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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2025=須磨浦公園桜句会

2025-04-09 | 吟行句会

春は神戸、満開の桜の下で― 

昨秋の姫路句会での希望で、第42回神戸RANDOM句会は、3,200本の桜が咲き誇る神戸市内最大の桜の名所、須磨浦公園の吟行です。

 山脈の海へと落ちて寒椿  播町(句集「水の家」)

今回の下見は、2月下旬。日陰では雪も残る小春日和。メンバーは一風幹事長、蛸地蔵さん、見水さんの3人。山陽電車・須磨浦公園駅に集合し、早速、20分間隔で運行する1957年開業のロープウェイに乗り、3分で200m上昇。続いて「乗り心地の悪さで評判」のカーレーターで2分。標高260mの鉢伏山へ。回転展望閣から神戸・明石・淡路島の絶景を堪能しました。

NHKの「ブラタモリ」ではタモリさんも山上を訪れており、スタッフの誘導は丁寧ですが、乗り物や施設は誰もが若く元気だった昭和の仕様。「皆、気は若いけどなあ。時間の制約もあるし」と、山上に登る企画はボツに。

「かわりに売店の『須磨浦山上遊園』のお土産を句会の賞品にしようか」

   

駅から西へ国道2号線沿いに歩くと、高さ約4mの五輪塔の敦盛塚(胴塚)。鎌倉時代に北条氏が平家一門を供養するために建立したといわれていますが、石塔は安土桃山時代に築かれたようです。塚は旧山陽道(西国街道)に面し、側には「須磨名物 敦盛そば」の店があります。

見上げれば、山陽電車の軌道を越えた高台の上に芭蕉や蕪村、子規と虚子、播水の句碑。

「当日は、あちこち寄らず、桜を見ながらゆっくり公園の遊歩道を歩こう」

須磨浦へ

2025年4月4日(金)、快晴。山陽電車・須磨浦公園駅に午前10時が集合時刻です。

 句会へと乗り継ぐ花の駅いくつ  つきひ⑦

…〇数字は句会での得点、は句会での特選句

つきひさんは、昨夏から故郷の岡山・美作暮らし。今日のために姫新線で移動し前泊しました。

 重機もて破壊遅日の三ノ宮   つきひ①

神戸の都心部が再整備で変わりゆくのを目の当たりに。

 何回目四月の空に決意して   一風

一風幹事長は、前日まで句会の準備や連絡でバタバタ。さすが晴れ男。今日は青空の広がる絶好のお花見日和。市バスで一の谷まで来て、公園内を歩いてチェックしました。

須磨浦に向かう山陽電車の車内に、須磨浦公園の桜まつり「敦盛桜」の車内吊りがかかっています。須磨浦公園駅に到着。この駅は掘割で2階がロープウェイ乗場。前は海。不思議な駅です。

見水さんは、少し早めに来て六甲縦走路の山道を登り、須磨浦で詠まれた句碑を見届け、一句。

 かたつむり角ふれ架橋エアポート  見水①

  蝸牛角ふりわけよ須磨明石    芭蕉

  春の海終日のたりのたりかな   蕪村

  ことづてよ須磨の浦わに晝寝すと 子規

  月を思ひ人を思ひて須磨にあり  虚子

須磨浦公園をゆく―――――――――

駅に集合

午前10時。駅前は待ち合わせやロープウェイに乗る人たちで混雑してきました。

本日の参加者は、女性がつきひさん、どんぐりさん、へるめんさんの3名、男性は一風さん、蛸地蔵さん、稲村さん、見水さん、弥太郎さんの5名で計8名。さくらさん、英さん、ひろひろさんは残念ながら欠席です。

 花を賞で友と集へる句会かな  稲村①

 花の駅海辺山の辺電車交ふ   どんぐり①

 改札を出で松並木花の道    どんぐり

 須磨の浦今日はピンクの花衣  へるめん 

 句友への追慕尽きざる花衣   つきひ②

女性3人は、さすが明るく春らしい花衣の装い。

ローブウェイ乗場の売店でどんぐりさんとへるめんさんが今日の賞品を購入し、駅前で全員集合写真(末尾に掲載)。デートの待ち合わせか、優しそうなお兄さんがいたので、シャッターを押してもらいました。感謝。今日は青空の下、須磨浦の桜をゆっくり楽しみながら、直線距離で約700m東の一の谷まで歩きます。

桜の遊歩道

普段は海辺の松林の公園ですが、今日は桜。満開一歩手前の凛とした若々しい「敦盛桜」です。わが連衆と同様、散歩するグループがちらほら。平日の午前なので、シートを広げてのお花見は見当たりません。

 海光り敦盛桜遠慮気味      蛸地蔵

 海なぎて花八分かな須磨の浦  蛸地蔵①

 ランダムの遊び探しや花の須磨  へるめん④

 須磨の浦寄せては返す春の波    稲村

 須磨の浜春のにおいを運ぶ波    稲村①

桟橋を沖に伸ばした須磨海づり公園が見えます。国道2号線とJRをくぐって行きます。

下見のとき、一風幹事長が「釣り竿を借りて、皆で釣りしよか」と遊びの案を出しましたが、「もし魚が釣れたらどうすんねん」でボツ。

   

須磨浦公園内には、1990年に発見され、「須磨浦普賢象」と命名された新種の桜があります。

神戸市内で最多の3,200本の桜から生まれた突然変異で、花は黄色。何か所かに植えられ、説明書きがありますが、黄色い花はまだ咲いていません。

 茅渟の海須磨浦公園春うらら  弥太郎

 須磨の浦桜満開青い空     弥太郎

 海眺め須磨浦公園桜咲く    弥太郎

  

 ぶらんこに揺れる大きなランドセル  どんぐり②

 満開の桜見上ぐる児の心        見水

すべり台やブランコなど遊具のある場所では、真新しいランドセルを背負った子供の写真を撮る人や、ベビーカーを押すママも。(居合わせたご家族?の写真は、プライバシー保護のため、ぼかし加工をしています)

公園内を歩いて感心したのは、こんなに広いのにゴミが落ちていないこと。トイレもきれいで、来る人のマナーがいいのか、管理が行き届いているのか、気持ちよく歩けます。

 春風に昔を語り遊歩道        一風③

 楽しみは花見の散歩ジャズを聞き  蛸地蔵

みどりの塔

「みどりの塔」までやって来ました。この塔は1954年に建てられて以来、須磨浦公園のシンボル。電車やクルマで通過するときも、必ず目にします。

 蒼穹の須磨の浦風のどけしや  へるめん②

塔の裏側の説明を見ると、1950年に始まった国土緑化のための「緑の羽根募金運動」の推進が目的。「薫風」の像の制作は新谷秀雄。塔の台座が立派なのは、戦前の戦意高揚の石塔を転用したからのよう。塔の東西に大きな石の地球を配置していますが、1995年の震災で西側の地球が転落。神戸市はそのまま残して説明版を置いています。

戦の濱碑

一の谷の手前に「戦の濱」の石碑があります。源平の一ノ谷の戦いの古戦場碑です。

 花冷や源平戦の浜辺跡    どんぐり③

 古戦場桜花爛漫諸行無常   蛸地蔵②

平家は福原を拠点に大軍を配置し、京の奪回をうかがっていましたが、源氏の奇襲により敗走。沖合に待機する軍船に逃げ遅れた忠度や敦盛ら将兵がこの地で最期を遂げます。

一ノ谷の戦いで熊谷直実に討たれた若き公達・平敦盛は、歴史上の人物というより、平家物語や能、幸若舞の悲劇のヒーロー。織田信長が幸若舞『敦盛』を好み、「人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり…」と、敦盛を討った直実の述懐を謡い舞ったことはよく知られています。

 一の谷桜が語る古戦場     一風③

 源平の戦をしのび春を行く   稲村①

一ノ谷の戦いの真相は諸説あるようですが、その後、平家は源氏に追い詰められ、壇ノ浦で滅亡。鎌倉の武家政権の時代が始まります。

 敦盛の供養の如く桜咲く    蛸地蔵②

 春風に青葉の笛が聞こえそう  稲村

須磨一の谷

午前10時50分、公園の東端の一の谷まで歩いてきました。市バスに乗車するまで30分ほどあるので、しばし休憩と句を作る時間です。

 青空の須磨浦公園花疲れ  見水

 一の谷波の音きく桜かな  一風①

 白詰草あれば四つ葉を目で探す   へるめん

 寝ころべば花ゆらぎたり須磨の浦  へるめん③

へるめんさんは。恒例の四つ葉のクローバー探しを諦め、桜の下に寝ころんでみると思わぬ景色。佳句ができました。

 この世佳し花と海とを満喫す    つきひ

 花に酔ふこの世の旅の途中かな   つきひ⑧◎◎◎

つきひさんは、本日の最高得点句!

一の谷は市バスの始終発の場所で、広い回転地があり、何台かの市バスが待機しています。

その隅に「長田神社須磨御旅所」の石碑。お祭りではこんな所までお神輿が来るのでしょうか。

 御旅所はバスターミナルたんぽぽ黄  どんぐり③

午前10時15分になりました。須磨一の谷のバス停に向かいます。

バス停の手前に一ノ谷川があります。

一の谷には、かつて須磨ベルトコンベアがありました。1960年代から40年間、鉄道を跨いで須磨桟橋まで伸び、埋立専用船に大量の土砂を積み込んでいました。

須磨の奥に広がる山々や丘陵を削って広大な須磨ニュータウンや産業団地を造成し、ベルトコンベアで運んだ土砂は専用の船に積んで神戸港の沖合を埋め立て。ポートアイランド、六甲アイランド、神戸空港が造られました。

 桟橋もベルコンも消え海のどか  見水②

20年ほど前にベルトコンベアと須磨桟橋は撤去。須磨の浦は静かな海岸に戻っています。

市バスに乗って

午前10時20分、須磨一の谷のバス停で市バス81系統に全員乗り込み、国道2号線を東へ。

 バスの中桜が咲いて色変る  一風

公園を抜けると山側はマンション、海側に住宅。震災前は山側に藤田ガーデン、海側は黒々とした古い家並みでしたが、被災して建て替わっています。

山陽電車とJRの須磨駅に近づくと店舗が並び、やがて、国道2号線から中央幹線(旧西国街道)が分かれて山側に迂回し、山陽電車も迂回。この道路の下は暗渠で千守川(千森川)が流れています。この川は離宮公園前から須磨霊泉や古い須磨の町を経てここに至り、須磨の海へ。今は車道になっていますが、左岸に現光寺、西側には関守稲荷神社があります。

 恩師宅千守川沿い春の海  弥太郎

須磨は、万葉の昔から畿内の西の果てのうら寂しい海辺として歌に詠まれ、源氏物語に描かれ、源平合戦の舞台になり、芭蕉・蕪村・良寛が訪れ、子規・虚子・放哉も句を詠みました。

市バスは国道2号線を東へ進み、JRを跨ぐ天神橋を越えます。橋の手前には綱敷天満宮の境内。大宰府に左遷される菅原道真が舟を降りて休んだ場所で、漁師たちが漁に使う綱を円形に巻いた座でもてなしたことから命名された天神さんです。須磨には道真に由来する「飛松」や「板宿」の地名も残っています。

天神橋を下ると、国道2号線は西行3車線、東行4車線に広がり、山側に離宮道。離宮道の途中に松風村雨堂があり、海側は須磨海浜公園。須磨に蟄居させられた在原行平ゆかりの地です。

俳人・永田耕衣が定年退職後に印南野から移り住み震災で被災するまで暮らした行幸町もこの辺り。須磨浦の落日を見て会心の一句を詠んでいます。

 放せ俺(わい)は昔の西日だというて沈む  耕衣

市バス81系統は「神戸須磨シーワールド」のバス停に到着。目の前には昨年開業したばかりの真新しい神戸須磨シーワールドが建っています。

初代の神戸市立須磨水族館の開業は1957年。その頃の須磨海岸は企業の保養所が点在し、浜に置かれた漁船の間で釣りや海水浴やボート遊びをする鄙びた場所。市電の終点に水族館ができ、学校から遠足で来ました。1987年に大きな三角屋根の須磨海浜水族園に建て替わり、仰向けで貝を割るラッコが人気でした。

今回は三代目。建設も運営も民間になり、シャチのショーやイルカと遊べるホテル、渦潮の大水槽などが売り物のリゾートのようですが、まだ中に入る機会がありません。

周辺にはカフェやレストランが並んでいます。

老舗の焼鳥店―――――――――――

今回の昼食会場は「鳥光・須磨本店」。創業は明治25年で133年続く老舗の鳥料理店。三宮のさんプラザの鳥光にはランチや仕事帰りに立ち寄りましたが、須磨本店は憧れの店。今回の移動のルートに引っかかったのでここに決めました。

午前11時40分、「鳥光・須磨本店」に到着。黒い重厚な構えの店。2階の個室に上がります。

部屋は格調のある和室です。席に着き、本日の会費を集め、ビールを注文して乾杯。

 

今日の昼宴に選んだのは「手羽焼きと天ぷらの御膳」。少し待って各自のお盆が運ばれて来ました。手羽焼きはその後に焼きたてを。

 炭煙る老舗焼き鳥花の宴  見水①

手羽焼き、天ぷら、刺身、そぼろ丼、どれもボリュームがあり、新鮮で奥深い味わい。

須磨の句会は18年ぶりです。

2007年の第4回句会「須磨寺かいわい雨中吟」で離宮公園や須磨寺を歩き、料亭・豊の荘で句会と宴会。当ブログには播町さん66歳の名文のまとめ、弥太郎さんとろまん亭さんの写真、連衆の活き活きした句が残されています。

 降っているいないとも見ゆ春の雨  かをる

4月下旬の小雨の中、八重桜が咲いていたのが昨日のことのよう。

今日は、さくらさん、英さん、ひろひろさんの元気な声が聞けないのが残念ですが、絶品料理とビール、花疲れで思い出話に花が咲きました。

 豊作の願いを込めて桜咲く  弥太郎①

桜が咲くと農家は忙しくなります。稲村さんの頭の中は農作業の計画でいっぱいなのでは。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、句会場に移動する時刻。

午後0時40分、昼食会終了。ごちそうさまでした。店からタクシーを3台呼んでもらい、分乗して、句会の会場の須磨区文化センターに向かいます。

この辺りの街は普段通ることがありませんが、古い住宅地なのにどの家も新しい。震災で被災し建て替えた家ばかりのようです。

花の句会―――――――――――――

午後0時50分、須磨区文化センターに到着。一風幹事長が事務室で手続きし、予約していた4階の貸会議室405号室を開けます。会議室405号室は、20名収容のゆったりした会議室です。

午後1時00分、8人分の席を配置し、各自席に着いて5句を完成させ短冊に書きます。提出期限は午後1時30分。

 

集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。

その間に一風幹事長が希望を聞いた飲物を自販機で購入して配付。つきひさんから差し入れのお菓子、美作銘菓のサブレ・山脈(やまなみ)と羊羹・高瀬舟を配っていただきました。

午後1時45分に一風幹事長が事務室で選句表を人数分コピーして全員に配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者8名の総点数56点の争奪戦です。選句の締め切りは午後2時。

今回の各賞は須磨ゆかりの人たちから拝借し、賞品はどんぐりさんとへるめんさんが、須磨浦公園駅の土産店で選んだ「須磨浦山上遊園」のお土産のお菓子とメモ帳です。

     

全員の選句が午後2時に終わり、つきひさんの進行で、特選句から順に選んだ理由も挙げながら発表を始めました。

40句全部に点数が付けられ、選句理由も聞き、作者が明かされました。

午後2時50分、句会は終了。

高得点句

本日は8点獲得句、7点句、4点句が各1句、3点句が5句ありました。再掲します。

 花に酔ふこの世の旅の途中かな     つきひ⑧◎◎◎

   咲き満ちた桜の道をマイペースで歩く贅沢な時間。

 句会へと乗り継ぐ花の駅いくつ     つきひ⑦

   さぞかし見事な桜たちに巡り合えたのでは。

 ランダムの遊び探しや花の須磨     へるめん④

   今回の遊び相手は3,000本の桜の樹?

 春風に昔を語り遊歩道           一風③

   春風駘蕩。幸せな友との語らい.

 花冷や源平戦の浜辺跡           どんぐり③

   敦盛と直実が出会った悲劇の地。

 一の谷桜が語る古戦場           一風③

   ぱっと咲き、ぱっと散る桜の花。

 寝ころべば花ゆらぎたり須磨の浦    へるめん③

   青空をバックに潮風で揺らぐ桜。

 御旅所はバスターミナルたんぽぽ黄  どんぐり③

   こんな場所になぜ。新鮮な驚き。

表 彰

午後3時、獲得点数により表彰式です。

優勝は、つきひさん(18点)、準優勝はジャンケンによりどんぐりさん(9点)、第3位はへるめんさん(9点)。第4位は一風さん(7点)、第5位は蛸地蔵さん(5点)、第6位は見水さん(4点)、第7位は稲村さん(3点)。第8位は弥太郎さん(1点)。出句5句すべて得点のパーフェクトは今回は無し。

女性軍3名対男性軍5名は36点対20点で、女性軍圧勝でした。

   

午後3時過ぎ、2時間に1本しかない姫新線に乗り遅れないよう、つきひさんが退出。翌日、「乗り換えもスムーズに出来、予定通り帰宅出来ました」とご連絡をいただきました。

「この部屋は5時まで借りているから、いろいろ相談でも」と、一風さんが次回の句会の候補地など提案しましたが、話題も尽き、「そろそろ出よか」。

午後4時、部屋を片付けて退室し、鍵を返却。

須磨区文化センターを出て、妙法寺川の桜を見ながら板宿駅まで歩きます。老木も混じっていますが見事な桜並木です。

桜の中を歩いている人たちは、みんな笑顔です。

30分足らずで板宿に到着。

いつもなら有志での「反省会」ですが、まだ陽も高く、「今日はこれで解散しよか」。

青空の一日、親しき連衆と期待通りの桜に出会え、老舗・鳥光の昼宴とにぎやかな句会。楽しい思い出がまた一つ増えました。

下見の一風幹事長、蛸地蔵さん、見水さん、賞品選びのどんぐりさん、へるめんさんに、心より感謝。

これから過ごしやすい季節がやってきます。

世界ではウクライナとガザで続く惨禍に加え、トランプの追加関税。国内では物価が何もかも上昇、甚大な被害をもたらす南海トラフへの懸念、4月13日に始まる大阪・関西万博、10月の神戸市長選挙…春愁は尽きません。せめて藤川監督の阪神タイガースはスカッとするプレーを見せてほしい。

秋の句会の準備もぼちぼち始めましょう。ご希望は一風幹事長へ。皆様お元気で。

   2025.4 写真・文/mimizu

 

 

コメント (3)
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2024=姫路・好古園 秋句会

2024-11-18 | 吟行句会

春に新長田・駒ヶ林で句会をし、神戸市内全区での句会を達成。次の秋の句会は久々に遠出かと思っていたら、幹事長・一風さんから連絡。

「姫路なら三宮から新快速で40分。美作からも近い。お城に登るのはしんどいけど、隣の好古園での紅葉の句会はどう?」

わが句会主宰のつきひさんは、5月末に明石と故郷の岡山・美作との二拠点生活を卒業し、故郷での生活に移行されています。

9月20日に下見。姫路駅に着き、コンコース・観光案内所、バスターミナルを歩くと、隅々までピカピカ。

「さすが世界遺産・姫路城。いつの間にこんな街に」

たまにクルマで通過するだけだった姫路の街の大変貌ぶりに驚きました。

駅からお城に向かって、昼食会と句会の場所を探しながら街歩き。一風さんにはかつて播町さんとこの街で飲み歩いた思い出も。新しく出来た施設などにも寄り道もしながら、句会のイメージをふくらませ、下見を終えました。

 一輪の梅に浮き立つ旅心     さくら

 いつしかに集まる鯉や春陽射す   芙蓉

 紅梅に倦みて見上げる天守閣   つきひ

姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」には、2015年2月にさくらさん・芙蓉さん・つきひさんの3人が行かれ、梅見の句を詠み、当ブログにアップされています。

今回の第41回神戸RANDOM句会は、紅葉の季節。どんな名句が生まれるでしょうか。

姫 路 へ

2024年11月12日(火)、JR姫路駅の観光案内所前に午前10時が集合時刻。

10月半ばまでは暑かったのに、秋と冬は駆け足。11月7日の立冬には、昨年より早い木枯らし1号が吹きましたが、今日は晴れ。日中は気温が20℃を超えそうです。

三宮からのメンバーは、午前9時02分発の新快速に乗車です。

JR三ノ宮駅のホームに上がると幹事長・一風さんがお待ち。見水さん・弥太郎さん・蛸地蔵さんが集合。目の前では駅ビルの基礎工事中。海の方では上層階がホテルになる市役所2号館の建設が進んでいます。薄緑色のミント神戸のビルの東側では勤労会館と中央区役所の跡地に大規模バスターミナル・図書館・ホールを建設中。思い出の詰まった三宮の再整備について話していると、新快速が到着。通勤ラッシュを過ぎているので、席を倒して4人向かい合わせに着席。

須磨の海岸を走る頃には青空が広がりました。

 須磨過ぎて冬めく海に姫路みる  一風

弥太郎さんは同人誌「印南野文華」に播州平野の記事を投稿したことがあり、コピーを見せてもらいました。宮本百合子の小説「播州平野」にも触れています。これから向かう播州平野は南北10キロ、東西40キロの瀬戸内沿岸の平野。坂の街に暮らす神戸っ子から見れば何とも恵まれた土地。「麦の秋」で播州平野の句を詠んだこともあるとか。健脚の弥太郎さんは昨日は六甲の麓を3万歩歩いたと聞き、皆びっくり。

明石駅からどんぐりさんとへるめんさんが乗り込み着席。新長田駅から各停で来ました。へるめんさんは今日は秋袷のリフォームでおしゃれ。

 吟行や仕立て直しの秋袷    へるめん①…〇数字は句会での得点

「加古川なら昔は軍服を作っていたニッケの工場が…」

蛸地蔵さんが目を走らせます。ショッピングモールなどに変わっていますが、あちこちに「NIKKE」の表示。煉瓦の建物も残っています。

 播町さん偲ぶ播磨野咳ひとつ  へるめん②

 広々と播州平野冬日和     弥太郎③

 播州路秋の色にて御座候    見水④は句会での特選句

2年前に亡くなった播町さんは播磨町の自宅から姫路によく通っていました。雑談をしながら山々の紅葉をちらちら眺めていると、やがて街の風景に変わり、午前9時42分、姫路駅に到着。ホームを下りると構内に姫路発祥の北海道産の豆のあんこがぎっしり詰まった熱々の回転焼「御座候」の売店。

「今日のおやつは御座候にしよか」

一風さんの提案で、赤あん(小豆あん)の御座候を7つ箱に入れてもらい、一風さんのバッグに詰めました。

姫路の城下町をゆく――――――――

姫路駅集合

改札を出て、観光案内所の前で、播町さんを偲びながらお待ちのひろひろさんと合流し、午前9時55分、全員集合。

 金風に乗せられ姫路友なき句会  ひろひろ

本日の参加者は、女性がどんぐりさんとへるめんさんの2名、男性は一風さん、蛸地蔵さん、ひろひろさん、見水さん、弥太郎さんの5名で計7名。つきひさん、さくらさん、稲村さん、英さん、ろまん亭さんは欠席です。主宰のつきひさんとさくらさんは当初は出席の予定でしたが、思わぬ都合によりやむなく欠席。

 久し振り集う播磨の秋句会  蛸地蔵

 正面に白鷺城据え冬句会   へるめん①

 天高し真っ正面に姫路城   見水⑤

駅からは大通り越しにお城の天守閣が真正面に見えています。平成の大修理で2015年には白漆喰でまっ白に輝いていた屋根瓦は少し落ち着き、いい色になっています。

「HIMEJI」の文字のある撮影ポイントがあったので、集まって写真を撮りました。

今は埋め立てられていますが、城の外濠は姫路駅のすぐ北側でした。中濠も埋められて国道2号線に。城の周囲には内濠、と姫路の城下町は三重の濠で囲まれていました。

大手前通り

駅前から好古園までは約1.5km。タクシーでの移動を考えていましたが、本日のメンバーならこれぐらい歩くのは平気。大手前通りの東側の歩道を歩きます。

大手前通りの幅員は50m。米軍の空襲で街が焼け野原になった後にこの幅に拡張されました。今は歩道を広げ、彫刻やベンチ、植樹、城下町らしい趣のある街灯を配置。城を目指して気持ちよく歩ける通りになっています。

しばらく歩くと、アーケードのある商店街の入り口。二階町商店街です。大手前通りの西側は西二階町商店街。街なかの商店街はシャッター通りが多いのですが、この商店街は美しく整備され落ち着きがあります。

というのも、この通りはかつての山陽道。大商人の店や屋敷が建ち並んでいました。西国の参勤交代の大名行列や行き交う旅人たちは、目の前にそびえる壮麗な姫路城に圧倒されたことでしょう。

今日の昼食場所の割烹店「旬はなれ 重絆(じゅうばん)」はこの商店街を少し入った所にあるので、看板を確かめて北に向かいました。

国道2号線に出会います。4車線の広い道路ですが、このあたりは通行量が多いからか東行一方通行。南の十二所前線は西行一方通行になっています。国道2号線の北側には見事な石垣。埋められた中濠の名残のようです。道路を渡り、さらに進むと家老の屋敷跡。公園や駐車場、土産物店になっていて、城が目の前です。

一人で先を歩いていたひろひろさんは、結婚式か「前撮り」でしょうか、花嫁姿を発見。句に詠みました。いまは全国の神様が出雲に旅する神無月です。

 白無垢の目出たき姿神の旅  ひろひろ

ひろひろさんに追いつき、お城をバックに全員そろって写真を撮ろうとしたら、小さな男の子を連れた若いお父さんが「撮りましょうか」とシャッターを押してくださいました。感謝。(写真は当ブログの末尾に掲載)

姫 路 城

姫路城は、播磨守護・赤松氏の没落後、御着の小寺氏の家臣で目薬で財を成した黒田氏が小高い姫山に城を築いたのが始まり。信長の勢力が増し、軍師・黒田官兵衛は秀吉に播磨の要のこの城を献上し、中国大返しに貢献。秀吉は石垣を積み大増築。自身は大坂城を拠点にして移ります。その後、徳川の時代になり、1610年に池田輝政が現在の城を築きました。

 姫路城高く伸びゆく冬の空  弥太郎②

 冬晴れや城に輝く白い壁   弥太郎①

 松もみじ白壁に映え姫路城  一風

池田輝政はもとは秀吉の家臣で、小牧・長久手の戦いでは父と兄が討死。後に北条氏に嫁していた家康の娘・督姫を娶り、関ケ原では東軍の武将として功を挙げ、家康から播磨52万石を拝領。池田一族には播磨に隣接する岡山・因幡・洲本も与えられ、一族で百万石の領地を有しました。

西国の大名達の動向に睨みを利かせ、大坂城の秀頼を監視するため、姫路には巨大で堅固な城が築かれました。標高45.6mの姫山に建つ大天守の最上部は海抜92m。内濠の中は巨大な迷路。攻めにくく、ようやく本丸にたどり着けば、大天守と3つの小天守、渡櫓が複雑に組み合わされ、難攻不落の城でした。

大阪夏の陣で豊臣氏が滅んだあと、助け出された家康の孫で秀頼の妻だった千姫が姫路城で暮らしたのは1617~1626年。桑名藩主・本多忠政の嫡男・本多忠刻と再婚し、1617年に本多氏が播磨に移封されて姫路へ。忠刻が亡くなったため1626年に姫路を離れて江戸城に入り、出家をして天寿を全うしました。西の丸には千姫の化粧櫓が残されています。

この城は戦禍にまみえることなく、明治維新後は姫路が軍都となったため、城の周囲には陸軍の施設が置かれました。城は米軍の激しい空襲に奇跡的に耐え、明治、昭和、平成の大修理を経て今日まで、400年前の姿を当時のまま保ちました。1993年に法隆寺とともに日本初のユネスコ世界文化遺産登録。国の内外から大勢の観光客が訪れるようになりました。

 秋なればインバウンドの客多し  蛸地蔵①

好古園の前の横断歩道で信号待ちをしていると、欧米系の外国人の大集団。観光バスで来たようで、青信号で渡ると集団は堀端をお城の大手門の方にぞろぞろ。

好古園散策――――――――――――

入園券を買って、パンフレットをもらい、今日の目的地、姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」に入ります。

 屋敷跡囲む桜の冬もみぢ  どんぐり②◎ 

敷地面積1万坪の好古園は、隣接する姫路城と一体化し、400年前の佇まいを感じさせますが、開園は32年前の1992年。1960年頃はこの地に国鉄宿舎や税務署、保育所が建っていました。1985年からの発掘調査で江戸時代の西御屋敷(藩主の下屋敷)跡・武家屋敷跡・通路跡の復元が進み、1989年の姫路市政100周年の記念事業として昔の地割りを活かして9つの趣の異なる日本庭園を建造、一般公開されました。姫路城が日本初の世界文化遺産登録されたのはその翌年でした。

幕末に藩校「好古堂」がここの入口付近に置かれていたことから、「好古園」と命名されました。

園内の9つの庭園は借景に姫路城を巧みに取り入れ、時計と反対周りに一周できます。

スタートは、「御屋敷の庭」を見ながら穴子や蕎麦のランチを楽しむ和食レストラン・活水軒。9月の下見ではここで昼休憩し、穴子飯をいただきました。

 滝紅葉我心をば癒しけり  ひろひろ

活水軒から大滝を見ながら渡り廊下を進むと、池泉回遊式の「御屋敷の庭」。藩主の下屋敷があった庭で瀬戸内海を模した大池を望む「潮音斎」の座敷には掛け軸を掛け、生け花を飾っています。

 冬うらら古池巡る好古園       弥太郎①

 ワオージャパン池泉庭園もみじあり  蛸地蔵②

 睦み合ふ小春の池の錦鯉       どんぐり⑥

 霜月や真鯉に緋鯉メダカまで     ひろひろ

美しく大きな錦鯉たちがゆったりと泳ぎ、外国人客たちも大喜び。足を止めて楽しそうに覗き込んでいました。

 小春日に写真とる顔皆やさし  一風②

 庭石の裾に撫子ふたつ添ひ   へるめん①

 好古園散歩の道に冬紅葉    弥太郎

「御屋敷の庭」を一周して、低い門をくぐると「苗の庭」。区画割して江戸時代の園芸植物を育てていますが、晩秋の今は芙蓉の花は残っていましたが枯草ばかり。西側の土手の向こうは濠の役目もした船場川。

次は「茶の庭」。裏千家第15代家元・千宗室氏が設計・監修した抹茶の味わえる本格的数寄屋建築の茶室・双樹庵が建っています。下見のときは一風さんに誘われて中に入りましたが、正座ができず、了解を得て足を崩して抹茶と生菓子をいただきました。

さらに進むと、「流れの平庭」。きれいな小川が流れています。川に石を並べて渡れるようにしたところは流れが速く、谷川のような水音。曲水にしている場所ではややゆったりした流れ。座って休める四阿の「流翠亭」があります。

 ドウドウと水流れゆく秋の日に  見水

 曲水の庭に遊ぶや冬ぬくし    へるめん⑦◎◎

小川に沿って上ると、「夏木の庭」。落葉樹の庭で、いまは紅葉。四阿の「鷺望亭」からは天守閣が望めます。

 紅葉映え城閣五つ秋青天  ひろひろ

「夏木の庭」を抜けると、赤松の生い茂った「松の庭」。瀬戸内の海辺の松林のよう。

「松の庭」の向かいは「花の森」。四阿は「花笠亭」。江戸時代に親しまれた山野草を植栽、ということですが、この時期なので、花はツワブキ。黒田官兵衛の先祖が財を成したカエデ科の「メグスリノキ」がありました。

通路の門を出て、向かいの門に入ると、「築山池泉の庭」。紅葉・黒松・池を配置した日本庭園で、池にせり出した四阿は「臨泉亭」。西の丸が見えます。

 紅葉に千姫御殿見え隠れ  見水

最後は、「竹の庭」。四阿は「聞竹亭」。15種類の竹を植栽しているそうです。釣瓶井戸や鹿威しを配置した森閑とした竹林を歩いて心が癒されました。

 つわぶきの花の一群れ竹林に   見水①

 名園の要所要所に石蕗の花    どんぐり①

 使ふことなき釣瓶井戸石蕗の花  どんぐり③

 驚いたししおどしかな秋の藪   蛸地蔵①

以上、初めて日本庭園に出会った外国人観光客を含め、誰もが楽しめる庭園でした。四季の変化も楽しめそうです。

庭園の一角には、江戸時代の屋敷跡の発掘調査資料を展示したコーナーもありました。

 発掘の染付皿や冬ぬくし  どんぐり①

午前11時30分、好古園を出て、昼食会場の「旬はなれ 重絆」に移動。途中の大手門前の土産物店でどんぐりさんとへるめんさんが賞品を選んで購入。2人は姫路の銘菓「玉椿」を探しましたが、置いていなかったので姫路の老舗の塩味饅頭にしました。塩味饅頭は赤穂の銘菓ですが、播町さんは姫路の塩味饅頭が好きで姫路まで買いに行っていたそうで、いい選択でした。

国道2号線を渡り、アーケードの西二階町商店街へ。

午前11時50分、「旬はなれ 重絆(じゅうばん)」に到着。渋い雰囲気の和食の割烹店です。

西二階町の割烹――――――――――

到着して、用意された奥の小部屋の席に着き、本日の会費を集め、ビールを注文。乾杯です。

俳句のこと、神戸が舞台で栄養士がヒロインのNHKの連続テレビ小説「おむすび」のこと、各自の近況報告、欠席者のこと、亡くなられた播町さんのこと、共通の知人のこと…話題は次から次へと。

つきひさんは10月13日の朝日新聞の俳句欄「朝日俳壇」に見事入選。入選句は、

 師を恋うて目高を飼うて師を偲ぶ

折に触れて偲ぶ、俳句の師・千原叡子さんへの思いを詠まれました。

美作に移ってからは岡山の新聞にも投稿し、入選しているとのこと。

今回の句会の準備や下見の話をすると、ひろひろさんから一風さん、見水さんに、

「あんたら、ええコンビやなあ」

 秋句会ビールが入り宴会へ    蛸地蔵①

料理は昼の部の季節会席コースなので夜の部より割安の料金。地元の魚や野菜を使い、メニューは前菜盛り合わせ・刺身盛り合わせ・季節の一品・口替り・茶碗蒸し・天ぷら盛り合わせ・食事・甘味か珈琲。美しく盛り付けられた出来立ての料理を順に一品ずつ配膳。ビールが進み、追加。たっぷり1時間以上かけての食事でした。

 酒飲んでしゃべって後の秋の空  一風

午後1時20分、昼食会終了。ごちそうさまでした。店を出て、句会の会場の大手前通りのビズスペース姫路に向かいます。

大手前通り句会――――――――――

午後1時30分、事務室で鍵をもらい、予約していた4階の貸会議室401号室を開けます。

会議室401号室は、大きなテーブルを囲む10席の部屋です。

7人分の椅子を配置し、余った3脚は荷物置きに壁際に並べ、各自席に着いて5句を完成させ短冊に書きます。提出期限は午後2時15分。

 先生を思ひ句づくり神無月 一風

今回は初めて主宰・つきひさん不在の句会になりました。

集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。

午後2時30分に選句表を人数分コピーして全員に配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者7名の総点数49点の争奪戦です。選句の期限は午後3時。

今回の各賞は、姫路城ゆかりの人や好古園内の建物や四阿の名称から拝借し、賞品はどんぐりさんとへるめんさんが大手門の土産物店で選んだ姫路の特産品です。

 

全員の選句が午後3時前に終わったので、今回は急遽、どんぐりさんに進行役をお願いし、特選句から順に選んだ理由も挙げながら発表を始めました。

午後3時、お願いしていたコーヒーをビズスペース姫路の係の人がポットで運んで来ました。各自に配り、姫路駅で買っておいたおやつ「御座候」を各自に配りました。

食べながら、飲みながら、句会を再開。

35句全部に点数が付けられ、選句理由も聞き、作者が明かされました。

午後4時、句会は終了。

高得点句

本日は7点獲得句、6点句、5点句、4点句が各1句、3点句が2句ありました。再掲します。

曲水の庭に遊ぶや冬ぬくし     へるめん⑦◎◎

 巧みに造られた水の流れ。岸に座って曲水の宴?

