(2日目)
何度か目覚める度に、シュラフの中で左足を動かして確認。
・・・何とか動きそうだ、時間を掛けてゆっくり降りてみよう。 頼むよ!
起床AM3:30 まず一人、「いやぁー、まだ吹雪いているよ。
今日は下山かなー」
私、「星も街の明かりも見えますよ。風も治まったみたいで
これなら山頂、行けるんじゃないかなぁ~」
私が食事を終えて外から帰ってきた感想に山小屋が慌ただしい動き。
左の中年男女はクライマーの方で、かなりの
“甲斐駒ケ岳”精通者らしく皆さんの一番ラッセルを引き受けて
日の出前に出発。
私のスキーウェアーも変だけど、右のお兄さんはジーパン姿で
登ってきたらしくこれまた変! 強者? それとも私と同じ初心者?
寝具ナシ&コンビニおにぎり、皆さんとも会話なし。
貸してくれた毛布を敷いているとはいっても
靴下は乾かしているみたいで掛けたダウンジャケットから
色気の無い素足が“こんにちは”!
私といえば「足の痛みを引きずって何時間掛かるの?」
「あの連続するハシゴはどうやって降りるの?」
全く予想がつかない。(不安)時間だけは十分にある
・・・と思う。思おう。思った時。思えば。思え。足りてくれぇ~。
まだ明け暮れぬ降りしきる雪の中へ、心配を抱えつつ出発。
↑引きつり顔
私の進む方向はウサギの足跡すら無く、
昨夜積もった真綿のようなフカフカ雪一面。
両手にすくって空に舞い上げれば、
韓国映画 “冬のソナタ” ヨン様&チェジュー姫
・・・「カット、カーット!」
ラッセル、ヒザ上。
この辺が道だよね?・・・ザザー、スリップ!
あっ、失敗してもうた!
ザザー、アー、落ちる!
細い木が目に! 腹ばいにならなきゃ!
止まれ! 捕まえた! 絶対離さないゾ!
折れるなよ! と、止まったー!! ・・・滑落5m。
運が良かった! ココに小さくても木があって。
・・・この木を超えたら、ゾーっ! かなりやばかったかも!(ふう~っ)
滑った跡を見上げて・・・後の人にバレばれ、格好悪りー!
・・・登らなきゃ! スポッ! ストックが何の抵抗感もなく
沈みにぎった柄を越えてヒジまで埋まっても、まだ底に届かない!
エー、うっそー、まじぃー!
痛ッ、痛痛痛 登り返しが30mにも長く感じ、
・・・やっぱりこの足は無理なのか?(弱気の虫)
手足を、もがくように、やっと登り返して、下ること数分
・・・道が分からない!(ドキドキ)
・・・落ち着け!(バクバク)
人生の“マサかの坂”を越えたのか?
このまま下ると万が一ってこともあるぞ!
・・・完全に明るくなるまで待つんだ!
(ハラハラ)
薄暗いとはいっても、風もガスってもないから視界はきく!
・・・早く明るくなれ!(イライラ)
遠くを血眼のように、下は?・・・無い。
(落ちた地点に戻ったし、枝道はなかったはず!)
振り返って上は?・・・無い!
(頭によぎる遭難の文字、がーん!)
深呼吸1つ。 “生涯の伴侶”と一緒?
漫画サザエさんで波平がオデコに乗せた眼鏡を探すように、
案外と探し物は近くにあるもので
ふと目の前に“白く色あせた細いテープ”が、雪の中からピラピラ。
・・・あった! ふぅ~、安堵。
帰路を発見したぞー! (映画 八甲田山より)
ハシゴは後ろ向きに下りると、ヒザが曲がらないのが幸いして、
グイっと足を伸ばすと一段飛ばしでガンガン距離を稼げる。
・・・な~んだ。(ふん、ふふん!
♪鼻歌まじり♪)ハシゴちゃん、カモ~ン!
下からハシゴを登ってくるのは“熊”?
昨日夕方近く、小屋に登ってきた
おじさん、「下で、“こーんな”大荷物を担いでいる若い単独女性を
追い抜いたんだけど、もう夕方だし、この雪で大丈夫だろうか?
