弁理士近藤充紀のちまちま中間処理7
拒絶理由通知
引用文 献1~3に記載された触媒は、本願発明でいうところの「アルカリ処理」を活性炭に行っていないものの、最終的にはアルカリ金属やアルカリ土類金属の担持を 行うのであるから、最終的に製造された「物」としては本願発明の触媒と差異が ない。
意見書・補正書
旧請求項1において は、「アルカリ処理する」と記載されていたが、この「アルカリ処理する」とは、段落番 号[0006]に記載されるように、KOH、NaOHをはじめとするアルカリ金属水酸 化物の水溶液、またはCa(OH)2、Mg(OH)2等のアルカリ土類金属水酸化物の 水溶液に活性炭を浸漬することを示している。すなわち、「アルカリ処理」は「アルカリ 金属による処理」を意味するものではなく、「アルカリ性水溶液による処理」を意味して いる。また、アルカリ性水溶液による処理がなされた後の活性炭を水洗しているので、こ の処理に起因して、アルカリ金属が活性炭に担持されることもない。
旧請求項1では、「アルカリ金属を担持する」ことが記載されていたが、この「 アルカリ金属を担持する」とは、段落番号[0013]に記載されるように、「アルカリ 金属の硝酸塩等の水溶性化合物の水溶液に活性炭を浸漬し、アルカリ金属を活性炭に吸着 担持する」ことを示している。
旧請求項1においても、「アルカリ処理する」ことと「アルカリ金属を担持する」こと とを明確に区別していたが、「アルカリ」という文言が共通し、これら全く異なる処理を 同一の処理として誤解され易いこととなっていたため、これらの区別をより明確にするた め、新請求項1では、「アルカリ処理する」ことを、「活性炭をアルカリ金属水酸化物ま たはアルカリ土類金属水酸化物の水溶液に浸漬した後、水洗し、乾燥した」と言い換えた 。
本願請求項1によれば、活性炭をアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化 物の水溶液に浸漬し(以下、この操作をアルカリ性処理と称する)、その後、活性炭に貴 金属とアルカリ土類金属とを担持させており、活性炭に対してアルカリ性処理を行うこと によって、活性炭中の官能基を除去する処理を行い、これにより、アンモニア合成につい て高い活性を得ることができ、かつ、850℃以上、24時間以上という過酷で、かつ、 危険な処理条件を避けることができる。
引用文献1~3は、いずれにも、本願請求項1における「アルカリ性処理」を行っ ていない。したがって、引用文献1~3を組み合わせたとしても、本願請求項1における 「アルカリ性処理」を行わないので、活性炭中の官能基を除去する処理がなされず、「ア ンモニア合成について高い活性を有する触媒を製造することができる」という本願請求項 1の効果を得ることができず、「アンモニア合成について高い活性を有している」という 本願請求項の効果を得ることができない。
結果
特許査定
拒絶理由に対してうまく切り替えることができた、、といったものではなく、明細書中の誤解を与え得る記載について、指摘して頂いた、と思ったほうがよい件である。
「アルカリ」のほか、「担持」の表現にも問題があったので、それも当初明細書の記載に基づいて補正した。
アルカリ金属のほか、アルカリ土類金属も例示してあったので、問題なく誤解は解消した。ただ、アルカリ性ではなく、塩基性と表現しておけば、アルカリ土類金属以外の他のものも権利範囲に入れることができた。その点は、反省しないといけない。