術の詳細を報告

2022-11-05 | 日記

モデルで女優の桐谷美玲さんが公式インスタグラムを更新し、「目のハナシ」として、近視治療手術・ICL(眼内コンタクトレンズ)を受けたことについて記載されました。

「ICL術後1週間検診も無事終わり、順調です」

「もともとの視力は0.06でコンタクトやメガネが無いとなにもできなかったの。1週間後の検査では1.5まで回復していました」と、手術が無事に成功した喜びを報告されました。

桐谷さんが受けられた眼内コンタクトレンズ手術!

「眼内コンタクトレンズ(有水晶体眼内レンズ)」とは、小さなレンズを眼の中に挿入し、近視・遠視・乱視を矯正する手術治療です。
眼の中に入れたレンズは基本的に交換の必要がなく、長期にわたり良好な視力を維持することができます。
当院では「ICL(Implantable Collamer Lens)」、「IPCL(Implantable Phakic Contact Lens)」と呼ばれるレンズを使用します。

 

桐谷美玲、赤裸々に明かす「目のハナシ」ICL手術の詳細を告白

治療の詳細はコチラをご参照下さい。

この近視手術は、レーシックを超える安全性の高い治療として世界的な拡がりを見せております。
既に日本でもレーシックの手術件数をICLが抜いていると報告されています。
 
では、全く合併症の心配はないのでしょうか?
 
次回はこの近視手術についてのメリット、デメリットをお伝えしたいと思います。
 

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高血圧と目の病気〜漢方薬の活用②

2022-11-01 | 日記

みなさん、こんにちは。

前回、西洋医学の処方は、ほぼすべてが症状を一時的に抑える対症療法であり、例えば血圧の数値を下げることは出来ても、カラダにとっては良くない血流低下による認知症などの副作用に繋がる可能性をお伝えしました。

高血圧治療に良く用いられる漢方薬に、黄連解毒湯という薬があります。

 

血圧そのものを低下させる作用は、現代薬の降圧剤には及びません。漢方薬は高血圧に伴うイライラやのぼせ、ほてり、肩こり、不眠などの不快な症状を改善することに役立ちます。血圧計のない時代からこうした高血圧の症状に対して使われてきています黄連解毒湯は、二重盲検法比較試験という臨床試験で、不快症状を抑え、中等度以下の高血圧症状の人の血圧を安定させる効果があることが認められています

 

黄連解毒湯は、顔面が紅潮したり目が充血している人を対象に用いられます。このタイプの方は、体内に余計な熱がこもっているものとされ、それがイライラやのぼせに結びつくと考えられてきました。この余計な熱とは、活性酸素のことと考えられるでしょう。すなわち、活性酸素の増加で血液がドロドロになった状態とも考えられます。

 

黄連解毒湯の作用は、体内にこもった熱を冷まして、消炎、鎮静、解熱することであると考えられています。この熱冷ましとは、活性酸素を減らして、血液ドロドロを改善する効果だと思われます。

 

西洋医学の対症療法とは異なる作用と目的を漢方薬が持っていることを理解頂けますでしょうか?

 

漢方薬は病名に対して処方するのではないため、黄連解毒湯は高血圧の他、二日酔い、不眠症、胃炎、胃酸過多、皮膚の化膿症、動機などにも有用です。

 

活性酸素を減らす効果が期待出来るとしても、活性酸素が増えたあなたの生活習慣への対応は行うべきと思いますが、血液の状態改善が緑内障などの眼疾患への効果も期待出来ることを知って頂けると幸いです。

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