睦み合ふ小春の池の錦鯉      どんぐり⑥

 ゆったり泳ぐ大きな錦鯉たちに見とれました。

天高し真っ正面に姫路城       見水⑤

 秋の青空に駅前大通りの先の白亜の城。

播州路秋の色にて御座候      見水④

 深まる秋に「御座候」の姫路の街へ。

広々と播州平野冬日和        弥太郎③

 気持ちも晴れやかになりました。

使ふことなき釣瓶井戸石蕗の花  どんぐり③

 竹林にひっそりと咲く黄色い花。

表 彰

午後4時15分、獲得点数により表彰式です。

優勝は、どんぐりさん(13点)、準優勝はへるめんさん(12点)、第3位は見水さん(10点)。第4位は弥太郎さん(7点)、第5位は蛸地蔵さん(5点)、第6位は一風さん(2点)、第7位はひろひろさん(0点)。出句5句すべて得点のパーフェクトはどんぐりさんとへるめんさん。

女性軍2名対男性軍5名は25点対24点で、女性ペア圧勝でした。

全員集合写真のシャッターを、ビズスペース姫路の係の人にお願いしました。(写真は当ブログの末尾に掲載)

  

午後4時30分、部屋を片付けて退室し、鍵を返却。

ビズスペースを出て、西二階町商店街の入口を横切り、大手前通りを姫路駅まで歩きます。

有志の反省会を姫路で一杯やりたい気分ですが、「やっぱり、三宮にしよか」と、各停で帰るひろひろさんとさよならし、午後4時56分発の新快速に乗車。どんぐりさんとへるめんさんは明石駅で降り、弥太郎さんとは5時40分に三ノ宮駅で笑顔で握手してお別れ。残った3人で1時間あまり句会の反省会?をしました。

秋晴れの1日、姫路まで足を延ばし、世界文化遺産の城を眺めながら日本庭園を巡る吟行は、姫路の人達のおもてなしの心に出会い、美味しい昼食と楽しい句会で、またいい思い出になりました。

下見の一風さん、見水さん、賞品選びのへるめんさん、どんぐりさん、どんぐりさんには急遽句会の進行もお願いし、心より感謝。

今年もあと1か月あまりです。

期待のふくらんだ阪神タイガースの「アレンパ」はリーグ2位になったものの、クライマックスシリーズで横浜の勢いにあえなくしぼみ、再起を決し藤川監督に交代。岡田監督おつかれさまでした。

世界ではウクライナとガザの惨禍がいまだ収束せず、アメリカ合衆国は共和党とトランプ政権が復活。国内では能登地震の復興が進まず、スーパーの食料品はみな値上げ。

「次回は神戸で」の希望もお聞きしましたので、来春の句会の開催地は神戸で探しましょう。

まだ少し早いですが、皆さん良いお年を。来年はいい年になりますように。

2024.11 写真・文/mimizu

 

 

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2024=新長田・駒ヶ林ひねもすのたり句会

2024-04-06 | 吟行句会

今年の元旦は、夕方に緊急地震速報。震源は能登半島。遠く離れた神戸でも長いゆっくりとした揺れ。これは大きい。テレビをつけるとどこも同じ映像。落ち着かないおせちの夕食でした。

翌日から、輪島朝市通りの焼失、倒壊した家々、津波と地盤隆起による漁港の壊滅。進まない救助活動と積雪の避難生活など明らかになると、29年前の阪神・淡路大震災の記憶が蘇りました。

明石海峡を震源とする震度7の10秒の揺れは、神戸の市街地を縦断し、芦屋、西宮、宝塚を襲い、建物を倒し、鉄道・高速道路・港湾を破壊し、都市機能を麻痺させ、あちこちで猛火。数千人の人命が失われ、20万人が不自由な避難生活を強いられました。

全国からボランティアが駆け付け、避難所や公園のテントで被災者を支援。電気・ガス・水道・鉄道・道路・港湾などの不眠不休の復旧、膨大な瓦礫の撤去、進まない仮設住宅・復興住宅の入居、孤独死と見守り、多難な生活再建、区画整理による復興事業などに10年余りの歳月を費やし、震災の傷跡はほぼ癒えましたが、最後に新長田南地区の復興再開発事業が残りました。

いま、44棟目となる事業の最後のビル(仮称・新長田キャンパスプラザ)を建設中。この夏に完成すると29年に及んだ復興事業はようやく完了です。

第40回神戸RANDOM句会は、事業完了間近の新長田と海辺の漁師町・駒ヶ林を訪ねることにしました。春です。どんな名句が生まれるでしょうか。

新長田へ

2024年4月3日(水)、JR新長田駅改札口に午前10時が集合時刻。

昨日までのぽかぽか陽気から一転、朝から雨。気温も花冷えで低めです。

  八十路春ひねもす雨の苦々句会  ひろひろ① …〇数字は句会での得点

  風雨なり愛犬一人春句会       ひろひろ

市営地下鉄の新長田駅は、開業以来お馴染みだった「鳩の駅」からスマートな「鉄人28号の駅」にイメージチェンジされています。早く着いたので、若松公園の雨の鉄人に会いに行きました。

       

新長田・駒ヶ林をゆく―――――――

鉄人28号モニュメント

  春の雨鉄人の腕空に伸び      弥太郎② …は句会での特選句

  鉄人がぬれてゆこうと春の雨   稲村

  春雨に打たれ鉄人飛び立つか   見水②

実物大18mの「鉄人28号」は2009年に復興のシンボルとして設置されました。

「グーンと飛んでく」鉄人28号のテレビアニメに親しんだ子供は、今は60~70代。戦闘機や戦車のプラモデルを夢中で組み立て、リモコンで遊んだ世代です。

「鉄人28号」「伊賀の影丸」「三国志」…グイグイ物語に引き込む漫画を描いたのは隣町・須磨出身の横山光輝(1934~2004)。敗戦の年は多感な11歳の少年でした。

神戸は開港以来、華僑と共に発展し、南京町や関帝廟のある街。商店街では町角に「三国志」の英傑の石像を置き、「三国志」のイベントで町を盛り上げています。

今、西市民病院の若松公園への移転整備が進められており、4年後には新病院をバックにした鉄人が見られそうです。

待ち合わせのJR新長田駅へ。

JR新長田駅集合

午前10時、全員集合。本日の参加者は、つきひさん、さくらさん、どんぐりさん、へるめんさんの女性4名、男性は一風さん、蛸地蔵さん、稲村さん、ひろひろさん、見水さん、弥太郎さんの6名の計10名。英さんとろまん亭さんは参加希望でしたが都合が合わず欠席。

まず、この駅の券売機の横に鎮座する「寅地蔵」にご挨拶です。

寅地蔵

  駅うらら寅さんに会ひ句友(とも)に会ひ  つきひ⑤

  のどけしや寅さん地蔵と目が合った     へるめん②

  花の雨何処へ行こうか寅地蔵          見水

1995年12月に公開された映画「男はつらいよ 寅次郎紅の花」は、冒頭に神戸の被災地でボランティアに励む寅さんの姿がテレビの記録映像に登場。美しい奄美の島での恋物語の後、ラストシーンは焼けた瓦礫の残る長田の菅原市場。寅さんは奄美の手土産を提げて仮設のパン屋「いしくら」の前に。店から出てきた大助・花子に「きれいな店が出来たじゃないか」とほめ、市場の会長の芦屋雁之助やエキストラの人に「苦労したんだなあ。本当に皆さんご苦労様でした」とねぎらい、迎春を祝う華やかな在日コリアンの踊りの輪に入っていきます。踊りの輪は手前に引かれ、六甲を背に被災生々しい神戸の街。翌年、寅さん・渥美清は亡くなり、この映画が遺作になりました。

「寅地蔵」は、被災した長田に元気をくれた寅さんへの感謝を込め、地元商店街が置いた守り神。山田洋次監督からの人情あつい長田の人たちへの礼状も添えられています。

午前10時15分、本日のスケジュールを相談します。

天気が良ければ、寅地蔵→鉄人28号→長田漁港→駒林神社→海泉寺→昼食→句会場の順でのんびり回遊する予定でしたが、雨がだんだん激しくなる予報なので、「鉄人」には寄らずに、タクシーで長田漁港に行き、駒ヶ林を吟行の後は、昼食までふたば学舎で待機することにしました。

出発します。駅を出て、駅前広場のタクシー乗り場へ。新長田はいい街になっています。

新長田のまち

古い地図を見ると「新長田」はなく、「駒ヶ林」があるだけです。

兵庫の町を一歩出ると農漁村が広がっていた「神戸」は、幕末の開港で国際都市になり、1889年に神戸市が誕生。市域は現在の中央区と兵庫区東部の21㎢で人口は13万人。7年後、林田区(現在の兵庫区西部と長田区)を合併し、市域は37㎢、人口は18万人に。

臨海部で、造船・紡績・製粉・車両などの工場が操業し、背後の西神戸の町工場では、明治時代はマッチ、大正になるとゴム靴が盛んに製造されました。

海辺の駒ヶ林の町の北は田んぼ。駒ヶ林の人たちは漁業と農業を営んでいましたが、1914年に耕地整理で田んぼを4間幅の道路で碁盤目状に区画割。町に接する東西道路は6間幅でした。

神戸には仕事を求めて各地から人々が集まってきており、区画割された田んぼは次々と長屋と路地になり、住商工の混在する町に。六間道や大正筋に商店街が出現します。1920年の町名変更で、駒ヶ林は現在の日吉町・若松町・大橋町・腕塚町・久保町・二葉町・駒ヶ林町に変わり、やがて市電や市バスが通り、町に子供たちがあふれ、人情のあつい下町になっていきます。

神戸市は須磨と西灘を合併し1939年に人口100万人を突破。長田区は20万人の町でした。

戦災で神戸は焼け野原になりますが、六間道や大正筋の商店街は被災を免れ、遠くからも買い物客。物資不足の中、この町でケミカルシューズが考案され、地場産業として急成長します。

1954年、商店街とゴム工場の誘致運動で、国鉄(現在のJR)の兵庫駅と鷹取駅の間に「新長田駅」を新設。この町は「新長田」と呼ばれるようになります。

1965年、大橋地区で国道・浜手幹線を拡幅。地元が協力して全国初の市街地改造再開発を実施し、神戸デパートが開業。三宮センター街の再開発と中央幹線拡幅の手本になりました。

自動車が急増し、市電が廃止。1977年に名谷と新長田を結ぶ市営地下鉄西神線が開通すると新長田はターミナルに。駅前に大丸も開業します。

1980年代、神戸市は「山、海へ行く」で大変貌。ポートアイランド・六甲アイランドに街ができ、西神・北神に市街地が広がり、市営地下鉄が全線開通すると、旧市街地で産業の停滞、住宅の老朽化、人口の減少といった「インナーシティ問題」が浮上します。

1989年、神戸市は「インナーシティ総合整備基本計画」を策定。進めるプロジェクトとして、地下鉄海岸線の整備をまず掲げ、この町については、新長田駅前再開発・五位池線(タンク筋)整備・大規模工場跡地の活用・長田港再開発を掲げました。

地下鉄海岸線は1994年に着工され、2001年に開業しています。

1995年1月17日、阪神・淡路大震災発生。市内の焼失面積の6割以上が長田区。市は震災から2カ月後にJR新長田駅の南側約20haの地区での市街地再開発事業の都市計画を決定します。

地区の土地を市が買い取り、地区の生活者は、再開発後に区画を買い戻すか地区を離れるかの選択を迫られました。早急な決定に地元の反発がありましたが、その後、街区ごとの協議会で地元の意見や提案を聴きながらまちづくりが進められました。

元の街に戻って店を再開したが戻らない客足、多額の共益費の負担、地下や2階の空き店舗の多さなどは、たびたびマスコミなどに取り上げられました。

29年に及ぶ復興事業。時代も人も変わりましたが、地区の居住者は震災前より増え、県・市の合同庁舎ができ、県立専修学校・大学の建物がまもなく完成。今年から西市民病院の新長田駅前への移転工事も始まる予定です。

世界一安全な町になった新長田に、これからどんな未来が待っているでしょうか。

長田漁港

午前10時20分、駅前広場からタクシー3台に分乗しで長田漁港へ。

下っていくのは通称タンク筋。臨海地区に長らく大阪ガスのタンクがありました。

建設中の仮称・新長田キャンパスプラザや新長田合同庁舎を右に見ながら、地下鉄海岸線の「駒ヶ林駅」。六間道のアーチを抜けると工場跡地に建ったホームセンター・アグロガーデンの大型店舗。東側には天然温泉・あぐろの湯もあります。右折して海岸の通り。午前10時25分、長田漁港の魚市場に到着。

  街中を歩いて10分春の海     一風

  タクシーを降りて漁港の春の海    一風②

競りは終わっているので魚市場はがらんとしています。タクシーを降りてきた10人の「不審者」に、事務所から人が出て来られました。

「海にはまったら危ないからね」

俳句のメンバーでここに来たことを話すと、にこにこと朝の競りやいかなご漁のことなどを話して下さり、全員集合写真のシャッターも押していただきました。

  競終る漁港に一羽春鴎         さくら②

  春の海漁船静かに揺れている    弥太郎①

  新長田長閑な港魚跳る         ひろひろ

駒ヶ林の漁師さんは現在約40人。漁協では「フィッシャーマンズマーケット」や「親子で楽しめる!駒ヶ林漁業体験ツアー」など市民との交流も行っています。

  船溜まり雨に打たるる残り鴨     見水⑤

  春雨や低く飛び交う磯千鳥       へるめん①

  雨けむる長田のみなとユリカモメ  稲村

  群鴎小さき漁港で春陽待つ       蛸地蔵②

駒ヶ林の港の歴史は古く、奈良時代から平安時代に遣唐使船も出入りする良港として栄え、平清盛や足利尊氏もこの地を踏んでいます。松林の続く浜では季節ごとに異なる魚が獲れ、漁師・加工屋・商人で賑わい、「ハヤシ千軒」といわれました。

明治になり、1875年に魚市場を開設。1899年には駒ヶ林の魚問屋の八尾善四郎(1845~1918)が私費を投じて兵庫運河を完成させます。須磨(武庫)離宮には駒ヶ林の魚が届けられました。

町の北の田んぼは市街地に変わり、戦後は浜を埋め立て1961年に長田港が完成。漁港とともに淡路フェリーの発着場や金属製品や重油の積み下ろし港になります。

  春雨や小路の隅に地蔵堂     弥太郎②

が、町の人口は次第に減少。町では1991年に駒ヶ林まちづくり協議会を発足させ、震災復興を経て、2007年に「駒ヶ林あかるく住みよいまちづくり構想」を策定。海辺のまちの歴史を引き継ぎながら、路地や空地の整備など、安全・安心で美しいまちづくりに取り組んでいます。

蛭子神社

道路の北側に赤い鳥居が立っています。漁師が船の安全と豊漁を祈る蛭子神社です。

午前10時35分、激しくなるはずの雨が、晴れ男・一風さんの願いが届いたのか、小止みになり、五分咲きほどの桜の参道で、気分がぱっと明るくなりました。

  雨の中今咲き始め桜花       一風①

  幹黒く生霊御座す大桜       さくら①

  桜雨吟行なれば濡るるとも    さくら②

  満開の桜におうてえびすがお   稲村

  花の宴咲き急ぐもの散るもあり どんぐり①

参道の石灯篭に刻まれた建立の年は享保16年(1731年)。魚供養碑が置かれています。

  戎社の魚供養碑花の雨       どんぐり③

  春の雨蛭子神社の碑をぬらす  弥太郎

  春雨も桜に優し社殿越し     蛸地蔵

  年毎に別れの増ゆる桜かな   つきひ①

  八十路連今日も元気花香る   ひろひろ②

今日は寄りませんが、路地を西に入ると供養塔のある史跡・平忠度の腕塚堂があるようです。

平薩摩守忠度は「タダ乗り」で有名で、平家物語でも人気の武将。木曽義仲に追われて都落ちの際に、師の藤原俊成に歌集を託し、俊成は勅撰の千載集に読み人知らずで載せました。

 さざなみや 志賀の都は 荒れにしを 昔ながらの 山桜かな

平氏は軍勢を立て直し福原に集結しますが、義経の奇襲で崩壊。知章や敦盛、そして忠度らがこの地で討死しました。

 ゆきくれて 木の下かげを 宿とせば 花や今宵の 主ならまし

忠度が最期に遺した歌です。

駒林神社

東に200m歩き、午前10時40分、駒林神社へ。

蛭子神社は漁師たちの神社でしたが、駒林神社は旧駒ヶ林村の家々を氏子とする八幡神社です

  春雨や神社の鳥居静まれり    弥太郎①

  木の芽雨神社の鳥居隷書文字  へるめん④

赤い大鳥居の傍らに「いかなごのくぎ煮発祥の地」の碑があります。

「いかなごのくぎ煮」は、いかなごの稚魚(新子)の佃煮で、神戸の郷土料理。

いかなごは春の風物詩で句にも詠まれています。

 旗立てゝ鮊子舟は又沖へ         高浜年尾

 いかなごの命ひしめく朝の網      野崎昭子

 小女子のまなこのほろと煮くづれぬ   成田智世子

30~40年前には昼網の新子が神戸のスーパーでも安く売られ、各家庭で炊かれました。漁獲量が激減したため1993年から漁の解禁日を設定し、今年は3月11日。大阪湾内は自主休漁し、播磨灘に出漁しましたが、不漁のため1日で終了になりました。

  いかなごのくぎ煮なつかし春の街     蛸地蔵①

  いかなごのくぎ煮の碑あり雨しとど   つきひ

  鮊子(いかなご)のくぎ煮の発祥駒が港     一風

  においするくぎに発祥駒林        稲村②

平安時代、駒ヶ林にあったという玄蕃寮(税関)の出先の役所はこの辺りといわれています。

神社の由来によれば、文政13年(1830年)に社殿を整備。1893年に拝殿を新築。1924年に社殿等を修築し、村内の小祠を合わせて「駒林神社」としたとのこと。

年間を通じて、厄除祭や春の例祭、夏祭、七五三などの祭りや行事があり、千年以上続いたという1月15日の駒ヶ林左義長(けんか祭り)はこの神社の名物行事でした。その年の網入れの優先権を賭けて漁師が東西に分かれて「お山」を倒し合い、毎年大勢の見物客で賑わいましたが、1959年に砂浜が埋め立てられ中止になりました。

 境内の奥に稲荷社が鎮座。駒ヶ林出身の無声映画時代のスター・澤田清の呼びかけで、玉垣に往年の名優、大河内傳次郎や片岡千恵蔵、入江たか子、山田五十鈴らの名を刻んでいます。

  花あかり名優たちの石柱に     つきひ②

  春雨じゃ濡れてオヨヨの大河内  見水④

神社の北側を囲む板塀は伊勢神宮の式年遷宮で使われた杉板だそうです。

海泉寺

駒ヶ林神社を出て、北側に回ると、高松線の道路をはさんで真北に海泉寺があります。

海泉寺は1289年創建の臨済宗の禅寺。1874年に火災にあって現在地に移り、本尊は鎌倉時代の阿弥陀三尊仏。駒ヶ林のご先祖たちは東の地区にある海泉寺の墓地に眠っています。

午前11時、山門をくぐると大銀杏。境内は一面に白い小石が敷かれ、気持ちが引き締まります。

  天目指す銀杏の枝の鴉の巣  どんぐり

  大銀杏今年も芽吹く命かな  蛸地蔵②

 

震災で全壊した本堂は、街の復興を見届けて、2016年に再建されましたが、寺と親交のあった湯川秀樹博士(1907~1981)の銘による1964年鋳造の「全人類の幸福を祈る鐘」は失われたままです。残された石碑が核兵器廃絶に力を注いだ博士の悲願を留めています。

  春の波博士の祈り海渡る     見水

 

 博士の墓は京都ですが、海辺の駒ヶ林のこの禅寺に位牌が納められています。

  花の寺一粒万倍みくじとや    どんぐり②

  花の寺鉄人の絵馬雨雫       どんぐり①

  湯川博士の長き戒名菜種梅雨  つきひ⑤

午前11時10分、寺を出て北西に300m歩きます。

ふたば学舎

午前11時20分、午後に句会をするふたば学舎へ。事務室で了解をいただき、共用スペースでしばし休憩です。本日の会費を徴収し、各自、句づくりに専念。

二葉小学校は、1929年に西隣の長楽小学校から分離して開校。前年1928年に東隣の真陽小学校は日本一のマンモス校になり、教室が足りず二部授業。二葉小学校は近隣住民の寄付や住居移転などの協力を得て開校しました。戦災に遭わず、長田区役所が空襲で焼失したときは、一時この学校に移転しました。

震災にも耐えましたが、2006年に長楽小学校と統廃合して駒ヶ林小学校になり閉校。歴史的価値のある建物で、3階まで届く蘇鉄の大木も見事です。

  天をつく蘇鉄に校舎春の風   一風②

  旧校舎に蘇鉄高々春の雨     へるめん

  春の雨昭和の学舎静かなる   さくら

  花の雨板張廊下懐しく       さくら②

  よみがえる二葉小に春つどう  稲村

 二葉小学校は、閉校後、「ふたば学舎」として残し、地域活動の拠点として活用され、教室を貸会議室にして一般開放。レトロな校舎はドラマのロケなどにも使われています。

各階には、屛風絵をもとに作られた一の谷の合戦のジオラマや、この学校の生徒達や美術教諭の残した作品、震災記録写真を展示したコーナーなどがあります。

駒ヶ林の魚処―――――――――――

12時になったので、季楽魚処「清本の店」に移動。

2月の下見のとき、句会の昼食会の場所は、新長田なら北京料理「神戸飯店」と、豪華ランチの試食の後で予約しようとしたら、「水曜日は定休日です」。

あわてて近くを歩いて探した店が、季楽魚処「清本の店」。六間道沿いの隠れ家のような店。駒ヶ林の漁港に上がった新鮮な地魚料理の店です。

到着して用意された席に着き、ビールを注文。つきひさんは数日後に米寿。お祝いの乾杯です。

「どうしてそんなに若いの」

「いろいろと社会参加しているからよ」

俳句のこと、朝ドラのこと、Z世代のこと…、堰を切ったように話題は尽きません。

  鯛・鰆「清本」海の幸満載    へるめん

  十人の仲間かしまし春句会    蛸地蔵④

  春句会みなの顔みて美味し昼   ひろひろ  

駒ヶ林魚市場直送の鯛や蛸、地元のサーモンなどの刺身とホウボウや目板ガレイの煮つけなど、ここでしか味わえない新鮮な薄味の地魚料理を美味しくいただき、瓶ビールは珍しくサッポロビール。満腹になりました。

午後1時、昼食会終了。ごちそうさまでした。店を出て、句会の会場のふたば学舎に戻ります。

ふたば句会――――――――――――

午後1時5分、事務室で鍵をもらい、予約していた1階の貸会議室1-3号室を開けます。

会議室1-3号室は、教室のスペースにロの字のテーブル。ゆったりした部屋です。

人数分の座席を作り終えると、各自5句を完成させ短冊に書きます。提出期限は午後1時45分。

集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。

この間に各自好みの飲物をお聞きしてひろひろさんと一風さんが自販機で購入し、つきひさんの差し入れのほうらく饅頭と一緒に配ります。

饅頭と飲物をいただきながら一服。長田名物・ほうらく饅頭は、つきひさんが集合前に新長田駅前の店で出来立てを購入されたので、しっとりやわらかで優しい甘みのこし餡と粒あん。

午後2時10分に選句表を人数分コピーして全員に配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者10名の総点数70点の争奪戦です。

今回の賞品は、どんぐりさん、へるめんさん、一風さんの3人で3月31日に新長田の商店街に出向き、選んだもの。当日句会場に届けるよう依頼し、「結いの島」の店の人が運んで来ました。

今回の賞は、震災の年に長田でロケし、寅地蔵になった寅さんからの賞にしました。

各賞は「男はつらいよ 寅次郎紅の花」の登場人物、賞品は寅さんが長田に手土産で提げてきた奄美の食品です。

       

午後2時25分、つきひさんとさくらさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。50句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

午後4時、句会は終了。

高得点句

本日は5点獲得句が3句と、4点句が3句ありました。再掲します。

駅うらら寅さんに会ひ句友(とも)に会ひ  つきひ⑤

 待ちに待った春がやっと来ました。  

船溜まり雨に打たるる残り鴨          見水⑤

 漁港は鳥の楽園。残り鴨の哀れ。

湯川博士の長き戒名菜種梅雨              つきひ⑤

 さすが日本人ノーベル賞受賞第1号。

木の芽雨神社の鳥居隷書文字              へるめん④

 書家らしい観察。鳥居の隷書は見たことない。

春雨じゃ濡れてオヨヨの大河内          見水④

 駒林神社の稲荷社の玉垣に懐かしい名。

十人の仲間かしまし春句会              蛸地蔵④

 「清本の店」にご迷惑かけたかな。

表 彰

午後4時10分、獲得点数により表彰式です。

優勝は、つきひさん(13点)、準優勝は見水さん(11点)、第3位は蛸地蔵さん(9点)。第4位はへるめんさん・さくらさん・どんぐりさん(各7点)、第7位は弥太郎さん(6点)、第8位は一風さん(5点)、第9位はひろひろさん(3点)、第10位は稲村さん(2点)。出句5句すべて得点のパーフェクトは今回はいませんでした。

賞品は12個用意していたので、余り2個は「ランダム賞」。全員であみだくじをして、弥太郎さんと稲村さんに。

女性軍4名対男性軍6名は34点対36点でした。

 

午後4時30分、部屋を片付けて退室し、鍵を返却。

ふたば学舎を出て、大正筋商店街へ。商店街の路面には、野球選手・俳優・お笑い芸人らの手形を陶板に焼き付けて埋め込んだ「長田スター街道」があり、ふと足元を見ると、東京進出前の、2010年のお笑い芸人「千鳥」のノブと大悟の手形がありました。

新長田一番街を抜け、鉄人28号と髙取山にさよならして、午後4時50分に解散。

雨もほぼ止み、せっかくの「お好み焼きの街」に来たので、久々に有志で反省会を行いました。

10人の連衆の花の雨の吟行と地魚の昼食会、学舎での句会で楽しんだ時間はあっという間。

下見の一風さん、見水さん、賞品選びのへるめんさん、どんぐりさん、飲物調達のひろひろさん、句会運営のつきひさん、さくらさん、「本当に皆さんご苦労様でした」。

今回は、初めて長田で吟行。震災復興で生まれ変わった新長田と、海のまちの歴史を引き継ぐ駒ヶ林を歩き、海泉寺では、湯川秀樹博士の深い祈りにも出会いました。

博士の祈りにあやかり、3つの願いを挙げるなら、

① 能登の人たちが1日も早く元の生活に戻れますように。

② ウクライナとガザの惨禍が即刻終わりますように。

③ 阪神とヴィッセルが連覇の夢を果たせますように。

そして、あと1つ。

自由と遊び心の神戸RANDOM句会が永遠に続きますように。

2024.4 写真・文/mimizu

 

 

 

 

 

 

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2023=みなとやま水族館句会

2023-11-20 | 吟行句会

コロナ禍の行動制限が解除され、3年半ぶりに自由が戻ってきました。

と、息をつく間もなく、アレよアレよと阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝。オリックス・バッファローズもリーグを3連覇し、日本シリーズで第7戦まで激闘の末、阪神タイガースが38年ぶりの日本一に。

勝利が決まるや、つきひさんには「おめでとう」のメールがひっきりなしに届いたそうです。

11月23日には神戸と大阪で両チームの優勝パレード。

第39回神戸RANDOM句会は、かつて平清盛の邸宅だった小学校の廃校跡を再生させ昨年7月にオープンした人気のスポット「みなとやま水族館」を訪ねます。みなとやま水族館との出会いで、どんな名句が生まれるでしょうか。

三ノ宮駅集合

11月に入っても暑い夏が続いていましたが、11日に神戸で木枯らし1号。13日に氷ノ山初冠雪。と、あっという間に冬。この激変でメンバー2人が体調を崩され一風幹事長に欠席の連絡。

2023年11月16日(木)、JR三ノ宮駅改札口に午前9時15分が集合時刻。

天気は雲一つない快晴で、気温も暖か。晴れ男・一風幹事長の株がまた上がりました。

参加者は、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさんの女性3名、男性は一風さん、見水さんの2名の計5名で、これまでの句会で最少人数。9時10分に全員揃ったので出発します。

一風幹事長が、待ち合わせ中らしい女性にシャッターボタンをお願いし、出発の写真。

駅のコンコースを出て、神戸阪急北側の市バス7系統の乗場へ。神戸阪急にはクリスマスツリー。三宮周辺は大規模再開発が進行中で、勤労会館と旧・中央区役所はバスターミナル建設のため姿を消しました。

9時18分発の市バス7系統に乗り込みます。

みなとやまをゆく―――――――――

バスに乗って

市バス7系統は中央区の西部(旧・生田区)と兵庫区の山麓を走るバス。NHK神戸放送局・トアロード・北野工房のまち・東天閣(旧・ビショップ邸)・神戸北野ホテル・海外移住と文化の交流センター・諏訪山公園…と、神戸の山手の風景が次々と車窓に流れます。

「トアロードの異人館街はマンションに建て替わっても煉瓦塀を残しています。この坂道には昔はブラジル移民の人達のための金物屋が多く並んでいました」

山本通でかつて約20年暮らし、このバスで通勤した一風幹事長は観光バスガイドに早変わり。

「神戸百景」を2度描いた版画家・川西英さんは、この近くにあった「海洋気象台」を美しい絵に残しています。

       

兵庫区に入ると六甲山系の低い山々と大倉山・会下山に囲まれ、南に港が開けた奥座敷のような街。水の科学博物館(奥平野浄水場)・東福寺・五宮神社・祥福寺など歴史的な建物や寺社が点在しています。通りを進むと有馬街道と交差する「平野交差点」。

有馬街道沿いに祇園神社と湊山温泉、交差点に若い清盛像が立っています。2012年放映のNHK大河ドラマ「平清盛」の松山ケンイチそっくり。

バスが進み、道沿いに「みなとやま水族館」の表示。小学校の雰囲気を残しながら生まれ変わった複合施設「NATURE STUDIO」です。三宮から約20分、9時40分に「石井橋」バス停に到着しました。

雪見御所

バスを降りると、歩道沿いの一画に「雪見御所」の石碑。明治41年に湊山小学校の校庭から礎石や土器が発掘され、記念に立てた碑を移設しています。碑の説明によると、清盛の邸宅はバス道の北側の湊山町からここ雪御所町に広がっていたようです。

一風さんが、ここで追加のうんちく。清盛の都や「平野」について語ります。

清盛は、日宋貿易のため大輪田泊を修築。当時「平野」には平家の邸宅が軒を連ねていました。

  長明も踏みし落葉や今平野  一風

鴨長明が方丈記に描いたように、清盛はこの地へ遷都を行い、より土地の広い南部の和田のあたりも新都の候補になりましたが、平家の邸宅のある「平野」に「福原京」の建設を進めます。しかし、各地で反平家の勢いが増し、やむなく半年で京に還都。清盛が熱病で急逝すると、源平合戦により「平野」は灰燼に帰します。

  雪見御所跡地に仰ぐ冬紅葉     どんぐり① …○数字は句会での得点

  紅葉濃き平家栄えし湊山       見水③

  秋惜しむ兵庫の歴史ひもときて   つきひ①

  露けしや栄華の夢の雪の御所    つきひ②

5年前の第28回湊川まちぶら句会で、湊川公園から東山市場、氷室橋、湊川隧道を歩き、氷室橋の上で一風幹事長が名調子の歴史ガイド。湊川隧道でだっくすさんが名句を残しました。

  行く秋のトンネルの先異界かも  だっくす

氷室橋からここ雪御所までは数百メートルですが、鉄道の駅から歩くには遠く、前回の句会会場の兵庫公会堂も廃止されたので、今回は市バス7系統で三宮からの往復にしました。

湊山小学校

湊山小学校の創立は1873年(明治6年)。当初は霊山寺の仮校舎でしたが、1875年に北側の湊山町に小野浜の神戸海軍操練所の建物を購入し移築して本校舎に。1899年(明治32年)に雪御所町に移築移転。海軍操練所の建物は1920年まで校舎に使われました。2015年に141年の歴史を閉じて廃校。同時に、平野・荒田・湊川多聞小学校も廃校になり、現在は、4校が統合されて子供たちは新設の神戸祇園小学校に通っています。

子供たちの成長を願う学び舎は、どの地域でも一番いい場所に建っています。

児童数が減って廃校になった小学校の跡地は、建物を撤去し、地域に必要な高齢者施設や公園などに転用されていますが、北野小学校は、既存の校舎や広い運動場を活かして観光バスの駐車場を併設した「北野工房のまち」に、吾妻小学校は、生涯学習支援センター「コミスタこうべ」に生まれ変わっています。

みなとやま水族館

みなとやま水族館は、湊山小学校再生のコンペで選ばれた地元の村上工務店が企画・運営する複合施設「NATURE STUDIO」の目玉の施設。村上工務店は今年4月にオープンした「アーバン・ピクニック」を掲げる東遊園地のリニューアルにも参画し、新設のカフェを運営。神戸の歴史が刻まれた名所を新生させる斬新なアイデアが「みなとやま水族館」にも詰まっていそうです。

「NATURE STUDIO」になった小学校には、保育園や学童保育コーナー、就労支援施設も開設していますが、校舎や体育館に明るいデザインが施され、ハーブ・ショップやビール醸造所、フード・ホール、ガーデン・キッチンに変身。校庭は駐車場と緑地になり、小道の奥に水族館。

水族館のそばの屋外には枝を広げた樹を中心にドーナツ型のニジマス釣りができるFISH POND。山が近く、天王谷川と石井川が合流するこの地は地下水が豊富で、マス池の水やビールの製造に利用しています。

清盛の雪見御所の庭園があった場所に、いまは元気よく泳ぎ回る虹鱒の群れ。アイデアマンだった泉下の清盛も驚いていることでしょう。

今後、西側の駐車場の場所には、高齢者福祉施設や医療機関、レストランの建物ができる予定で、地域のつながりを優先させながら魅力ある施設づくりを発信していくようです。

水族館の開館は午前10時。まだ時間があるので、本日の会費を徴収させていただきました。

午前10時になり、全員の入館料を支払って入館。館内は、小学校の校舎だったと思えないお洒落な空間。各水槽には効果的に照明が当てられ、色とりどりの魚が舞い泳ぐ姿をじっくり観察できます。水槽の前にはクッションも置かれています。

  水槽の龍宮城めく冬館     どんぐり③

  冬晴の廃校世界の魚集ふ    見水② は句会での特選句

平日の午前中ですが、幼児を連れた家族やカップルが訪れ、楽しそうに見学しています。スーツ姿の男性の二人連れも熱心に見学。視察の出張かな。

  魚の骨赤く光りて冬めける   一風①

  小魚が立ち泳ぎする神無月   一風②

  冬の日に水槽前に話し込み   一風

飼育のスタッフたちは忙しそうですが、つきひさんがいろいろ質問すると、親切で的確な回答。感激!

  ネオンテトラ群るる水草薄紅葉    つきひ②

  造化とはシーアップルてふ海鼠かな  つきひ③

  小さき巻貝のいのちや秋うらら    へるめん

水槽を一巡し、次は靴を脱いで上がる展示室。愛嬌のあるミナミトビハゼやチンアナゴ、クラゲがゆらゆら。見せる工夫が巧みです。

よちよち歩きの幼児も、円柱の水槽でゆらゆら動くクラゲを不思議そうに見ていました。

  濡れ岩に飛鯊微動なく並び     へるめん②

  水中で師走を待つやチンアナゴ   一風①

  小六月首伸ばしたるチンアナゴ   どんぐり①

  秋思かな海月仰むき俯きて     へるめん④

隣の部屋には水琴窟や手を入れると吸い付いてくるドクターフィッシュ。

  ドクターフィッシュ十指まかせし小六月  つきひ①

  くすぐったいドクターフィッシュ冬隣   見水②

まだありそう、と進むと愛らしい2匹のコツメカワウソ君が水中を猛スピードで泳ぎ、泳ぎ疲れてちょっと休憩。ドアの外の屋外には錦鯉の池。自販機でエサを買ってエサやりもしました。

  秋の日のカワウソひとりあそびかな   へるめん①

おや、ここも、と覗くと上でじっと動かないナマケモノに大きなカメ、飛び回る小鳥たちも。水辺の生きものたちが平和に暮らしています。

迷路のような水族館を堪能して出ると、グッズショップ。飼育員さんが考案したオリジナルのぬいぐるみやタオルハンカチなどがあり、今回の句会の賞品はこのショップで購入しました。

都会の里山

水族館の外に出ても、一面の緑地は暖かな日差し。静かな郊外の里山でピクニックをしている気分です。しばし、本日の提出5句をまとめました。

  水族館出て小路の草の花       へるめん

  末枯のレモングラスのさゆれつつ   どんぐり

  しじみ蝶集ふハーブの庭小春     どんぐり②

午前11時15分、みなとやま水族館を後に「石井橋」のバス停へ。市バス7系統で三宮に戻ります。車窓から再び神戸の街の風景を楽しみながら十数分、元町に近い「三宮町2丁目」で下車。広東料理「良友」の入っている南泰ビルと貸会議室のあるセンタープラザ西館は目の前です。

食は広州にあり――――――――――

9月の句会の下見で、市バスを降りてからあまり歩き回らずに昼食と句会ができるよう探し、試食もして決めた昼食会場が広東料理「良友」。店名もわが句会にぴったり。今回は珍しく中華の昼宴会です。

午前11時50分に広東料理「良友」到着。

用意された席に着き、ビールを注文。料理が出てくると、阪神ファンお待ちかねの、

「38年ぶり日本一に乾杯!」

残念なのは大の阪神ファンだった播町さんの祝勝の弁が聞けないこと。1962年の優勝パレードでは紙吹雪を撒き、1985年には「ニューコロナ」で店にあふれるファン達と日本一の美酒に酔いしれた播町さん。今回は、蒼天からの高笑いが聞こえてきそうですが。

紙のランチョンマット(敷紙)や箸袋を見ると、さっき水族館で見たタツノオトシゴ。良友酒家のマスコットのようです。

昼のお手軽なランチコースですが、大皿でなく、1人分ずつ、前菜、スープ、メイン料理…と手際よく器が運ばれ、焼きそば、デザートまで約1時間。熱いウーロン茶のポットも出してもらい、料理もお茶も美味しくいただき、満腹になりました。

  良き友と食は広州冬温し  見水①

総勢5名の少人数なので、話題は個人的なことにも。

毎回熱心にテレビ観戦し、日本シリーズの第7戦で決着した38年ぶり阪神日本一に、アンチ阪神でオリックスファンの一風幹事長は不満そう。

「一風さんは尼崎出身なのに、なぜアンチ阪神?」と、つきひさんの突っ込み。

つきひさんは今春から朝日新聞の朝日俳壇への投稿を始め、3回も選に入りました。初めて選ばれた時には新聞社から確認の連絡があるそうです。

「つきひさんはいつから俳句を?」の質問に、

「中学生の時から。山陽中学生新聞で一席になり賞金を貰ったこともあるのよ」

「見水さんはブログをアップしているけど、書くことはもともと好き?」の質問には、

「就職して最初の担当が職員誌と広報。6年間、先輩や元新聞記者の係長、大阪の新聞記者OBの編集者らに仕込まれて、取材や原稿書き、写真撮影、イラスト描きが楽しくなりました」

播町さんが始めた句会のまとめの編集を2007年の第5回伊丹句会から、ブログへの入力を2015年の第21回弓削牧場句会から引き継いでいます。

大きなバッグからつきひさんが取り出したのは、たちばな句会の内田幸子さんの米寿記念句集「大根の花」。

「私もちょっとお手伝いしたので読んでみて」と、冊子をお預かりしました。

家に帰ってざっと拝見。わかり易い共感できる句が多く、あとがきの「現在の超高齢化社会に於いては八十八歳はまだまだ未熟者…」以下の言葉に頭が下がります。来年の夏はわが家庭菜園でも大根の種を蒔いてみたくなりました。

午後1時15分、昼食会終了。「良友」を出て、句会の会場のセンタープラザ西館まで歩き、午後1時20分に予約していた6階の貸会議室15号室に到着。

良友句会―――――――――――――

昨秋の句会でも利用した貸会議室15号室は、窓から六甲山が望めるゆったりした部屋。人数分の座席を作り終えると、各自5句を完成させ短冊に書きます。提出期限は午後1時45分。

集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。午後2時10分に選句表を人数分コピーして全員に配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者5名の総点数35点の争奪戦です。

午後2時30分、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。25句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

午後3時30分、句会は終了。つきひさんの差し入れのお菓子をいただきながら、会議室に用意されているお茶で一息。今回は高瀬舟羊羹とみるく饅頭、和風スイートポテトをいただきました。

みるく饅頭とスイートポテトのメーカーの本社は愛媛県八幡浜市保内町川之石。つきひさんの姪御さんが川之石に嫁がれ、お子さんは川之石小学校の卒業生。小学校の先輩に、俳人の富澤赤黄男がいて、校内に句碑もあるそうです。

まだ時間がたっぷりあるので、つきひさんは富澤赤黄男の資料を紹介。

  蝶墜ちて大音響の結氷期  赤黄男

いま、ロシア-ウクライナ戦争に加え、イスラエルのガザの惨禍に、世界中の人々が心を痛めています。日本が戦争の泥沼へつき進んだ80年前、富澤赤黄男は召集で出征し、戦場から多くの句を送りました。資料には、凄惨な戦場での俳句が並んでいます。

「代表句の『落ちて』ではなく『墜ちて』をよく見てね」と、つきひさん。

「当時、戦場からよくこんな句を送れたな」と、一風さん。

二度と戻りたくない時代です。

「次の句会は春やね」

桜の名所やまだ行ったことのない名刹もいろいろ浮かびますが、

「やっぱり近場かな」

今回のような、誰もが楽しめる近くの穴場を探しましょう。

高得点句

本日は4点獲得句が1句と、3点句が3句ありました。再掲します。

 秋思かな海月仰むき俯きて            へるめん④◎

  円筒形の水槽の中でゆらゆら寝返り。

 造化とはシーアップルてふ海鼠かな  つきひ③◎

  なんとも不思議な生き物ですね。 

 水槽の龍宮城めく冬館                どんぐり③

  静かで幻想的な深海にいるよう。

 紅葉濃き平家栄えし湊山              見水③

  源氏は白旗、平家は赤旗でした。    

表 彰

午後4時、獲得点数によりいつもは表彰式ですが、少人数なので皆で写真を撮りました。

優勝は、つきひさん(9点)、準優勝は見水さん(8点)、第3位はジャンケンでどんぐりさん(7点)。第4位はへるめんさん(7点)、第5位は一風さん(4点)。出句5句すべて得点のパーフェクトはつきひさん。賞の命名は見水さんです。

