遊亀公園附属動物園スタッフブログ

甲府市にある遊亀公園附属動物園で働くスタッフのブログです。
普段は見られない動物たちの暮らしをお届けします!

ワライカワセミのヒナを紹介します!

2016年08月22日 15時18分00秒 | 日記

皆さん、こんにちは。

リオオリンピックも閉会し、台風9号が心配な8/22(月)です。

ようやく暑さのピークが過ぎました。(・・・と信じたいものです

 

さて、ご報告が遅くなってしまったのですが、

今回は当園で初めて誕生したワライカワセミのヒナについて、ご紹介したいと思います。

 

当園では2010年からメスの「こだま」を東京都多摩動物園から借り受けし、ペアとなるオスを待ち望んでおりました。

昨年7月に埼玉県こども動物自然公園から、オスの「ひびき」を譲っていただき、晴れてペアとなりました

ワライカワセミには「ヘルパー」という立場で、自分の弟妹のお世話をする若鳥がいるのですが、ひびき君はヘルパー歴もあるとのこと

 (写真:右がひびき、左がこだま)

そして今年の6月11、12、14日に、ワライカワセミの卵がひとつずつ計3卵、生まれました

ですが、このうち2つの卵は割れていました。

ワライカワセミは通常はオスとメスで卵をあたためるのですが、今回なぜか母親のこだまちゃんは抱卵にノータッチ・・・

父親ひびき君がこの貴重な1卵をせっせとあたためていました

 

その卵が7/12に孵化しました

小躍りしたい気持ちを抑えながらも、鳥たちをおどろかさないように孵化翌日に巣箱をそ~っとのぞき、ヒナの体重測定を行ったところ、2日目で26gと、やや大きめサイズ・・・。

しかし大は小を兼ねると喜べない事態に・・・

 

実は、今回産まれたヒナは写真のとおり、足が180℃開脚してしまう『開脚症(かいきゃくしょう)』になっていました。

体重が重いと、生まれたての足の筋力では支えられず、開脚を助長してしまいます。

このまま放っておくと、一生自分の足で立てず、おなかで体を支えるため炎症を起こしてしまったり、胸の骨を変形させて肺や内臓にも影響が出やすくなってしまいます。

鳥らしい生活を送ってもらうためにも、手を加えて足を治す必要がありました。

 

ヒナのお世話はあいかわらず、ひびき君が行っており、せっせとエサを運んだり、寒いときはヒナの体を自分の翼であたためたりしています

なんとか親の元で足だけを治す試みとして、床材の変更、テーピング、横幅の狭い入れ物でヒナの足が広がらないようにするなど試行錯誤しましたが、

親からエサをもらいにくく、日に何度もテーピングの様子をみるために巣箱をのぞくので、親にもストレスがかかります。

足のケアも充分に行いにくい状況でした。

 

結局、生後4日目の夕方に、このままでは充分に治せないと判断し、完全に人の元で育てることにしました。

 

最初は開いた足を閉じるためのテーピングを行っていたのですが、不器用が災いして小さく短い足への細かい作業が上手にできず、

何度もほどけてしまったり、ダマになってしまったり、この先テーピングで治すことの長い道のりに途方にくれてしまいました。

 

そこで、なんとかテーピング以外に足を閉じる方法はないかと考えたところ・・・ありました

ぶきっちょにもできる方法が。

 

 

子供用のゆるゆるふわふわ素材のヘアゴムです。(ちなみに写真は、うちの母が孫のために100均で購入してきたもの)

ゆるいけれども、ほどよく弾力があり

適度な太さとやわらかい素材のため皮膚に負担がかかることもなく

またゴムの力によって開脚していた足が内側へ引っ張られる力がかかります

そしてなんといっても、簡単

子供の髪を結うときに、ゆるゆるでとれやすく、やっかいだと思っていたこのゴムの活用法として、最大限の力を発揮してくれました

感謝です

 

実際に数日間、このゴムを装着していると・・・数秒程度なら、ゴムをはずしても自力で立てるほどに足がまっすぐになってきました。

ヒナの成長に合わせてふわふわゴムも大きいものに換えた際に長時間ゴムがはずれてしまっていて、また立てなくなることもあったり・・

やわらかい靴下で体幹のバランスをととのえたり・・・

飼育箱も少しずつ、体に合わせて作り変えたりと、試行錯誤の結果。

 

なんとかゴムによる矯正なしでも、自力で立てるようになってきました。

まだ右足が弱いのですが、一人で立てます。

羽毛もしっかり生え、どこからみてもワライカワセミと分かる風貌になりました。

 

止まり木の練習も行い、少しなら止まり木にも止まれるようになりました。

 

そして先日、小学生を対象に行った「一日獣医さん」の中で、一足早く参加者の子供たちに見せたところ、名前をつけたいといってくれました

もらった名前は「ソラ」です。

しっかりと空を飛べるようになってほしいという希望のこもった素敵な名前です。

素敵な名前をありがとう

(性別はまだ分かっていませんが、オスでもメスでも大丈夫だしね)

 

ちなみにワライカワセミって何を食べているでしょう?

実は肉食の鳥で、おとなには冷凍ヒヨコや、冷凍マウスを解凍してあげていますが、

ヒナには、小さめサイズのマウスや、コオロギ・ジャンボミルワームなどの虫をあげています。

 

現在、ソラはゲージの中で、止まり木や低い段差を乗り越えたりして、自分を支える筋力をつけながら、空いている獣舎ではばたく練習などを行っています。

一般公開がいつできるかは、まだ未定ですが、毎日がんばって成長していますので、あたたかい応援をよろしくお願いします。