今回の村上氏逮捕の一件について、有名なこちら様やこちら様にて、いろいろな裏事情を匂わせるエントリが上がっております。
緑色の方のエントリは、今までの伏字やレトリック全開のエントリに比べれば、少しは理解できる内容でありましたが、それでも普通のリーマンである当方が全てを理解できるわけでもなく、コメントできる立場でもないんですけど、違う角度から多少思うところはあります。
当方、リーマンのスタートが金融機関でして、主にＩＰＯ関係に携わっておりました。
根性なしであった当方は「生き馬の目を抜く」業界にあって心身ともに疲れてしまい、現在は某中堅企業に席を置いて“ダウンシフト”しておるのですが、その当時、社内ではＩＰＯを勧めてよい会社、いけない会社というのは選別されておりました。
先輩社員に選別理由を聞くと、頬に人差し指斜めクロスのポーズをされたり、拝みのポーズをされたりといろいろあったのですが、一回間違えて、行ってはいけない先に営業に行ってしまい、シャンデリアと動物の毛皮の絨毯がある応接に通され、出てきた社長に開口一番、「なんぼ貸してくれますの」といわれたときに、単に当時の上場可能基準を満たせば良いというものではなく、社会的に認知されない会社に行っても仕事にはならないのだなということを知ったわけです。
まあ、上記のように明らかなクロはともかく、グレーについても「行くな」という指示がありました。それは当時は聞いたこともなかったコンプラ的な観点からではなく、そこで実績を上げても、お上が上場を認めない可能性があるからという実利的な観点からではありましたけど。
その後当方がその会社を離れ、世の中は失われた15年の真っ只中に突入していったわけですが、その間に「行ってはいけない業界」の上場が相次ぎました。
たとえば（中堅の）消費者金融業界、商品先物業界、パチンコホール関係とか。もちろんこれは当時の価値観での話ですよ。
その間、どういう“規制緩和”があったか知りませんが、それでもそれらの会社は従来の上場企業に比べても会社の規模は大きく、むしろ公の場にお出ましいただくほうが良いとの判断もあったのかもしれませんし、（こういう言い方は僭越もいいとこですけど）業界として社会的意義が無いわけではないですから、それはアリだったのでしょう。
ただその後はもうアレがいいなら、コレでもいけるんじゃないか、なんて流れが出来上がってしまったような感があります。
むしろ問題はこっちの方で、業種ではなく、会社単位で「どうなの」というところがいつの間にか“候補”として浮上しはじめてきちゃったと。
そして不景気はますます進捗、「日本経済、頼みはベンチャー」状態となって、上場基準などあってなきが如し、当方が業界にいた間にその方面で名前を聞いたことがある人がいる会社などもゴール＝社会的に認知となれば、モラルの低下は、場合によっては普通の会社にも伝染するのだろうなと。
思うのは、不景気の間でも、やせ我慢、できなかったのかなあということ。
審査する側も、受け入れる側も、たぶん知ってたはずなのにね。この会社、実際どうなのよ、という話は。
不景気とそれに伴う認知問題が諸々の発端なんじゃないかなと漠然と思ったりするのですね。
上記はあくまでＩＰＯの話ではあるんですが、市場におけるいろんな不祥事から“天罰発動”に至るまでの流れを作ったという意味では大きな要因ではないかと思うのですよね。天罰発動は市場浄化の意思でもありますから。
ルールに従ってあとは自由に、というのが今の流れなのですが、「そういう噂がある会社は引き受けません」なんてルールをつくるわけにはいかないですしね。
何だかんだ理由をつけて水際でお引取りいただくのが実践的な対応なんでしょうが、目先のカネ目当てに、ルールを前面に押し出してウチが受けるなんて話になれば、それを断ることはできない。
このように事後規制社会といっても、規制しきれない部分は残ってしまう。
で、その後何かあると、“天罰”の発動になる。
天罰は爆心地近くにいると、真面目な会社も被害を被ってしまうから困るんですよ。
カネは差別しないと仰った方がいて、それはそれで理がありますけど、知ってる人が見て、天罰をくだされる蓋然性が高いと読めるところには、“非関税障壁”を設けるほうがロスが少ないことは確かなのですよね。
本人たちだってうすうす分かってるんだから。でも「ルールさえ守れば」って考えは、それに口実を与えちゃう側面もあるんですよね。
まあ、難しいところではあるんですけど、言うなれば社交場にきちんとした身なりの紳士が現れた、その人は一滴飲めば酒乱になるという噂があり、それを主催者側は聞いている。飲んで暴れたところでつまみ出せば、他の来場者は不快な思いをすることが読める状況で、さあどうするといったところでしょうかね。
（↑村上ＦやＬＤの話じゃないですよ、為念）