小屋人さん、チョックら見てきてあげないと、俺、心配だよ。」
小屋人、「そんな大荷物だったらテントが入っているよ。
それぐらいで迎えに行ったら小屋人は勤まんないねぇ。」
(うんうん。確かに。)
と心配していた女性かな?
私、「大丈夫だったー? 小屋で心配していたんだよー」
女性、「わっ、びっくりしたー!
下も結構降りましたけど、大丈夫でしたよ。」
私、「じゃあ、気を付けてね。」
女性、「トレース、ありがとうございます!」
と、さわやかにニコニコ笑顔。
送り出して振り返ると、まんマル姿に、まんまる大荷物。
・・・女性は山で凍死しないはずだ。(笑)
♪じ~んせーい、楽ありゃ、苦~もあるさー♪
(水戸黄門より)
五合目の廃屋前から暫くの登り
・・・これは辛い、辛い、辛―い!!痛―い!
フーフー、痛―い!
ヒーヒー、痛―い!
ゼーゼー、痛―い!
こんなんじゃ、山頂なんて到底無理だったね。こちらで大正解。
七転八倒しながら気合で降りました。
ついに追っ手の影がチラチラ。
箱根駅伝、山下りの選手みたいに、何クソー、抜かれるものか!
・・・かなりガンバッタけど
私、「どうぞお先に。 山頂へ行かなかったの?」
ジーパン兄さん、「靴を間違って、凍っているんです。」
ハイキング靴にアイゼン? ・・・よく登ったもんだ。
ジーパン兄さんの姿を追えずに視界から見えなくなると
目標を無くしピンと張り詰めていた糸が切れた感じになっては、
些細なところで転んで 痛―い!
アイゼン着けた方が良いのかな?
休憩しては・・・ぼーっ。まだ雪降ってりゃぁ~
フカフカの落ち葉に積もった雪はヒザに優しいと思ったものの
簡単に足を取られて 痛―い!
トボトボ。こんなにザック、重かったっけ?
肩にズッシリ、やけに重いなぁー
“砂かけ婆婆ぁ&子泣き爺爺ぃ”が乗っているのかな。
最後は夢遊病者みたい? 神社のヒシャクで顔を洗い
・・・さあ、無事の下山を報告して、山の神様? お礼するか。
(4時間って標準タイムだったりして?)
惨敗し打ちひしがれて見上げた“甲斐駒ケ岳”は
荒れ模様のような黒い雪雲で姿を見せず、
山頂を目指した方達の無事も思い・・・山はデカイなぁ~
「誠に恥ずかしながら、
只今帰って参りました!」
(小野田 少尉より)
私は誓った。この言葉は嫌いだけど、あえて使おう。
きっと!必ず! 近日中に“リベンジ”するぞ! と。
♪いつかは、おまえを~、落としてみせーる♪
(世良正則&ツイスト “ひき金”より)
駐車場も銀世界!
皇太子様、登山記念碑を拝見すると、
1日目・・・七丈小屋。
2日目・・・頂上を越えて長衛小屋。
3日目・・・仙丈ケ岳を日帰りして帰京。
健脚だなぁ~。夏山と言え、私は半分も及ばないのか。
やるじゃん“皇太子様”!でもドコで練習しているの?
皇居の中にプールが有ったり、走ったりしているのかなぁ?
昼前か、さぁ~これからどうしよう。
頂上に行くつもりで下山は夕方か明日を考えていたから
車内の食料は どれどれ。
ビール、おにぎり、パン、みかん、ラーメン。
・・・つまみが無いよ、買出し行かなきゃ。
それと温泉で頑張ったこの足を労わってあげないと
・・・ 今週はババちゃんの誕生日かぁ。
家の近くにも温泉はあるし、今だと夕方には帰れるよな。
よし。ココは小春と温泉へ連れて、晩飯食べて、御機嫌を上げようか。
♪プルルル~♪
ババちゃん、「あ~ら、 生・き・て・た!」
(恐―い)
びゅー。私の心臓が、眼を吊り上げた
雪女(ババちゃん)の吹き出した霊気で
たちまち凍りつく私!
・・・今晩、家で“凍死”しそう。(笑)
黒戸尾根ルート 敗退
1日目・・・登山口(6:00)-七丈小屋(11:30)
2日目・・・七丈小屋-登山口 4時間
登山口 駐車場あり
水洗トイレ 冬期閉鎖→国道沿いの道の駅で
(完)
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