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メキシコ湾の危機――日本の食糧問題に波及へ

2010-06-29 | clipping
「淺川嘉富の世界」へようこそ|メキシコ湾の危機 人類史上最悪の環境災害発生の恐れ 2010/06/02 
http://www.y-asakawa.com/Mssage2010-1/10-message34.htm


米南部メキシコ湾の原油流出事故で、国際石油資本(メジャー)、英BP社 のサトルズ最高執行責任者(COO)は29日、記者会見し、流出阻止に向けた新たな作業が完全に失敗したと述べた。

それを受けて、5月30日、ブラウナー米大統領補佐官は、メキシコ湾で起きた原油流出事故について流出は8月まで続く可能性があるとの見方を示した。これによって、オバマ米大統領が懸念していたとおり、生態系など周辺環境への深刻な影響が懸念される「米史上最悪の原油漏れ被害」をもたらす可能性が一段と大きくなってきた。

それに加えて、日本のマスコミは報道していないが、さらなる不安な点が幾つか出てきたので、お知らせすることにする。

■別の流出箇所ありの発言

① 最初の一つは、アメリカのテレビに出演したBP社の技術者が、「石油の噴出漏れが発生しているのは、今回の事故現場だけでなく、実は、現場の近くにもう一カ所ある」と、発言している点である。

今回の流出量そのものが実際は発表されている数値(1日5000バレル)より多いのではないかという点については、これまでも色々な人々から懸念の声があがっていたが、米地質調査所(USGS)が27日発表した推計によると、1日当たりの流出量は1万2000─2万5000バレル(190万─397万リットル)と、米国史上最悪の規模となっている ことが明らかとなった。

さらに今回のテレビ発言が事実だとすると、全体の流出量は、4万バレルを上回る可能性が高くなってくる。それではこれらの流出した膨大な量の石油をどう処置するかと いうことであるが、ここにさらなる問題点があるようである。

■薬剤による2次災害の発生の懸念

② ロシア天然資源環境省が発表したレポートのなかで、「BP社の原油流出は、北米大陸の東半分のすべてを "完全な破壊" に導くだろう」と述べているが、それは、BP社がメキシコ湾に流出した原油を分解するために使っている、何百万ガロンもの「 コレキシト9500 (Corexit 9500) 」という名の化学分散薬品に問題があるからである。

現在、PB社が原油流出現場で大量に使用しているこの「 Corexit 9500 」という化学分散薬品には、石油より4倍は強いと言われている強い毒性( 2・61ppm )があるだけでなく、この薬剤の分子がメキシコ湾の暖水と混ざることによって、「相転移」という 化学的変化を起こして、海だけではなく、陸上にも悪影響を及ぼすことになるようなのである。

この相転移現象は、液体をガス状に変える作用があ り、気化したガスは上昇して雲に吸収されることになるため、これから先、地上には「毒性を持った雨」が降り注ぐ危険性があるというわけである。

すでにアメリカ東部の海岸地帯では、黒い雨が降る現象が発生しているようであるが、これから先、ロシアの環境省が懸念しているようにメキシコ湾で大量の「 Corexit 9500 」が撒かれることになると、今年は、史上例をみないほどの数、14-23の熱帯暴風雨の発生が予想されているだけに、アメリカ東部に住む人たちは危険な状態に晒(さら)される可能性が大きくな ってくる。

アメリカ国民はこうした情報を知らずにいるのだろうか。杞憂(きゆう)に終わればよいのだが。
 
■ノルウェーでも原油漏れの可能性

③ 石油開発会社による石油漏れ事故は、アメリカだけでなく、ノルウェーでも発生しそうである。というのは、ノルウェーの国営石油会社 Statoil 社が、21日、破裂防止装置(ブローアウト・プリベンター)の2つのバルブのうちの1つに過度な圧力の変化が起きた後に、従業員たちが北海のガルファクスCプラットホームから避難したと発表しているからである。