女性軍3名対男性軍2名は23点対12点でした。

  

午後4時15分、部屋を片付けて退室。

センタープラザ、サンプラザ、マルイを抜けて、交通センタービルへ。午後4時半に解散。

好天に恵まれ、句友との吟行と食事、句会で楽しく遊んだ時間はあっという間でした。

下見の一風さん、蛸地蔵さん、見水さん、句会運営のつきひさん、賞品選びのへるめんさん、どんぐりさん、おつかれ生でした。

今年は、播町さんが望んでいた「花の大中遺跡句会」が奥様のご協力で実現し、3年半のコロナ禍が終結し、阪神タイガースの岡田監督の「アレ」も、「アレのアレ」も実現しました。

  六甲颪神戸の街を吹きぬける  見水 

来年のたつ年、2024年・令和6年の願いは、一つ。

ウクライナとイスラエル・ガザの惨禍を1日も早く終結させ、人々が平和で明るい未来に向かって歩みを進めること。

自由で遊び心いっぱいの神戸RANDOM句会がいつまでも続きますように。よいお年を。

2023.11 写真・文/mimizu

 

 

 


 

 

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2023=花の大中遺跡句会

2023-04-13 | 吟行句会

 

印南野へ  印南野に春の光やペダル踏む 播町

「わが最後の句会は散歩コースの大中遺跡公園やで」

と、播町さんはよく話されていました。

ブログにも「遺跡公園、博物館広場、であい公園、北公園と約200メートル続く地に毎朝行っている。公園まで往復1時間、ベンチで読書1時間という日課である」と書いています。

「最後の句会」は開催されることなく、

  この世への礼状あまた風涼し

の句を遺して、昨年6月に播町さんは旅立たれました。

昨秋の「第37回・回想の三宮句会」のまとめのブログに、春は「花の大中遺跡句会」を、と書いたところ、播町さんの奥様がこれを読まれて一風幹事長に連絡、ご協力をいただけることになりました。

2月に一風・蛸地蔵・見水の3名で奥様と一緒に現地を下見。桜の見頃の4月6日を句会の開催日にし、メンバーに案内状を送りました。

桜の開花が早まり、4月1日には各地で満開。コロナ禍の行動制限が解除され、4年ぶりのお花見で桜の名所は賑わいました。好天が続き、昨晩から雨。今日の句会は桜を散らす雨中吟になるはずが、雨は奇跡的に上がり、家を出る頃には薄っすら青空も。日中は傘が要らないとのこと。

大中遺跡公園は、播磨町の北の端、ため池と田畑が広がる印南野台地の南端にあります。今日はベンチで読書中の播町さんに会えるかも知れません。印南野・播磨町を訪ねます。

土山駅集合  たんぽぽの絮廃駅の辺りまで 播町

2023年4月6日(木)、通勤時間帯をはずし、JR土山駅改札口に午前10時20分が集合時刻。

  播町の祈りか花の雨上がる    さくら③ …○数字は句会での得点

  印南野の百の池へと飛花落花   さくら③

西神戸のさくらさんは、旦那様のクルマで圓満寺まで先回りです。

  播町さんちょっと春雨黄泉句会  ひろひろ

  出る涙ZOO花句会作さんへ    ひろひろ

一番近い隣町明石のひろひろさんは、雨が止んだので電動自転車で駅へ。「ZOO花句会」は桜乱舞の第12回王子動物園句会を思い出して。昔から親しく呼んでいた「作さん」で句作。

  なき友がストップかけたか春の雨  稲村

二番目に近くの稲美町の稲村さんは、駅までクルマで送ってもらいました。

  春曇故人を偲ぶ句会あり      蛸地蔵

伊丹の蛸地蔵さんは、阪急電鉄で三宮へ。

  千の雨播磨の春を潤せり      見水①

  べっちょないたかが春雨との声が  見水

北神戸の見水さんは、神戸電鉄と市営地下鉄北神線で三宮へ。JR三ノ宮駅で蛸地蔵さん・一風さんと合流して新快速に乗り込みます。「たかが」は播町さんの口癖でした。

  播磨路は播町日和飛花落花     つきひ③

西明石のつきひさんは、土山駅に早く来て、であいのみちを一人で吟行、圓満寺で合流します。

JR土山駅は橋上駅なので改札口はホームの上。改札口を出ると、播町さんの奥様と早く着いたひろひろさんがお待ちでした。

  友の地に友の顔なし春句会     稲村③◎ は句会での特選句

稲村さんは、奥様にごあいさつ。

  鳥ぐもり「やあよく来たね」と播町さん へるめん④

へるめんさんには播町さんの声が聴こえました。

本日の参加者は、さくらさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさん、の女性4名、一風さん、蛸地蔵さん、稲村さん、ひろひろさん、見水さん、の男性5名の計9名で、駅に集合したのは7名です。

一風さんが押してきた大きなキャリーケースには、事前に、どんぐりさん、へるめんさん、一風さんが、神戸で選んできた句会の賞品が詰まっています。

土山駅にはかつて多木化学の肥料を運んだ別府鉄道が接続していましたが、1984年に廃線。

昭和30年代の神戸の小学生たちにも懐かしい鉄道で、当時、別府(べふ)は潮干狩りの名所。潮干狩りの遠足で採ったアサリやマテ貝を自慢し合いながら家路に着きました。尼崎で育った一風さんは、「ぼくらは、甲子園浜やった」。別府の潮干狩りは1967年に終了。遠浅の海は埋め立てられて神戸製鋼所に。

駅の南側のロータリーに降ります。ロータリーの真ん中に古代の物見やぐらを模した大きな時計台。大中遺跡への玄関口のモニュメントです。本日のスケジュール表が配られ、第38回神戸RANDOM句会・花の大中遺跡句会のスタートです。

播磨町を歩く―――――――――――

であいのみち  小さき春見つけて子らの列乱る 播町

「であいのみち」は、別府鉄道の線路を撤去後、1989年に整備した遊歩道。両側に花木が植えられ、現在から弥生時代までの時間旅行が楽しめるタイムトンネルゲートを配置し、大中遺跡公園まで徒歩20分で結びます。

  彼の人の歩いた道に雨弥生    一風②

  一面に桜散り敷く散歩道     見水

  友しのぶであいの道やはなみずき 稲村②

  花爛漫心もなごむ散歩道      蛸地蔵①

  播町さんの魂と歩けば柳絮とぶ  へるめん

満開の桜、池と枝垂桜が美しい 日本庭園、茶会や研修に利用される「蓬生庵」、圓満寺の五重塔が見えてきました。「野添北公園」です。播町さんの日課の散歩コースまでやってきました。

圓満寺  土に還りやがて芽吹くと思うかな 播町

  長閑なる川のほとりに御堂建つ  一風

  楠若葉作さん眠る圓満寺     ひろひろ

午前10時50分に圓満寺でつきひさん、さくらさんと合流。奥様の案内で播町さんの眠る納骨堂を参拝します。圓満寺は隅々まで手入れされ親しみやすいお寺です。

  納骨堂に桜蕊降る安らけく    つきひ

「寺の墓地は、当方がいつも散歩し、ベンチで本を読む公園と隣り合わせにある。当方の納骨スペースもこの寺に確保している」と、播町さんはブログに書いています。

納骨堂の播町さんの位牌には奥様がお花を供えられ、線香の煙。

  般若心経に始まる追悼句会かな  さくら

  納骨堂花冷の手を合はしけり   さくら⑥◎◎

  心経は死者に生者に春陰に    つきひ③

一風さんが朗々と般若心経を唱える中、「お久しぶりです」と各メンバーが順に参拝。

  野の花を添えてお参り春の寺   どんぐり④

へるめんさんは、途中で摘んできた野の花を手向けました。

  観音に抱かれ春の中天に      つきひ②

  回向終え眺めて歩く花の道     蛸地蔵①

五重塔・観音像の前で全員集合写真(末尾に掲載)。奥様から播町さんの遺影の写真を預かり、山門を後にしました。

芝生広場・屋内休憩所・バーベキュー施設がある「野添であい公園」を横目に、喜瀬川へ。

喜瀬川  早春の橋より橋へ水速し 播町

喜瀬川は、印南野台地から海まで、播磨町の真ん中を流れる自然を残した美しい川です。両岸の堤には遊歩道が整備され、今日は桜が咲き誇っています。

  さまざまに思うて見るやさくら花  蛸地蔵

  亡き人を偲んで観てる桜花      蛸地蔵

2月の下見のときは、播町さんの奥様の案内で、川沿いに山陽電車「播磨町駅」まで歩き、シラサギやアオサギを見かけました。伊丹の蛸地蔵さんは「飛行機の騒音も無いし、静かでええとこや」と言っていました。播町さんもこのふるさとの川の風景にしばしば癒されたことでしょう。

  播磨路の空を往き交ふつばくらめ  どんぐり③

  縄文の遺跡を下り春の川       一風

大中遺跡は、印南野台地に広がっていた弥生時代末期から古墳時代の大規模集落の南端部分ですが、石器時代から縄文時代の石の矢尻も見つかっており、その時代には狩りの場でした。橋を渡ります。

大中遺跡公園  宙仰ぐ子をまんなかに青き踏む 播町

午前11時20分、大中遺跡公園の東入口に到着。定休日の月曜日以外は無料開放されています。

目の前に、全体が草に覆われ、史跡公園と一体化した小山のような建物。兵庫県立考古博物館です。西の端に古代の物見やぐらのような展望塔が立っています。

広い園内には、竪穴住居が復元され、県立考古博物館と播磨町郷土資料館が建ち、別府鉄道の車両が屋外展示されていますが、これらは、播磨町の60年の歴史とともに整備されました。

1962年、兵庫県の最後の村だった「阿閇(あえ)村」は、町制施行で「播磨町」に生まれ変わります。播町さんは、この時20歳でした。

「播磨」は古い地名で今も兵庫県南西部一帯の地方名ですが、県下最小の東播磨の6㎢の町が、未来への発展を願い、「播磨」を名乗って船出。1969~1975年には海を埋め立てて3㎢の人工島を作り、多数の工場が操業します。また神戸や姫路への通勤圏で、1960~1990年代に人口が急増し、現在、人口3万4千人の町です。

大中遺跡の大発見は、播磨町が船出をした年。地元のお年寄りから大正時代に別府鉄道が敷かれた時、畑から大量のタコツボが掘り出されたことを聞いた中学3年生の3人組が、その近くの工事現場で大量の土器片を見つけ、考古学に詳しい高校の先生に見せると、弥生時代の土器。

その後、県の発掘調査が1962年から2003年まで20次にわたって実施されました。

1974年に「播磨大中古代の村」開園、1984年に別府鉄道廃線、1985年に「播磨町郷土資料館」開館、1989年に「であいのみち」完成、2007年に「大中遺跡公園」・「兵庫県立考古博物館」完成、と、遺跡の発見から45年をかけて今の姿になりました。

土器片を発見した中学生は今75歳。その一人で地元の歯科医師になられた方は遺跡の保存にも尽力されたとか。素晴らしい史跡公園になり、感慨ひとしおでしょう。

 

約50分で園内を自由に見学、吟行し、12時15分に郷土資料館へ集合です。

播町さんが読書をしたベンチを探しながら、竪穴住居の点在する弥生集落跡を歩きます。復元されている住居はごく一部で、この高台の遺跡には250戸ほど建っていたようです。

2月の下見のときは、梅林で紅梅が咲いていた(下写真右)ので、桜を期待しましたが、大中遺跡の桜は八重桜で、開花はまだ。楠などの大木が茂り、クローバーとたんぽぽが一面に。

 

  たんぽぽの咲き敷く古代遺跡村  へるめん③

  遅桜弥生遺跡に千の風       へるめん①

播町さんは千の風になっています。

  日の差して遺跡公園たんぽぽ黄  どんぐり

  弥生式住居入口たんぽぽ黄     どんぐり①

しあわせな黄色いたんぽぽに囲まれて。

  古代人作さん黄泉の花句会    ひろひろ

播町さん(作さん)は春の遺跡公園で古代人と句会?

  大中は古代も同じ春の風      稲村③

  悠久の大中遺跡青き踏む      見水③

この広い野原にいると時間が経つのを忘れます。

考古博物館  印南野の平かにして凧一つ 播町

今日はゆっくり見学できませんでしたが、兵庫県立考古博物館は、2007年に「触れる・体感する・考古学のワンダーランド」として設置されました。展示室の入場料は一般200円、高齢者100円で、県内各地で出土した考古資料を臨場感豊かに展示。古代体験やイベントを通じて古代人の知恵や工夫を学べ、家族連れで楽しめます。考古学資料を集めた情報プラザ、加古川名物「かつめし」も提供するカフェ、ショップ、東播磨を一望する展望塔、いろいろと遊べそうな施設です。

  展望の播磨平野や花曇   どんぐり③

どんぐりさんは展望を楽しまれました。

播町さんは、若い頃にデザインを学び、仕事では、「神戸ファッション美術館」の開設や神戸市の図書館の改革をされ、リタイア後は、「ミュージアム88か所めぐり」と称して全国各地の美術館を訪ねました。遺跡公園と一体化し、誰でも気軽に利用できるこの博物館を、気に入っていたようですね。

郷土資料館  はまひるがほ少年無為の刻あるべし 播町

1985年に開設し、播磨町の歴史が学べる展示室です。60年前に地元の中学生が発見した弥生土器片、江戸時代の初めに干ばつに苦しむこの地に用水路を引いた先人の努力、今も続く伝統の祭り、13歳のときに船が漂流して米国船に救助され、欧米の近代文明と英語を習得し、帰国して明治の近代化に貢献した郷土の偉人、ジョゼフ・ヒコ(浜田彦蔵1837-1897)の業績などをわかりやすく展示しています。

熱心に見ているのはさくらさんと稲村さん。稲村さんは隣の稲美町で生まれ育ち、現在、郷土誌「印南野文華」を主宰。阿閇村、祭り、別府鉄道など、さくらさんの疑問に的確にコメント。

窓口には郷土資料のパンフが置かれ、「播磨町歴史かるた」や別府鉄道のペーパークラフトも販売。資料館の裏手には懐かしい別府鉄道の車両を展示。播磨町の郷土愛の深さにはまりました。

12時20分、公園西入口に呼んだ3台のタクシーに分乗して山陽電車「播磨町」駅前にある「小磯すし」に移動。電動自転車のひろひろさんは一足早く出発して喜瀬川沿いを下ります。

小磯すし  桜ふぶくわがロスタイム酔いの中 播町

句会場に播磨町中央公民館の研修室を予約したので、近くで昼食場所を探し、播町さんの奥様から法事で利用したのをお聞きし「小磯すし」に。仕出しもする地元の小さな寿司店です。下見の日もここで昼食をし、2階の座敷を予約しました。

播磨町には、阿閇と古宮の2つの漁港があり、町の特産品は、海苔・干蛸・穴子。穴子寿司が自慢の「小磯すし」なら、今回の播磨町の花の句会にピッタリ。いい句ができるかも…。

12時30分に店に到着。2階の座敷に着席し、今回の会費を徴収し、タクシー代を精算。料理が出てくると、ビールとウーロン茶を注文し、12時45分、乾杯しました。

コロナ禍の自粛で、仲間との贅沢な宴会は久しぶり。寿司職人の料理に、グルメ番組の下手な食レポのように「旨い!」「旨い!」を連発しながら、話が弾みます。

「これ、見て」と、へるめんさんが取り出したのは、大中遺跡で見つけたクローバー。

5つ葉です。第6回石山寺句会でも瀬田川の河原で4つ葉のクローバーを見つけ、前衛書家はクローバーを見分けるのも天才でした。

「声も通っていいし、いつ覚えたの」

は、一風さんの納骨堂での見事な般若心経の読経。

「以前、座禅の修行に通って知らん間に覚えた」

「お坊さんのアルバイトができるよ」

「犬が可愛いいんや」と言うのは、ひろひろさん。

「夫婦の会話が険悪になると、犬はどこかへこそこそ隠れるんや」

「言葉がわかるんやね」

「犬が可哀そうやから、夫婦喧嘩は中止や」

播町さんと、稲村さん、へるめんさんは加古川の高校の同窓生。男女共学でも当時は男女のクラスは別で、一緒になる部活動が楽しかった… 懐かしそう。

皆で心配したのが、去年の夏から秋の一風さんの体調。

「不眠に悩まされ、何べんも検査したけど原因がわからなかった。今は何とか回復した。保健や衛生の仕事ばかりしてきたが、患者さんの気持が初めてわかった」…いい話でした。

  コロナ禍よもうくるなよと鮓を食う 一風

  ごっとはん播磨の穴子いただくわ  見水①

13時50分、予定時刻を20分オーバーして、昼食会終了。満足しました。「おあいそ」しましたが、予算内で収まりました。ご馳走様でした。

店を出て、句会の会場へ移動します。

 

播磨町句会――――――――――――

午後2時10分、播磨町中央公民館に到着。玄関前で、郷土の偉人・ジョセフ・ヒコ像に出迎えられました。

受付で鍵をもらい、2階の研修室5へ。

部屋に入って目に飛び込んだのは、満開の桜。

  句会場窓いっぱいの桜かな  さくら②

  窓ごしに桜ながめて句会かな 稲村

人数分の席を作りながら桜を見ていると、風が吹くたびに、花びらが散っています。

  遺されし者の集ひや花吹雪  へるめん②

  錯乱す心のやうに花吹雪   つきひ

  播町の魂生きるや花句会   ひろひろ③

2月に下見をして予約したときは、桜の樹があることに気づきませんでした。播町さんお得意のサプライズなのかも。奥様から預かった播町さんの写真をテーブルの上に。

懐かしい播町さんの笑顔があると、以前の句会の雰囲気が蘇ります。

各自5句の提出期限は午後2時30分。集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付けます。午後2時45分に選句表を人数分コピー。つきひさんの差し入れの抹茶と白のほうらく饅頭をいただきながら、お茶、コーヒー、紅茶で一息。

午後2時50分、全員に選句表を配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者9名の総点数63点の争奪戦です。

午後3時05分、つきひさんとさくらさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。45句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

つきひさんが作者の一風さんに、「この句の六二三って何?」

  六二三昭和時代の桜枯る  一風

「六二三、6月23日は播町さんの命日。そして沖縄戦が終結した『慰霊の日』でも」

播町さんの誕生日は1月17日。その日に阪神・淡路大震災が起きました。1月17日には毎年、東遊園地での慰霊に行かれていたようです。東日本大震災の甚大な被害や進まない復興、ロシア-ウクライナ戦争の惨禍に心を痛めておられた播町さんを思い出します。

高得点句

本日は6点獲得句が1句と、4点句が2句ありました。再掲します。

 納骨堂花冷の手を合はしけり        さくら⑥◎◎

  桜の季節にお参りできました。自転車のハンドルも冷たかった。

 鳥ぐもり「やあよく来たね」と播町さん へるめん④◎

  今日の播町さんは、桜守?千の風?

 野の花を添えてお参り春の寺        どんぐり④◎

  播町さんならきっと喜んでくれそう。 

3点句の11句の佳句も再掲して列挙します。

  播町の祈りか花の雨上がる      さくら③

  印南野の百の池へと飛花落花     さくら③

  友の地に友の顔なし春句会      稲村③◎

  播磨路は播町日和飛花落花      つきひ③

  心経は死者に生者に春陰に      つきひ③

  播磨路の空を往き交ふつばくらめ どんぐり③

  たんぽぽの咲き敷く古代遺跡村   へるめん③  

  大中は古代も同じ春の風      稲村③

  悠久の大中遺跡青き踏む      見水③◎

  展望の播磨平野や花曇       どんぐり③

  播町の魂生きるや花句会      ひろひろ③◎

表彰式

午後4時05分、獲得点数により表彰式です。

優勝は、さくらさん(14点)、今日の桜の句会にぴったり。おめでとうございます。

準優勝はどんぐりさん(11点)、第3位はへるめんさん(10点)。

今回は出句5句すべて得点のパーフェクトの方はいませんでした。

他のメンバーは、稲村さん(8点)、つきひさん(8点)、見水さん(5点)、ひろひろさん(3点)、蛸地蔵さん(2点・ブービー賞)、一風さん(2点)。同点の方はじゃんけんで賞を決めました。賞は見水さんの命名ですが、「たんぽぽ賞」の命名を忘れていました。

播磨町郷土資料館で買った「播磨町歴史かるた」も賞品に。これはアミダくじで蛸地蔵さんに。

女性軍4名対男性軍5名は43点対20点で、女性軍が圧勝。

窓の外の桜を背に、上位4名の写真を撮りました。

  

   

午後4時15分、窓の外の満開の桜を背に、播町さんと奥様も入っていただいて全員集合写真を撮り、部屋を出て、中央公民館の玄関前で解散しました。

雨中吟になるはずが、雨があがり、桜に出会え、播磨町の春を満喫できました。

奥様からは「この句会が1回でも多く続きますように…」のお言葉を添えて、地元・播磨町のケーキ屋さんのお菓子を頂きました。心づくしのいろいろなご配慮ありがとうございました。

  降っているいないとも見ゆ春の雨  かをる(第4回須磨寺句会)

  今日の日のための落花と思ひけり  だっくす(第12回王子動物園句会)

今回の句会、かをるさんとだっくすさんも、ご一緒されていたのかも…

帰宅する頃には雨が降り始め、夜中から春の嵐で桜はすっかり散りました。春は駆け足で進み、木々が芽吹き、若草が萌え、千の風が大空を吹き渡っています。

遊び心いっぱいの自由で元気な神戸RANDOM句会が、いつまでも続きますように。

2023.4 写真・文/mimizu

 

 

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2022=回想の三宮句会

2022-11-30 | 吟行句会

  

わが街・三宮

  空青し六甲連山冬紅葉       どんぐり① …〇数字は句会での得点

摩耶山も六甲山も紅葉し、街は歳末の装いになってきました。

3年続くコロナ禍は第8波の大波が忍び寄り、ロシア-ウクライナ戦争は終わりが見えません。

阪神タイガースはシーズン終了後、矢野監督から岡田監督に交代。オリックス・バファローズは震災直後の「がんばろうKOBE」以来26年ぶりの日本一の快挙を果たしました。

  青空に友の顔うかぶ小春日和  ろまん亭

わが句会は、春の祝20周年有馬句会のあと、思いもしなかった播町さんとだっくすさんの突然の旅立ちで、暑く長い夏でした。涼しくなり「まだですか」の声があがり、生前のお二人の思い出も詰まった三宮で吟行、食事会、句会三点セットの句会を開催することにしました。

  夏鬱々江戸町京町浪花町       播町

  着ぶくれし人も輝くルミナリエ  だっくす

神戸の玄関口・三宮は、1995年1月の阪神・淡路大震災で壊滅。復興でよみがえった街は四半世紀を過ぎ、いま再整備が進んでいます。

1960年代、戦後の荒廃から復興し経済成長で豊かになっていく時代、神戸の子供たちにとって、花時計や国際会館、そごう神戸店のあった三宮はあこがれの街でした。

わがメンバーも勤務地が三宮になると、昼休みには街に出てランチとコーヒー、残業の無い日はショッピングや呑み会で街を徘徊しました。

今回は、晩秋の三宮界隈を歩いて、過ぎた日々を回想し、この街の未来を垣間見ます。

メンバー集合

  久しぶり都会の香り秋惜しむ  蛸地蔵

2022年11月24日(木)、コロナ対策で通勤時間帯をはずし、集合は午前10時30分、JR三ノ宮駅中央改札口。

「昨日だったら大変でしたよね」

勤労感謝の日で休日だった23日は、雷の鳴る悪天候でした。今日も「曇りで北風強し」の天気予報でしたが、ぽかぽかした小春日和。はれ男・一風幹事長の願いが届いたのでしょうか。

  追悼の句会小春の三の宮     さくら①

  追憶に追慕に三ノ宮小春      つきひ⑤◎◎ は句会での特選句

メンバーが集合し、第37回神戸RANDOM句会「回想の三宮句会」のスタートです。

今回の参加者は、さくらさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさんの女性4名。男性は、蛸地蔵さん、稲村さん(昼食会から合流)、見水さん、ろまん亭さんの4名で計8名。ろまん亭さんの奥様も同行されるので総勢は9名。英さん、ひろひろさん、弥太郎さんは都合がつかず、幹事長の一風さんは体調が万善でないため今回は欠席です。

見水さんが本日のスケジュール表を配ります。

三宮を歩く――――――――――――

今回はメンバー全員が勝手知った場所なので、各自の自由行動とし、喫茶店や書店で過ごすも良し、神戸市立博物館の特別展の鑑賞も良し、としましたが、往復2kmの「花時計周遊コース」を提案、有志でフラワーロードを歩くことにしました。

変わる三宮界隈

3年続くコロナ禍の巣ごもりで三宮の事情にも疎くなりました。見回してみると、三宮界隈はあちこち変化しています。昨年4月に開業した高層の「神戸三宮阪急ビル」と北隣の「サンキタ通り」。オープンテラスで飲食できるヨーロッパの街並みに。

三宮の駅周辺では、今後、JR三ノ宮駅ビルの建て替え(2029年度開業予定)、勤労会館・中央区役所・サンパルを撤去した跡地に西日本最大級のバスターミナルを備えた図書館、ホール、オフィス、ホテルなどの入る高層ツインタワー(1期ビルは2027年度開業予定、2期ビルは1期完了後に着工予定)の建設と、それらをつなぐ歩行者デッキが整備される予定です。

撤去前のJR三ノ宮駅ビルの屋上には人気のビアガーデンがあり、夏になると黒ビールやハーフ&ハーフを楽しみました。JR西日本はすでに京都駅と大阪駅で斬新なターミナルビルに建て替えて成功しており、三ノ宮駅がどんな駅ビルになるのか楽しみです。

フラワーロード

エスカレーターでさんちかに下り、車道を横断して上りのエスカレーターでマルイの前へ。街路樹と花壇、彫刻で彩られた神戸の玄関口・フラワーロードの歩道を南へ歩きます。

神戸市は、駅前の三宮交差点を中心としたエリアを「三宮クロススクエア」と名付け、このエリアで一般車両の通行を排除し人と公共交通を優先させる計画を進めています。信号待ちや指示器を点灯させて待機している車たちを横目に20~30mある横断歩道を渡りきるのは一苦労。実現すれば、誰にもやさしい街になるでしょうね。

  ビル街も小春の中に佇みて     蛸地蔵

ビル街を見ながら、国際会館まで下ってきました。神戸市役所が目の前。

神戸市庁舎

  金風や生まれ変はれる新庁舎  さくら①

花時計は移設、市庁舎2号館は解体されて、現在、「連絡ロビー・エネルギー施設」を建設中。完成すれば現在のエネルギー施設を撤去し、「新庁舎・にぎわい施設」が建設されます。

 

地下に広い職員食堂のあった神戸市役所の本庁舎(後の2号館)は、1957 年に兵庫区から現在地の中央区に移転。当時は「生田区加納町6丁目7番地」。1980年の合区で「中央区加納町6丁目5番地」になりました。

  六丁目七番地過ぐ冬うらら   へるめん

  市庁舎も地下食堂もなし寒し  へるめん

2年前、さくらさんは、「市役所2号館が63年の歴史を閉じ解体される事になりました。震災で6階が損壊した姿を思い浮かべつつお別れに行きました。生まれ変わる庁舎に期待を寄せています」の言葉とともに、

  解体す庁舎に一礼秋惜しむ    さくら

の句を詠みました。

この句に、播町さんは、「神戸市庁舎。ここでは1.17の無残な姿ではなく、新聞会館、国際会館とともに三宮の“3大雄姿”だった1957年の市庁舎(別添写真)を見よ。当方は、59年からここの4階で働いた。屋上のオリエンタル食堂のカレーの味もいまだに忘れられない」とコメント。

  出ましたぜ河野屋出前鍋うどん  稲村①

稲村さんの思い出は、残業のとき空腹を満たした河野屋の出前うどん。市庁舎の向かいにあり、注文したうどんがなかなか来ないので電話で催促すると、返事はいつも「今、出ました」。職場で語り草でした。まだコンビニも携帯電話もない40年以上前の話。パソコンもワープロもない時代で、資料作りは電卓と手書きでした。慌てて運んできた若い出前のお兄さんも、今はもういい爺さんになっているでしょう。

「株式会社神戸市」の業務は広がり、1966年に第2庁舎(後の3号館)、1978年に第3庁舎(後に退去)、1989年に現在の1号館、震災後の2011年には4号館が増設されましたが、2号館と3号館は老朽化が進み、建て替えが検討されてきました。

今年9月に新2号館の開発事業者が決定し、概要が明らかになりました。

地上24階(高さ125m)、地下2階、延床面積約73,000㎡。市庁舎は地下1階から地上5階。6階から14階は企業が入居するオフィス。16階から24階には国際的な高級ホテルを誘致。地下1階から地上2階には商業施設も。2025年に着工し、2028年竣工、2029年開業の予定。三宮の中心部から旧居留地、ウォーターフロントへの回遊性の向上につながる建物になるとのこと。

完成予想図を見ると、1号館並みの高層ビルですが、外観はガラスを多用し、街の雰囲気に合ったシンプルで開放的なデザインです。

3号館は2019年に解体。跡地に今年7月、中央区役所と中央区文化センターが完成済です。

2号館の建設現場は巨大クレーンが動き、未来予想図の描かれた工事パネルで覆われています。

  さざんかや工事パネルの巾広き  ろまん亭③

4日前の日曜日の11月20日には、3年ぶりに第10回神戸マラソン大会が開催され、2万人のランナーが市庁舎前からスタートしました。

日本で最初のマラソン大会は1909年に神戸で開催された「マラソン大競走」。2011年にマラソンのスタート地点の市庁舎前に「日本マラソン発祥の石碑」が設置されました。

  オリーブの実ゆらりフラワーロードかな  へるめん

フラワーロート沿いの花壇には様々な樹木が根付いており、へるめんさんは黒く熟れたオリーブの実を発見。

  市庁舎に冬の太陽降り注ぐ    見水

  冬日受く市章マークの輝きて   どんぐり①

  市庁舎に人を惜しみて秋惜しむ  つきひ

すっかり青空です。市庁舎1号館は1989年(平成元年)に完成。この年は神戸市政100周年でした。オール与党体制で20年、宮崎市政は市域の隅々まで国際性豊かな街づくりを進め、市営地下鉄・北神急行、陸上競技場、野球場、しあわせの村を完成させ、海上にはポートアイランド、六甲アイランドの未来都市、西神戸・北神戸には広大なニュータウン。明石海峡大橋も着工し、神戸空港建設の準備を進めていました。市庁舎1号館は最後にようやく建てた「城」。神戸市民は誰もがこの街を誇り、明るい未来を疑いませんでした。1995年1月、わずか10秒の揺れで街が壊滅するまでは。

東遊園地

  天を衝くメタセコイアの大黄葉  さくら③

  街秋色メタセコイアは整列し   見水

  この街は楓の樹々もエトランゼ  見水①

東遊園地は、神戸市庁舎の南側に広がる2.7haの公園で、現在は再整備中。2023年秋には、カフェやイベント施設を持つ公園に生まれ変わります。

  カサカサと舞いあぐる落葉の舞い  ろまん亭

  落葉ふむ音のみ確か黙二人    へるめん⑥◎◎

  紅葉も今しばらくの遊園地    蛸地蔵①      

明治の初め、旧居留地の東端に外国人専用の運動公園として開設されたこの公園は、野球、ラグビー、サッカー、ボウリングなどのスポーツが日本に広まるきっかけとなりました。

敗戦後は進駐軍のキャンプ地になり、返還後に北側のテニスコート跡地は市庁舎、南側は市民公園になりました。東遊園地の向かいには英国パブのキングスアームスがあり、周辺の建物も低く、港町らしい雰囲気でしたが、1995年の阪神・淡路大震災で街並みはすっかり変わり、高層ビルばかりに。

 東遊園地には「慰霊と復興のモニュメント」と「1.17希望の灯り」が設置され、毎年1月17日には追悼行事が行われます。「神戸ルミナリエ」では毎回大聖堂のような光の装飾が設置されていました。コロナ禍で今年も中止ですが、代わりにイルミネーションの展示と音楽イベントが、12月9日から18日まで開催されます。

  震災後よくぞここまでルミナリエ  稲村

今年3月には、東遊園地南端の花時計の北側に建築家の安藤忠雄さんが建てて寄贈した図書館「こども本の森 神戸」がオープンしました。下町育ちで子供時代は本とは無縁だった安藤さんが明日への思いを込めて全国各地に建設しています。10月末に句会の下見で通りかかると、安藤さんご本人らの一行が図書館からちょうど出て来られたのでびっくり。お元気そうでした。

  冬日向帽子のそろふ児のお昼  どんぐり①

  花時計風と落葉と幼児達     ろまん亭①

今日は若い先生に引率された子供たちが訪れていました。

花時計

神戸の花時計は、1957年の神戸市役所本庁舎の中央区への新築移転時に、庁舎の北側に日本初の花時計として設置されました。助役時代の宮崎元市長がスイスのジュネーブで見た花時計から提案し、市民有志が寄贈。市役所の前まで来ると、花時計と姉妹都市シアトルから贈られたトーテムポールに出迎えられ、心が和みました。

  花時計葉ボタンパンダあったよね  稲村①

神戸に初めてパンダが来たのは1981年のポートピア博覧会の時でしたが、2000年に震災復興の応援で中国からコウコウとタンタンが王子動物園に。市民は大歓迎。癒されました。

  秒針を動かしてゐる冬日かな  どんぐり③

  短日に秒針速き花時計       見水②

2019年、市庁舎2号館の建て替えにより、花時計は500m南の東遊園地の噴水池跡に移設。老朽化したトーテムポールは故郷のシアトルの方式で「土」に返るよう森林植物園に。

花時計は随時模様替えされますが、今日は、「第10回神戸マラソン大会」の記念ロゴをモチーフにしたデザイン。4日前に全国から集まった2万人のランナーへの「おもてなし」でした。シロタエギク(白)、ハナナ(緑)、ビオラ(赤・青)など3,000株の花が植えられています。

  タワマンに見降されての花時計         蛸地蔵①

  タワーマンションスカイブルーに秋の雲  ろまん亭

午前11時10分、小春の日差しの中、しばし休憩。集合写真を撮った後、ベンチに腰かけて句づくり。近くに小春日和を楽しんでいた先客がいました。

  ホームレスの人ころげたる小春かな     へるめん①

フラワーロードの遊歩道は歩道橋で港まで続きます。歩道橋はかなり老朽化しているので、新しくする計画もあります。

  さゆれつつ日を透かしつつ木の葉かな     どんぐり

  港まで続く照葉の遊歩道               見水①

虹の石

午前11時30分、昼食会場のミント神戸に向けて出発です。

つきひさんが「ここに来たのなら、句碑を見とかなければ」と、後藤比奈夫の句碑に立ち寄り。神戸の造形作家・河口龍夫さんの作「虹の石」。水が張られた石の水の中に文字が逆に彫られています。

つきひさんが、今年2月の神戸RANDOM句会のブログの「つきひの20句シリーズ・虹」で、「神戸の東遊園地に「虹の足とは不確かに美しき」という後藤比奈夫の句碑がある。神戸市役所に用事があり、句碑まで足を延ばした。今は亡き花時計の専門家矢木勉氏が建立に関られたと聞いていた。句碑を問うて間もなく幸運にも虹に出会えた。(…)私の心や身体がふっと軽くなるひとときだった。(2021)」と書いた句碑です。

  水澄みて透ける比奈夫の鏡文字  つきひ⑤

2020年に103歳で亡くなった俳人・後藤比奈夫さんは科学者で会社経営もされ、俳誌「諷詠」の名誉主宰。灘区在住で「神戸新聞文芸」欄の選者を長年務めました。

昼食会

正午、昼食会場のミント神戸8階「うおまん」に無事たどり着きました。入店し、予約席に案内されて着席。ここから合流の稲村さんもすでに到着。

  久し振りミント神戸はクリスマス  稲村

メンバーから会費もいただきました。途中で休憩したろまん亭さん夫婦も少し遅れて到着。全員そろって、コロナ禍での小宴です。

この句会では過去に2回ここで集まっています。2011年の桜乱舞王子動物園句会の後と、2016年の神戸ワイナリー句会の後の絵付け陶器の披露会のとき。6年ぶりのお造りと天婦羅の御膳。

それぞれの飲み物で静かに乾杯しましたが、思わずこぼれる笑み。よく歩いたので格別。

  秋の声そこに播町坐す気配 さくら⑥

句会の思い出やろまん亭さんの傑作写真などで話がはずみ、播町さんとだっくすさんもここに居るかのよう。

午後1時になったので、句会場へ移動。エレベーターホールの北側の窓からは摩耶山・六甲山の紅葉がきれいでした。

移動途中の神戸阪急の地階のお菓子売り場で、へるめんさんとどんぐりさんは賞品選び。

センター街の東側入口から、サンプラザ、センタープラザを抜け、赤い鳥居の見える生田新道を越えてセンタープラザ西館まで歩きます。

  小春日や川崎展へはずむ足 稲村

アーケードに大きな案内垂れ幕。神戸市立博物館で12月4日まで開館40周年を記念し「よみがえる川崎美術館」を開催中。布引にわが国最初の私設美術館を造った川崎重工業の創業者・川崎正蔵の中国・日本美術のかつてのコレクション。明治期の海外流出から守った名品揃いで、狩野派や応挙、蕪村などが展示され、年齢性別を問わず大人気だそうです。

眼鏡の大学堂の西の通路からエレベーターで6階へ。「神戸ランダム句会」の案内表示があり、午後1時30分、予約していた貸会議室の15号室に到着。

三宮句会―――――――――――――

貸会議室の15号室は、窓から六甲山が望めるゆったりした部屋。人数分の座席を作り終えると、賞品を抱えたへるめんさんとどんぐりさんも到着しました。

各自5句の提出期限は午後2時30分。集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付けます。午後2時45分に選句表を人数分コピー。つきひさんの差し入れのお菓子をいただきながら、お茶とコーヒー、紅茶で一息。今回は播町さんとだっくすさんが好みの「生しほみ饅頭」とチョコレートを用意されました。

  隣席に亡き人の座す納句座   つきひ⑤

  亡き人の句を懐しむ冬句会   蛸地蔵① 

  共に句会せし人偲び秋惜しむ  さくら①

午後2時50分、全員に選句表を配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者8名の総点数56点の争奪戦です。

午後3時10分、つきひさんとさくらさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。56句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

高得点句

本日は6点獲得句が2句と、5点句が3句ありました。再掲します。

 落葉ふむ音のみ確か黙二人      へるめん⑥◎◎

  都心で大自然を満喫。「二人」はろまん亭ご夫婦?

