神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

増本由美子句集「裏六甲」2014年7月

2014-06-25 | 句集

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏六甲すこし遅れて春の色

 

自転車をドミノ倒しに春一番

 

紅椿落ちて始まる川の旅

 

肩寄せてバレンタインの日の花火

 

いかなごのくぎ煮作りは母まかせ

 

いかなごのくぎ煮作りを引き継ぎぬ

 

雛しまふ時にやさしさ育まれ

 

村人に誘はれて摘むつくしかな

 

花の風有馬は坂の多き街  有馬4句

 

ねね橋をゆつくり渡る春日傘

 

金泉に春愁の身を沈めをり

 

剃りすぎし眉を描くも春愁ひ

 

諸々のことはさておき花人に  夙川2句

 

その中にひつそりとした花筵

 

春らんまん満を持したる初句集  亜希『俳句の時間』

  

手にふれし枝垂桜の重さかな

 

春風や前置き長き猿の芸

 

今日の日のための落花と思ひけり  神戸王子動物園2句

 

弁当に彩り添へる落花かな

 

遅桜一弦琴の聞ゆ寺  須磨

 

朧夜のハンター坂のバーに酔ふ

 

囀りのいづれが好きと問はれても

 

百千鳥気がかりなこと忘れをり

 

春愁や花屋の前を通りすぐ

 

人形の白き指先春愁ひ  淡路福良2句

 

人形座出れば港や風光る

 

 

 

 

母の日の母に看病されてをり

 

母の日やいまだにできぬ親離れ

 

手土産は迷ふことなく新茶なり

 

豆飯でしめくくりたる京料理

 

着ぬままにまた仕舞ふ服更衣

 

明易や鳥の声より早く起き

 

三十三間堂薫風千の像を撫で

 

くにうみの島引き寄せて風薫る

 

さくらんぼひとつふたつと憂ひ消え

 

篠山の妻入商家麻のれん  篠山2句

 

閉ぢられし能楽殿や蝉しぐれ

 

夜濯や今日のできごと明日のこと

 

冷蔵庫あれもこれもと孫来る日

 

冷蔵庫減量レシピ貼りしまま

 

バス停の扇子の列に加はれり

 

サングラス掛け旅人の貌となる

 

雲海を抜け雲海の上を飛ぶ

 

七月の窓に氷柱やモンブラン  スイス

 

裏窓を開ければ蛍見ゆ暮らし  美作2句 

 

今摘みし夏の蕨をおひたしに

 

空蝉や生まれ変りたきあした

 

凌霄や白き館の白き塀

 

公園に残る自転車夜の秋

 

あと一品母の十八番の胡瓜もみ

 

笑む母の遺影と語る夏座敷

 

 

 

 

爽やかや初対面にて意気投合

 

秋涼し母に試歩をと勧めけり

 

盆近し仏具の増えし荒物屋

 

輪踊りにとけこんでをり宿浴衣  奥飛騨

 

十五夜の大阪湾より飛機発ちぬ

 

澄む秋の陽関に聴く王維の詩  敦煌2句

 

葡萄棚砂漠の中にある不思議

 

秋の夜の般若の面と向ひ合ふ

 

遅れ来て秋の扇を五分使ひ

 

日程は月に合はせる宴かな

 

秋扇しのばせて行く古都の旅

 

虫の窓閉めて一日を終へるなり

 

敬老日今年の顔を撮つておく

 

萩の径いつまで続く立ち話

 

また一人生徒減りたる夜学かな

 

ハーブの香満ちたる園に秋惜しむ

 

鵙の声ふいに覚えし胸さわぎ

 

秋晴れの潮の香届く札所かな

 

軒ごとに句のある街に秋惜しむ 伊賀上野

 

新米の水ひかえめに炊きにけり

 

僻地にて暮す決意の冬支度

 

木守柿峡に一軒だけの家

 

花器に入れ言ふこときかぬ庭の菊

 

澄む秋の水琴窟や月照寺  明石3句

 

子午線の古びし標柱冬隣

 

菊花展気ままに咲くを許されず

 

 

 

 

住む国の風習に慣れ七五三

 

この風邪は長男一家の置土産

 

時雨るると出先で聞きし予報かな

 

黙々とバス待つ列の息白し

 

かけ声を出さねば立てぬ炬燵かな

 

着ぶくれの癖は地震にあひてより

 

着ぶくれの母の支度に手を貸しぬ

 

枯芒耐へねばならぬことのあり

 

冬の日の室にさし込む石舞台  明日香村

 

酒蔵のまちの旧家の冬座敷  伊丹

 

冬凪や万葉歌碑は海を背に  相生

 

短日の芝居見物昼の部に

 

友よりの電話湯冷めの予感して

 

暖房をほどよく効かせヨガポーズ

 

なぐさめは言はず熱爛すすめけり

 

ルミナリエ神戸の街の聖樹とも

 

ルミナリエより始まりし年忘れ

 

屋根に雪載せて来られし通夜の客

 

家中の時計合はすも年用意

 

賀状にてつながる縁途絶えけり

 

初詣干支の土鈴を買ふならひ

 

豆撒や愛嬌のある鬼の面

 

いつせいに山眠りをり裏六甲

 

 

 

 あじさい俳句会という職場の句会に誘われて、よちよち歩きで俳句を始めました。その後高齢予備軍の遊び探しというグループの吟行に参加し句作を続け、みんな一回り年をとった現在も予備軍と名乗り年2回句会を開いています。

 その神戸RANDOM句会の句友たちがネット上で句集を出そうと決まり、私もいくつか残っている句帳の257句から100句を選んで参加させていただくことにしました。

 句集名を「裏六甲」としましたのは、俳句を始めたころに居を移した六甲山の北側の我が家から眺める山々が、ほんとうに眠っているようだったり、笑っているようだったり、季語のとおりのうつろいを身近に感じているところから名づけました。

 お世話になった句友のみなさんに、いい思い出を作っていただき心から感謝いたします。

 

  平成26年夏                                 増本由美子

 

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句集 裏六甲

著者:増本由美子

msmtlana@yahoo.co.jp

Title:Fuhko Kawase

Illustration:Junya Daisaku 

2014年7月1日

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com


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