これを受け、環境保護団体ベローナは「状況は非常に危機的だ」と述べ、メキシコ湾での BP 社の石油リグ爆破事故による原油流出の環境災害に続く災害の危険性を強調している。今回事故のあったガルファクスは北海のノルウェーの Tampen 海域にあり、1日当たりの石油の採掘量は78,000バレル、ガスは1年で約4億2000万立方メートルとさほど多くないので、メキシコ湾ほどの被害が出る可能性は低いが、 こうした事故が続発すること自体が問題である。

今年に入ってから相次ぐ石油掘削の事故やアイスランド・中南米の噴火、ハイチやチリ、中国の地震などを考えると、地球をとりまく地殻(プレート)に大きな変化が起きている可能性を考えざるを得なくなってくる。

実はロシアのDubna大学一般・応用地球物理学講座のウラジーミル・クリヴィーツキー助教授は、 「アイスランドの火山噴火もそうした地球規模の一連の地殻変化によるもので、噴火はさらに強力になる可能性がある。隣のカトラ火山が活発化したら、同国では洪水が始まる可能性があり、それは地球全体に影響を及ぼすことになるかもしれない 」と語っている。アイスランドの氷の量を考えると不安になってくる。
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「淺川嘉富の世界」へようこそ|止まらない原油流出① 広がる不安 (1) 2010/06/24
http://www.y-asakawa.com/Mssage2010-1/10-message38.htm
 

メキシコ湾での原油漏れが始まってからはや2ヶ月が経過、大量の原油が今もなお流出し続けている。イギリスの原油メジャーBPは流出拠点の近くに、新たに2本の油井(ゆい)を掘り埋蔵されている原油をそちらから抜き取ろうとしているようであるが、思うようにいくかどうか不透明で、8月にならないとその成果は分からないようである。

ただ、専門家の意見を聞くと、流出の量を減らすことは出来ても、完全にストップすることは難しいようである。それどころか、新たな油井の掘削工事で今回の事故に似たような流出事故が起きないかが懸念されている。というのは、今回事故を起こした油田そのものに問題があり、 今回の事故の数日前に、BPの技術者から「悪夢の油井だ」という警告が出されていたことが、明らかになっているからである。

今回の事故を調べている内に疑問に思ったことが2点あった。その一つは、事故の原因である。問題の油井では掘削工事が最終段階を迎えていた4月20日に、海上の掘削基地で爆発が起き、油井と基地を結ぶパイプが破損し、原油流出が始まった といわれているが、そのパイプの破損がなぜ起きたのかが、今一つはっきりしないのだ。

6月17日の米下院エネルギー商業委員会の公聴会における他の石油メジャーの代表者の発言を聞いていると、BP社はコスト削減と工期短縮の ために、危険度の高い簡略設計を採用した結果、爆発性のメタンガスが油井を通って上昇し、それに点火して爆発事故が起きたようである。

しかし、BPの技術者が「悪夢の油井だ」と発言していた点を考えると、簡略設計の採用だけでなく、油田そのものがこれまでのそれと比べて、危険度が高い油田であったのではないかという可能性が浮かび上がってくる。

アメリカのユーチューブなどで流れているニュースを見ると、今回の油田掘削は、掘削深度が非常に深い超深度油井であったために、メタンガスの圧力が極端に高くなり、コントロール不能になったようである からである。

平均的な油井の圧力1500psiに比べて、事故を起こしたBP社の油井の圧力は20000~70000psiというから、通常の油井にかかる圧力の15倍から45倍の圧力がかかっていたことになる。これは驚くべき数値で、掘削深度がいかに深いかを物語っている。こうした超深度油井の開発はかつて旧ソ連邦で行われていたが、危険度が大きいため今は全面的に中止されている。

事実、現場では、さまざまな色の泥が勢いよく吹き上げられていると報告されており、これは、採掘が原油の無機的な生成が行われている地殻内部の高温・高圧の層にまで達してしまった可能性が大きいことを示している。となると、新たに掘削している油井にも同じような危険性 がありうることになる。