 秋の声そこに播町坐す気配      さくら⑥

  昼食会場にも句会場にも、いつもの播町さんが。

 追憶に追慕に三ノ宮小春     つきひ⑤◎◎

  逢いたいな、播町さん、だっくすさん。

 水澄みて透ける比奈夫の鏡文字 つきひ⑤

  昨日の雨と落葉でますます美しい句碑。

 隣席に亡き人の座す納句座      つきひ⑤

  だっくすさんとはいつも隣同士でした。

表彰式

午後4時40分、獲得点数により表彰式です。

優勝はつきひさん(18点)、準優勝はさくらさん(12点)、第3位はへるめんさん(7点)。さくらさんは出句した5句すべて得点しパーフェクト。

他のメンバーは、どんぐりさん(6点)、ろまん亭さん(4点)、見水さん(4点)、蛸地蔵さん(3点・ブービー賞)、稲村さんさん(2点)でした。今回の賞は見水さんが命名しました。

女性軍4名対男性軍4名は43点対13点で、女性軍が圧勝でした。

午後4時45分、全員集合写真を撮った後、椅子を片付けて再び着席。

一風幹事長が欠席なので、見水さんから、播町さん宅への弔問とだっくすさん宅への弔花のこと、来春の句会は、播町さんがよく話していた「わが最後の句会は散歩コースの大中遺跡・県立考古博物館やで」をぜひ実現させたいこと、を報告。賞品とバッグを持って会議室を出ました。

センタープラザ、サンプラザ、マルイの2階を抜けて、交通センタービルへ。まだ午後5時過ぎですが真っ暗です。コロナ禍、家路を急ぎましょう。

好天に恵まれ、懐かしい三宮界隈での句友との吟行と食事、句会は、コロナ禍で久々に家族以外の仲間と楽しく遊んだ充実の時間でした。句会運営のつきひさん、さくらさん、賞品選びのへるめんさん、どんぐりさん、飲み物用意の蛸地蔵さん、お疲れさまでした。

  消印はあの世俳句の賀状来る  つきひ③

来年はうさぎ年、そろそろ年賀状を準備する時期です。播町さんからは今年の正月まで20年来、毎年1年間に詠まれた俳句10句と楽しいイラストの年賀状をいただいていました。播町さんのことですから、ひょっとしたら今度のお正月も届くかも知れません。

来年2023年・令和5年の願いを3つ掲げます。

 ①播町さんがわが最終句会に望んでいた「花の大中遺跡句会」を実現させたい。

 ②コロナ禍、ロシア-ウクライナ戦争は、1日も早く終結してほしい。

 ③阪神タイガース、岡田監督の「アレ」が見たい。

神戸RANDOM句会がますます楽しい句会になりますように。よいお年を。

 2022.11 写真・文/mimizu

 

  

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2022=追悼!だっくすさん

2022-09-01 | 吟行句会

われらがマドンナ、神戸RANDOM句会の名幹事の増本由美子さん

      ( 以下 「だっくすさん」 )が、2022年7月31日に亡くなられました。

       77歳でした。心からお悔やみ申し上げます。

だっくすさんの神戸RANDOM句会全作品

6月に中作清臣さん(播町さん)が、7月にはだっくすさんが亡くなられ、神戸RANDOM句会にとって、今年は寂しい夏になりました。

播町さんの提案で20年前に始まったわが句会は、つねに研鑽を積まれている女性陣と、いつまでも素人のまんま(?)の男性陣の絶妙のバランスで楽しく続いています。

だっくすさんは、句会のスタート時から、吟行・句会・宴会がセットの句会の世話役を引き受け、会を盛り上げて来られました。数年前に腰の手術をされてから世話役は一風さんと交代しましたが、句会の進行はつきひさんと一緒に最期まで務めました。

神戸RANDOM句会では、これまで2,000句を超える句が詠まれましたが、最高得点の11点を獲得したのは3句。そのうちの2句がだっくすさんの作品です。優勝は4回、準優勝は9回、出句すべて得点のパーフェクトは12回。世話役で句会の当日もあれこれ気配りして雑用をこなしながら、多くの名句・佳句を残しました。  

20年間に36回開催された神戸RANDOM句会でのだっくすさんの作品を以下に列挙します。

 

第1回 春らんまん有馬湯けむり句会 2002.4.13 …準優勝・パーフェクト(出句すべて得点)

   

花の風有馬は坂の多き街

せせらぎの流れに乗らぬ花筏

ねね橋をゆっくり渡る春日傘

金泉に春愁の身を沈めをり

剃りすぎし眉を描くも春愁ひ

 

*第2回 篠山「花の木」フレンチ句会 2003.7.26

閉ぢられし能楽殿や蝉しぐれ

篠山の妻入商家麻のれん

鬼百合や丹波の里は単線で

花の木のランチ岩魚もフレンチに

 

*第3回 伊賀上野BANANA句会 2004.10.30

  

上野城どんぐり混じるじゃりの道

秋雨や笠袈裟ぬれし俳聖殿

軒ごとに句のある街に秋惜しむ

 

*第4回 須磨寺かいわい雨中吟 2007.4.22

山と海左右に配し遅桜

遅桜一弦琴の聞ゆ寺

山吹に出迎えられて女子大へ

雨の庭燃やす緋色のチューリップ

楠若葉雨に洗われ華やかに

 

*第5回 伊丹探鳥忘年句会 2007.12.9 …準優勝

    

昆陽池をぐるりと囲み冬紅葉

風に舞う色とりどりの落ち葉かな

広げたる羽の白さや大白鳥

酒蔵のまちの旧家の冬座敷

熱燗があとに控えし伊丹句座

 

*第6回 源氏千年紀・石山寺句会 2008.4.19

   

春らんまん満を持したる初句集

石山のしだれ桜に間に合ひし

行く春の近江に源氏甦る

王朝の紅の色外は春

春愁を忘れ源氏の女めく

 

第7回 明日香村句会 2008.11.23

   

寒すみれかぐわしき香に驚きぬ

ひつじ田をのんびり眺め明日香村

柿紅葉酒船石は藪の中

小春日の飛鳥散策せわしなく

石舞台室に入れば冬陽さす

 

*第8回 龍野句会 2009.4.4

   

花曇り今日は賑はふ姫新線

花を賞で街並を賞で龍野かな

花の雨テントで食べし紫黒米(しこくまい)

童謡の小径つつじの続く径

花疲れ五句作ること難しく

 

*第9回 明石taco句会 2009.11.15 …優勝・パーフェクト

 

菊花展気ままに咲くを許されず

澄む秋の水琴窟や月照寺

子午線の古びし標柱冬隣

天文台秋の海峡広がりぬ

海峡を行き交ふ船や秋日和

 

*第10回 有馬湯けむり句会 Arima Again 2010.4.4 …パーフェクト

   

裏六甲すこし遅れて春の色

老ひしかな少し厚手の花衣

春風や前置き長き猿の芸

まづバスで花の有馬をひとめぐり

春昼の湯らりめぐりの御一行

春愁を鼓ヶ滝に置いてきし

 

*第11回 神戸駅前フォト句会 2010.10.24

住む国の風習に慣れ七五三

秋しぐれ御輿にカバーかけ練りぬ

早や黄葉(もみじ)している欅(けやき)並木かな

紅葉狩り孤独を愛す男かな

僻地にて暮す決意の冬支度

 

*第12回 桜乱舞 王子動物園句会 2011.4.16 …優勝・パーフェクト

今日の日のための落花と思ひけり

花筏流れつ寄せつアシカ池

アシカ池ピンクに染めし落花かな

弁当に彩り添へる落花かな

大地震の復旧遠し花は葉に

 

*第13回 布引ハーブ園句会 2011.10.30

   

秋時雨やめども海のまだ暗し

わが家にも這わせてみたし蔦紅葉

コスモスの濃淡互いを引き立てる

秋風にチェリーセージのすぐ揺れて

ハーブの香満ちたる園に秋惜しむ

 

*第14回 ちょっとセレブな夙川句会 2012.4.7 …準優勝・パーフェクト

   

諸々のことはさておき花人に

飛び石の橋の向こうも花の道

その中にひっそりとした花ござも

花の色トラモンティの色に酔ふ

花疲れ横座りして眺む庭

 

*第15回 しあわせの村句会 2012.11.25 -欠席-

 

*第16回 相生牡蠣喰えば句会 2013.2.1 …優勝・パーフェクト

   

岬まで続く冬木の桜かな

冬凪や万葉歌碑は海を背に

牡蠣の膳囲む句会のぜいたくさ

 

*第17回 夏の絵手紙句会 2013.6.17

紫陽花の咲くを待ちかね車椅子

バラ咲くや老いて手入れのできぬ庭

アカシヤの花降りしきる帰り道

どくだみの角を曲がれば近道と

宝石のやうな箱入りさくらんぼ

 

*第18回 天王山もみじ句会 2013.11.19 …パーフェクト

秋惜しむかつて合戦ありし地に

モネの絵や外は紅葉の美術館

銀杏を踏まぬやう行く宝積寺

鵙鳴くや一夜造りの塔の上

行く秋の天王山の句合戦

 

 *第19回 淡路福良人形句会 2014.4.15 …準優勝

春風や幟は海の匂ひして

人形の白き指先春愁ひ

人形座出れば港や風光る

壺焼を店先で食べ道の駅

麗らかや海の香届き来る足湯

 

*第20回 国宝太山寺句会 2014.11.28 -欠席-

 

*第21回 森林植物園・弓削牧場句会 2015.6.29 …パーフェクト

万緑やフィトンチッドを満喫す

吟行はソフトクリーム食べてより

七変化移ろふ色はどれも旬

あじさい園見落としそうな七段花

冷奴風に供され生チーズ

 

*第22回 魚崎郷ほろよい句会 2015.11.6

大都市の川に落鮎群をなす

住吉川尾を上げ鴨の食事どき

秋うらら酒の香ただよふ魚崎郷

下戸なれど新酒を前にときめきぬ

秋空のやうにすっきり生原酒

 

*第23回 夏の神戸ワイナリー句会 2016.6.12 …準優勝・パーフェクト

青蔦のアーチくぐればワイン城

車椅子やさしく押して梅雨晴間

青ぶだうオルゴール聴き育ちをり

自作の句皿に描けば汗ばみぬ

バーベキュー山桃採りてデザートに

 

*第24回 明石海峡スケッチ句会 2016.10.24

   

天高し淡路島まで船の旅

秋風や潮の香つよく肺にまで

秋風や潮の香あびてスケッチす

秋茄子の色よく煮られ湯気の中

吸物に松茸少し香りたる

 

*第25回 北野工房寄り道句会 2017.4.27

  

夏近し風吹きぬける異人館

名園の池を巡れば亀の鳴く

のどけしや黒白斑の鯉寄り来

キャンドルの絵付け苦手や春暑し

園に憩ひ工房に絵を描く四月

 

*第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6

 

秋天を突くかに聳ゆポートタワー

秋日和ドックに休む潜水艦

秋の海船行く先に波光る

冬霞六甲の山ぼんやりと

セーターに残る潮の香余韻かな

 

*第27回 初夏の舞子海岸句会 2018.5.10

淡路より見し橋初夏の舞子より

若葉冷え風吹きぬけるプロムナード

玻璃ごしに卯浪の上を闊歩する

桜しべ降るを眺めて急かさるる

松落葉舞子の浜の松林

 

*第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11 …優勝・パーフェクト

秋の市場買ひたき物の溢れをり

小春日の市場散策主婦目線

母胎てふトンネル歩き秋惜しむ

行く秋のトンネルの先異界かも

トンネルを歩いて出れば天高し

 

*第29回 城下町尼崎句会 2019.5.18

寺町へ欅若葉の道を行く

玉砂利のアートを踏んで夏の寺

ふるさとで幼馴染と出会う初夏

花水木再建なりし城の前

若葉風城の風情は正面に

 

*第30回 御影ハイカラ建築句会 2019.10.30 …準優勝

薪を焼(く)べ大釜で炊く今年米

金柑や石段登り処女塚

秋うらら昼酒に酔ひ御影郷

母在れば土産にしたし新酒糟

酒蔵の町に短き秋惜しむ

 

*第31回 夏のおうちde句会 2020.8.15 …準優勝・パーフェクト

トッピングあれこれ変へて冷奴

復旧の道のり険し梅雨出水

被災地を思ひて凌ぐ炎暑かな

 

*第32回 秋のおうちde句会 2020.11.16 …準優勝・パーフェクト

  

秋惜しむ山のホテルの露天風呂

熱燗や話し上手に注ぎ上手

マスクして眉目(みめ)良き女増えにけり

 

*第33回 春のおうちde句会・三木吟行 2021.4.30

  

雨音の奏でるリズム春眠し

辛党の父が好みし桜餅

幻か出会ひし蝶は大空へ

花は葉に夫がガイドの遺作展

民守る城主の像や春寒し

不揃ひな石段長し犬ふぐり

 

*第34回 2021夏・俳句日記句会 2021.8.5

   

あれこれの薬味も冷やし冷奴

ねむの花窓から見つつ夕支度

初蝉の遠慮気味なる朝の声

夏布団掛けることなき夜が続く

一時間狙い定めて落雷す

 

*第35回 淡河本陣マスク句会 2021.11.29

  

着ぶくれてすつかり婆となりにけり

冬紅葉淡河本陣西座敷

冬の庭灯籠に日のあたりたる

釜飯の炊きあがる香や冬座敷

風呂吹の旨し昼餉や淡河宿

 

*第36回 祝20周年・有馬句会 2022.4.25 …準優勝

惜春や主不在の記念句座

金の湯のぬるき足湯に春惜しむ

春暑し有馬の町は急勾配

風少し松の花粉のけぶりをり

ねね橋の赤き欄干風光る

 

だっくすさんを偲ぶ

句会メンバーから追悼文・弔句が寄せられました。ろまん亭さんは届き次第掲載します。

マドンナ逝く

    ~むなしく、はかなく、なつかしく、せつなく、かなしき夏~    つきひ

★令和4年4月25日の有馬句会

だっくすさん、有馬句会はおそらく欠席されるだろうと思っていました。一風さんから出席と聞きびっくりしました。次男直樹さんの車で下見にも行かれたとのこと。当日は、病気の事など微塵も感じさせないきりっとした振る舞い、いつもと変わらない 『雰囲気のある人』 だっくすさんでした。準優勝されて賞品にお気に入りの金泉焼を貰い喜んでおられました。私はおすそ分けで2個頂きました。

当日の句会を早く切り上げたことを大変残念がっておられました。もう少し句会の余韻に浸りたかったのでしょう。みんなと時間を共有したかったのでしょう。播町さんと共に産み育てたランダム句会をじっくり楽しみたかったのでしょう。だっくすさんにとっては最後となるかも知れない句会でしたから。

無情にも句会を早く切り上げたのは、コロナ感染を心配しラッシュアワーを避けるための幹事さんの配慮でした。

 実は私、3月にだっくすさんから、ご自分の病状についてのお話をお聞きしていました。

★令和4年3月12日の電話

久しぶりにだっくすさんに電話しました。色々な雑談をした後、同じトーンで淡々とご自分の今の病状について話されました。私はその時の衝撃を今も忘れることは出来ません。『私は意外と平気なんですよ』という声から静かで透明な心境が見える様な気がしました。うろたえた私は 『奇跡が起きた例はいっぱいあります』『免疫力を高めるために体を冷やさないように。太陽・月・星などからもエネルギーが貰えます。特に一粒万倍日は効果があります。見上げて深呼吸をするだけでよいのです』と受け売りの健康法などを伝えることで精一杯。

  重き病状告白されし日の雪崩 つきひ

その後、足を温めるためにIWATAの室内履きを送ったり、食欲を進めると思うものがあれば送ったりしました。

その後の電話で『昨日は一粒万倍日でしたね』などと言われ、私の言った健康法を実施しておられることが分かりました。

★令和4年7月24日の電話

だっくすさんの生の声を最後に聴いたのは、7月24日でした。入院中の社会保険中央病院のホスピスからの電話でした。明日、退院することになった、今後の事は、これから相談ですが・・・と。自宅療養が出来る喜びの電話でした。

ホスピスに入られたのは、確か7月8日、その時も電話を頂きました。病院の食事が美味しい、ドクター、カウンセラー共に最高の人に出会えた幸運も喜んでおられました。

そして8月4日 携帯電話が鳴りました。発信元は、だっくすさん。

思わず、だっくすさん、と言ったら、男性の声が返って来て、母が7月31日に亡くなりましたと言われました。次男直樹さんからでした。

直樹さんの声を聞くのは、何十年ぶりでしょう。

だっくすさんと一緒に勤務していた長田保健所時代に1年生くらいの直樹ちゃんと会い、私は、直樹ちゃんに自分を指して『おばちゃん、お姉ちゃんどっち?』と聞いた。即座に『おばちゃん』と返ってきました。

藤井フミヤ作詞 増本直樹作曲の大ヒット曲Another Orion他のCDを買いだっくすさん経由で直樹さんのサインを貰いました。日付は1996.10.17となっています。

電話を貰った日、久しぶりにAnother Orionを聴きました。

『直樹ちゃん、北の国からの純くんに似てますよね』というと『大人になった今も似てますよ』とだっくすさん。

直樹さんの声を聞いてから、長田保健所時代の楽しかった思い出がうわーっと私を襲ってきました。写真も探しました。一緒にスキーに行った事などすっかり忘れていましたが、アルバムにあったので鮮やかに思い出しました。

★お笑いノート 昭和48年~50年

長田保健所で3年間、だっくすさんと机を並べて仕事をしました。庶務課、保健課、衛生課が一つの部屋で仕事をしていましたので日常会話もよく聞こえ、思わず吹き出したり、くすりとしたりした事をだっくすさんと共用のお笑いノートにお互いに書き込みました。

お笑いノートは今も持っていて療養中のだっくすさんに送り喜ばれました。

★長田保健所一座      

私が保健所に勤務している時代には、保健所対抗の野球や卓球試合、文化祭などもありました。

文化祭に、お芝居で出場しようと決まり、総出で頑張りました。だっくすさんはプロデューサー。私はおバカな娘役。文楽仕立てにしたのでセリフを言う場面はありません。結果は3位入賞。貰った賞金で全員近くの『みすず』でお昼にカレーを食べました。

だっくすさんは華麗なる一族をもじって『カレー食う一族やね』と言い、お笑いノートに記入しました。

一座の写真を探したのですが、いくら探しても見つかりませんでした。出てきたら追加させてくださいね。

★山口への旅 昭和49年

長田保健所時代、だっくすさんとHさんと3人で山口へ2泊3日の旅をしました。朝起きたら思いがけない雪景色だったりして、のんびりしたいい旅でした。

電話で山口の旅の思い出話になり、宿の人が『同級生ですか』といいそれを私が喜んだらしいです。私はその話はすっかり忘れていました。

★箱館山スキー場へ 昭和58年

誰がどこで言い出したのか覚えていませんが、滋賀県の箱館山スキー場へ日帰りでスキーに行くことになりました。衛生局庶務課にいた連中7~8人に私も加わって。

JR西明石始発の5時頃の電車で行こうということになり、宿は西明石駅近の我が家に決まりました。仕事の終わった者から順々に集まり食事、風呂、宿泊。宿泊と言っても炬燵の周りに雑魚寝です。そのメンバーにだっくすさんと一風さんが入っていました。

その後しばらくは、私は民宿の女将と呼ばれていました。

★あじさい俳句会・京阪神三都市職員俳句大会

だっくすさんに俳句を勧めたのは私です。だっくすさんの句集にもそのことは書いてあります。あじさい俳句会在籍は5年間ほどで短期間でしたが、あじさい句集の編集の手伝いや三都市俳句大会への出席など活躍されました。

平成8年大阪の海遊館で詠まれた

  海遊館亀と目が合う薄暑かな  

は、四方 充先生の特選に入りました。

ランダム句会が始まるとき、だっくすさんから声が掛かり、第1回の有馬湯けむり句会から楽しませて頂きました。

★宇多喜代子先生の講座

神戸女子大のオープンカレッジに宇多喜代子先生の講座がありました。

今も年1回か2回開催されますが、発表と同時に満員という人気講座です。その講座に何回かだっくすさんをお誘いしました。だっくすさんも宇多先生のファンになり、先生の句集などを何冊か買って来てサインをして貰われました。写真は先生にお祝い事があって有志で花束を贈った時のものです。

だっくすさんは後列に居られますが、私は厚かましく先生の横にいます。この写真の私のマフラーはだっくすさんのお母様が編んでくださったものです。

★朗読ボランティア

だっくすさんは目の不自由な人の為に長い間朗読のボランティアを続けておられました。それとは別に北区の地域福祉センターでも一般人を対象に朗読をしておられました。車の送り迎え付きですよと言っておられました。どんなものを読まれるのと訊ねると東海林さだおなどを読みますと。対象に合った本を探すのが大変だと仰っていました。

★美作ほたる句会(ランダム句会ブログあり)平成20年

飛んでいる蛍を見たことがないというだっくすさんを誘って岡山の我がセカンドハウスへ蛍を見に行くことになりました。どんぐりさんもお誘いしてどんぐりさんの車に乗せて頂くことになりました。蛍以外は何のもてなしも出来ませんでしたが、だっくすさんたちを歓迎するように我が家の周りを蛍が飛んでくれました。

   

★だっくすさんは、ランダム句会の永遠のマドンナです。すべての場面で毅然と生きられた見事な77年の生涯でした。私は特に晩年のだっくすさんから多くの事を学びました。だっくすさん独自のエスプリやユーモアは私の活性剤になりました。2人のお笑いノートに楽しい話を集めておきますね。今度お会いする時の為に。

 

声の美しい方であった  一風

だっくすさんが亡くなられたとの連絡を受けた。

この春、有馬の句会では2位の若桜賞。これまでの句会36回中欠席はわずか2回、常に上位入賞という成績からも、句作への取組姿勢の真剣さが伝わる方であった。

そして彼女は声の美しい方であった。昭和40年代電話の普及当初、受話器から聞こえる声が印象的だった。退職後も朗読のボランティアを続けておられたと聞いている。

これまでランダム句会が運営できたのも、まさにだっくすさんの緻密な計画と、行き届いたお世話の賜物であり、感謝に尽きる。

長い間いろいろお世話になりました。どうぞ安らかにお眠りください。

 

裏六甲別れの章  さくら

そんな事ってありますか? つきひさんからだっくすさんの訃報が届いた時、

思考が止まり言葉が出て来なかった。

播町さんの死から1ヶ月余り、信じられない…

4月25日ランダム句会20周年記念の句会にリーダーの播町さん欠席で

だっくすさんは少し淋しそうでしたが、いつものように細かい計算された

運びでつきひさんと会の進行をして下さいました。

 

会の始まる前にだっくすさんは売店で涼しげなブラウスを買われ

その時あれこれと選ぶのをお付き合いしました。

どこに着ていくのかな-? 楽しそうなお顔が忘れられません。

 

句会が終わり、帰りの方向が同じなので車でお送りしました。

北区緑町のマンションは少し高台で自然豊かな眺望が見事、

すぐ近くに掛かり付けの病院があり「便利ですよ」と。

だっくすさんの句集「裏六甲」の句をいくつか思い出しました。

優しく落ち着いていて内には凛とした情を秘めた雰囲気は句にもよく表れています。

 

「今日は2位で大好きな金泉餅ももらって幸せ」と言われ

マンションの前で「ありがとう、又ね」と

手を振り別れたのが、お声を聞きお姿を見た最後になりました。

由美子さん 安らかにお眠り下さい。

  裏六甲白百合の香のとこしへに

心よりご冥福をお祈りいたします。

 

だっくすさんからのメール  弥太郎

平成23年(2011)10月30日、布引ハーブ園句会に出席。

  秋天に夢風船の五分間  弥太郎

   

「素敵な句でしたね」とメールをいただき、感激しました。        

明るい性格だっただっくすさん。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

だっくすさんを偲ぶ  

先月、播町さんを偲ぶ文を書いたばかりなのに、だっくすさんをも偲ばねばならないとは、本当に耐えがたい事です。

難病との闘いを強いられておられましたが、時々電話をすると、入院中といいながら、元気な声が返ってきていました。しかし、もうそれさえ無いのだと思うと、寂しさを通り越して、何とも言えない怒りみたいなものさえ感じます。

だっくすさんには、市役所内の高校同窓会の幹事として、いろいろお世話になりました。私達が卒業した高校は、県立の普通科にもかかわらず、当時、女生徒が四分の一しかいない変わった高校で、だっくすさんは、少数精鋭の女生徒として、水泳部で頑張っておられたようです。顔見知りになったのは市役所に入ってからで、私の勝手な思いですが、「肝っ玉母さん」みたいに頼りになる先輩でした。

播町さんとは、職場を同じくされたことが多かったので、「あの世まで、私の後を追ってこんなにすぐ来るなんて」と、苦笑されているかもしれません。

そもそも、この句会に私を紹介して頂いたのもだっくすさんですし、私に沢山の思い出を残してだっくすさんは逝かれました。本当に感謝しています。

 

天の川   ひろひろ

誰も病魔には勝てない。人間の運命か。

生かされていることに感謝して、一日一日を大切に生きよう !!

ランダム句会、だっくすさんにはいろいろお世話になり、ありがとうございました。

感謝、感謝 !!

  『播町偲ぶ』だっくす不在天の川

  いい湯だね播町だっくす天の川

  だっくすや播町招く天の川

  播町だっくす句を詠み合って天の川

  天の川播町だっくす泳いでる

天の川 無限大なり。 

 

憧れのだっくすさま  どんぐり

病と闘いながらも、いつも笑顔の素敵なだっくすさま、私の憧れの方でした。

    

  そよ風に羽根休めゐる秋蝶よ

  流星の色いつまでもまなうらに 

 

だっくすさん ありがとうございました  へるめん

「気が合うと思うよ」と播町さんに紹介いただいて お友達になりましたね。

まだ お会いもしてなかったのに 親和会俳句部の部員の方の句を(たぶん毎月)メールで

送ってくださいましたね。テキトーな私と違ってきっちりとやさしい方だなと思っていました。

ランダムで おつきあいさせていただいて やっぱり ますます 好きになりました。

もうその頃から ご病気を抱えておられたのに きっちりと向き合って ランダムでもいっぱいお世話くださって 健気に生きておられたのですね。

貴女の指先がとっても冷たくて 私も悲しくなりましたが 貴女の懸命さが胸に伝わりました。

そしてその指で 長~いマフラーを私のために編んでくださいましたね。ひと針ひと針紡いでくださったのね。

ほんとにありがとうございました。泣きそうになりますが、大切に使わせていただきます。

6月28日 お電話でお話できたのが 貴女の美声を聞いた最後になりました。

きびしい事もあったでしょうに 貴女らしく優しくしっかりした態度を見せていただきました。

どうか ごゆっくりお休みください。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。

  冷たさの手指抱くや合歓の花

  ふりむけばゆれる白百合裏六甲

 

だっくすさんを追悼して  蛸地蔵

誠に突然の事でした。病魔がそんなに進行しているとは思いもしませんでした。四月の有馬句会でもお世話になったばかりでした。

いつも控え目で落ち着いただっくすさんには句会のお世話も最初から中心になりご苦労いただき本当に有難うございました。

だっくすさんとは長いお付き合いをさせて頂きました。旅行会や俳句、その他様々な事でお世話になりました。深く感謝申し上げます。

心からの哀悼の気持を捧げ、ご冥福をお祈り申し上げます。 合掌

  突然の訃報を聞くや蝉しぐれ

  猛暑中悲しき事の重なりて

  青田風稲穂を揺らし人惜しむ

 

秀句でたどる追悼と感謝  

2012年 神戸RANDOM句会 十句集 だっくすさん

  菊花展気ままに咲くを許されず

  酒蔵のまちの旧家の冬座敷

  今摘みし夏の蕨をお浸しに

  子午線の古びし標柱冬隣

  春風や前置き長き猿の芸

  今日の日のための落花と思ひけり

  僻地にて暮す決意の冬支度

  諸々のことはさておき花人に

  遅桜一弦琴の聞ゆ寺

  裏窓を開ければ蛍見ゆ暮らし

2015年6月 だっくす句集 『山の街にて』

腰痛で動けなくなり入院手術退院。その間53句。

  靴下をひとりで履いた春の夢

  山の街今朝うぐいすの谷渡り

巻末に「後ろを振りかえることができないので、とにかく前向きに生きていくことをモットーにボチボチ歩んでいこうと思っています。」

その後も俳句への思いは衰えず、15回の句会において秀句・名句を数多く披露。

2022年4月 祝20周年・有馬句会

  ねね橋の赤き欄干風光る

この句は最高点を獲得。

  惜春や主不在の記念句座

神戸RANDOM句会になくてはならぬ存在であった播町さんに続いて、だっくすさんも。いつもお世話いただいたご恩を思い、感謝と追悼の誠を捧げます。

 

マドンナ逝く雨の六甲ねむの花  見水

1980年、だっくすさんは隣の播町さんの係の仕事のできる優しいお姉さん。播町さんとは職員誌の刷新の仕事もご一緒で、播町さんの誘いでコラムを投稿したときもやりとりしました。

神戸RANDOM句会は、そんな旧縁もあって、初めての句会でも馴染めそうな気がしましたが、だっくすさんの大傑作「金泉に春愁の身を沈めをり」にびっくり。

その後、伊賀上野・石山寺・明日香・龍野、近場の句会でも、事前の準備から当日の手配、後のフォローまできめ細かな名幹事ぶりを発揮され、数々の名句、佳句には感心しっぱなし。

絵手紙句会や海峡スケッチ句会で、「絵を描くのは苦手」と聞き、絵を描くぐらいしか取り柄のないこちらはほっとしました。だっくすさんの句集「裏六甲(2014年)」では、同じ北六甲の住人ということで四季のイラストを描かせていただきました。

播町さんの追悼文が、締切を過ぎてもだっくすさんから届かないので電話をすると、「今、入院しているから」とのこと。「では追加掲載で」と、追悼文(句)集をまとめ、ブログへのアップをメールすると、だっくすさんから「自宅に紙で送ってください」との依頼。7月23日に「届きました。しっかり読みましたよ」と電話があり、しばしお話ししましたが、それからわずか8日後に亡くなられるとは。

いまごろはもう、播町さんと再会し、かをるさんを誘って、句会を始められているのかも。

神戸RANDOM句会の20年を振り返ると、だっくすさんとの楽しい思い出は尽きません。

ありがとうございました。

 

だっくす語録から

神戸RANDOM句会のブログには、だっくすさんの句集、「土鈴(2004年)」「裏六甲(2014年)」「山の街にて(2015年)」が残されています。3つの句集のあとがきから、俳句が好きで、六甲の自然を愛し、朗読ボランティアや川柳の会にも参加されていただっくすさんの言葉を抜粋します。

土 鈴 (2004年)

「俳句をやってみない?」 先輩から声をかけられた。ペンと手帳があれば何も要らない、いくつになってもできるし、ぼけないよ、と。

旧かな使いの魅力にとりつかれ、普通の主婦、優雅な奥様、ОL、時には熟年サラリーマンに変身して句づくりを楽しんだ。

十七音で表現しきれない時など短歌に心変わりしそうになったこともあったが、気持がストレートに伝わってしまう短歌は気恥ずかしくて、やはり私には俳句が合っているのだと思い直した。

有馬湯けむり句会で久しぶりに心地よい緊張感を味わい、また、篠山句会でも帰宅後さらに何句か作った。私は機会を与えられないと句を作れないタイプなのだろう。(…)中高年の遊び探しは果てしなく続くはず。一人遊びもいいが、仲間が集まって何かするのはもっと楽しい。これからも吟行や句会をして十七音の世界で遊びませんか。 

裏六甲 (2014年)

句集名を「裏六甲」としましたのは、俳句を始めたころに居を移した六甲山の北側の我が家から眺める山々が、ほんとうに眠っているようだったり、笑っているようだったり、季語のとおりのうつろいを身近に感じているところから名づけました。

山の街にて (2015年)

大掛かりな手術を受け、(…)背を丸めたり体をねじったりすることができなくなりました。(…)後ろを振りかえることができないので、とにかく前向きに生きていくことをモットーにボチボチ歩んでいこうと思っています。

(2022.9  編集/mimizu)

 

 

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2022=追悼!播町さん

2022-07-14 | 吟行句会

   

   最近やや体調がすぐれなかった神戸RANDOM句会の大恩人の中作清臣さん

   (以下「播町さん」)が、急変され2022年6月23日に亡くなられました。

   81歳でした。心からお悔やみ申し上げます。

播町さんの神戸RANDOM句会全作品

神戸RANDOM句会は、今年の4月で20周年。句会が楽しく続いているのは播町さんのおかげというほかありません。

句会は、第4回須磨寺かいわい雨中吟句会から春秋年2回開催し、神戸RANDOM句会のブログに実施記録を残すルールに。そして、「句会では必ず新しい試みを一つやろう」と、播町さんは毎回ユニークなアイデアを提案。新たな遊びに挑戦し、句会はいつもワクワク感に満ちていました。コロナ禍の巣ごもりのリモート句会でも精一杯遊びました。

20周年記念句会も、全員で楽しく祝おうとアイデアを巡らせましたが、播町さんは体調をくずされて欠席。2カ月後に帰らぬ人になりました。

句会のブログには、播町さんの「第1句集・水の家(ブログ版)」、「第2句集・繭の坂」や独自に行かれた東北への俳句紀行等もアップされていますが、20年間に36回開催された神戸RANDOM句会での播町さんの作品を以下に列挙します。

 

第1回 春らんまん有馬湯けむり句会 2002.4.13  61歳(=播町さんの年齢、以下同じ)

花に添ふ一筆ねねに参らせそろ

馬場さんの一蹴り千本桜散る

湯の坂の春の匂ひのせんべ食ふ

少年になって炭酸水の夏

湯に癒すやうな言葉も春愁ひ

 

*第2回 篠山「花の木」フレンチ句会 2003.7.26  62歳

廃家消へ堀の蓮は溢れをり

篠山の夏オルガンの音やまず

源氏の間の奥は闇の間蝉しぐれ

 

*第3回 伊賀上野BANANA句会 2004.10.30  63歳

ここかしこ芭蕉さんいる伊賀の秋

二之町の辻にひと待つ秋驟雨

秋霖の寺町寺の六つ七つ

 

*第4回 須磨寺かいわい雨中吟 2007.4.22  66歳

夏は来ぬ西尾屋敷に祝婚歌

木の上に木のあり塔も青葉して

若葉雨仏師座興の一弦琴

葉桜や木の下のことはや悔やむ

山桃や須磨を起点の縦走路

 

*第5回 伊丹探鳥忘年句会 2007.12.9  66歳

鴨の子の羽搏(はう)ちて前へ進まざる

逆上りせよと囃されかいつぶり

冬空をなほ低くするゆりかもめ

寒禽の翔び立ち影を残しけり

柿衛に冬鵙(もず)をきく昼下がり

 

*第6回 源氏千年紀・石山寺句会 2008.4.19  67歳

行く春の近江のみほとけ頬ゆるめ

落花しきり寂聴源氏巻の三

春惜しむ縁なき源氏に花咲かせ

夏立つや風の色濃き近江瀬田

句座果てて瀬田あみ定のしじみ汁

 

*第7回 明日香村句会 2008.11.23  67歳

日脚伸ぶ撫で肩の山明日香川

冬暖か老々男女飛鳥寺へ

即売の大根(だいこ)の泥も明日香かな

秋天にたじろがざるもの石舞台

小春日の御簾の奥なる太子像

柿一つ空に残して明日香村

 

*第8回 龍野句会 2009.4.4  68歳

まさかこの花見句会に雨女 

花冷えへ向かう龍野の小径(こみち)かな

格子戸を開ければ花散るせせらぎぞ

桜ふぶくわがロスタイム酔の中

揖保川や花も料理もうすくちで

 

*第9回 明石taco句会 2009.11.15  68歳

はふはふの明石焼てか着ぶくれる

昼網のガシラは美味し燗熱う

階(きざはし)を一二一二の七五三

子午線をtacoがよこぎる秋日和

小春日のくにうみの島浮きあがる

 

*第10回 有馬湯けむり句会 Arima Again 2010.4.4  69歳

酔うものに花、湯、優勝、まさかの恋

苔むすもかわいく咲いて糸桜

湯宿へのバス待つ木椅子花の塵

足湯してねねになりきる花の鬱(うつ)

ひとひらは脱力系として落花

みみたぶもまぶたもタブー春の闇

 

*第11回 神戸駅前フォト句会 2010.10.24  69歳

新酒酌みハーフの孫を祝いけり

泥酔に終る再会秋祭

どんぐりや熊に出会つてさあたいへん

紅葉も黄落もなく朽ちにけり

旧職場見過しており秋日和

 

*第12回 桜乱舞 王子動物園句会 2011.4.16  70歳

百獣の檻から檻へ花の塵

ベビーカーコアラパンダもお昼寝中

猛吹雪但し桜のと予報士が

花吹雪阪急各停先頭車

花冷えの路を昼餉へ急ぎけり

 

*第13回 布引ハーブ園句会 2011.10.30  70歳

登り吐息降り溜め息山粧ふ

秋草の名一つ覚え一つ買ふ

秋思ありカフェテラスにハーブ茶を

ハーブ茶やシンプルライフインオータム

夜ならば一千万弗花野ゆく

 

*第14回 ちょっとセレブな夙川句会 2012.4.7  71歳

老桜の水吸うてなお華やげり

川ヲ見テ空見テ春ノ愁ヒカナ

一刷毛に夙川を染む桜かな

花冷えの川跨ぐ駅へ橋三つ

入学の子と母と父花堤

 

*第15回 しあわせの村句会 2012.11.25  71歳

鵯(ひよ)鳴いて山のあなたは空ばかり

乗り継いで裏六甲の冬日向

鵯日和金川先生好々爺

枯木立風が押してる車椅子

朱の屋根の連なりシェスタ似合う村

 

*第16回 相生牡蠣喰えば句会 2013.2.1  72歳

 ―欠 席―

牡蠣焼いて涙一滴加えけり

 

*第17回 夏の絵手紙句会 2013.6.17 72歳

句をつくり絵をかき苺めしあがれ

キッチンの真昼の闇のさくらんぼ

きらいすきうそほんとすきさくらんぼ

七色の嘘の終りの紅あじさい

あじさいの剪られて藍のさらに濃く

 

*第18回 天王山もみじ句会 2013.11.19  72歳

見渡して冬麗と云へば今でせう

桂宇治木津の三川四温かな

「猪デマス」まっしぐらかもしれず

短日の男ばかりがなお苦吟

秋寂ぶや宿三笑にすこし酔ふ

 

*第19回 淡路福良人形句会 2014.4.15  73歳

くにうみの島縦断す春疾風

旅人の古希を過ぎればみな遍路

渦潮や人形よよと哭き給ふ

玉葱が甘くて淡路で栄養士

やぶ萬の少酌で良し鯛麺に

 

*第20回 国宝太山寺句会 2014.11.28  73歳

鐘鳴れば紅葉散るなり太山寺

冬晴れへ苔むす石の屹立す

坐す阿弥陀もみじと塔は朱を競う

仁王門に仁王立ちして懐手

いつからが晩年足湯に湯冷めして

 

*第21回 森林植物園・弓削牧場句会 2015.6.29  74歳

あじさいの繚乱どれを選ぼうか

あじさいやパレットの青混濁す

奴ふう生チーズ旨っ梅雨晴間

牛の尾のひねもすのたり山の夏

緑陰を賜わり後期高齢者

 

*第22回 魚崎郷ほろよい句会 2015.11.6  74歳

ほろ酔いや桜も菊も古酒なれば

当り障りなき話しして秋うらら

燗熱う六甲颪来る夜は

生一本祭りの酒も亡き父も

よき色に酔うたつもりが末(うら)枯れて

 

*第23回 夏の神戸ワイナリー句会 2016.6.12  75歳

だらだらと起伏の丘や青ぶどう

梅雨晴間笑うひまわり絵付けして

バーベキュー噂話はひろげっぱなし

ワイン眠る虹美しき地に生まれ

三百の樽の眠りて蔦茂る

 

*第24回 明石海峡スケッチ句会 2016.10.24  75歳

エンジンの音騒がしき島渡船

秋日濃しむかし夢見し灯台守

秋空へ釣糸投げる代休日

海の碧(あお)秋天の蒼(あお)橋渡る

橋描いて空と海とに秋の色

 

*第25回 北野工房寄り道句会 2017.4.27  76歳

門扉閉づ煉瓦厩舎や花蘇鉄

ハッサム氏たゆたう館つつじ燃ゆ

絵付けして春の光のこぼれ落つ

春暑し蒼氓の地にイペ咲いて

画家の居ぬ坂にキャンバス日永かな

 

*第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6  76歳

タワーほど足長き人霧笛呼ぶ

港のむかし鳥瞰すれば鳥渡る

ついきのふの艀溜りに冬鴎

望郷も追慕も秋の港ゆえ

今朝の冬波にちゃぷちゃぷ遊覧船

 

*第27回 初夏の舞子海岸句会 2018.5.10  77歳

巨大なる橋桁てふてふ渡るのか 

孫文の休息の地や海市立つ

夏涛(なみ)やむかし革命というロマン

ジャズライブにパティシエもいて夏館

泡立ちしワインの白も立夏かな

 

*第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11  77歳

魚屋の向い魚屋水を撒く

老々の売り手買い手や秋茄子

覗かねば見えぬ川あり秋の声

先人の技の隧道秋日濃し

水溜りのゆらぐ灯りに寒さあり

 

*第29回 城下町尼崎句会 2019.5.18  78歳

寺町や経唱ふやうな蝉を待つ

花しゃうぶ古刹とはいへ煉瓦塀

寺町を抜けて色町五月闇

夾竹桃炎えて生まれは尼やねん

尼城の令和に聳え帰省かな

 

*第30回 御影ハイカラ建築句会 2019.10.30  78歳

行く秋の昭和を醸す酒どころ

新酒酌む男老いても凛として

先生は福寿ブルーの今年酒

冷し酒神戸憂える一語あり

築百年秋気に澄みてモダンなる

 

*第31回 夏のおうちde句会 2020.8.15  79歳

布引の水や旨しと冷奴

休-延-止-不-閉-縮-粛なお炎暑

コロナ禍の些事も大事も端居かな

 

*第32回 秋のおうちde句会 2020.11.16  79歳

対面の母窓越しに秋惜しむ

マスクしてひいふう密よコロナや苦

熱燗や雪ひらひらとはらはらと

 

*第33回 春のおうちde句会・三木吟行 2021.4.30  80歳

夕虹の夢の続きの遺作かな

神の地やサリーの少女汗光る

ネパールの寂光まとう春ショール

漱石の膝に「吾輩」春眠す

独り居の母にデリバリー桜餅

海峡をてふてふ渡るドローン追ふ

 

*第34回 2021夏・俳句日記句会 2021.8.5  80歳

夕涼や止まり木にママひとりいて

片陰にチャリンコ人生ひ・と・や・す・み

千万のテレビの醒めて夏五輪

句読点多きはがきや夏休み

無為にして地球は縮む無月かな

 

*第35回 淡河本陣マスク句会 2021.11.29  80歳

冬田なか淡河疎水の水迅し

天高く落城の址寂として

豊助の湯気立つ蒸篭待ちに待つ

釜飯の火を熾すとき山眠る

第六波までの束の間映えランチ

 

*第36回 祝20周年・有馬句会 2022.4.25  81歳

-郵便参加-

湯の町に足湯だけして春惜しむ

母に似てきたと云われし桜かな

耕やせばわが老いの身に萌ゆる句が

せせらぎに風の歌聴け夏近し

悪童の老いて落花の句座三たび

 

≪注≫

播町さんの句には、新・旧かな遣い両方使われています。播町さんらしく句に合わせて新旧を選んでおられたと思われるため、そのまま掲載させて頂きました。

 

播町さんを偲ぶ

句会の各メンバーから追悼文・弔句が寄せられました。

感謝を込めて さようなら 播町さん   つきひ

★令和3年11月29日、『淡河本陣マスク句会』に参加したメンバー数名、とっぷり暮れた三宮で淡河から乗ったバスを降りる。

『今日は飲み会しないと約束したので、ここで解散します』と播町さん。一抹の寂しさを感じながらそれぞれ帰路についた。

播町さんの声を聴くのも、顔を見るのもこの時が最後となった。

  マスク句会が終の句会にならうとは

★見水さんの心のこもった追悼文募集の文章に私流に付け加えると

何をするのも、スマートで早く出来上がりは完璧。精密機械のような人だった。

冷たく見えて随所に温かさがあった。

播町さんのエッセイにも登場するニューコロナの千津子ママに訃報を知らせた。ママの第一声は『うそやろ?』

播町さんが親友の急死を詠まれた

「秋時雨ほんまやねんなと喪服きる」を思い出した。

  皆涼し遺されし句も振る舞ひも

★播町さんの書評ブログ「気になるフレーズ」が更新されなくなって久しい。気になるフレーズに『・・・・も堪能した』と書いてある。訃報を聞いて以来、私には『この世も堪能した』と読めた。この世でしたいことはし尽くしたお幸せな生涯だったに違いないと思った。

次は、宇宙ですか?あの軽やかな足取りでもうスタートされましたか?

  届くかも気になるフレーズ銀河から

 

ほんたうに月と砂漠と駱駝かな 播町  一風

播町さんが亡くなられた。まことに残念である。

思えば私より6歳上、仕事に、飲み会に、旅行会に、俳句会…に、もう50年来のことになる。仕事に、遊びに、何でも綿密な計画をたて、常に完璧なまでに物事を進める人であった。特に読書歴はものすごく、デザインを勉強していたというから、遊びの資料をつくるのもうまかった。唯一、運動を一緒にしたことはあまりないが、それでも、サイクリングして瀬戸内海の島へ渡ったこともあった。

「ほんたうに月と砂漠と駱駝かな」平成11年(1999年)、播町さんと私と女性3人の5人でツアーに参加して、敦煌、西安を訪れた時の播町さんの句である。これを表紙にA4版13ページにわたる記録にまとめ、旅行反省会で配ってくれた。

あの敦煌のまち「敦煌賓館」で一緒に酒を飲み語った、そして「泣沙山月牙泉」で駱駝に乗った。懐かしい記憶である。

人前で唄わない人であったが、何時の時か「今度飲む時はカラオケボックスで最初からやろうか」と約束もしていた。果たせずじまいとなった。

いっぱい思い出はある。また語るときがくるだろうか。

ご冥福をお祈り申し上げます。

 

「ランダム」残し花の浄土へ旅立たる  さくら

ランダム句会が生まれた有馬、継続20年を祝った有馬、

その祝いの席に産みの親でありリーダーの播町さんは

出句でのご参加でした。

まさか、別れの句会になろうとは…

 

その多才ぶりはランダム句会でも十分発揮され、

常に皆が喜び楽しむ企画を提供して下さいました。

ランダム句会で多くの事を学ばせて頂きました。

最高のリーダーでした。

ありがとうございました。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

明日香村句会の播町さんの句  弥太郎

2008年11月23日、神戸RANDOM句会の吟行地は、奈良県明日香村だった。

秋晴れに恵まれ、参加者(11名)は、楽しく山野をウォーキング。

  秋天にたじろがざるもの石舞台  播町

最高得点。圧倒されそうな巨石の石舞台古墳を見て、素晴らしい表現だった。

 

昭和40年の「エスケープ作戦」  

今は、播町さんが亡くなられて喪失感で一杯です。

さて、播町さんとは、残念なことにご一緒に仕事をすることはありませんでした。しかし、広くて狭い市役所の中、早くから存在に気付いていました。

定年退職後、だっくすさんのご紹介で、句会に入れてもらい、年2回ほどの句会で、播町さんにお世話になりました。この句会は、つきひさんを筆頭に、女性陣に圧倒的な存在感があり、男性陣の多くは、「句が無ければ最高の会だ」といつもぼやきながら、播町さんをはじめ素敵なメンバーに恵まれて楽しんでいます。

十何年か前、明石の県立図書館の閲覧室で、パソコンの前の播町さんを発見‼昼ご飯を御馳走になりました。

ここ2年ぐらいは、コロナ禍で、句会もリモートになり(私はアナログの郵便で、見水さんにご迷惑をかけています)、やっと昨年の秋、北区淡河の旧本陣で句会が開かれました。播町さんらと淡河城跡を散策。句会では、播町さんの前に陣取りお話が出来たのは、今となれば運良く、いい思い出になったと、しみじみと思いだされます。

今年の春の有馬での句会は、体調がすぐれないと欠席されました。その時、播町さんに渡そうと思っていた物がありました。それは私が市役所に入った時に貰った、昭和40年2月20日発行の「厚生だよりNO.4」です。実はこの中に教育委員会庶務課の中作さん(播町さん)の「エスケープ作戦」という短編作品が、星新一ばりのショートショートが掲載されていますので写真で紹介します。

 

再会の叶はぬままに梅雨深し  どんぐり

2020年コロナ禍のおうちde句会の後、播町様より私の句を書き添えられた絵手紙が届きました。なんと粋な素敵な絵手紙と、とても感動しました。その後この句がおうちde句会のトップになったと知り、私にとって忘れられない一句と絵手紙です。ランダムでの20年間、いつも暖かく迎えて下さり感謝に堪えません。本当にありがとうございました。

  自販機を押せば涼しき声もして

ご冥福をお祈り申し上げます

 

播町逝く夏悲しみよりも唖然とす  ひろひろ

『俺が希望した淡河句会、寒くても行くよ』 最後の句会やった淡河句会。

有馬句会、姿見えず残念。帰って電話するも、咳込み苦しそうな播町さん。

願い空しく、2022.6.23黄泉の世界へ旅立たれた。残念無念 播町さん。

  快復の望み届かず蒼天へ  

  八十一歳妻に看取られ天の川

  播町さん悲しむ句友梅雨最中

  ランダムの追悼句会夏最中

 

先輩 ありがとうございました  へるめん

高校生になってウキウキ気分で、同じ中学から来た仲良しの子と「部活どこ入ろう」と話し合って「めるへん」という雑誌にあこがれて、雑誌部に入部しました。その雑誌部の二年生に播町さん(中作清臣さん)、中田伸一さんがおられました。楽しい高校生活でした。

それから八十歳になった今日まで、近くから 遠くから 永い間 本当にお世話になりました。

ドジで 生き下手な私にも、端的な助言 そして暖かくピュアな生き様を見せて下さいました。

自分でも気付いてなかった私の心の奥を思ってくださって、心救われた事も何度かありました。

私の方からは なんのお返しもできてない ドジなままの後輩でした。

最後の方では ランダムの仲間に入れていただいて 楽しゅうございました。

もう あの播町さんが おられないなんて―――。  寂しいです。

  ビール飲んで「ほなな」とお別れしたかった

  薄暑光チャリ颯爽と別府の浜

  ファッション美術館夏大空に千の風

ご冥福を心よりお祈りいたします。

奥様はじめ ご家族の皆様 ランダムの皆様のお悲しみ お察し申し上げます。

 

逝く人の思い出深し夏吟行  蛸地蔵

播町さんについての思い出は尽きることがありません。

中でも全くの俳句の門外漢を指導して、句会に参加でき楽しい時間を過ごさせて頂いたことに感謝しています。

播町さんの楽しい人柄に接し温かい御交誼ができました事に心から御礼を申し上げます。

書きたい事柄はまだまだありますが、まとまりがつきませんのでこの辺で筆を擱きます。

心からのご冥福をお祈り申し上げます。合掌

 

播町さん 大変お世話になりました  ろまん亭

市役所の先輩として、また俳句の先輩としても、お導きいただきありがとうございました。

賀状はいつも俳句でうずめられていて、ちょっと私にはわからない点もありましたが、さすが播町さんの句だと感心したものです。

お酒にもよく誘っていただき、いろいろ楽しい話を聞かせていただきました。

天国でも、お友達を集めて、楽しい話をしてあげて下さい。

本当にありがとうございました。合掌

 

追悼・感謝  稲村

6月上旬播町さんに電話をしました。「芸術文化団体 印南野半どんの会」という私が代表を務める団体の総会・講演会が6月25日に予定されており、いずれも会員である岡村二郎さん、柳本波平さんが出席されるので、播町さんも来られませんかというお誘いの電話である。

「調子がよくないのでこの前の有馬句会も行けなかった。家から出ないことにしているので悪いけど欠席する。よろしく言っといて」 「調子が良くなり、コロナが収まったら3年ぶりに三宮でいつもの有志で懇親会やりましょう」 「そうやね」 病状がそれほど進んでいるのを少しも知らずの電話だったが、これが最後の会話になった。

6月24日楠公会館で市役所採用同期の会「虫の会」が開催され、私の向かいに座っていた元教育長の鞍本さんが 「中作さん(播町さん)元気にしとってんやろか。よろしく言っといて」 その日の夜、翌日も自宅へ電話したがつながらなかった。6月26日奥さんから電話 「何度も電話頂きながら出なくてすみません。じつは主人は23日に亡くなりました」 「ええ!」 と絶句。

すぐ柳本波平さんに電話。6月27日二人で自宅を弔問。玄関には柳本さんの奥さん富子さんの絵と川瀬さん(へるめんさん)の書が飾ってあり、祭壇には本人お気に入りという68歳頃の元気でにこやかな顔の写真。奥さんと暫く思い出話し。追悼と感謝。

播町さんとの思い出はなんと言っても播町さん、波平さん、私の3人編集長で雑誌「RANDOM」を発行しようと誘われたこと。これは現在も続く「神戸RANDOM句会」の活動につながっている。楽しい会に誘って頂いたと今も深く感謝。

印南野半どんの会の機関誌 『印南野文華』 にも度々投稿いただきました。例えば 「100歳という生き方、そして播州弁のこと」 「高齢者予備軍の百日白書」 「老いるということ-引用句辞典-」 「神戸八景」 「高齢者予備軍の遊び探し『RANDOM』始末」 「水の旅 盛岡・宮古」 「別府港散策」 「エチゴツマリ・フェイクジャーニー」 など。特にありがたかったのは、2016年2月「印南野文華の検討課題10項目」という提言をいただいたこと。少しずつ実現していきました。まさに核心を突く提言で会の発展に貢献いただきました。感謝しかありません。

 

梅雨明けて印南野からの千の風  見水

6月28日に梅雨が明け、六甲連山に白雲が湧き強い南風が吹いた。播町さんの風だと感じた。

播町さんとの出会いは、2つ目の職場の1980年。播町さんは隣の係の係長さんで、周囲から慕われ上司から一目置かれる存在。翌年度に係長試験を控え、慣れない仕事で四苦八苦しているのを見かね、ときどきランチに誘っていただいた。ある時、一風さんたちと播磨町のお家に呼んで下さり、「気心が通じる年齢差は10歳までやけど、一生のつきあいやで」、と28歳で自費出版された詩集「陽の弧」を渡された。

 その後、仕事でご一緒することはなかったが、ときたま職場に訪ねて来られ、2001年に播町さんは定年退職。句集「水の家」を頂戴した。2002年に始められた高齢予備軍の「遊び探し」マガジン・RANDOMに、「もう50歳やろ、あんたもどう」と、句会とイラスト描きに参加。以来20年、RANDOM句会を通じて楽しい日々を共にした。

一風さんと当方に届いた有馬句会欠席のメールが播町さんからの最後のメッセージになった。

「体調に不安があり、出かけて迷惑をかけそうなので、欠席いたします。記念すべき20周年なのに本当に残念です。今年はコロナに加え、ロシアーウクライナ戦争で、しかもヴィッセルもタイガースも不振で、いいことがない。だからこそ皆さまと楽しみたかったのですが、断念します。なお、句会には「郵便」参加をOKしていただきたく、一風氏あて「5句」投句を郵送します。これまで2回の有馬句会では、皆さんの名句、佳句が不思議に多くうまれました。当方、体調がよくないと、しかも吟行なしでは、句も不振ですが、そこはまあ記念句会ということでお許し願います。」

人にやさしく自分にきびしく、こんな素晴らしい方に出会えて本当に幸せでした。

 

最後のフレーズ

播町さんは、神戸市職員として神戸ファッション美術館準備室長や須磨区副区長を務められ、最終のポストは神戸市立中央図書館長。通信教育で司書資格も取得されました。

完全フリーとなった63歳の2004年から読書三昧の生活。ノンフィクション中心の書評「気になるフレーズ」のブログを開設され、60代後半には1日1冊連続1,447冊読破を記録。「1960~2010年・傑作ノンフィクション100選」や「発掘本・再会本100選(未完)」も編まれ、播町さんが日々綴る書評ブログは、播町ファンには何よりのサプリでした。

が、79歳の2020年3月に「わがブログ、終わりの時」を宣言し中締め。2021年12月の「2021年傑作ノンフィクションベスト10」が最後に。ブログには3,700の書評が検索できる「気になるフレーズ全索引」と、含蓄深い「高齢力 引用句辞典」が残されています。

播町さんは、

 この「高齢力 引用句辞典――リタイアからエンディングまで」は、ブログを終わる

 にあたっての“記念品”である。これまでのブログで紹介した約3,500点の本の中から、

 約530点を選んで編んだ「読む辞典」である。読むだけでなく、会話や文章に引用さ

 れることを意図したものである。

と書き、辞典の最後に選んだフレーズは、西山厚さん(1953~、奈良国立博物館学芸部長を経て、現在、帝塚山大学文学部客員教授)の次のフレーズでした。

 1008  死ぬとは

 死ぬとは、先に亡くなった一番大切な人にまた会えること。

 大事なのは、その時まで生き切ること。久しぶりに会うのだから、いろんな話をしてあげない

 といけない。暗い話はだめ。喜ばれない。

 素敵なみやげ話をたくさん持っていくために、その時まで精一杯生き切るのだ。

 ■西山厚『仏教発見!』講談社・2004

このフレーズどおり、播町さんは、素敵なみやげ話をたくさん持っていくために、精一杯生き切られました。 懐かしい人たちに、もう会われましたか。

(2022.7 編集/ mimizu)

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2022=祝20周年・有馬句会

2022-04-29 | 吟行句会

記念句会

2年を超えて続くコロナ禍に加え、ロシア-ウクライナ戦争や阪神タイガースの不振など、いいことがありませんが、今春は、2002年4月の第1回神戸RANDOM句会から20周年。

播町さん・稲村さん・波平さんが定年退職を機に発刊した「高齢者予備軍の遊び探しマガジン『RANDOM』」第1号の遊びの企画として、「春らんまん有馬吟行湯けむり句会」を12名で開催し、その記録が掲載されたのが初回。

句会は、丹波篠山、伊賀上野と続き、2007年の第4回「須磨寺かいわい雨中吟」から年2回開催が定着。日帰りの吟行・句会・呑み会3点セット、コロナ禍にはリモートの在宅句会で対応し、「神戸RANDOM句会」は賑やかに続いています。

いま、コロナ禍第6波の大波が落ち着き、3回目のワクチン追加接種を全員終えていることから、さくらさんの提案で「祝20周年・有馬句会」を開催することにしました。

開催日は2022年4月25日(月)、コロナ対策で密を避け、花見シーズンが終わりゴールデンウイーク前の若葉の季節の平日昼間に。有馬は第1回の開催地で、第10回の2010年4月にも桜を満喫し、名句、佳句が不思議に多くうまれました。

天気予報は雨でしたが、晴れ男・一風幹事長の気持ちが通じたのか、直前に晴天に。気温も上がり、午後は夏日になるよう。

残念なのは、この句会を生み育てた播町さんの欠席。体調管理のため自粛ということで「郵便で5句投句」の参加です。…〇数字は句会での得点

 母に似てきたと云われし桜かな   播町

 耕やせばわが老いの身に萌ゆる句が 播町①

 悪童の老いて落花の句座三たび   播町②

 せせらぎに風の歌聴け夏近し    播町②

 湯の町に足湯だけして春惜しむ   播町

「母に似て…」は句集「水の家」の「母病めば母をめがけて散るさくら」を思い出します。

有馬へ

句会幹事長の一風さんは、午前9時前に神戸市営地下鉄「西神南駅」から乗車。メンバーが各駅から乗り込んで来るか目を凝らします。

 行く春にわが人生をふりかえり  一風①

 ぞろぞろと人の行き交う四月かな 一風

伊丹から出発の蛸地蔵さん。久しぶりの神戸です。三宮駅から乗車。

 ひさびさの句会も楽し春も逝く 蛸地蔵

 なつかしき神戸の街は春じまい 蛸地蔵

明石のひろひろさんは、通勤時間帯をはずし少し遅れて参加。

 春句会寂しかったぜ腕時計  ひろひろ

 電車のる気使う我や春暮るる ひろひろ

コロナ禍で外出を控え、腕時計をはめるのも電車に乗るのも2年ぶり。

駅前集合

神戸電鉄「有馬温泉駅」駅前が集合場所。集合時間は午前10時。

 新緑や昔ながらの古い駅   弥太郎①

神戸電鉄はニュータウンの駅ではエレベーターやエスカレーターを設置していますが、「有馬口駅」や「有馬温泉駅」はひなびた昔のままの駅。全国から訪れる観光客にはお洒落なKOBEとのギャップが魅力かも。

電車は9時53分に到着したはずですが、揃ったのはまだわずか。

「皆さん、どうしたんでしょうね」

「三宮駅では見かけましたが」

幹事長・一風さん率いる一行は、「谷上駅」での乗り換えで迷い、1本遅れたようです。

 神鉄の音もなつかし長閑なり 一風①

 神鉄の駅毎に触れ若葉風   さくら①

登山電車のようなのどかな神戸電鉄は旅情をいざないます。約10分遅れで到着。

駅前にはタクシー乗り場があり、老舗旅館や温泉施設の送迎バスがひっきりなし。今年初めてのツバメがかすめ飛んでいました。

 老いつつも三たびの有馬風薫る 一風③

 久に会ふ句友有馬の若葉風  さくら

 名にし負う有馬の里に風光る  蛸地蔵②

第36回神戸RANDOM句会「祝20周年・有馬句会」のスタートです。

今回の参加者は、さくらさん、だっくすさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさん、の女性5名。男性は一風さん、蛸地蔵さん、英さん、ひろひろさん、見水さん、弥太郎さん、ろまん亭さんの7名で計12名。本日はろまん亭さんの奥様が同行されるので総勢は13名。

後で合流するだっくすさんとひろひろさんを除く11名が揃いました。コロナ禍で長く会えなかったメンバーと久々のマスク越しの対面。一風幹事長から本日の予定の確認と、播町さんと稲村さんの欠席の報告。…は句会での特選句

 記念句会欠けし人あり花は葉に つきひ③

 春句会代表選手参加せず    ひろひろ

この好天気です。感染対策は細心にして、記念句会を存分に楽しみましょう。

 アラカンはまだアラエイティ山笑う 見水

 春深し遊びをせんとや集ひけん   へるめん①

2010年の第10回有馬句会で、ろまん亭さんは「アラカンを過ぎて愛でるは散るさくら」の佳句を詠みました。かつてのアラカン(約60歳)は、アラセブ(約70歳)・アラエイ(約80歳)になりました。さあ、出発。

有馬温泉を歩く――――――――――

  ―(一社)有馬温泉観光協会・神戸市 令和3年10月発行 イラストマップ よりー

太閤橋

有馬観光の出発点は豊太閤像が出迎える湯けむり広場。有馬川にかかる太閤橋で記念の集合写真を撮りました。快晴です。

 太閤の像にしだるる残花かな どんぐり③

 山笑う有馬の谷で吟行を   英②

 太閤の有馬の跡や春惜しむ  英③

播州攻めで出会った有馬温泉を秀吉はこよなく愛し、天下統一の後も有馬に別邸を設け、正室ねねや千利休としばしば訪れ、瑞宝寺のひぐらしの庭で遊び、晩年には専用の湯殿を建てました。

 湯殿出て太閤見しか春の夢 さくら②

 春の夢持続可能な片想ひ  へるめん③

有馬でどんな楽しい夢を見たのでしょうか。

 川巾は春光の巾かがやかに つきひ③

有馬川がきらきら輝きながら流れています。

川を眺めながら上流に架かる赤い欄干のねね橋に向かいます。

ねね橋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねね橋のたもとに凛々しいねね像が立っています。

豊太閤像もねね像も彫刻家・新谷英子さんの作。有馬の玄関口を飾るシンボル像だけにともに好感度のある像です。

ねね像は20年前のまま若く、今日はもみじの若葉に包まれてひときわ美しく、魅了されます。

 ねね像の上に新緑もみじかな 弥太郎①

 ねね像の裳裾のぬれて若楓  どんぐり①

 ねね橋にみたび参りて若楓  見水③

秀吉の没後、家康により豊臣氏は滅亡しますが、時代をしっかりと生き抜いた女性でした。ウクライナ侵攻のニュースを連日見ていると、独裁者だった太閤殿下や鎌倉殿より現実を直視したねね殿や政子殿を応援したくなります。

 振り返るねね橋太閤橋おぼろ つきひ①

 有馬川ねね太閤の春かなし  蛸地蔵

有馬川を後にし、人気の土産物店が並ぶ広い太閤通を奥に進みます。桜を観に階段を登った眺めのいい善福寺には今回は寄りません。通りの奥でふんぞり返っていた猿回しのお猿さんも今日はお休み。

湯本坂

句会場の「かんぽの宿有馬」までは狭くて急な上り坂。それぞれに目的地に向かいます。

「金の湯」の外には誰でも飲める飲泉がありますが、コロナ禍で休止しているよう。テレビによく映る「足湯」もよく空いています。

 句会場へ坂の片陰拾ひつつ      つきひ②

 金の湯のぬるき足湯に春惜しむ だっくす③

 春暑し有馬の町は急勾配        だっくす

坂の両側は有馬らしい店や小宿が続きます。勢いよく湯けむりを上げる「天神泉源」や「御所泉源」に今回は寄りませんでしたが、道沿いの「妬(うわなり)泉源」から少し湯けむりが出ていました。伝統の「人形筆」や「有馬籠」の店は相変わらず人気です。

 木造の三階建の藤の房      どんぐり①

 路地の奥古き宿屋に門柳    蛸地蔵①

 山吹きが有馬の宿を色どれり  

 春うらら古湯をめぐる坂の道   弥太郎③

店が途絶え、タンサン坂を登ると、八重桜の花びらが降りかかり、大きなイタドリが。「もう少し小さかったらかじってみるんやけどな」と森林浴。

 上がる下がる上着荷となる坂薄暑 さくら①

 脇見歩きおっと鼻先毛虫かな   へるめん③

炭酸泉源

炭酸泉源公園まで登ってきました。もっと殺風景な場所のように記憶していましたが、12年ぶりの公園は樹木が生い茂り、新緑の森の中にいるよう。炭酸泉は飲めるようになっています。

 登りきて炭酸泉源汗ぬぐう 見水

 木樹若葉成長早し十八才  ひろひろ

 泉源の炭酸甘し樟若葉   へるめん①

 炭酸水咽にはじけて若楓  どんぐり②

こぶし道

 つづら折上るなぞへの著莪畳  どんぐり

 若葉道まがりくねって句会場  へるめん③

 晴れわたる湯の街有馬菜種梅雨 

炭酸泉源公園から有馬の外周道路のこぶし道へ、つづら坂を登ります。著莪(しゃが)の花が咲いています。

こぶし道からは、少し霞んでいますが、北神の団地や有馬富士など三田の山々が望めました。

 風少し松の花粉のけぶりをり  だっくす

 稲荷社へあえぎ登った春の昼  弥太郎

 新緑の温泉神社鳥の声     弥太郎

弥太郎さんは単独行で稲荷神社の長い階段を登り、温泉神社の鳥の声に癒されたようです。

炭酸せんべい

こぶし道の先にある湯の花堂本舗の炭酸せんべいの製造所では、割れせんべいを格安で販売。ろまん亭さんは今回の句のテーマを有馬の炭酸せんべいにしぼりました。

 春風に有馬せんべいにおいくる     ろまん亭①

 有馬せんべい春風そよぐ心地よく    ろまん亭

 ビニール袋にセンベイ破れて春の風   ろまん亭

 ビニール袋にせんべいわれておいしそう ろまん亭

 五月のせんべい破れておいしく見える  ろまん亭                         

乾杯・昼餉 

昼食と句会の会場の「かんぽの宿有馬」は、12年前の第10回有馬句会でも句会と夕食で利用しました。今回は午前11時から午後4時までの利用。早く着いたメンバーはロビーのソファで句作りをしたようですが、正午が近づいてきたので、2階の「六甲の間」に全員移動し着席。

今回は20周年記念句会。20年間の句会の一覧と各メンバーの名句から選んだ「かるた」(ブログに掲載済)を配り、会費をいただきました。

一風幹事長から午後の予定の説明。追加で、「20年間の句会で1番の思い出」の提出もお願いし、乾杯。席は離していますが、コロナ禍前の句会に戻った気分。

 二十年継続あっぱれ花の杯    さくら

 ランダム句会美味し昼飯春暮るる ひろひろ

祝20周年・有馬句会――――――――

句会場は1階の会議室。午後1時に2階の「六甲の間」から移動。さくらさんとへるめんさんはかんぽの宿有馬の売店で賞品選びです。

各自5句の提出期限は午後1時30分、集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付けます。午後2時にフロントで選句表を人数分コピーしてもらいました。コピーができるまで、つきひさんの差し入れの柏餅をいただきながら、コーヒータイム。

午後2時15分、全員に選句表を配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者12名の総点数84点の争奪戦です。

午後2時30分、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。65句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

高得点句

本日は6点獲得句が2句と、4点句が2句ありました。

ねね像を仰ぐ青葉に染まりつゝ つきひ⑥◎◎◎

 若く美しいねね像と若楓に心が洗われました。

ねね橋の赤き欄干風光る    だっくす⑥◎◎

 毎回訪れていますが、心ときめくスポット。

惜春や主不在の記念句座    だっくす④◎

 記念の句会に播町さんの欠席は残念。

炭酸の泉を囲む若葉かな    一風④

 しばらく来ないうちにすっかり森に。

表彰式

午後3時40分、獲得点数により表彰式です。

優勝はつきひさん(15点)、準優勝はだっくすさん(13点)、第3位はへるめんさん(11点)。つきひさんとへるめんさんは出句した5句すべて得点しパーフェクト。つきひさんは有馬と相性が良いらしく、3回の有馬句会すべて優勝です。

他のメンバーは、一風さん(9点)、どんぐりさん(7点)、見水さん(6点)、弥太郎さん(5点)、英さん(5点)、播町さん(5点)、さくらさん(4点)、蛸地蔵さん(3点)、ろまん亭さん(1点・ブービー賞)、ひろひろさん(0点)でした。

今回の賞は、さくらさんが命名し、賞品はさくらさんとへるめんさんがかんぽの宿有馬の売店で選んだ地元産のお酒とお菓子です。 

 

 

 

 

 

                                              

 

 

女性軍5名対男性軍8名は50点対34点で、女性軍が圧勝。

まもなく終了時間の午後4時です。

20年間の句会で1番の思い出

メモしていただいた「20年間の句会で1番の思い出」は、時間内にご紹介できませんでした。以下のとおりです。

一風さん

第6回近江石山寺へ行ったのが特に印象にあります。源氏物語に興味を持っていた時期で、今思うと、遠いところへ行ったものだと思います。

さくらさん

「第1回春らんまん有馬湯けむり句会」です。ランダム句会の原点、スタートラインに立った句会です。皆さん若く句も生き生きと馬力があり新鮮な感じがします。20年よくがん張り続けられたと感無量です。お世話になった係の皆様に感謝あるのみです。

蛸地蔵さん

第24回の「淡路松帆」のスケッチ句会。句会にスケッチとはと思いしや、句作より架橋のスケッチに熱中した事が思い出深い。

だっくすさん

第12回桜乱舞王子動物園句会。満開の桜が惜しみなく舞い散り風紋が出来ては別の模様に次々と変わる様は夢のようでした。動物の背やアシカ池に浮かぶ花びらも何ともいえずステキでした。

つきひさん

第1回 有馬句会 (あえて挙げれば)選者の選・講評というスタイルではなく、互選、句についての発言自由というスタイルに新鮮さを感じました。又、吟行・句会・飲み会の3点セット+ブログも大きな魅力です。

どんぐりさん

第21回の森林植物園・弓削牧場句会。弓削牧場のおいしいチーズ料理と若葉風の中での句会。とても気持ちよかった。

英さん

第7回明日香村句会は天気も良く、興味ある遺跡と田のレンゲ草が印象的でした。弥太郎さんに高得点をいただき感激しました。

ひろひろさん

第3回伊賀上野句会で、帰り道に鶴橋で下車した仲間に参加できなかった。美味しい焼肉を食えなかった。つくづく残念なり!!

へるめんさん

第12回桜乱舞王子動物園句会。桜乱舞がすごくよかった。感動!

見水さん

第8回の龍野句会。雨の中の強行軍でしたが充実した一日でした。以来、にゅうめんと寅さん映画のファンに。

弥太郎さん

第4回須磨寺句会。神戸女子大の「女子大の葉桜の庭空襲碑」の句は「神戸空襲を記録する会」の会報に紹介された。

ろまん亭さん

第12回王子動物園句会。桜吹雪のような情景がすごかった。

 

午後4時、お世話になったかんぽの宿有馬の方に全員集合写真のシャッターを押していただき、通勤ラッシュ前に帰れるよう、早々に解散しました。

好天に恵まれ、新緑の中の祝20周年記念句会の句友との久々の吟行と食事は、長引く巣籠り生活を忘れさせ最高のリフレッシュでした。事前準備と幹事の一風さん、さくらさん、へるめんさん、お疲れさまでした。

                   

 鯉のぼり泳げ平和の空泳げ     見水③

 向日葵の種蒔くいちめん咲かせたい 見水

 春過ぎてコロナ禍去るを楽しみに  

高止まりのコロナ感染に凄惨なウクライナ侵攻、知床観光船の事故。円安に値上げ。気がかりな事ばかりですが、季節は風薫る初夏の進行中。最悪のスタートだった阪神タイガースも蘇ってきました。神戸RANDOM句会はいよいよ21年目、ますます楽しい句会になりますように。

 2022.4 写真・文/mimizu

 

 

 

 

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2021=淡河本陣マスク句会

2021-12-03 | 吟行句会

昨年からのコロナ禍で、メンバーが顔を合わさないリモート句会が4回続きました。

メンバー全員がワクチン接種済で、コロナ禍の第5波が収まっていることから、ブレークスルー感染や新たな変異株を懸念しつつ、密を避け、人めを避けて、2年ぶりの吟行句会です。

吟行先は、北神戸の山里・淡河本町。4年前に復元された江戸時代の建物「淡河宿本陣跡」の座敷を1日借り切ります。

 山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草も枯れぬと思へば

当日は厳しい寒波到来の予報。さびしい句会にならなければと気を揉みました。

2021年11月29日(月)、午前8時30分、JR三ノ宮駅中央改札口付近が集合場所。しっかりマスクはしても、通勤客がまだ多い時間帯に都心に集合。朝は冷え込みましたが、風の無い晴天で、気温は上昇。

第35回神戸RANDOM句会「淡河本陣マスク句会」のスタートです。

 

今回の参加者は、だっくすさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさんと女性4名。男性は一風さん、英さん、播町さん、見水さん、ろまん亭さんの5名で総勢9名。さくらさん、蛸地蔵さん、稲村さん、ひろひろさん、弥太郎さんはそれぞれご都合があり残念ながら欠席。三宮からの出発は7名で、どんぐりさんはマイカー、英さんは別ルートのバスで現地参加です。

 来ましたねマスク姿の友の顔   一風③ …丸数字は句会での得点。は特選句

 コロナ禍に人みなマスク二年越し 一風①

 着ぶくれてすつかり婆となりにけり だっくす②

駅の東側の高架下にある三宮バスターミナルへ移動。長距離バスが出たあと乗り場案内があるので、しばらく待合所で待機し、一般路線バスの案内表示が出て乗り場に移動。吉川庁舎行きの神姫バスに乗り込みます。午前中の唯一の便で、午前9時に発車。

 山眠る中をグングンバスは行く 一風

 峠越えドローンの眺め冬淡河  見水

市街地から新神戸トンネルで六甲山地の再度山を抜け箕谷へ。さらに国道428号線で標高約500mの丹生・帝釈山の山塊を山越えし、35分で「淡河本町北」停留所に到着。停留所が少ないので意外に早く着きました。のどかな田舎の町ですが、ここも神戸です。

淡河本町を歩く――――――――――

1958年に神戸市に編入する前は美嚢(みの)郡淡河村。淡河以外の美嚢郡はいまは三木市に編入されています。裏六甲の志染川・淡河川・美嚢川は、流域の里山を潤し、南に広がる神出、岩岡、稲美町にも灌漑用水を疎水で送り、加古川に合流します。

バスを降りると目の前が淡河宿本陣跡。すでに門が開いています。

 跡といふ遥けきものの冬ざるる つきひ④   

淡河宿本陣跡

午前9時45分、門をくぐると、復元時に保存会が建立した句碑がありました。

 街道に名残りの屋号つばめ来る 艶子

庭先を奥へ進み、踏み石で靴を脱ぎ、広縁から「西座敷」に上がります。

 冬の庭灯籠に日のあたりたる だっくす

 冬紅葉淡河本陣西座敷    だっくす

 踏み石や淡河本陣冬うらら  へるめん①

 紅葉本陣昔の夢        ろまん亭

 殿様はいずこ本陣冬座敷   見水①

空き家になっていたこの建物を復元し公開したのは、4年前の2017年。かつてドライブなどで淡河本町に立ち寄る人は、満月堂の豊助饅頭を買いに来る人ぐらいでしたが、2003年に道の駅淡河ができ、さらにこの淡河宿本陣跡が整備され、淡河本町には3つの名所がそろいました。

本陣跡は、カフェや食事の提供があり、部屋貸しもしています。本日は江戸中期に建てられた「西座敷」を借りて、わが句会を開催することにしました。今日は日差しが暖かで、部屋はファンヒーターの暖房が効き、座敷用の低い椅子もいくつか置かれています。

一風幹事長から本日のスケジュールを説明、句を書いて提出する5枚ずつの短冊が配られ、会費も集めました。施設の係の人からの説明もあり、貴重品以外のかさ張る荷物を置いて、付近の吟行に出発です。

へるめんさんとだっくすさんには満月堂での賞品選びをお願いしました。

湯の山街道

午前10時20分、本陣跡を出て、西側に残る「湯の山街道」の旧道を歩きます。

道幅は6mほど。新しい住宅も混在していますが、時代を経たお屋敷がいくつか残っています。

 山眠り初めし湯の山旧街道  どんぐり①

湯の山街道は、秀吉が整備した道です。秀吉は天下人になってからもよく有馬温泉を訪れ、寺院や湯殿を作っていますが、秀吉と有馬温泉との出会いは三木合戦。摂津を支配する荒木村重の信長への謀反により、西国街道(山陽道)が村重に押さえられたため、裏道のこのルートを整備しました。有馬の湯が気に入ったのは、三木攻めで負傷した将兵の湯治に役立ったからでしょう。