さらには、超深度油層の下面は上部マントル層を覆っている地殻に接していることから、近くにあるメタンガスが埋蔵された地層を破壊する危険性もある。もしも、そのようなことが起きれば、原油の流出どころか、 ガスによる巨大な津波の発生を引き起こす可能性もあり、容易ならざる事態になってくる。

BP社が世間の風当たりの凄さに、焦って無理な流出止め工事を進めると、そういった取り返しのつかない結果を産むことになるので、BP叩き も善かれ悪しかれである。

第2の疑問点については次回で述べることにする。
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「淺川嘉富の世界」へようこそ|止まらない原油流出 ②  広がる不安 (2) 2010/06/25
http://www.y-asakawa.com/Mssage2010-1/10-message39.htm


第2の疑問点は、本当の流出量はどれほどかという点である。

当初、BP社が発表した1日の流出量は160キロリットルであった。その後事故に対する関心が深くなるに連れ、そんな量ではなさそうだという観測が広がり始め、6月に入ってマスコミの記事には、推定数値として5600~9500キロリットルという 大きな数字が登場するようになってきた。

ところが、数日前のアメリカのABCテレビを見ていたら、BP(British Petroleum)社が改めて発表した数値は15、000キロリットルであるという衝撃的な数値が報道 されていた。この量はドラム缶に置き換えると、7万5000本分に該当する。最初の発表数値に比べると、何と100倍もの量である。

一方原油の吸い上げ量であるが、こちらは1日当たり2900キロリットルが限界であるようなので、流出量の20%しか回収出来ていないことになる。その差の1万2000キロリットルという数値 が、1997年のナホトカ号重油流出事故の2倍に匹敵することを考えると、いかに 今回の事故の流出量が多いかが分かろうというものである。
 
■2年前に予見された流出事故
 
これだけの量が毎日流出しているわけであるから、広大なメキシコ湾といえども、このまま流出が続くようなことになれば、湾全体が原油の油膜に覆われる日が来るかもしれない。実は、ちょうど今から2年ほど前に沖縄の講演会に出かけた際に、現地のスタッフの一人の女性がこんな話をしてくれたことがあった。

彼女が夜半に肉体離脱して導かれた先はメキシコ湾上空。成層圏の高いところからメキシコ湾を展望すると、なんと海全体が赤褐色でまるで赤潮に襲われたような状況で あった。彼女は巨大な湾全体がこんな色になってしまったのは、きっと温暖化で海水に異変が起きて赤潮が発生してしまったに違いないと 考えた。その時には、それ以上のことは思いつかなかったようである。

ところが今回の原油流出事故が起き、私から送られたルイジアナ海岸に押し寄せた油膜の写真(上段に掲載)を見て、自分の見せられた赤潮は、実は今回の事故による油膜の広がり だったのではないかと、思うようになったという。

彼女がそうした情景を見せられたのが2年前であることを考えると、それは、この先2年後に、我々が赤褐色の油膜に覆われ、死の海と化したメキシコ湾の姿を見ることを暗示していたのかもしれない。 あるいは原油流出が引き起こした赤潮の広がりであるかもしれない。思い過ごしであれば幸いだが、その可能性は決して小さくはない。

いずれにしろ、我々は今回のメキシコ湾原油流出事故は単にアメリカの問題だけでなく、人類全般に関わる一大事であることを認識しておく 必要がある。日本人やアジア人にとってそれは決して対岸の火事では済まされないからである。

これから先、夏場に向かって発生したハリケーンがメキシコ湾上空を横断し、原油成分やその分解剤である強い毒性を持ったコレキシト9500が、アメリカの沿岸地帯に降り注 がれるようなことが起きたときには、世界有数の穀倉地帯に与える影響は甚大で、それは即、我が国や世界の食糧問題に波及するからである。

彼女がメキシコ湾の惨状を見せられた後に幻視したのは、中東のある国の砂漠化した都市のヴィジョンであったようだが、それは一体何を暗示しているのだろう? そう遠くないうちに、我々はその答えを知ることになるのかもしれない。