淡河川

湯の山街道の旧道を抜け、車の往来の多い新道(県道38号線)を少し歩くと、里山を流れる美しい淡河川の景色が眺められます。水鳥もいました。

 冬田なか淡河疎水の水迅し  播町②

10月22日の下見のときは、さらに500mほど西にある淡河八幡神社まで歩きました。途中で実った柿の木やパンダのマンホールも見つけました。神戸市には、ポートピア博覧会のときに初めて中国からパンダが来て、現在は神戸市立王子動物園でタンタンを飼育していますが、パンダの主食の竹は淡河で採取して運んでいます。

 

淡河八幡神社は、8世紀に創建され、鎌倉・室町時代には領主の淡河氏が崇敬し、以後も淡河庄の鎮守社。現在も地域の御弓神事などが行われている由緒ある神社です。

淡河には、ここから東へ4kmの所に、7世紀に開山し、薬師堂や三重塔のある真言宗の名刹「石峯寺」があります。鬱蒼とした森の中に古い堂塔が配置され、戦国時代には戦禍にも遭いましたが、大勢の僧たちがここで修行をしました。

 

今日は淡河八幡神社には寄らず、道の駅淡河に向かうことにしました。

午前10時30分、一風幹事長と合流。どんぐりさんと英さんから、道の駅淡河に着いた連絡があったとのこと。メンバー全員がそろいました。

 初冬の淡河の里で苦会あり    英①

 柿の実が食べられなくていと淋し 英①

 木々の赤帝釈山は真っ盛り    英②

道の駅淡河

 道の駅淡河は、2003年、神戸市初、政令指定都市で初めての道の駅としてオープン。

一番の人気は、十割手打ち蕎麦のレストラン「そば処・淡竹」。地元で栽培された蕎麦で作った蕎麦定食などがセルフサービスの手軽な値段で食べられます。

 折りたたむ青き光沢走りそば  つきひ①

隣接する農産物直売コーナーでは、スーパーでは買えない地元特産の新鮮野菜などを安く販売。最近、施設がリニューアルされ、駐車場やトイレも整備され、土日には混雑しています。

今日は、期間限定販売の「北神ねぎ」を入口に並べ、宣伝していました。

 北神ねぎ入口に盛る道の駅  見水⑤

 北神の秋を並べて道の駅   つきひ①

女性メンバーは、それぞれ持ち帰りのできる野菜を選んで買っていたようです。

つきひさんとろまん亭さんはどんぐりさんの車で一足先に本陣跡駐車場に移動。へるめんさんとだっくすさんは賞品選びに満月堂へ。

淡河城址

道の駅の隣の高台には「淡河城址」のシンボルの館が建ち、前から登ってみたかった場所です。

午前10時50分、今日は天気がよく時間もあるので、男性軍の英さん、播町さん、一風さん、見水さんの4人で登山道を探し、山道を登って頂上へ。館の後ろは広い城址の台地があり、稲荷神社や土俵、淡河城址の石碑や淡河合戦図の額も掲げられています。台地の続きに畑も広がっていました。

山上からの淡河本町の眺めは、冒頭のタイトルの写真です。

 天高く落城の址寂として  播町②

 今は夢淡河廃城幾世紀   英①

淡河の里は平安時代は荘園でしたが、鎌倉時代に淡河氏の領地となって淡河城が築かれ350年続きました。1578~1580年の三木合戦で淡河氏は三木の別所氏側に付いて、秀吉軍に滅ぼされ、淡河は有馬氏の領地に。有馬氏は江戸時代には久留米藩主になり、淡河は明石藩の領地に。

満月堂

午前11時20分、淡河城址を下りたメンバーは豊助饅頭の満月堂へ。鐘楼のような独特の立体看板は遠くからよく目立ちます。創業120年以上の老舗和菓子店です。

阪神間の人には、淡河の豊助饅頭は超有名。薄皮に包まれた柔らかい香りのいいこし餡の饅頭。蒸したてなら3つ4つ食べてしまいます。

 豊助の湯気立つ蒸篭待ちに待つ  播町②

饅頭には栞(しおり)が添えられ、淡河の歴史と饅頭の由来が書かれています。何度読んでもほっこりする文章。季節の和菓子を作り、安くて美味い豊助饅頭を作り続ける満月堂はご立派。

今日の句会では、紙箱入りの10個入り豊助饅頭を参加賞に。小さな注意書きの紙に、俳句が添えられていました。

 のれん守る味ひと筋に去年今年

本陣参集

午前11時30分が昼食の集合時間。全員が本陣跡に戻りました。

どんぐりさんと英さんにも句を書いて提出する5枚ずつの短冊を渡し、会費もいただきました。

 皆つどう元本陣の冬座敷  英

 淡河宿集う本陣冬座敷   一風

本日の昼食のメニューは「和栗とサツマ芋の山菜釜飯」。

係の人が座卓に全員の釜を並べます。

「出来あがるまで20分ほどかかります。出来あがったころに小鉢などを運んできます」

とのこと。

釜飯が炊き上がるのを待ちながら、出句の5句を完成させます。句の短冊の提出期限は、午後0時にしました。

 紅葉に青空がおおいかぶさり   ろまん亭④

 虻寄せて石蕗の黄の色さゆれたり どんぐり

 石灯籠デンと据るや石蕗の花   へるめん①

 日当ればこそ旧本陣の冬紅葉   どんぐり②

 旧本陣の水音かそけき散紅葉   どんぐり②

本陣は、江戸時代の宿場町で参勤交代の藩主が宿泊した建物。大庄屋など土地の有力者が用意しました。参勤交代は、武家諸法度により、藩主が国元と江戸に1年ずつ滞在し、妻子は人質として江戸に居住させられた制度で、250年続きました。

家来とともに武器や用具類も運ぶ大名行列の移動距離は1日に30~40km。外様大名の多い西国の藩は江戸まで膨大な日数と費用がかりました。全国には300の藩があり、播磨国も10数藩。参勤の時期は4月と定められ、各藩の担当役は他の藩と重ならないよう、行路や宿泊地の手配に苦慮し、西国街道(山陽道)の裏街道として、この湯の山街道が活用されたようです。

明治になると本陣は役目を終え、中山道の妻籠・馬籠や岡山の矢掛の本陣跡は観光地になっていますが、全国的にはあまり残していないのでは。淡河宿本陣跡保存会の取り組みは貴重です。

 棉の花活け衣装蔵なまこ壁   どんぐり④

 紅葉映ゆ本陣跡の衣装蔵    つきひ②

 裏向きに古文書貼り込む襖かな へるめん②

 楠古木父の踵のあかぎれて   へるめん

淡河本陣は、大庄屋の村上家の建物。三木攻めの秀吉が湯の山街道の宿場町として当時淡河を支配した有馬氏に整備を命じたのが始まり。江戸時代も村上家が本陣を提供しました。

2016~2017年の再生・修繕工事にかけた費用は1300万円だそうです。「西座敷」は江戸中期、主屋は明治45年の建物。他に土蔵(米蔵・衣装蔵)や茶室、納屋があり、いずれも100~300年前の歴史的な建造物です。

西座敷は新しい天井と畳以外は当時のままのようですが、書院窓や欄間は300年前のものとは思えないモダンな造り。床の間の壁や襖は破れたままにして下地に丈夫な和紙の反故を貼っているのを見せています。

 納屋カフェの太き煙突薪暖炉  見水②

納屋は薪ストーブとピアノ、テーブル、椅子を置いて、カフェにしています。

受付に映画のポスターが貼られていました。江戸時代の建物や庭の佇まいが合っていたのか、今年6月に上映されヒットした「るろうに剣心最終章The Beginning」のロケ地になり、西座敷は剣心(佐藤健)の仕える桂小五郎(高橋一生)の潜む京の屋敷に、中庭は新選組の屯所のシーンに使われました。

 釜飯の火を熾すとき山眠る   播町②

 釜飯の新米の香の満つる部屋  つきひ①

 釜飯の炊きあがる香や冬座敷  だっくす④

 さつま芋栗に新米香る湯気   見水①

そろそろ釜飯が炊き上がったようです。係の人が小鉢やお椀を各席に置いていきます。

席は3人席、4人席、2人席と、密を避けて。

釜飯昼餉

午後0時10分、2年ぶりの、待ちに待った、マスク昼宴会の始まりです。

「このあとの句会はいらんけど」

「ビールは何本?」

「今日は3本でいいやろ」

コロナ禍で自粛生活に慣れています。ビールは中瓶3本を各グラスについで、静かに乾杯。

小鉢は、風呂吹き大根や地元野菜の煮物、あんかけなど。吸物は淡河産黒豆味噌汁。釜飯は、ほとんど味付けなし。薩摩芋と栗と新米の香りと味。まず炊きたてを味わい、お替りにはお茶漬けを、と熱い出汁入りのお茶を別に置いています。

 風呂吹の旨し昼餉や淡河宿    だっくす

 第六波までの束の間映えランチ  播町

 淡河宿本陣紅葉黙昼食(ひるげ)  一風①

 昔本陣の昼食しずか       ろまん亭

いつもの句会なら、最新の話題で盛り上がるのですが、阪神やオリックスの話も出ません。昨日南アフリカで見つかったオミクロン株は今後どうなるのか…。静かに黙食。

「お茶がほしいなあ」

午後0時40分、食事を終えた一風幹事長、厨房へお茶の注文しに、広縁を大股歩き。

 一風幹事長大股雪見障子越  へるめん②

未提出だった句の短冊もすべて集まりました。

淡河本陣句会―――――――――――

午後0時50分、集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付け。

午後1時20分、一風さんと見水さんが、選句表をローソン淡河店のコピーサービスで人数分コピー。清書からコピーができるまで、つきひさんの差し入れのクリスマス菓子・シュトーレンをいただきながら、ほうじ茶でティータイム。

つきひさんからは『千原叡子弔句集』の回覧も。弔句集には、昨年亡くなられた千原叡子さんへの、さくらさん、どんぐりさん、つきひさんの弔句が掲載されています。

午後1時30分、全員に選句表を配付し、各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者9名の総点数63点の争奪戦。

午後2時、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。43句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

午後3時30分、本陣のコーヒー・紅茶でコーヒータイム。

高得点句

本日は5点獲得句が1句と、4点句が4句、3点句が1句ありました。

北神ねぎ入口に盛る道の駅   見水⑤

 下仁田ねぎ、岩津ねぎ、特産ねぎが美味しくなる季節。

跡といふ遥けきものの冬ざるる つきひ④◎

 本陣としてはもう役割を終えた庭や建物があわれ。

紅葉に青空がおおいかぶさり  ろまん亭④◎

 真っ赤な冬の紅葉、写真家の目で切り取った光景。

棉の花活け衣装蔵なまこ壁   どんぐり④◎

 珍しいワタの枝を飾った古い蔵に風情があります。

釜飯の炊きあがる香や冬座敷  だっくす④◎

 素材の味を引き出す薄味の釜飯、甘い香りでした。

来ましたねマスク姿の友の顔  一風③

 コロナ禍の合間の、待ちに待った2年ぶりの句会。

表彰式

午後3時40分、獲得点数により表彰式です。9点獲得者は3人いるので、ジャンケンします。

句会は静かに進行したのですが、ジャンケンの掛け声が思わず大きくなり、隣の南座敷から、

「いま部屋で録音をしているので…」

と、飛んで来られました。江戸の座敷は声が筒抜け。静かに、静かに…。

優勝はどんぐりさん(9点)、続いて見水さん(9点)、つきひさん(9点)。つきひさんは出句した5句すべて得点しパーフェクト。

他のメンバーは、播町さん(8点)、へるめんさん(6点)、だっくすさん(6点)。ブービー賞は、英さん(5点)、一風さん(5点)、ろまん亭さん(4点)の3人で静かにジャンケンし、ろまん亭さんに。

今回の賞は、今回欠席のさくらさんが命名し、賞品はへるめんさんとだっくすさんが満月堂で選んだお菓子のセットと、10個入りの豊助饅頭の参加賞。

                                               

今回は全員が得点し、大きな点差は無く、女性軍対男性軍も珍しくほぼ互角、で句会は終了。

今回は添削例は無し。2年ぶりの再会を楽しみ、マスク越しの雑談です。来年2022年は神戸RANDOM句会結成20周年です。何か記念になる企画を、と宿題。

午後4時、冬日がだいぶ傾きました。今はコロナ禍なので有志の居酒屋での反省会は無し。

西神戸在住の英さん、ろまん亭さん、へるめんさんはどんぐりさんのマイカーに同乗して帰宅することにし、午後4時15分、本陣跡の駐車場を出発。あとの5名は、とっぷり日の暮れた「淡河本町北」停留所にやってきた午後4時57分発の三宮行神姫バスに乗り込みました。

好天気に恵まれた2年ぶりの句友との吟行は、長い巣籠り生活の最高の気分転換になりました。

今回の事前準備と幹事の一風さん、へるめんさん、だっくすさん、お疲れさまでした。

句会の翌日、オミクロン株が日本に初上陸のニュース。今回の句会は間一髪のタイミングでの開催でした。第6波、ブレークスルー感染、ワクチンの再接種に、またふり回されそう。

慌ただしい去年今年、今回も初詣は年内早めに行くことにしますか。皆様よいお年を。

 2021.12 写真・文/mimizu

 

 

 

 

         

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2021=2021夏・俳句日記句会

2021-08-21 | 吟行句会

2021年8月8日、TOKYO2020東京オリンピックが終わりました。
若いアスリートの活躍に元気をもらいましたが、聖火が消えると、コロナ禍が戻ってきました。

6月末、播町さんから「2021夏・俳句日記句会」の提案。1年半経ってもコロナ禍の収束は見えず、大勢で集まる対面句会はできそうにないが、この夏は、近況報告を兼ねた「俳句日記」の投稿で句会をしようとの提案です。7月23日からは57年ぶりの東京オリンピック。この時にわがメンバーがどう過ごしたかブログに残すのも一興では、とのアイデア。
句会主宰のつきひさんと幹事の一風さんの賛同を得て、7月1日に「2021夏・俳句日記句会」の案内状をメンバーに郵送しました。「今回の句会の投稿内容と投句数は、7月20日から30日の3日~5日間のその日の行動を短く記録した日記と俳句5句。投稿・投句期日は8月5日、選句期日は8月20日」
2021夏・俳句日記句会――――――
7月に入ると、デルタ株による感染が急拡大し第5波。政府は五輪の無観客開催を決定。
4連休、夏休みも始まり、7月23日夜の開会式や緒戦の日本勢メダルラッシュで、テレビ・新聞紙面は五輪一色。柔道の金メダルを同日獲得した兄妹はわが神戸出身。滋賀の女性スイマーの金メダルは爽やかでした。新競技のスケートボード、サーフィン、スポーツクライミングも観戦。
205の国・地域から約11,000人の選手が参加し、日本は金メダル27個(史上最多)、銀メダル14個、銅メダル17個の総メダル数58個(史上最多)。8月24日からはパラリンピック。
一方、コロナ第5波は爆発的拡大。新規感染者数が全国で連日1万人を超えるや8月18日からは2万人超え。ワクチン接種は高齢者から始め、国民の40%が接種済ですが、若い働き盛りの世代へのワクチン接種が進んでいません。医療が逼迫し、感染者は自宅療養により重症化や家庭内感染も。8月20日には緊急事態宣言が13都府県に拡大されました。
わが句会は、投稿・投句は締切の8月5日に11名・55句が集まりました。ろまん亭さんの出句は締切後になったため、残念ですが選句の対象外になりました。稲村さんと英さんは今回の投句は欠席(次回はご参加を)。
8月6日に作者を伏せた選句表を作成し、メンバーにメールと郵送で送付。今回は投句欠席のメンバーにも選句表を送付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句1点で、各人の持ち点は計7点。
選句は8月20日に13名分がそろいました。投句欠席だった稲村さんと英さんは選句には参加いただきましたが、ろまん亭さんは選句は欠席(次回はご参加を)。総点数91点の争奪戦です。
得点集計と選定理由を取りまとめ、各メンバーの俳句日記とともにつきひさんにメール。感想と添削例のコメント等をいただきしました。
では、メンバーの俳句日記と選句で獲得した得点(丸数字、は特選句で2点)、選句理由(〈選〉)をご覧ください。配列は投稿の到着順です。


俳句日記-2021.7.20~30-

播町さん
×月×日
スマホでもローマ字入力をしているが、最近はマイクをオンにし、口述筆記に。だが滑舌が悪いため、例えばこの俳句。「句、起きはがきあ夏休み」
句読点多きはがきや夏休み  ④
〈選〉・きっと孫からのはがき。嬉しいものです。…一風
   ・お孫さんからのはがきでしょうか。コロナがなければ遊びに来られたのに。
    …だっくす
   ・孫からの手紙か?家族の温もりが良い。…蛸地蔵
   ・(元の文は)句読点無しの日記で御免!!…ひろひろ(選外)
×月×日
 
自転車を押したり乗ったりして6千歩散策。別府港。対岸の播磨町人工島に巨大なノルウェーの自動車運搬船が入港。帰りに伊勢田屋でスコッチTEACHER’Sを見つけ購入。かつて三宮東門「ニューコロナ」で愛飲した。千津子ママ、元気かな。
 夕涼や止まり木にママひとりいて
〈選〉・現役時代を思い出す。…ひろひろ(選外)
×月×日 
大中遺跡公園へ6千歩散策。土山駅から昔の別府鉄道跡の「であいの道」南へ1 kmに茶室蓬生庵や県立考古博物館。花水木150本が咲く4月下旬にここで句会をやりたいもの。
 片陰にチャリンコ人生ひ・と・や・す・み  ➀
〈選〉・只管(ひたすら)に漕ぎ続けるのは疲れますものね。「片陰」いいですね。…へるめん
×月×日
――TOKYO2020開会式ヘッドライン。
米The New York Times:空席の海に開かれた東京オリンピック
仏France Info:大坂が炎を灯し、東京の空にドローンが……
韓ハンギョレ:コロナ時代、「癒やし」の東京五輪開会
朝日新聞:コロナ下の開幕 1年延期し無観客
 千万のテレビの醒めて夏五輪  ➀
〈選〉・どのチャンネルも五輪ばかり。日本のテレビは五輪に占領された。「醒めて」が秀逸。
    …へるめん
   ・五輪疲れ。…ひろひろ(選外)
×月×日 
錠をかけられたようなコロナ禍の1年半。かろうじて鬱になるのをまぬがれている。
 無為にして地球は縮む無月かな ③
〈選〉・コロナに打ちのめされて秋に。…見水
   ・まだこの様な無為の境地に達した事はないが…。
    いつか解るような気もする。…へるめん

つきひさん
7月20日(火曜) 
アッコちゃんワクチン打った?と千津子ママから電話。お互いに2回済で一安心。
話の大方は阪神談義。ママのご贔屓は走る虎の中心、中野拓夢。祈る優勝!待つ祝杯!
 ナイターやマスクの顔の大写し
 
(2009.7.11甲子園・阪神巨人戦)
7月24日(土曜) 
8月中旬提出のプレゼン用の写真撮りにポーアイの女子大へ。3時終了予定が夕方になった。
海にも山にも美しい積乱雲。
 ばら色に水平線の雲の峰 
7月25日(日曜)
昨日見た貿センビルからビルの下に咲いていたねじ花を思い出す。
鷹羽狩行の『摩天楼より新緑がパセリほど』を下敷きに一句。
 ねぢ花のらせんの目指す摩天楼  ④
〈選〉・捻じれながらまっすぐ伸びるねじ花自身は、ものすごく高く伸びている気分
    なのでしょう。…だっくす
   ・摩天楼とその狭間の捩花との対比が面白い。…どんぐり
   ・小さく可憐なねぢ花が巨大な摩天楼を目指すようにそのらせんを成長させていく。
    対比の目の付け所が面白い。…さくら
   ・きれいな絵の様な句。…蛸地蔵
 
(ねじ花…我が家の庭のものです)
7月26日(月曜)
様々な競技をTV観戦。スケボーの選手たちの若さと競技を楽しむ姿が眩しい。
東京も空だけは青く美しい。
 スケボーのスーパートリック涼しき瞳(め)  ③
〈選〉・若者は、いとも簡単にオリンピックメダルを獲得できるのか!?…どんぐり
   ・元気がでる句を選びました。TOKYO2020は、スケートボード、
    スポーツクライミング、サーフィン等新種目。
    若者の「遊び」がスポーツへ進化した(老人の出る幕じゃない)。…播町
   ・五輪の新競技に目を見張る。…見水
7月28日(水曜)
五輪TV観戦。岡山の美咲句会の句稿が届き選をする。
会員Aさんの山陽新聞に載った『方言ばあじゃ』の記事の切り抜きに爆笑。
 堪能す一本勝ちとうな重と  ④
〈選〉・オリンピックでの柔道の活躍と鰻重の美味しさを堪能した作者。…どんぐり
     ・元気がでる句を選びました。日本柔道、一本勝ちが続きました(見ていませんが)。
    金メダル9コ。素根輝、ウルフ・アロン、浜田尚里、新井千鶴、永瀬貴規、大野将平、
    阿部一二三、阿部詩、高藤直寿。…播町
   ・鰻重を食べつつ五輪観戦。試合は一本勝ち金メダル。言うことなし。
    心も腹も大満足。…さくら
   ・五輪バンザイ!!…ひろひろ(選外)

* 下の写真は、我が家のベランダに咲いてゐる『サクララン』です。挿し木をしています。
 上手く着いたら、希望者に差し上げたいと思っています。
  

へるめんさん
7月20日(火)
兵庫県平和美術展の作品搬入。「非核」「さわやかに」「しなやかに」
の3点。久しぶりの人達と交流。
 印南野よ放つ草矢よ少年よ  ④
〈選〉・印南野に草矢を放って遊んだ少年時代への懐かしさが溢れている。
    今の子供たちはこのような思い出は持てないかも。…だっくす
   ・リズムが良い。印南野の地名も効いている。…つきひ
   ・詠嘆の「よ」を3つ並べたところに深い抒情が伝わる。
    少年の放つ草矢は様々な思いを展開させてくれる。…さくら
7月23日(金)
平美展会場当番。私の「非核」書けども書けども納得できなかった作品。
正面に展示されて身が縮む感する。
 真夜の壁首振る影は扇風機
 
7月24日(土)
兵庫県母親大会文化ホール中ホール。苦労して書いた舞台の垂れ幕2枚
と正面看板の出番。恥かしながら~

 東京狂乱夏の大三角形歪む  ➀
〈選〉・スケールの大きさに魅かれた。…つきひ
7月27日(火)
家の前の階段から玄関まで、手摺取付と門扉取替工事。
手摺はあれば自然と持っている。門扉も気分転換。
 忘却もまんざらでもなし合歓の花  ➀
〈選〉・満更でもなしがよい。忘却の持つ意の広さと深さ。…つきひ
   ・忘却ばかりで困っています。…ひろひろ(選外)
7月28日(水)
訳あって、朝、太極拳の公園に早めに行った。
誰もいない公園、燕が2羽さっときて大きく回ってさっと去った。
 病む国の空切り裂きて若燕  ③
〈選〉・元気がでる句を選びました。燕といえばヤクルト・スワローズ。
    若燕は侍Japan最年少のスラッガー村上宗隆のこと
    (ではないでしょうね、ないとは思いますが)。
    優勝を決めた一振り、見事でした。…播町
   ・若い燕が勢いよく飛んでいる姿に頑張る力を感じて、
    コロナに悩まされる日々に希望をもらう。…さくら
   ・閉塞したこの頃に一服の清涼剤。…蛸地蔵
   ・まだ日本はそこまで病んでない?…ひろひろ(選外)
  

一風さん
7月20日(火)
午後は3か月に1度の歯科検診。
最近の具合を尋ねてくれる歯科衛生士さんの声にホッとする自分がいる。
 梅雨明けて2階におれぬ昼下がり  ②
〈選〉・私も実感しています。…英
   ・実感…稲村
   ・熱中症で倒れるぞ。…ひろひろ(選外)
7月21日(水)
「今日は何日」がいつもの朝の始まり。ためにデジタルカレンダーを購入。
2099年まで表示できるとか。
 見上げれば雲一つなく蝉の声  ②
〈選〉・真夏の青空のもと、蝉の鳴く声が聞こえる。…弥太郎
   ・梅雨明けの空、明けると同時にくまぜみの合唱。…稲村
   
7月25日(日)
午後2足の靴を自分で修理。
今どきこんなことをしている人はいるのかなーと思いながら。
 今日の月めざすメダルに似て見える  ➀
〈選〉・余裕ありますね。いい人生ですね。…ひろひろ
7月27日(火)
女子ソフトおめでとう。
6回裏のダブルプレーはとてもとても珍しいプレーでした。 
 陳列の土用うなぎに手を伸ばし
〈選〉・よっぽど美味しそうに見えた。腹ペコ時代。…ひろひろ(選外)
    
 極暑でも五輪の風に人集う

だっくすさん
7月20日(火曜)
熱中症警戒アラートが出ている中を神大附属病院へ。
昨年外出中に熱中症で意識不明になったので、往きは息子が送ってくれ、帰りはタクシーで無事帰宅。
 あれこれの薬味も冷やし冷奴
7月21日(水曜)
キッチンに立つと、窓の正面の木々の間にある大きな合歓の木にピンクの花がたくさん咲いて、この時季の楽しみになっている。
 ねむの花窓から見つつ夕支度  ③
〈選〉・"のんびりさ"が伝わります。…一風
   ・余裕ありますね。さぞ美味でしょうね。…ひろひろ
   ・花のある幸せな暮らし。…見水

*写真は8月3日撮影。花の盛りが過ぎて数も少なく色褪せてしまいました。
7月24日(土曜)
朝目覚めると蝉の声が。今日初めて鳴いたのかな?
小さな声で少しの間鳴いただけで何となく可愛かった。
 初蝉の遠慮気味なる朝の声 ➀
〈選〉・朝になった。初めて聞いた蝉の声が心に残る。…弥太郎
7月28日(水曜)
近所の主婦3人でスイーツを持ち寄りお茶会。
月に1度だけれど緊急事態宣言と蔓延等防止措置が出ていたので久しぶりだ。
お互いワクチン接種済みなので賑やかにおしゃべりを満喫した。
 夏布団掛けることなき夜が続く
〈選〉・その通り。…ひろひろ(選外)
7月29日(木曜)
午後遠くで少しだけ雷が鳴った。
先日の雷はずいぶん長い間すぐ近くで鳴り続け、とうとう落ちて停電。怖かった!
マンションの他の棟ではインターホン故障の被害があったそうだ。
 一時間狙い定めて落雷す  ②
〈選〉・雷に一時間も狙われたら大変。音と光の恐怖がリアルに伝わってくる。
    …さくら
   ・落雷一度見てみたい。…ひろひろ(選外)

蛸地蔵さん
7月23日(金曜)
午後、近所のセンターにて『学び直しの世界史』を受講。
夜、オリンピック開会式をテレビ観賞。
 五輪祭熱なく上がる花火かな
     
7月24日(土曜)
和歌山・岩出の老健施設へ数ケ月振りの義母見舞。
多少の認知症、体の不具合あるも概ね元気。98才の貫禄。
 車窓より稲穂青波涼やかに  ②
〈選〉・青田が美しい。日本の姿そのもの!!…ひろひろ
   ・担い手不足。日本の原風景、いつまでも…英
7月25日(日曜)
終日在宅。夕方、庭の散水に屋外へ。無為徒食にして閉門蟄居の感あり。
スマホにて三橋美智也の唄に没入。
 炎天に蝉さえ鳴かず静寂や  ②
〈選〉・蝉が鳴くのを忘れているような猛暑の日がある…弥太郎
   ・真昼の空。…ひろひろ(選外)
7月26日(月曜)
妻の病院への送り、コンビニでの買物を済ませ、家で一息した時、
つらつら我がTシャツを見れば、後前反対なり。
 行末を思い始めるこの夏は  ③
〈選〉・コロナ禍や現政権の梶取のあやうさに合せて、私自身の老いに重ねて。…英
   ・70代80代ともなれば考える。あと何年生きれるか。…ひろひろ
7月27日(火曜)
いつも通りの午前を過ごし、夕方頃より散髪屋へ。
その後散歩。喫茶店に立寄り暫しの安楽の刻。至福の珈琲。
 一人飲む珈琲の香や大西日  ②
〈選〉・「大西さん」の句かな。…英
   ・いい一日だった。きっと明日も。…見水
   ・夕方の珈琲。…ひろひろ(選外)
      

弥太郎さん
7月20日(火曜)
朝日新聞、7月17日掲載の数独を解く。難易度が5つ星の難問だった。
はがきに回答を書いて投函した。
 朝目覚む遠くで聞こゆ蝉の声
〈選〉・ゆっくり寝れて幸せですね。…ひろひろ(選外)
7月21日(水曜)
昼食は、HAT神戸のJICA関西食堂。
7月の月替わりエスニック料理は、パキスタン料理だった。
 街歩きペットボトルの冷え麦茶
〈選〉・熱中症予防。…ひろひろ(選外)
7月22日(木曜)
午後、コープこうべ主催の「脳トレ咲くらサロン」に参加。(シーア5階)
軽体操とケームを楽しんだ。
 汗かわくビルの谷間の風を受け  ②
〈選〉・アスファルトの熱気とビルの高さが感じられる。…どんぐり
   ・ビル風の一吹き。経験ありそうな風情がよく表現されている。…蛸地蔵
    
7月23日(金曜)
 アスファルト蝉の死がいを草むらに
7月24日(土曜)
午前中、「東部市場横丁まつり」へ。
クイズにチャレンジ。参加賞として缶コーヒーをいただいた。
7月25日(日曜)
毎朝の日課である「御影ラジオ体操の会」に出席。
大屋根の下(雨天可)、クラッセ広場で、150名。
 夏休みラジオ体操一二三
〈選〉・いいことだ。賛成。…ひろひろ(選外)

さくらさん
7月20日(火曜)
名にし負う温泉の街熱海を襲った水害禍、今も行方不明の人の捜索は続く。
胸が痛む。
 人を呑み家を呑み込み梅雨出水  ➀
〈選〉・近年の大雨は本当に怖い。自分の近くだったらと思うとなお怖い。…だっくす
   ・出水には注意を!!…ひろひろ(選外)
7月21日(水曜)
巣篭りの日々が続く。
二年前、揖保川の辺の鮎茶屋に行ったのを思い出す。
大好きな鮎、夜は蛍、又行きたいな。
 揖保川の瀬音も馳走鮎御膳  ⑧◎◎
〈選〉・美味しそう~!…へるめん
   ・瀬音が聞こえてくるようだ。揖保川も効いている。…つきひ
   ・贅沢ですね。昨年からどこへも行っていない身には羨ましい限り。…だっくす
   ・揖保川で捕れた新鮮な鮎を戴く贅沢。…どんぐり
   ・心地良い瀬音で食欲もすすむ。…稲村
   ・こんな日が早く来てほしい。…見水
   ・羨ましい限り。…ひろひろ(選外)

7月24日(土曜)
今年もコロナでお盆に帰省できない。
ふと見上げた空に盆の月を思わせる美しい満月が。
親やご先祖を思い合掌。
 盆の月無沙汰詫びつつ遠拝む  ➀
〈選〉・盆の時期、墓参の気になる様子が巧く表現。…蛸地蔵
7月26日(月曜)
応援していた選手は惜しくも銅メダルとなったが、柔道着の汗が力闘を物語っていた。
美しい汗だった。
 銅メダル汗美しき柔道着  ②
〈選〉・金ではなく、銅メダルだから尚更に。…つきひ
   ・汗が美しいとの感性にひかれます。…一風
7月28日(水曜)
夫は術後の経過よく定期健診も本日で終了。
今日は土用丑の日、快癒の祝は魚の棚で特大の鰻を奮発。
 快気祝鰻特大奮発す
〈選〉・毎日食べな?懐具合大丈夫!!…ひろひろ(選外)

ひろひろさん
7月20日(火曜) 晴
5時前起き、北窓・デッキ・勝手口を開け、着替、タオル。犬に水。床上げ。吸入口・鼻・目洗う。牛乳と焼芋。犬散歩、餌。掃除機。ストレッチ。朝シャン。
 くま蝉の千人合唱朝の九時  ②
〈選〉・元気がでる句を選びました。少年のころ茶色の油蝉が9割で、
    緑色の透明な羽の熊蝉は1割で、貴公子の気品だった。
    今やその熊蝉がほぼ10割、席巻している。なぜか?
    (中2の教科書に答えが)…播町
   ・なくてはならない夏の風物詩。…英

7月21日(水曜) 晴
妻とニトリ。この暑いのにたくさんの客。二人連れより一人客多し。
ほとんど無言。日本人は言葉を忘れたか頭をよぎる店内。
 蝉時雨神社境内俺一人  ②
〈選〉・"静かさ"の統一感でしょうか。…一風
   ・降りしきる激しい蝉時雨。…見水
7月25日(日曜) 晴
犬散歩。5時半の地面24度。犬上機嫌でよく歩く。
夕方は地面熱し。犬不機嫌。早く帰ろと主の顔を見、Uターン。
 犬散歩路面熱いぞ影歩け  ➀
〈選〉・元気がでる句を選びました。太平洋高気圧もチベット高気圧も張り出して、
    猛暑の日々が続く。連日の犬散歩、ほんとうにお元気ですね。
    季語がないので下五は、「日陰行け」がいいか(迫力が無くなりますが)。
    …播町
    
7月26日(月曜) 晴
いや驚いた。五輪卓球男女ペア伊藤水谷組。ドイツ、中国と対戦。
もう負けたと小心男。しかし粘る何くそ馬力、金メダル輝く!!
 朝散歩砂利道哀れ枯れ蚯蚓  ➀
〈選〉・朝の散歩の途中に、みみずが砂利道で枯死しているのを発見。…弥太郎
7月27日(火曜) 晴
犬散歩、ストレッチ、クラブ素振り、朝シャン。
心身すっきり、朝食美味し。今日も何かいい事あるかな。前へ進もう!!
 朝シャンで心身清く夏生きる  ②
〈選〉・さあ今日も清く生きよう!…へるめん
   ・朝シャンで清々しく夏を楽しんでいる。…弥太郎
* ひろひろさんは、上記の5句では物足りず、次の5句(選句対象外)も詠みました。
 こっちのほうが高得点だった?
  短日の五時前起床今日明日も (7/20)
  日陰駐車ゆっくりできる買物が (7/21)
  犬散歩路面熱しや早よ帰ろ   (7/25)
  犬散歩澄む空気中松に蝉   (7/26)
  夏風呂やドボンで終る俺一日  (7/27)

どんぐりさん
7月24日(土曜)
一年遅れの東京オリンピック、ついに開催。
異常な暑さと新型コロナ感染の衰えもないのにどうなることやら。
 オリンピックテレビ観戦蟬集く
7月27日(火曜)
一年四ヶ月ぶりの句会に参加。
ワクチン接種のため等、参加者はいつもより少ないが、すぐ反応があり楽しい。
 夕立の匂ひ幼き頃の道  ④
〈選〉・一瞬にして昔に戻る不思議な感覚をよく表現。…蛸地蔵
   ・「匂ひ」がすべてをものがたるよう。…一風
   ・アスファルトでない地道の匂いがよみがえる…稲村
   ・思ひ出すなァ~。夕立の匂ひの道、日向の匂ひ、田圃や畦道の匂ひ。
    …へるめん(選外)

7月30日(金曜)
身近な人の訃報や癌が見つかったと言う知らせが重なって届く。
聞けばあれこれ気になりじっとしておれない。
 同胞の恙の報せ夏深し
 雷鳴のつひに近づく試合中
〈選〉・ゴルフは中断に。…ひろひろ(選外)
 甲子園出場決まり雲の峰  ②
〈選〉・若人の勢いある姿こそ希望。…へるめん
   ・まさに夏の風景と思います。…一風
   ・がんばれ若人!!…ひろひろ(選外)

ろまん亭さん
7月19日(月曜)
弟夫婦が何か月ぶりかで畑でとれたものを車に積んで持ってきてくれた。
 赤とんぼ故郷の空つれてくる
7月20日(火曜)
半日のデイケアが、いつも朝迎えに来ては夕方になる。
 半日のデイケア デイのケアになり
7月21日(水曜)
いわし雲はいつも祝っているかのような「祝い雲」。
 石だたみ少し先行きいわし雲

7月22日(木曜)
眠れない夜は、病院の夜か朝が来たかのよう。
 病院で見るはおのれの未来かな
7月23日(金曜)
夜起きていたら朝が来る。
 朝が来たら夜が朝
(*ろまん亭さんの句は、投句締切後の出句だったため、残念ですが選句の対象外としました。)

見水さん
7月20日(火曜)
猛暑。午後は冷房の効いた図書館で文芸春秋をパラパラ。
各コーナーを回り、気になる本を2時間ほど読む。
 巨大なる夏雲一瞬顔となる  ②
〈選〉・雲もいろんな形に見えます。…英
   ・入道雲の変化を見ていると面白い。…稲村
   ・そんな雲見たいなあ。…ひろひろ(選外)

7月22日(木曜)
海の日。7年ぶりに香住・餘部へドライブ。
豊岡道は但馬空港まで開通済。コウノトリには出会えず。
 酷暑の地抜けて香住の海の青  ⑦
〈選〉・気持と風景が伝わってくる…稲村
   ・山を通り日本海へ抜けたときの開放感。
    若いころは毎年山陰へ海水浴に行ったものだ。…だっくす
   ・香住の海が見えた時の感激が伝わってくる。…つきひ
   ・山陰の海の青さに涼しさを感じます。…どんぐり
   ・この極暑、都会を脱出したい気持同感。
    香住の澄んだ青空と海に生き返る。極楽のよう。…さくら
   ・香住の海の青さに、心が穏やかになる。…弥太郎
   ・日本海も暑いのでは?…ひろひろ(選外)
 
7月23日(金曜)
酷暑。ブルーインパルス雲に阻まれる。
五輪開会式。選手の入場行進中に睡魔。起きて最後まで視聴。
 長嶋の一歩は待てる夏五輪  ➀
〈選〉・痛々しい姿で偉い人ですね。開会式衝撃受ける。…ひろひろ
7月25日(日曜)
家族で買物。安売りのアイスをまとめ買い。
夕食は夏野菜たっぷりの皿うどんと解凍加熱の蓬莱豚饅。
 はちきれんばかりの獅子唐苦み良し  ②
〈選〉・元気がでる句を選びました。がぶりとかじりたくなります。
    ガーリックバター炒め、塩を多めのおつまみ、じゃこと炒め煮、
    甘辛中華風炒め……(さて、作者のレシピを公開願います)。…播町
 
作者…単品で味わうのもいいのですが、この日は八宝菜の具材に。
   味付けはオイスターソースと胡麻油です。
7月27日(火曜)
日本勢のメダルラッシュで、コロナの心配をよそに五輪一色。
まるで80年前の日本。
 マスク越し勝利に弾む夏五輪  ②
〈選〉・一本。五輪・コロナ時を詠む!!…ひろひろ


まとめ ―――――――――――――

 

感 想

つきひさんの感想とコメントです。

・選句表を見たとき、句の背景となる日記にはどんなことが書いてあるのだろうかとわくわく感がありました。
・皆様の日記を読ませて頂き、改めてその生き方の素晴らしさに感動しました。事実や体験は人の心に素直に伝わりますね。窮屈な制約の中で、一日一日の暮しを大切に前向きに生きておられる事を強く感じました。
・俳句日記句会の企画、今の時期にぴったりで会員の近況もわかり大変良かったと思います。
・男性軍の活躍が見事でした。

《マスク》という季語
  ナイターやマスクの顔の大写し
  マスク越し勝利に弾む夏五輪
今回の句会にもマスクを入れた夏の句が2句有りました。他の句会でもマスクは季語か否か話題になっています。マスクは本来、風邪を予防するという意味で、冬の季語ですが、花粉症が増えた頃から季節感を失いかけ、コロナ禍の今では、年中かけているので季節感は全くありません。季語の世界で今後どのような扱いになるのか注目です。
高得点句                                                                      
選句により、全部の句に点数が付けられ、作者も明かされました。今回の高得点ベスト7を再掲します。
 揖保川の瀬音も馳走鮎御膳    さくら  ⑧◎◎
 酷暑の地抜けて香住の海の青   見水   ⑦
 堪能す一本勝ちとうな重と    つきひ  ④
 夕立の匂ひ幼き頃の道       どんぐり ④
 印南野よ放つ草矢よ少年よ    へるめん ④
 句読点多きはがきや夏休み    播町   ④
 ねぢ花のらせんの目指す摩天楼   つきひ  ④
添削例
つきひさんに、今回の句から3例を選び、添削をしていただきました。
1例目(添削前)犬散歩路面熱いぞ影歩け を、
   (添削後)愛犬よ路面熱いぞ日陰行け
としてみました。「日陰行け」は播町さんの指摘と添削例をそのまま拝借。「犬散歩」を「愛犬よ」にしてみました。
2例目(添削前)朝目覚む遠くで聞こゆ蝉の声 を、
   (添削後)朝蟬や挑む数独難易度5
としてみました。パワフルでバラエティに富んだ日記内容をそのまま句にしてみました。
この作者の日記は面白くそのまま句にすればよいのにと思うものが沢山ありました。先日、数独の名付け親という人が亡くなったという記事を目にしました。
3例目(添削前)一人飲む珈琲の香や大西日 を、
   (添削後)一人飲む珈琲の香や大夕焼
としてみました。コーヒーではなく、珈琲という漢字表記に、珈琲の香りの高さや至福の時間がよく表現されていると思います。ただ、季語の大西日は決して心地良いものではありません。折角の至福の時です。華やかで壮快な大夕焼の方が似合うのではないでしょうか。

獲得点数により賞が決まりました。
優勝(金メダル)は見水さん(14点)、準優勝(銀メダル)はさくらさん(12点)。第3位(銅メダル)はつきひさん(11点)。
他のメンバーは、へるめんさん(9点)、蛸地蔵さん(9点)、播町さん(9点)、ひろひろさん(8点)、だっくすさん(6点)、どんぐりさん(6点)、一風さん(5点)、弥太郎さん(2点)。
出句した句すべて得点したパーフェクトはひろひろさんと見水さん。
つきひさんが選ぶ「つきひ特別賞」は、ひろひろさんに。選定の理由は、「まず、5句すべて得点のパーフェクト達成。規定の5句+5句とエネルギッシュな投句。パワフルでヘルシーな暮らしの中に俳句を溶け込ませ、それを楽しんでいることが素晴らしい」から。
賞品は、今回も図書カードを送らせていただきます。
             受賞者       賞 品
 優 勝(金メダル)  見水さん    2000円の図書カード
 準優勝(銀メダル)  さくらさん   1000円の図書カード
 第3位(銅メダル)  つきひさん   1000円の図書カード
 つきひ特別賞     ひろひろさん  1000円の図書カード

女性軍対男性軍では、女性軍5人で44点、男性軍6人で47点、男性軍も大いに健闘。
今回もリモート句会ながら、選句に頭を悩まし、「俳句日記」を楽しく拝見して、元気をもらえました。ご協力ありがとうございました。
 
発生から20ヵ月続くコロナ禍、8月21日現在、感染者は国内で126万人、世界で2億1,000万人。亡くなった人は国内で1万6,000人、世界で440万人になりました。
次の句会は、「マスク吟行」でも顔を合わせたいですね。ご希望やご提案があれば、一風幹事長まで。もう秋です。阪神タイガース、今年こそ優勝を!

 2021.8 写真・イラスト/bantyo,tukihi,herumen,dakkusu,mimizu 文/mimizu 

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2021=春のおうちde句会

2021-05-02 | 吟行句会

新型コロナ第4波で、2021年4月25日から兵庫県は3度目の緊急事態宣言。GWは昨年に続き「がまんウイーク」に。
コロナ第3波が山を越えた2月末、播町さんから春句会の提案メール。
「鬱陶しい日々が続いていますが、めげずにお元気のことと存じます。『おうちde春句会』の開催を。また昨春中止された『柳本富子の足音』展が、4月3日から5月9日まで三木市立堀光美術館で開催されるので、有志で句会抜きの『三木吟行』(昨年案のミニ版)に出かけては」
つきひさんと一風さんで実施案を練り、3月3日に句会メンバーに第33回神戸RANDOM句会と三木吟行・ミニ版の案内状を送りました。2ヵ月かけた在宅句会の始まりです。
「今回の句会の兼題と投句数は、『春眠』、『桜餅又は鴬餅』、『蝶』で各1句、三木吟行参加者は吟行句3句、不参加者は自由句3句のいずれも計6句。三木吟行は4月6日(火)に開催。投句期日は4月20日。選句期日予定は4月末です」
おうちde春句会――――――――――
投句一番乗りは3月9日、前回も1番のひろひろさん。三木吟行は奥様の許可が出ず断念。
「近所の御厨神社の紅梅は落下盛ん、白梅は今満開です(3月7日現在)。今年は観梅のお客さん、カメラマンがいつになく大勢訪れられた様子。社務所の”犬友”のおばさん、走り回っておられました」
と、早春の梅の便り。
3月中旬までコロナ感染は下げ止まり状態。このまま収束かと、早い桜を楽しもうとしたら、3月下旬から関西で変異ウイルスによる感染が急拡大。
 世の中は地獄の上の花見かな  一茶
4月3日から『柳本富子の足音』展が始まりましたが、5日に阪神間で「まん延防止等重点措置」適用。6日の三木吟行は、通勤時間帯を避け、予定を2時間ずらして開催。
メンバーからの投句は締切の4月20日に12名・71句が集まりました。今回の欠席は、ろまん亭さん、英さんでした(次回にはご参加を)。
作者を伏せ、兼題ごとに句をランダムに並べ替えた選句表を作成し、締切日を4月30日にしてメンバーにメールと郵送で選句表を送付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句1点で、各人の持ち点は計7点。参加者12名の総点数84点の争奪戦です。
選句は4月30日に全員分がそろい、得点集計と選定理由を取りまとめ、作者の句のコメント・近況報告とともにつきひさんにメール。感想と添削例のコメントをいただきしました。


では、全員参加の兼題句『春眠』、『桜餅又は鴬餅』、『蝶』の句、自由句、三木吟行句の順で、メンバーの投句と作者のコメント(*)、選句で獲得した得点(丸数字、は特選句で2点)と選句理由(〈選〉)をご覧ください。兼題句と自由句の配列は投句の到着順です。


春 眠
 

春眠や布団にもぐり駄句を詠む  ひろひろ
春眠といふ桃色のジェル世界   つきひ②
〈選〉朝寝しているとカーテン越しに明るくなって、目を閉じているとまさに桃色の世界
   です。…だっくす
漱石の膝に「吾輩」春眠す    播町③
〈選〉・膝に眠るのは人?猫?…どんぐり
   ・先入観ではよめないおもしろさ。…一風
   ・面白い。…稲村
春眠の中に現る友の顔      一風
*長く会わないと顔も忘れる?
昼下がり老爺目覚めぬ春眠は  蛸地蔵
点滴のリズムに術後春眠し   さくら➀
*コロナで病院は面会謝絶。送られた写メールは点滴しながらうつらうつらする様子が。
 無事手術が終わった安堵は心地良い春眠の世界のよう。
〈選〉・正に春眠せざるを得ない状況が的確に表現。…蛸地蔵
   ・回復されましておめでとうございます。…ひろひろ(選外)
お昼過ぎ坐ったままで春眠す  弥太郎
雨音の奏でるリズム春眠し   だっくす②
*今朝は静かな春の雨音が心地よくて長い間ベッドで過ごしました。
〈選〉・穏やかな春の雨を聞きながら眠る心地よさ。…弥太郎
   ・早朝の春雨はいいもんだ。…ひろひろ(選外)


 
春眠や文字の踊ってゐるノート  どんぐり④
〈選〉・ついうとうとしながら、ノートにいろいろ書き連らねたら、文字が踊ってしまった。
    いや、いい夢だったので、目覚めて、踊っているように見えたのか。…播町
   ・書き物をしつついつの間にか心地良い春の眠りに襲われてしまった境地。共感。
    …さくら
   ・俺の日記帳のごとし。…ひろひろ
   ・講義のはじめの30分は必ず睡魔が。…見水
春眠し五体みなほどけて甘し  へるめん②
〈選〉この気分よくわかる。最高値。…ひろひろ
春眠を楽しみたいが今日も用  稲村
〈選〉羨ましいんだなあ。若いなあ。行動力に感心。…ひろひろ(選外)
春眠るみかん畑の夢を見て    見水
*どこか懐かしい夢はずっと見続けていたい。


桜餅・鶯餅
 

桜餅わたしとあんたひとつずつ  ひろひろ
桜餅葉っぱ食べる派食べない派  つきひ①
〈選〉葉っぱ食べる派。…ひろひろ
独り居の母にデリバリー桜餅   播町
桜餅食べて微笑む君が好き    一風①
*架空の場面です。
〈選〉わたしとあんた取り分けて。…ひろひろ
桜餅西と東で違いおり       蛸地蔵
西行も旅せし吉野桜餅      さくら①
*桜餅を食べながら吉野で六十首余を詠んだ西行の歌を思い出しました。
〈選〉西行庵。吉野は桜の名所。…稲村
葉が光る皿に並んだ桜餅      弥太郎
辛党の父が好みし桜餅      だっくす②
*桜餅は塩漬けの桜の葉が甘さに風味を加えているからでしょう。
〈選〉・怖くて優しい父。…どんぐり
   ・桜餅だけは別腹。桜餅の季節になると父を思う心。…さくら
祖母の手の鶯餅のへこみかな   どんぐり⑥
〈選〉・祖母の手にも鶯餅にもへこみがあって…。…だっくす
   ・鶯餅のへこみ具合、見惚れます。…へるめん
   ・"へこみ"がおもしろい。…一風
   ・家族の温もりが上手に表現さされている。…蛸地蔵
   ・昭和の時代までは饅頭やおはぎは各家で作っていました。…見水
うぐいすもち叡山電鉄始発駅   へるめん②
〈選〉・そこは八瀬比叡山口か鞍馬口か。帰りの電車を待ちながら、駅前の茶店へ。いや、
    出町柳で近くの老舗菓子舗で土産に買ったのか(始発駅で土産は買わないか)。…播町
   ・こんな時は、つい買いたくなります。…だっくす
桜餅満足すれど句に悩む     稲村
桜への愛しき思ひ餅となる     見水➀
*色も形も香りも味も、幸せを感じる桜餅。
〈選〉桜餅を見て、きれいに咲いた桜の花を連想する。…弥太郎 



酢橘の葉裏に蛹や春揚羽      ひろひろ
肩に来てサーブの邪魔をせし蝶々  つきひ➀
〈選〉テニスの試合中に現れた蝶。優しくそっと蝶を放った大坂なおみさんに観客は大拍手。
   緊張が解かれた一瞬を句に。鋭い目線です。…さくら
海峡をてふてふ渡るドローン追ふ  播町②
〈選〉・てふてふとドローンの組み合わせ。…どんぐり
   ・本歌どり?ドローンは中国製?面白い句。…蛸地蔵 
庭仕事蝶のおどりをながめつつ   一風
*庭にはいろんなものが現れます。
〈選〉悠長な庭仕事、余裕あり。…ひろひろ(選外)
ひらひらと蝶寄り添うや豆の花    蛸地蔵①
〈選〉春らんまん。美しい豆の花にひらひらと蝶が舞っている。…弥太郎
森英恵のファッションショーか胡蝶舞ふ さくら
*デザイナーの森英恵さんのトレードマークは蝶。カラフルな春の蝶は英恵さんのファッション
 から抜け出たようです。
ヒラヒラと風の吹くまま畔の蝶    弥太郎


 
幻か出会ひし蝶は大空へ      だっくす➀
〈選〉揚羽蝶には伝説がある。飛ぶ蝶は、復活、死と再生。そして魂を運ぶ生き物。
   兄が亡くなった後、公園で纏わりついてくる揚羽蝶に出会った。
   拙句に「揚羽きて兄かと思ふ戯るる」。蝶は大空へ…。…播町
黄蝶きて紋白蝶く里の昼      どんぐり➀
〈選〉里山ののどかな風景が広がる。…見水
蝶や来よ城主が辞世の歌碑に舞え  へるめん③
〈選〉・23歳の若さで自害した長治への哀歌。…つきひ
   ・歌碑のまわりに舞う蝶はさながら城主を慕う民たちと言ったところでしょうか。
    …だっくす
   ・滅びの中に、せめてもの美を。…一風
   ・ええ句やなあ。…ひろひろ(選外)
コロナ禍や自由自在に蝶は舞う   稲村➀
〈選〉羨ましい。…ひろひろ
紋黄蝶幼稚園児のように逃げ    見水
*花から花へ飛び回る蝶、幼稚園の頃の息子のよう。


自由句

爺散歩犬が誘うや春小雨      ひろひろ
わが愛犬春のスタイルトリミング  ひろひろ➀
〈選〉ワンちゃんにはコロナ禍もどこ吹く風。…見水
雑草や踏まれぺしゃんこ梅が香に  ひろひろ
ポタポタとやさしい音や春の雨  一風②
*雨が降ると我が家のベランダからしたたる雨。
〈選〉・ポタポタと降る春の雨に心和むひととき。…弥太郎
   ・リズム感と春の雨があう。…稲村 
シャボン玉児らに追われて風に乗る 一風④
*いつも見かける公園での一コマ。
〈選〉・われの子供のころ、我が子、孫を思い出す。…ひろひろ
   ・情感が籠った絵の様な句。…蛸地蔵
   ・情景が見えるような楽しい句。…稲村
睡蓮の葉に隠れしかあと一匹   一風①
*なかなか姿を見せないメダカを追って。
〈選〉・この小動物は何かしら。…へるめん
   ・何が隠れたのか、楽しいなあ。…ひろひろ(選外)
削られし半分の山笑ひたる   さくら
*新しい団地が出来、山が半分削られました。残った山は笑いながらも少し淋しそうです。
下車すれば海苔の香風の塩屋駅 さくら③
*須磨・塩屋・垂水は今も海苔の養殖が行われ養殖場の見学も出来ます。
 塩屋駅に立つとふと海苔の香が。
〈選〉・海苔の香りと駅名がよく合って香りが漂ってきます。…だっくす
   ・塩屋は「スパイの妻」のロケも行われ、ドキドキ感のある町。…見水
よちよちと未来へ向かひ青き踏む さくら②
*歩き初めた子はジグザグに歩きつつもしっかり未来へ向かって大地を踏みしめています。
〈選〉・小さい中に力強さが感じられて。…一風 
   ・幼子、孫か。…ひろひろ(選外)
菜の花の畑の彼方三輪の山    弥太郎➀
〈選〉古代ロマンに浸って歩ける日はいつ。…見水
春うらら渓流のみち足軽く    弥太郎➀
〈選〉・雰囲気がよく出ている。…稲村  
   ・その通り。…ひろひろ(選外)
そよ風に矢車草のピンと咲く   弥太郎
阿弥陀堂へと歩をのばす日永かな どんぐり②
〈選〉・阿弥陀堂と日永の取り合わせ佳し。…つきひ
   ・福島県の建造物で唯一の国宝・白水阿弥陀堂を訪ねたことがある。栩(とち)葺きの
    屋根の曲線が美しく、静謐な堂内で正座し、若い僧侶から話を聞いた。
    北林谷栄が堂守役の映画「阿弥陀堂だより」の長野県の小さな阿弥陀堂もいい。
    この句は、ついでに「歩をのばす」程度の阿弥陀堂だから、後者に近いか。…播町
花ミモザわんさかトレモロ駅ピアノ  へるめん
〈選〉駅ピアノ増えていますなあ。…ひろひろ(選外)
どこまでも続く桜に時忘れ    稲村➀
〈選〉・ザ・桜ワールドに感極まる。…蛸地蔵
   ・一度行ってみたいなあ。…ひろひろ(選外)


三木吟行記&吟行句
ここからは、2021年4月6日(火)の吟行の記録。吟行句は時系列で並べています。


三木城址へ
天気は、晴れのち曇り。肌寒いので少し厚着で家を出ました。
午前11時9分、神戸電鉄「鈴蘭台駅」で、だっくすさん、つきひさん、へるめんさんの女性3名、蛸地蔵さん、播町さん、見水さんの男性3名の計6名がマスク姿で粟生行の先頭車両に同乗。御影句会以来、1年5ヵ月ぶりの再会です。
 花は葉に遺作展へと乗り継ぎて  つきひ➀
 〈選〉エスカレーターに乗っている様な連続感がよい。…蛸地蔵

3両編成の電車が三木に向かって走り出します。この時間帯なので座席はゆったり。三木上の丸付近のイラストマップを配り、会費を徴収。車窓に流れる山々の春景色を見ながら、マスク越しに積もる話題をボソボソしていると、広々とした播州の風景。桜もまだあちらこちらで咲いています。小さな駅「三木上の丸」に到着。
   
ナメラ商店街を抜けて、三木市立堀光美術館に向かいます。商店はほとんどシャッターが下りていますが、老舗呉服店の店前の小さな掲示板に目が止まりました。

「春の雨だって。『降っているいないとも見ゆ春の雨』よね」
かをるさんの句に出会いました。
急坂を上り、堀光美術館とみき歴史資料館の並ぶ二の丸へ。


『柳本富子の足音』展
   
堀光美術館の入口には、作品展開催を祝う大きな胡蝶蘭が飾られています。
受付で、手を消毒し、来館記録票に名前・住所・連絡電話を記入して入館すると、凛々しい作務衣姿の柳本波平さんがお待ちかねでした。
このメンバーでの波平さんとの再会は2009年4月の第8回龍野句会以来12年ぶり。桜満開の龍野で波平さんは「名産をひとつまみして花の路」や「花曇り隠居うろつく龍野路」などの句を詠みました。2008年4月の第6回源氏物語千年紀・近江石山寺句会には奥様の富子さんの投句も。
  千年をたずねる人や柿若葉  富子
波平さんは、奥様の富子さんを2年4ヵ月前に亡くされた後、三木市からの要請で回顧作品展が昨年4月に開催されることになり、私費で図録づくりなど準備したところ、開催目前に緊急事態宣言で中止。今回、1年越しで4月3日からの開催が実現しました。
波平さんの4月5日のブログ(波平余生録)には、「昨日も、雨降りのなかたくさんの方々が遺作展会場・三木市立堀光美術館にお越しくださり、富子の絵を御観覧くださった、ワシャご来館の皆様方が本気になって絵に観入る姿を拝見し感激した、(…)うれしい!!!」と、綴っています。
 
入口で図録「柳本富子作品集・絵の旅」を手渡しでいただき、絵の前で波平さんを囲んで集合写真。1階と2階に並ぶ奥様の渾身の大作を、波平さんの解説で鑑賞しました。
 花は葉に夫がガイドの遺作展    だっくす③
 *奥様の作品についてイキイキと説明されていた波平さん。作務衣姿がとても素敵でした。
 〈選〉・コロナ禍のため1年延期されていた「柳本富子の足音」遺作展がついに開かれた。
     波平氏は、連日会場の堀光美術館に詰める。
     “毎日が法要”なのか、妻の遺作に、風光る。…播町
    ・時の経過と共に思い出される妻への思慕。ガイドするご主人の心情も汲みとれる。
     …さくら

「花は葉に」は、桜の花が散ったのを惜しみ、美しい葉桜を愛でる季語。この遺作展にぴったりの季語です。正確で緻密なデッサンと、インドやネパールで得た独自の表現で描かれた、ほぼ等身大の女性人物像群。きらきら輝く岩絵具も美しく、強いまなざしながら口元にほのかな笑みも感じられる「チベットのモナ・リザ」たちに見とれるばかりです。
 若葉風遺作に遺作観る人に    つきひ①
 〈選〉作品も人格そのもの。…一風
 神の地やサリーの少女汗光る   播町
 ネパールの寂光まとう春ショール 播町⑦◎◎◎
 〈選〉・遺作品への想いが寂光に込められる。…どんぐり
    ・ネパールの寂光の仏様の世界と春ショールの温かさがよくマッチしていると思う。
     穏やかできれいな句。…さくら
    ・寂光まとうとは言い得て妙。…へるめん
    ・絵にピッタリの句。…稲村
 夕虹の夢の続きの遺作かな    播町①
 〈選〉夕虹は儚く、遺作は見る人の心に永遠に。…つきひ
 春陰や画布の女性のいのりの瞳  へるめん➀
 〈選〉柳本富子さんの絵の女性の、まっすぐで心に突き刺さるような瞳が印象的でした。
    …だっくす
 観入る絵に草原の風日永し    見水
 うららかに闇輝けり岩絵具    見水
 
絵の才能に恵まれた奥様が本格的に絵の道に入ったのは結婚後。47歳から院展に入選を重ね、日本美術院の院友になっておられます。
   
とはいえ、波平さんの意向で、生活感のにじむスケッチ帳やエッセイ、写真を展示するコーナーが設けられ、奥様の素顔も。
 デッサン帳の彩色の枇杷白き枇杷  つきひ
図録「柳本富子作品集・絵の旅」も、作品だけでなく、アトリエや下絵の写真を掲載し、奥様の優しい人柄が伺える冊子に編集されています。
あっという間に予定スケジュールの30分を過ぎました。絵の余韻に浸りながら、波平さんにお礼を言って、隣のみき歴史博物館に向かいました。
波平さんと懇意な稲村さんは、開催初日にご家族で美術館を訪れ、波平さんの案内で鑑賞。
 遺作展夫の案内花日和       稲村
波平さんとかつて同じ職場で勤務したどんぐりさんも、元同僚のメンバーと遺作展へ。
 鶯に導かれ着く美術館       どんぐり
 惜春の足音たどる遺作展      どんぐり③
 〈選〉・春を惜しみ富子様を惜しみ偲ぶ。…つきひ
    ・遺作展を見学。作者の足跡を偲ぶ春の一日だった。…弥太郎
遺作展鑑賞の後、隣の算盤作りの町・小野市の国宝・浄土寺を訪ねたそうです。
 阿弥陀堂へと歩をのばす日永かな  どんぐり②(自由句再掲)


みき歴史資料館
   
受付で、やはりコロナ感染対策のため連絡先を書いて提出。「みき歴史資料館」は2016年に旧市立図書館を改装した建物で、三木で出土した土器や古文書、近現代の郷土資料を展示。極彩色で細かく描かれた「三木合戦軍図」(複製)など、三木合戦の資料が充実しています。
 合戦も昔のことと花吹雪      蛸地蔵
歴史資料館の北側一帯で市が三木城遺構を発掘調査中。440年前のどんな真実が明かされるでしょうか。


金物資料館
 
「金物資料館」にも入館。建物の手前に「村のかじやの碑」。文部省唱歌「村の鍛冶屋」が教科書から消えていくのを惜しみ、金物の町・三木の人達が1978年に設置した歌碑です。
 鍛冶の技引き継ぐ里に春の風     蛸地蔵②
 〈選〉・金物の町三木市へのご挨拶句。…つきひ
    ・春の風がやさしく、三木の里にぴったり。…へるめん
入口のドアを開け、ここでもコロナ感染対策のため連絡先を書くと、館長さんから、団体名もと言われ、「神戸RANDOM句会」と書くと、
「面白そうな会ですね。ご説明しますので皆さん集まってください」
まず、肥後守のナイフが並ぶコーナー。明治時代にナイフを改良して。熊本で『肥後守ナイフ』として販売したら大ヒット。やがて全国に広まった。三木で商標登録をしたので、三木で作るが『肥後守』に。
 新学期鉛筆整列肥後守    へるめん③
 〈選〉・懐かしい思い出、今は希少な肥後守。…どんぐり
    ・すぐに芯が折れる粗悪な鉛筆だが、貴重品でもあったのでアタマの部分を削り名前
     を記入した。肥後守は必需品だった。“播州”三木特産なのに、なぜ“肥後”なのか。
     三木市立金物資料館で館長の話をおききした。…播町
    ・肥後守、今の子供に使えるのかな?…一風
次に、大きなのこぎりが並ぶコーナー。室町時代に大陸から「大鋸」(おが)が伝来し、木を縦に挽いて角材が作れるようになった。おがくずというのはそのときに出る木のくず。その後、大鋸を改良して三木で大量に生産し、江戸からまとめて何百本も注文が入った。
熱心に聴いていた蛸地蔵さんは質問もし、楽しいミニ講義でした。感謝。

三木城本丸
   
「ここまで来たので本丸跡に行きましょう」
若葉に囲まれた馬上の最後の城主・別所長治の石像の前で全員集合写真。風がよく通る屋外なのでマスクは一瞬だけはずします。
 民守る城主の像や春寒し    だっくす
石段を登って天守台へ。長治の辞世の歌碑があり、三木の町並が一望。歌碑はくずした字ですが、書家のへるめんさんはサラっと読みました。
 今はただうらみもあらじ諸人のいのちにかはる我身とおもへば 
別所氏は元は織田方でしたが、織田の中国攻めと毛利の播磨侵攻の間で毛利方に寝返り、22ヵ月に及ぶ籠城戦を7,500人の将兵・領民(門徒)とともに果敢に戦います。やがて織田軍が圧倒し、毛利の援軍は撤退、食糧も尽きて(三木の干殺し)、城主・長治は、1580年1月、将兵・領民たちの助命を条件に夫人とともに自害します。
 長治の無念は尽きず花の散る   蛸地蔵
 蝶や来よ城主が辞世の歌碑に舞え へるめん③(蝶句再掲)
首実検の後、秀吉は首を返し、城の近くの雲龍寺の首塚に手厚く葬られます。播州三木の人々を救った若き別所長治は三木の誇り。毎年5月5日には「別所公春祭」(今年も中止)が催され、地元には銘菓「長治煎餅」があります。
 花堤抜けて顔出す昼列車   見水②
 〈選〉・ローカル感溢れる景が広がり懐かしい温かさがある。…さくら
    ・「神有」ののどかな小さな旅。…へるめん
城下を流れる美嚢川の堤防の桜並木を、粟生線の電車が通り抜けていました。城址の隅にナメラ商店街に下りる長い石段があったので、手すりを頼りにそろそろと下りました。
 不揃ひな石段長し犬ふぐり  だっくす④
 *城山から下りるとき怖かった!
 〈選〉・城への石段の長さと犬ふぐりの可憐さの対比。…つきひ
    ・きつい石段の犬ふぐりに励ませれて。…どんぐり
    ・下りにくい不揃いな石段。小さな青い花がやさしい。…へるめん
    ・道沿いに犬ふぐりの咲く長い石段を登り美術館へ。…弥太郎
昨春、コロナ禍がなければ、新緑の三木山森林公園へも行き昼宴会と句会をする予定でした。今回も感染急増がなければ美嚢川リバーサイドパークでの花見も楽しめたのですが、以上で終了。時計は午後1時をとっくに回っています。



昼の込み合う時間帯を過ぎ3密は避けられそうなので、「ながさわ」三木店で昼食。店内では、席を離し、前日亡くなった橋田壽賀子さんのことなどを話題に、マスク昼食。
食事を終え、三木上の丸駅へ。電車を待つ間、つきひさんがホームの向かいの竹林に、柳本富子さんが絵にも描いていたアケビの若葉と紫の花の一群を発見。午後2時29分発新開地行き神鉄電車に乗り込み、家路につきました。
感染対策には気を使いましたが、久々に句友たちと再会した楽しい小旅行でした。

吟行の後、つきひさんから投句と一緒に「遺作展に寄せて」が届きました。


  

3度目の緊急事態宣言で4月25日から堀光美術館も閉館を余儀なくされ、会期を1/3残して「柳本富子の足音」展は終了。4月24日の「波平余生録」ブログは、「感謝・感謝」のタイトルで、来館者・開催関係者への御礼とともに、「絵の旅」が終わる寂しさも綴られていました。


巣ごもり二年 皆さんからの近況報告

長引くコロナ禍。巣ごもり生活の皆さんからの近況報告です。


ひろひろさん
「昨年の2月頃から、電車に乗らず、持病(気管支喘息が25年間継続中)があるので、毎日ビクビクとした日を送っています。朝、夕の犬の散歩。嫁さんとの買物、庭いじり、植木の剪定、草抜き、メダカの世話、三度の食事、早寝早起き、リコーダー練習、筋力維持等、1日1日が去って行き、天国か地獄が近づいてきています。
何はともあれ、1日1日健康で美味いなあと思って生きていくことですかなあ。
好きなゴルフ、明石市の年寄り学校ののOB活動もできず、一寸しょんぼりしています。
よって、毎回、神戸RANDOM句会を楽しみにしており、1日1句ではありませんが、駄句に挑戦しております」
つきひさん
「4月22日・23日と、健康ライフプラザでNPOで受託している講座の予定でしたが、緊急事態宣言により21日の時点で中止になりました。現役時代のハラハラドキドキを今も味わっています。22日の朝は前日買ってきた大葉とラベンダーを鉢植えしました」
播町さん
「スピーカーをパソコンにつなぎ、インターネットラジオを聴いている。米仏独からのジャズ、シャンソン、クラシック、サントラなど。曲名を告げられても言葉がわからない。それでも海外のリスナーと共に聴いている感がある。聴きながら30分ほどは熟睡昼寝をする」
一風さん
「とにかく元気で毎日過ごしています。これといって変化のない毎日ですが、2018年11月から計算しだした毎日の散歩の歩数が今年3月末で丁度620万歩になりました。毎日21日程度、1万歩位の行動になっています。この記録をするのが私のパソコン練習です」
蛸地蔵さん
「またコロナは緊急事態となりました。厳重注意を。近頃はテレビに向かって吠える日々です」
さくらさん
「先日、主人が入院手術をするという出来事がありました。幸にも経過良く生活も平常に戻りつつあります。変異ウイルスの増加は脅威を感じますが、ワクチンの接種券はまだ届きません。早く皆でワイワイ句会がしたいです。(手術日と重なったため)三木吟行参加出来なくてとても残念に思います。吟行の句、良い句がたくさんありました」
弥太郎さん
「4月6日の三木吟行は、病院の検査日と重なり、同行できず残念でした」
だっくすさん
「毎日大したことをするわけでもないのに、時間が足りなくて困っています。その原因は、①動作が鈍くて何をするにも時間がかかる。②すぐ疲れるので休憩が長い。③目薬を4種類さすので時間がとられる。日に4回、日に2回、日に6回が2種類、それぞれ5分の間隔をあける必要がある。これ、結構面倒です」
どんぐりさん
「何するでなく、あっと言う間に毎日が過ぎてしまいます。ウロウロ、オロオロしてる間に、、、」
へるめんさん
「いろんな花々が咲き若葉の美しい季節となりました。が、コロナの状況、世相の混沌に心が晴れません。高齢予備軍の遊び探しに面白がって付いて来させてもらいました。が、いつの間にか「後期高齢者」と分類されてしまっていますが、飽くことなく遊びを遊びたいと思っています。
写真は、今年になってからの3つの書展の作品です。
左から、えと展「牛」1月・ふるもと珈琲店、
毎日現代書関西代表作家展「竹」1月・近鉄百貨店阿倍野、
兵庫県書道展「遠くへ行きたい」3月・原田の森美術館」

稲村さん
「コロナ禍ですが、相変わらず農作業などで忙しく、健康的な毎日を過ごしています」
見水さん
「いろいろ気を紛らわせています。最近は庭にキュウリとミニトマトの苗を植えました」


感 想 ―――――――――――――
 
つきひさんの感想です。最初に選句前の選句表を見た感想は、
「遺作展、早い時期に行っていて良かったですね。吟行句は互いに同じ空気を吸っているのでよく理解出来、共感出来ますね」
近況報告を見ての感想は、
「各々工夫して日々を充実させておられる様子、頼もしく思いました。ろまん亭さん、英さんの近況報告がありませんが、お変わりないことを祈っています」
高得点句                                                                      
選句により、全部の句に点数が付けられ、作者も明かされました。今回の高得点ベスト11を再掲します。
 

「春眠」が2句、「桜餅又は鶯餅」が1句、「蝶」が1句、「自由句」が2句、「三木吟行句」が5句でした。
添削例
つきひさんに、今回点数が取れなかった句から4例を選び、添削をしていただきました。
1例目(添削前)うぐいすもち叡山電鉄始発駅 を、
   (添削後)うぐいすもち叡山電車始発駅
としてみました。中8の「叡山電鉄」を「叡山電車」にすると調べもよくなります。
2例目(添削前)ひらひらと蝶寄り添うや豆の花 を、
   (添削後)豆の花か蝶か互いにひらひらと
としてみました。『蝶』も『豆の花』も季題ですので、互いをぼかしてみました。
3例目(添削前)うららかに闇輝けり岩絵具 を、
   (添削後)背景の闇うららかに岩絵具
としてみました。コメントにある「背景」を入れた方がよいと思います。
4例目(添削前)睡蓮の葉に隠れしかあと一匹 を、
   (添削後)睡蓮の葉に隠れしか一匹は
としてみました。『あと』は不要です。魚か蛙か二匹居たことがわかります。

獲得点数により賞が決まりました。
優勝はどんぐりさん(16点)、準優勝は播町さん(13点)。
他のメンバーは、だっくすさん(12点)、へるめんさん(11点)、一風さん(8点)、さくらさん(7点)、つきひさん(6点)、蛸地蔵さん(3点)、見水さん(3点)、稲村さん(2点)、弥太郎さん(2点)、ひろひろさん(1点)。
出句数が6句と多く、出句すべて得点のパーフェクトはありませんでした。
今回の兼題ごとの優勝・準優勝者を除く高得点者にも賞。『蝶』はへるめんさん(3点)、『自由句』は一風さん(4点)、『三木吟行句』はだっくすさん(4点)、『春眠』と『桜餅又は鶯餅』は優勝・準優勝者に次ぐ句は2点以下で該当なしに。
つきひさんが選ぶ「つきひ特別賞」は「遺作展夫の案内花日和」を詠んだ稲村さんに。選定の理由は、「『花は葉に夫がガイドの遺作展』と句意は同じ、鑑賞した時期が少し違うだけ。波平さんの案内に皆感謝。頑張りに拍手」から。
賞品は、今回も図書カードを送らせていただきます。
   
女性軍対男性軍では、女性軍5人で52点、男性軍7人で32点。女性軍の圧勝でした。
今回もリモート句会ながら、有志で宿願の三木吟行を行い、メンバーの佳句・奇句に出会い、元気をもらえた「君たちがいて僕がいる」句会でした。ご協力ありがとうございました。
 
発生から16ヵ月続くコロナ禍、5月1日現在、感染者は国内で60万人、世界で1億5,000万人。亡くなった人は国内で1万人、世界で320万人。
高齢者へのワクチン接種も始まりましたが、接種を終えても、これまで通り感染対策は必要。
次の句会も「マスク吟行」かも知れませんが、全員で顔を合わせたいですね。ご希望やご提案があれば、一風幹事長まで。季節はもう初夏です。

 

 2021.5 写真・イラスト/herumen,bantyo,mimizu.文/mimizu

 

 

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2020=秋のおうちde句会

2020-11-16 | 吟行句会

 

「元気にしていますか。秋の句会の時期です。皆で集まって吟行の提案もありますが、コロナはまだ増加しそうで、どう考えますかね。集まるのは不安な感じはあるのですが」

と、2020年10月1日に一風幹事長からメール。

去年は10月30日に御影で吟行句会。9月に2人で御影の町を歩き回って下見をしていました。今年、こんなことになるとは。

9月は感染防止対策を条件にGoToトラベルがスタート。10月にGoToイート、11月からはGoToイベント。政治の世界も菅内閣発足、大阪都構想住民投票、米大統領選とあわただしく、世の中の空気は変化。が、コロナの感染は一向に収まっておらず、吟行句会は大人数で1日3密になるため、今回も在宅句会に。

おうちde句会―――――

10月20日に一風さんからメール。

「つきひさんから兼題をいただきました。『1.秋惜しむ 2.熱燗 3.自由題 の3句で行きましょうか。前回と同じく、句に関するコメントや近況報告を付けて頂くようお願いいたします』。以上です。よろしく」

「秋惜しむ」も「熱燗」も一見やさしそうな題ですが、単調な巣ごもり生活で詠むのは難しい。わが連衆はこれらをどう料理されるでしょうか。

10月末から11月始めは最も秋らしい時期。読書週間(10/27~11/9)や競馬の菊花賞・天皇賞(秋)があり、プロ野球も終盤。10月は満月が2度の「ブルームーン」。

10月21日、句会のメンバー全員に、「第32回神戸RANDOM句会『秋のおうちde句会』、投句は11月6日までに」の案内状を送りました。

投句の一番乗りは、10月24日、ひろひろさん。

「月日の経つのは早く、7月末の句会から早や3か月。待ってましたランダム句会、ありがとう!!」

の挨拶と投句。その後、メンバーからメールと郵便で投句と近況が寄せられ、締切の11月6日には全員14名・42句が集まりました。

早速、作者を伏せて、兼題ごとに句をランダムに並べ替えた選句表を作成し、選句の締切日を11月16日にしてメンバーに選句表を送付。各自、自作以外の気に入った4句を選びます。特選1句2点、その他3句1点で、各人の持ち点は計5点。参加者14名の総点数70点の争奪戦です。

11月13日に全員の選句が届き、送っていただいた選句から得点集計と選定理由を取りまとめ、作者の句のコメント・近況報告とともにつきひさんにメールし、講評と添削例のコメントをいただきしました。

では、メンバーの投句と作者のコメント(*)、選句で獲得した得点(丸数字、は特選句で2点)と選句理由(〈選〉)をご覧ください。配列は投句の到着順です。まずは、「秋惜しむ」の句から。

秋惜しむ   戸を叩く狸と秋を惜みけり

おーいうんこズバッと出(いで)よ惜しむ秋  ひろひろ

*毎朝のトイレ、便秘気味。ズバッと出てくれた。気分爽快なり。

〈選〉高齢者のこの元気さはたいへん結構ですが、せめて愛犬を詠んだ句と思いたい。

   …播町(選外)

秋惜しむ冷(つめた)さわたる朝の街     英

燭暗き角屋二階に秋惜しむ         つきひ

〈選〉この寂寥感、捨て難いけど、選句オーバーなので、選外。…へるめん(選外)

解体す庁舎に一礼秋惜しむ         さくら④◎◎

*市役所2号館が63年の歴史を閉じ解体される事になりました。震災で6階が損壊した

 姿を思い浮かべつつお別れに行きました。生まれ変わる庁舎に期待を寄せています。

〈選〉・神戸市庁舎。ここでは1.17の無残な姿ではなく、新聞会館、国際会館とともに

    三宮の“3大雄姿”だった1957年の市庁舎(別添写真参照)を見よ。当方は、59

    年からここの4階で働いた。屋上のオリエンタル食堂のカレーの味もいまだに

    忘れられない。壁面の時計は、震災時住宅局が密かに保管したはずだが、その

    後姿を見ない。この句、なによりも「一礼」という言葉に胸打たれた。…播町

   感謝の気持ちを込めた一礼が良い。季題の秋惜しむで交錯する思いが伝わって

    来る。…つきひ

空の青 雲など見つつ秋惜しむ             一風

*遠くを見ていてそっと上を見ると

秋惜しむ坂から望むちぬの海          弥太郎⑦

〈選〉・山の手から神戸の街並みと遠く和歌山の友ヶ島まで望む秋の一日を惜しんで。

    …どんぐり

   ・雄大な景色と季節感、心情がよく表現されている。…稲村

   ・一瞬に明るく広々としたイメージを与える。…蛸地蔵

   ・神戸の晩秋の風景がよく描けている。…英

   ・灘区で暮らした頃は、六甲を仰ぎ、垣間見える海を眺めて季節を感じていた

    ことを懐かしく思い出しました。…見水

黄の色の褪せゆく里の秋惜しむ       どんぐり②

〈選〉山里の黄葉の美しさがよく表現されている。…弥太郎

うす味に炊くがんもどき秋惜しむ       へるめん

〈選〉がんもどきの句は珍しい。たいていは「おでん」に一括りされてしまう。おでん

   なら冬の句だが、がんもどき単独に光をあてた結果、「秋惜しむ」が生きた。

   …播町(選外)

対面の母窓越しに秋惜しむ         播町⑥◎◎

〈選〉・コロナ流行下の面会、なごり惜しいが時は無情に過ぎる。…へるめん

   ・親子の愛情が訴えてくる。…蛸地蔵

   ・コロナ禍の悲哀を感じる。…英

   ・お母さまは病院でしょうか?介護ホームでしょうか?コロナ禍で面会が許され

    ない。オンラインでなくやっぱり会いたい。ガラス越しの手も声も温かかった。

    胸にジーンとくる句です。…さくら

秋惜しむ山のホテルの露天風呂           だっくす⑤

*息子が毎週、近くのホテルのサウナと露天風呂に通っています。山の中で他に何も

 ない所で木々を見ながらリフレッシュ。

〈選〉・露天風呂に浸かり五感で行く秋を惜しむ。情景が鮮明な句。…つきひ

   ・露天風呂から眺めた秋の景色が印象に残っている。…弥太郎

   ・GoToトラベル利用でしょうか?コロナ禍さえ忘れる静かな山のホテル、温泉

    に身も心も癒されて…うらやましい!!…さくら

   ・コロナ禍で泊付旅行も温泉も自粛中。森閑とした紅葉に包まれた露天風呂の

    開放感がたまらない。…見水

夕焼に言うべきはなし秋惜しむ       蛸地蔵①

〈選〉秋には夕焼けがよく似合います。…ろまん亭

秋惜しむ踏みつぶすかな銀杏実(いちようみ) ろまん亭①

〈選〉「かな」という詠嘆が入って、ここに「切れ」があると解釈したい。踏みつぶす

   のを躊躇するのは「黄落」の季節にある自分自身である、いやいや踏みつぶすの

   は「銀杏実」だけにしておこう。…播町

虫たちのかぼそき声や秋惜しむ            稲村②

〈選〉・虫の声に聞き入っているのがいい。…ひろひろ

   ・「かぼそき声」が秋です。…ろまん亭

日溜りに三人三様秋惜しむ          見水③

*秋晴れの土曜の朝、日の射し込んだリビングで、新聞・スマホ・テレビ、家族3人

 思い思いに。

〈選〉・ほっこり感と共感。…稲村

   ・絵本の1ページのような、のどかな雰囲気が感じられます。…一風

   ・同じ景色を見ていても想いはそれぞれ。…だっくす

熱 燗  浴衣の君は すすきのかんざし

喜寿迎え熱燗ちびりまた明日も       ひろひろ

*飯を食べてたら、いつの間にやら満77才。

熱燗でコロナのうつを吹き飛ばせ      英

〈選〉うつを飛ばすために、酔って口角泡を飛ばすことにならないよう、自戒しま

   しょう。…播町(選外)

年ごとに増えて行く忌の燗熱く       つきひ③

〈選〉・想いを馳せて、ちびちびと飲む酒の味はどんなでしょうか。…一風

   ・同じ思いの今日この頃です。…ひろひろ

禁酒令解かれし君に燗熱く         さくら③

*禁酒を守り3年、やっと主治医より許可が出ました。ほどほどにと釘をさしつつ

 労いの一献を。

〈選〉・体調を崩されていたのでしょうか?兎も角また一緒に呑める嬉しさ。

    …どんぐり

   ・友人?の回復を喜ぶ気持ちがよく表れていて気持ちの良い句です。飲み

    すぎないように。…だっくす

熱燗が結ぶご縁で今ありき         一風④

*あの人の、この人の顔が浮かびます

〈選〉・熱燗の句では、もっとも酒が旨そうな句を選びました。コロナ禍で膝突き

    合わす酒の席がなくなり残念至極。…播町

   ・まさしく、そのとおり。…ひろひろ

   ・いい友達づきあいができた。…英

日が沈み熱燗が待つ縄のれん              弥太郎

熱燗や鬼籍の夫の誕生日          どんぐり⑩

〈選〉・亡くなった後も熱燗で夫を偲ぶ。命日でなく誕生日というのが新しい。…つきひ

   ・しみじみ身にしみる句。…稲村

   ・夫の君に一献。…へるめん

   ・どんな気持ちで飲むひとくちなのでしょうか…一風

   ・熱燗が好きだった夫を偲んでいる。…弥太郎

   ・しみじみとした情感がある。…蛸地蔵

   ・鬼籍に入られたご主人に話しかけながら誕生日のお祝いに好きだった熱燗を供

    える。深い思慕の情を感じます。仲の良いご夫婦の姿が浮かびます。…さくら

   ・お酒が好きだったご主人に「生きていたら〇歳よ」と熱燗をお供えして、しば

    らく語り合う感じが目に浮かびます。…だっくす

   ・熱い思いが酒を熱くしたのでは。…見水

熱燗や口唇(くち)になじめる根来椀      へるめん

熱燗や雪ひらひらとはらはらと       播町

熱燗や話し上手に注ぎ上手          だっくす④

*川柳教室の後、10数人で行く飲み会はいろんな人がいて賑やかです。今年はコロナ

 の影響で3月から投句句会なので早く元に戻ってほしい!

〈選〉・酒席の雰囲気がよく出ている。注ぎ上手が面白い。…つきひ

   ・和気あいあいと呑むお酒の美味しいこと。…どんぐり

   ・酒飲みの仲間との語らいは楽しい。…弥太郎

   ・コロナ禍で手八丁口八丁は禁じ手になりましたが……。…ろまん亭

日も暮れて暖簾をたぐり熱燗を       蛸地蔵

〈選〉「たぐり」という強い語調が、いかにもその日の仕事のストレスを熱燗で早く

   発散したいとの思いがでている。上司の悪口を言うのは人生の喜びの一つだと、

   出口治明「還暦からの底力」にあったような気がする。…播町(選外)

酒飲みのオヤジを想う熱かんを       ろまん亭

コロナ禍や熱燗のとも久しぶり             稲村①

〈選〉やっと会えた嬉しさ…英

遅番の後は熱燗辛口で                  見水

*熱燗の一番の思い出は、30年以上前、勤労会館を午後9時過ぎに閉館して嘱託さん

 たちと立ち寄った「灘」の15分。いつも熱燗1合とおでん2品でした。

自由句  空に憧れて 空をかけてゆく

 

緋メダカに赤子うようよ妻仰天              ひろひろ

*緋メダカに卵。赤子生まれ、ピチピチ、ウヨウヨ。

八千草の乱れ咲きたる夢の庭        英

被災庁舎の解体ニュース秋の風       つきひ①

〈選〉あの庁舎であった様々の事が風と共に去りゆく…へるめん

八万人百寿めでたし菊香る         さくら①

*116歳の長寿日本一(ギネス認定世界最高齢)の女性はインタビューに答えまだまだ

 がん張りますと。どうぞお健やかに。日本の百歳以上の人は8万人を越えました。

〈選〉本格的な高齢社会に突入でしょうか。百寿も白寿もめでたいもの。…一風

散髪のあと風スッーと冬に入る            一風①

*夏には風を感じないのに

〈選〉鋭い季節感。そんなこと感じたことあったと思い出す。…稲村

秋うらら検査結果に異常なし         弥太郎③

〈選〉・ほっとした!心は秋晴れ。…へるめん

   ・良かったですね。おめでとう。…ひろひろ

稲架干の色も香りも変りけり        どんぐり②

〈選〉・秋の歩みを巧く捉えている。…蛸地蔵

   ・実りの秋の風物詩稲架掛も最近は少なくなりました。稲架掛は最初は黄色く

    甘い香りがします。やがて色も香りも乾いたものに。季節が移ろい人々の営

    みや風景が変わっていく。大きな自然の流れを感じる句です。…さくら

朝五時のオリオン吾と宇宙統ぶ           へるめん①

〈選〉夜明け前の空を見たことがないのですが、冷たい空気の中でオリオンを見てい

   ると、宇宙に抱かれたような気持になったという句なのでしょうか。…だっくす

マスクしてひいふう密よコロナや苦    播町

マスクして眉目(みめ)良き女増えにけり  だっくす③

*マスクをかけると目立つ眉と目、アイメークの腕が上がり、ある程度の年齢までは

 みんな若く美人に見えます。

〈選〉・確かに。マスクして「目力」が強い女性が目立ち、当方は巣ごもりから町中に

    出かけてきた“雪女”を想います。…播町

   ・最近まわりの女性はみな美しいです。…ろまん亭

秋日暮れいきなり出合う散歩犬            蛸地蔵①

〈選〉秋の冷え込む黄昏どきの光景。出合い頭の臨場感に魅かれました。…見水

マテバシイ新聞のぞき初雪や        ろまん亭

ラジルラボエダマメ採りははかどりぬ           稲村

※「らじるラボ」はNHKのラジオ番組で毎週月曜~金曜の午前8時30分から。

百キロの酒林吊る冬近し           見水①

*10月27日朝刊に西宮の酒造博物館に新酒の季節を告げる酒林を吊る記事。直径1m、

 重さ100キロの緑の杉の葉の玉は、制作に1週間。酒が熟成するにつれ茶色くなる。

〈選〉新酒ができ如何に熟成するのか楽しみ。…どんぐり

こもり居て  皆さんからの近況報告

コロナ禍が長引く中、巣ごもり生活の皆さんからの近況報告です。

ひろひろさん

「朝、元気に目覚め、犬散歩、新聞、TV、妻と話。昼飯食って昼寝、TV、リコーダー、メダカ、ストレッチ。夕食そしてTV、話、風呂、日記、床。といった一日の過ごし方です。家から出るのは妻との買物と犬の散歩だけ。よって、2月から山陽電車に乗ったことなし。車で買物の毎日が続き、世間に取り残された囲みの中の生活をしています。

今回の句会のお蔭で、一日一日が楽しくなっております。投句した後で、あっこの句の方が――と思うことあり残念なりです」

英さん

「リモートより対面の句会を期待しています!」

つきひさん

「某日 神戸ゆかりの美術館『無言館』展へ

某日 須磨離宮公園バタフライガーデンへ。念願の『アサギマダラ』と初対面

某日 ランダム仲間のDさんと京都『角屋もてなしの美術館』(パンフ前掲)へ

NPO法人『食ネット』の仕事もぼちぼちと。コロナの影響は至る所にあり、中止・再開・変更の度、契約書を書き換えたり、液体アルコールや非接触体温計の確保に奔走しました」

さくらさん

「自粛も緩み8月から外出が少しずつ増えています。ケースに眠っていた楽器もやっと出番。三味線、胡弓仲間と音楽を楽しんでいます。とても癒されます。アクリル板のガード、フェイスシールド、コロナ対策しっかりとして演奏しています」

一風さん

「10月最後の日。来春に向け、"メダカ"を楽しんでいる三つの甕の水替えをしました。すると、何と7匹もの小さな命が育っているのが分かり感動です。歩きとラジオだけの日常が続いていますが、お蔭様で、それなりの元気でおります」

……メダカはひろひろさん、と思っていたら、一風さんも飼っていました。

弥太郎さん

「満80歳になりました。ウォーキングや数独を楽しんでいます」

どんぐりさん

「GO TO・・に刺激され出歩く事が多くなりました。

マスクは付けて出るのですが、一旦外すと付けるのを忘れる事が多いです。

何とか一日でも早く前の生活に戻りたいですね」

へるめんさん

「前回は優勝をいただきましてありがとうございました。頭ひねった甲斐がありました。が、柳の下にいつも泥鰌はいませんよねー?と思いつつ…。

眼の手術をしたおかげで、このごろの月も星も今までの生涯の中でなかった位、とても美しいです。―経済活動が下火で、空気が澄んでいるのもあると思いますが―。

大書する冒されたくない『自由』『ゆめ』」 

播町さん

「年賀状に「コロナ禍俳句」全10句を掲載(する予定)。「2020年傑作ノンフィクション・ベスト10」をツイッター(する予定)。「新潟――アートと俳句の幻想ひとり旅」を執筆(する予定)」

だっくすさん

「さっとできた句がイマイチなので他の句をと思ったのですが、全然できなくて、諦めました。絵の描けない私は、家のリビングのリクライニングシートに座ったまま見える景色をタブレットで撮ったのですが、網目の入った嵌め殺し窓なので、網目が写っています。リクライニングチェアーに座って左側にこの景色を眺め、前のテレビを見るという日々を送っています。いろんな句があって選句に迷いました」

蛸地蔵さん

「新型コロナ再びの拡大、心配の種は尽きず、無味な生活をしています」

ろまん亭さん

「病気で最近ちょっと弱っています」

稲村さん

「農作業では直売所への出荷はほとんど終わり、タマネギ2千本あまりの定植、えんどうやそらまめ、キャベツの播種など次々作業があり、一方キャベツ、ハクサイ、ブロッコリ、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジンなど多くの野菜が育っています。文化活動では、古文書勉強会を加古川と稲美町で6月から再開。代表を務めている芸術文化団体印南野半どんの会では機関誌印南野文華79号の編集作業に入っています。中学校同窓生とは毎月一回喫茶店でお茶懇の機会を持ち、老人会などのグラウンドゴルフに参加。今日用・今日行く十分な毎日です」

見水さん

「息子が買ってきた『半沢直樹・アルルカンと道化師』は関西が舞台なので半日で楽しく読了。続けて、冬支度をしながら、若い頃に挫折した難読小説に再挑戦しようとしたら、10数年ぶりに腰痛。腰痛は治まりましたが、またしばらく積読に」

講 評 ――――――――

つきひさんの講評です。最初に選句前の選句表を見た感想は、

・今回も全員参加!ランダム句会は素晴らしい。

・市庁舎解体、窓越しの対面、コロナ禍、マスク、百歳高齢者など時事の句が目立った。

選句が終わり、兼題については、

 この度の兼題は 『秋惜しむ―秋の時候』 『熱燗―冬の生活と行事』 『自由題』でした。季題別得点を見ますと秋惜しむが31点、熱燗が25点、自由題が14点でした。自由題の点数が14点と低くなっています。

 自由題の方が作りやすいのかと思っていましたが、今回は違いました。同じかたちの句会をするのであれば、兼題を3句にした方が作りやすいのでしょうか。

高得点句

選句により、全部の句に点数が付けられ、作者も明かされましたが、今回の高得点ベスト7を再掲します。

 熱燗や鬼籍の夫の誕生日     どんぐり ⑩

 秋惜しむ坂から望むちぬの海   弥太郎  ⑦◎◎

 対面の母窓越しに秋惜しむ     播町   ⑥◎◎

 秋惜しむ山のホテルの露天風呂  だっくす  ⑤

 解体す庁舎に一礼秋惜しむ     さくら   ④◎◎

 熱燗や話し上手に注ぎ上手    だっくす  ④

 熱燗が結ぶご縁で今ありき    一風    ④

「秋惜しむ」が4句、「熱燗」が3句、「自由句」は高得点句がありませんでした。

添削例

つきひさんに、今回点数が取れなかった句から4例を選び、添削をしていただきました。

1例目(添削前)喜寿迎え熱燗ちびりまた明日も を、

   (添削後)いつしかに迎えし喜寿の燗熱く

   としてみました。近況報告をそのまま句にしてみました。喜寿おめでとうございます。

2例目(添削前)朝五時のオリオン吾と宇宙統ぶ を、

     添削後)朝五時のオリオンの統ぶ宇宙かな

   としてみました。俳句では『吾・今・此処』が約束ごとであり、この場合、吾が無い

   方がより壮大ではありませんか。

3例目添削前)秋日暮れいきなり出合う散歩犬 を、

  (添削後)秋の暮いきなり出合う散歩犬

   としてみました。秋日暮れを秋の暮としました。

   秋の暮は、秋の終わりを表す季語でもありますが句を読めば日暮れとわかるでしょう。

   つるべ落としの秋の暮の情景がよく出ています。

4例目(添削前)酒飲みのオヤジを想う熱燗を を、

   添削後)熱燗や病めば親父の懐かしく

   としてみました。酒飲みと言わなくても熱燗でわかるでしょう。近況報告から病めば

   を入れました。早く快くなってください。

獲得点数により賞が決まりました。

優勝はどんぐりさん(14点)、準優勝はだっくすさん(12点)。

他のメンバーは、弥太郎さん(10点)、さくらさん(8点)、播町さん(6点)、一風さん(5点)、つきひさん(4点)、見水さん(4点)、稲村さん(3点)、蛸地蔵さん(2点)、へるめんさん(1点)、ろまん亭さん(1点)、英さん(0点)、ひろひろさん(0点)。

さくらさん、だっくすさん、どんぐりさんは投句した句すべて得点し、パーフェクト。

今回の兼題ごとの高得点者にも賞。『秋惜しむ』は弥太郎さん(7点)、『熱燗』は優勝・準優勝者を除外して一風さん(4点)、『自由句』はすべて3点以下だったので該当なしに。

つきひさんが選ぶ「つきひ特別賞」は「秋の暮いきなり出合う散歩犬」を詠んだ蛸地蔵さんに。選定の理由は、「つるべ落としの秋の暮の情景がよく出ています」。

賞品は、今回も図書カードを送らせていただきます。

             受賞者       賞 品

  優 勝(菊花賞)  どんぐりさん   2000円の図書カード

  準優勝(紅葉賞)  だっくすさん   1000円の図書カード

  秋惜しむ賞     弥太郎さん    1000円の図書カード

  熱燗賞       一風さん     1000円の図書カード

  自由句賞      該当なし

  つきひ特別賞    蛸地蔵さん    1000円の図書カード

女性軍対男性軍では、女性軍5人で39点、男性軍9人で31点。男性軍の1000倍返しの悲願を少しだけ叶え、句会は終了しました。

今回もお互いの顔を見ながら喧々ごうごうの句会にはなりませんでしたが、長引くコロナ禍でもそれぞれに発見・工夫した句を詠み、それらの作品を味わい、選句し、メンバーの近況も知って、元気をもらえた「エール」句会でした。ご協力ありがとうございました。

今夜は、レンジでチンした熱燗か湯割りの焼酎・ウイスキーかホットワインを片手に、会心の一句をひねって、ほかほか温まりましょうか。

                           

もうすぐ師走。新年を迎えます。どんな時でも自分の夢は追い続けたいものですね。

11月の2週目、コロナのワクチンが完成し、日本では来年の前半に高齢者に接種(する予定)のニュースが流れたと思ったら、コロナ感染者が急増し過去最多。第3波が到来です。11月15日現在、感染者は国内で12万人、世界で5,400万人。寒さと乾燥が続くこれからは、コロナ感染しやすい季節。より一層の感染対策が必要です。

全員が顔を合わせる句会は、春は無理でも、夏頃には再開できるよう、祈るや切。

次回のご希望やご提案があれば一風幹事長まで。

 

 2020.11 書/herumen.写真・イラスト・絵手紙/bantyo,tukihi,dakkusu,mimizu.文/mimizu

 

 

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2020=夏のおうちde句会

2020-08-15 | 吟行句会

ロナうちde句会冷奴

  

「ランダムの皆様にどんな形ででも、やっと接する事ができて、うれしいです」

と、投句されたのは、へるめんさん。

18年前にスタートした神戸RANDOM句会は、春と秋の年2回、吟行句会を開催してきましたが、新型コロナの影響で、今春の句会は中止。次回の見通しも立ちません。

おうちde句会―――――――――――

2020年6月、一風幹事長に、播町さんから提案のメール。

「テレワーク句会といきたいところですが、ステイホーム句会はいかがでしょう。郵便とEメールとの併用なら、全員参加が可能ではないでしょうか。つきひ主宰にはかって句会を計画してみませんか」

つきひさんは、

「もちろんやりましょう。兼題は『冷奴』で1句、『炎暑』で1句、あと1句は自由。投句するとき、句についてのコメントがあれば書く。選句は◎1句、○3句。投句者の近況を書いてもらい、賞品はできれば複数の人に。講評と添削例のコメントもしますよ」

のご返事。

7月3日、句会のメンバー全員に、「第31回神戸RANDOM句会『夏のおうちde句会』、投句は7月31日までに」の案内状を送りました。

 

長い梅雨が続く中、7月13日、ひろひろさんから、

「続く雨で家中湿度81%。黴だらけ!! エアコンをかけ、黴退治??? コロナ太りが気になる今、…早く太陽に会いたい!!」

の挨拶と投句。その後、メンバーからメールと郵便で投句とお便りが次々と寄せられ、締切日の7月31日には14名・42句が集まりました。そして、ようやく遅い梅雨明け。

早速、作者を伏せて句を並べ替えた選句表を作成し、選句の締切日を8月16日にしてメンバーに選句表を送付。各自、自作以外の気に入った4句を選びます。特選1句2点、その他3句1点で、各人の持ち点は計5点。参加者14名の総点数70点の争奪戦です。

8月13日に全員の選句が届き、14日に得点集計と選定理由を取りまとめて、つきひさんにメール、つきひさんから講評と添削例のコメントを頂戴しました。

では、メンバーの投句と作者のコメント(*)、選句で獲得した得点(丸数字、は特選句で2点)と選句理由(〈選〉)をご覧ください。まずは、「冷奴」の句から。

冷 奴 一品目全員一致冷奴 つきひ「俳句の時間」 

冷奴昔も今も木綿絹           ひろひろ

*昔の豆腐屋のおっちゃん(自転車で鈴をチンチンと鳴らす姿)を思い出します。今のパック入り

 の豆腐何か味がない感じ。

てのひらにのせて斬らるル冷豆腐   へるめん③

〈選〉・手品みたいに母がてのひらに乗せて切っていた昔をありありと思い出した。

    …ろまん亭

   ・秀作です。奇麗な手の上で切られる艶めきがある。…蛸地蔵

布引の水や旨しと冷奴        播町②

〈選〉・布引の名水で作った豆腐か、滝を見ながら冷奴を食しているのか、わからないが清潔感

    に魅かれた。…つきひ

    ・美味だろうなあ。布引の滝で冷奴食すとは、スケールが大きい。見事。…ひろひろ

冷奴よくぞ男に生まれける         ろまん亭①

〈選〉・夕方、まだ西日が射すのに、一番風呂から上がり、団扇片手に上半身はだかでステテコ

    姿。「とりあえずビール」の一杯。中七下五のありふれた陳腐な表現が、いかにも昭和

    のおじさんらしくて、お相伴したくなる。なかなかいいではないか。…播町・選外

     ・手間いらずの男っぽい料理だが、美味い。…見水

久しぶり友とビールと冷奴          一風②

*やあやあまず一杯。

〈選〉・友、ビール、冷奴の見事な3点セットで言うことなしです。…ろまん亭

   ・あらまほしい風景。…稲村

山葵田の湧水清し冷奴              さくら④

*冷奴の薬味はいろいろありますが私は断然わさび醤油派です。美味しい冷奴をいただきながら

 山葵田に思いを馳せました。

〈選〉・「冷奴」の句は、涼しいか、美味しそうかが、勝負。冷奴に山葵はあり得ないと調べて

     みたら、レシピがずらり、これが美味いらしい。つ~んと鼻にぬける辛味と香りが、

     清涼をよびます、とのこと。…播町

   ・なんともすがすがしい句。山葵の緑、広がる青空、透き通る水、真っ白な冷奴、こんな

     景色の中で食べる冷奴は格別でしょうね。暑さを忘れる句です。…だっくす

   ・湧水を使った冷奴は、美味。…弥太郎

冷奴遺る昭和に身を置きて         つきひ①

〈選〉おろし生姜と醤油をたらして、昭和人間の自分を味わっている感じがいい。…へるめん

縄のれんくぐり馴染みと冷奴      弥太郎②

〈選〉・いざこれからと、楽しそうな姿が目に浮かびます。…一風

    ・みんなと会って語り、飲み食いしたい!! 閉鎖社会、早く元へ戻りたい!!

    …ひろひろ

冷奴食欲すすむ昼餉かな           稲村

トッピングあれこれ変へて冷奴           だっくす③

〈選〉・和風も良いけど洋風、中華風も。飽きないです。…どんぐり

   ・中性の豆腐はトッピングであれこれ味が変わり楽しめるところが魅力。…ろまん亭

冷奴日照不足も気にかけず        蛸地蔵

冷奴薬味は各自好きずきに        どんぐり

冷酒を飲みて味わう冷奴            英

コロナ禍に憎々しげな冷奴         見水

*憎いコロナ。スーパーの「冷奴」の字面も怒っている。

炎 暑 炎暑来て梅のジュースに生き返る つきひ「俳句の時間」

炎暑の日本朝昼晩とシャワー浴ぶ  ひろひろ

*80%以上の湿度と高温、たまりません!!

逼塞のアラート列島炎暑くる     へるめん③

〈選〉・日本列島の厳しい夏。開けてほしい風穴への願望。…つきひ

    ・コロナ禍で、まるで犯罪予備軍のように引き籠り状態の高齢者に、追い打ちをかける

    ように炎暑で、熱中症の不安が……。だが、高齢者ばかりの句会の筈なのに、この作者

    の力強さは大したもの。コロナウィルスを吹っ飛ばす若さがある。…播町

   ・日本の現況をよく描写している。…稲村

休-延-止-不-閉-縮-粛なお炎暑   播町③

〈選〉・もういい加減にしてほしい気持ちがよく出ている。…見水

    ・スマホ(略字)時代の新しい俳句の形でしょうか?…一風

   ・グッド!コロナ時代を反映した配意句です。…蛸地蔵

炎暑なり雨が明ければ思いやる  ろまん亭

長雨に厭きて炎暑を待つ気分          一風③

*今年の梅雨は長い。雨と暑さとどっちを選ぶ?

〈選〉・今年の梅雨は、長かった。家中黴だらけ。…ひろひろ

    ・そのとおりでした…英

   ・人の心とはそんなものですね。…稲村

炎天下球児の居なき甲子園         さくら②

*今年は夏の高校野球も中止となりました。倉敷の孫も甲子園目差しがん張って来たのに

 とても残念です。

〈選〉高等学校選手権大会の中止。ファン、選手も残念なり。各学校のグランドはいつも

   ガラガラ。寂しい限り。…ひろひろ

喪の花の白蝕みてゆく炎暑        つきひ③

〈選〉・大切な人への供華が暑さで萎れてしまった。我が心もぐったりと深い悲しみに。

   「白蝕みてゆく」が良い。…さくら

   ・白い花びらから傷んでゆくのをながめている喪の期。静かでたまらなく暑い。

    …へるめん

炎暑さけ信号を待つ柱影           弥太郎①

〈選〉街でよく見かける光景。…英

蝉叫ぶカンカン照り下畑に出る         稲村

被災地を思ひて凌ぐ炎暑かな           だっくす⑥◎◎

〈選〉・九州で線状降水帯の豪雨。復旧作業の苦労に比べればこの暑さなど。…見水

    ・大水害にコロナ禍での避難生活。その苦労を思うとこの暑さなど嘆いておられない。

    深い思いやりの心情。…さくら

    ・同感。…英

    ・被災地を思う気持ちが伝わってくる。…稲村

炎暑待つ気分も薄れステイホーム   蛸地蔵

自販機のコインの戻る炎暑かな        どんぐり⑦◎◎◎

〈選〉・自販機の調子まで狂わせた炎暑。コインを入れなおす汗の人が目に見えるようだ。

    …つきひ

   ・梅雨じめりの季節に作句して、炎暑の季節に選句という、どちらに比重をおくか、

   難しい選択を迫られた「お題」だった。ここはやはり炎暑に集中でしょう。ある昼下

   がり、焼けつくような暑さの中、気が進まない用件で、小さな駅で降りた。道路沿い

   にぽつんとある自販機。冷たいコーヒーでも飲もうと、コインを入れたが何だか動き

   が悪くて、戻ってきた。なんだかなあ。…播町

  ・日当たりにある自販機、早く冷たいものが飲みたいのにコインが戻ってきてしまった。

   もう一度入れて出なかったらどうしよう、と焦る姿が見えます。…だっくす

  ・あまりの暑さに、機械も狂ってしまう。…弥太郎

コロナ禍に炎暑待望日々長く            英

阿蘇炎暑志村園長待ちわびる          見水

*「阿蘇カドリー・ドミニオン」ではパン君たちが今も志村園長を待っていそう。

自由句 句に詠まれゐること知らぬ大毛虫 つきひ「俳句の時間」

朝食夏長芋みそ汁おろしじゃこ         ひろひろ

*夏の朝はさっぱりと胃に運ぶ感覚で!!

〈選〉「朝食夏」はちょっと無理ですね。ここは素直に「夏の朝」とすれば、美味しくさっぱり

   と頂けましたのに。……播町・選外

その中に笑みある羅漢大夕焼         へるめん⑤

*たくさんの羅漢さんの中、呵々大笑の笑い羅漢さんではなく、ドジと反省と後悔の私に

「まあええんちゃう?」と言ってくれてるような「らかんさん」を思って詠みました。

〈選〉・小暗さの中に色んな顔をした羅漢像、その中に笑む像もあり安堵。…どんぐり

   ・色彩のない羅漢を見ていたら笑顔の羅漢を見つけた。背景は一面の夕焼けで、大らか

    な気持ちになる句だと思いました。…だっくす

   ・「笑みある」場面の少ない昨今、温かいものが感じられて気持ちが落ち着きます。

    …一風

   ・いかつい羅漢様の中に笑んでおられる羅漢様を見つけた。聖者も夕焼けの中では親し

    く、懐しく。その笑みにほっこりと。…さくら

コロナ禍の些事も大事も端居かな   播町①

〈選〉そうですね。何かあっても、ずっと家に籠りきりでした。落ち着いていたのか

   諦めていたのか…。…だっくす

ただ昼寝している如し今日も病む   ろまん亭②

〈選〉静かに臥せっている今日、元気になってね。こんな言葉みつけました「臥遊」。

   …へるめん

サクサクと鱧の骨切り身が縮む        一風

*切り身はあるけど近頃見なくなったなあ。

思慮の距離空けて沙羅観る念仏寺   さくら③

*コロナ禍の中、一時の安らぎをと沙羅の花を観に行きました。念仏寺は全国にありますが、

 有馬の念仏寺の景です。ソーシャルディスタンスを守りつつ、しばしの鑑賞でした。

〈選〉・沙羅との距離を思慮の距離とは言い得て妙。念仏寺も効いている。…つきひ

   ・はやり言葉のソーシャルディスタンスを花の念仏寺で感じうまく表現した。…ろまん亭

  ・どんな一句を捻ろうか。…へるめん

百日紅さへモノクロに訃報以後         つきひ

望郷と祈りの葉月巡りくる          弥太郎④◎◎

〈選〉・一番のお気に入りの句。…英

    ・正に重厚・安定したザ俳句。相撲なら三役級。…蛸地蔵

拭いてなお目に入る汗肥料ふる         稲村②

〈選〉・自然と向き合う本来の姿のように感じられて。…一風

   ・リアルな句。実践者しか作れない写実句です。…蛸地蔵

復旧の道のり険し梅雨出水        だっくす①

〈選〉突然の想定外の大水害に復興への思い。…どんぐり

コロナ禍に思う事など夏の月             蛸地蔵

〈選〉うっすらと見える夏の月を眺めていると、コロナ禍で人々のこころも縮み、地球全体も

   縮んでいっているように思えます。……播町・選外

合鴨を放つ田んぼの朝曇           どんぐり②

〈選〉・鴨は冬の季語ですが、ここでは合鴨、しかも合鴨農法=合鴨を害虫駆除や除草に用いる

    稲作の農法のことのようです。朝曇りは夏の季語。朝もやがかかったような曇り空の

    うちに合鴨に一働きしてもらおう。朝曇りの日は、日中はどんどん暑くなる。「放つ」

    で麦藁帽をかぶった農夫の元気な姿が浮かびます。…播町

   ・鬱陶しいコロナ、田園地帯で稲が青々と育っているとほっとします。…見水

水面に並ぶ乙女か紅蓮か          英①

〈選〉紅蓮を見て、美しい乙女を連想。…弥太郎

所在なく季節過ぎゆく夏木立      見水③

*春・夏イベント中止、季節感のないまま8月。

〈選〉・蟬が鳴き涼しい木蔭に人影もない今年。季節はただ変わる。…どんぐり

   ・コロナ禍で今迄の日常が一変した。気がつけば夏。夏木立の風に触れたい。所在なき、

    に共感。…さくら

   ・生い茂る夏木立も、季節と共に消えていく。…弥太郎

コロナの時代に 皆さんからの近況報告

コロナ禍の中で、皆さんがどう暮らしているのか、投句に添えた近況報告から。

ひろひろさん

「夏は5時起き、牛乳と薩摩芋の朝食後、犬の散歩約60分、夕方30分、で毎日10,000歩近く歩く日課。今のところ、飯の味はわかるが、新型コロナにピリピリの毎日。嫁ハンがものすごい神経質になっており、少々困っています。下手なリコーダーも約60分練習に励んでいます。

追伸。おじんのサッカーで、右尻右足付根「肉ばなれ」で大変です。「サッカー止めとけ」とのことです。残念!! あと1週間で完治予定です。暑い暑い日が続きますが、くれぐれも身体を大切に!!」

へるめんさん

「7月3日に左眼の白内障手術を受け、7月17日に右眼も。自分や世の中がよく見えるようになるのはちょっとコワイです」

播町さん

「旅行、キャンセル。観劇、キャンセル。講座、キャンセル。三木句会、キャンセル。遺作展、キャンセル。飲み会、キャンセル。スケジュール表に残っているのは、〇○科、××科、△△科の受診予約のみ」

ろまん亭さん

「写真の仲間と久しぶりに会ったり、週1でデイサービスに行ったり、その他いろいろ、それなりに忙しい日々です」

一風さん

「毎日元気で過ごしています。コロナ禍で思い切って出かけられないのが残念です。体力のある間に子供の時によく行った芦屋川から六甲山・有馬越えして温泉に入るというのをしてみたい。そんなことばかり考えています」

さくらさん

「ほぼ引き籠り、時々ウォーク。外出は短時間で…おかげで筋肉落ちてしまいました。趣味の三味線や胡弓もケースに入ったまま冬眠状態。楽器がかわいそうですね!! 気持ちはあるのですが…がん張らなければ…と。俳句は時々作り頭の体操してます」

稲村さん

「コロナ下、ようやく7月下旬から加古川市内での古文書の会が、検温・マスク・広い間隔のもと再開しました。他の催しはほとんど中止。幸い?1町歩の田とそのうち2反歩で夏野菜を栽培。出荷もあり、けっこう忙しく健康的な毎日?を過ごしています」

だっくすさん

「コロナで騒ぎだしてから、すっかり気力がなくなって毎日サボって過ごす癖がついてしまいました。今日しなくてもよいことは明日しようということばかり考えて…。困っています。家籠りで歩かないためフレイルに陥ったりと脳も体も衰え切っています。これ、すべてコロナのせいにしようかな」

蛸地蔵さん

「コロナ疫病のますますの勢いにより、刺激のない日々を送るにつき、身心だらけきっています」

どんぐりさん

「マスクのお陰でお化粧の手間が省けて楽ちんです。日々の暮らしもぐうたらしてます。このまま続けば私はどうなるのでしょう…」

英さん

「皆さんに会って話がしたい。図書館も居酒屋も閉まっていた頃、本当につらかった。元気で皆さんに会える時を楽しみにしています」

見水さん

「車を16年ぶりに買い替えましたが、泊りがけの遠出はしていません。脳トレにナンバープレース(数独)をやってみたものの、時間がもったいないので中断。息子が満員電車で大阪に通勤、感染しないか心配です」

「叡子」物語 椿子に絵日傘持たせやるべきか 虚子

つきひさんは、今回、「遺る昭和」「喪の花」「訃報以後」と、句に詠みました。

「コロナ、梅雨の大雨、これから来る猛暑としんどい事ですね。そんな中で、わが師千原叡子先生が永眠されました。叡子ロスから未だ脱出出来ておりません」

千原叡子さんは1930年生まれですが、高浜虚子が1951年に書いた「椿子(つばきこ)物語」(青空文庫で読めます)に登場します。虚子はかつて兵庫県和田山の旧家の俳人を訪ねた折、少女時代の叡子さんに出会いますが、その後美しく成長して鎌倉の虚子邸に来た叡子さんを見、ふと、人から貰い受け「椿子」と名付けて手元に置いていた人形を叡子さんに贈る、というお話。漱石や子規と同時代を生きた虚子から見れば孫の年齢ですが、そんな繋がりもあったようです。

四半世紀にわたる千原叡子さんとの日々。つきひさんの喪失感は大きいようです。

講 評 ――――――――――――――

最初に選句前の選句表を見た、つきひさんの感想は、

   久しぶりにランダム会員の皆様の句に出会い、

   作者を想像するのは楽しかったです。

選句を終え、作者のコメントや近況報告に接した、つきひさんの講評です。

 ・締め切り日を守って14人の投句があったことが素晴らしい。作者コメント、近況

  報告、選句理由を読むのも楽しくwithkorona時代にふさわしい句会となりました。

 ・添削は苦手ですが、今回は作者コメントがあり助かりました。

 俳句を詠むときは

 ・詠みたいことを一つに絞ってシンプルに詠む、あれもこれもと盛り込まないこと。

 ・季題(季語)を理解し、詠みたいことを季題に託すことを心がける。

 様にして頂ければと思います。

高得点句

選句により、全部の句に点数が付けられ、作者も明かされましたが、今回の高得点ベスト5を再掲します。

  自販機のコインの戻る炎暑かな     どんぐり  ⑦◎◎◎

 被災地を思ひて凌ぐ炎暑かな    だっくす  ⑥◎◎

 その中に笑みある羅漢大夕焼    へるめん ⑤

 山葵田の湧水清し冷奴            さくら      ④

 望郷と祈りの葉月巡りくる           弥太郎    ④◎◎

コロナ禍と酷暑で家に引き籠り、とは思えない、ほっこり気分になります。

添削例

前回の第30回御影句会から、新しい試みとして、点数が取れなかった句をどう添削すればいい句にできるか、みんなで意見を出し合いました。

今回は、つきひさんに、今回点数が取れなかった句から4例を選び、添削していただきました。

1例目(添削前)冷奴昔も今も木綿絹 を、作者のコメントから、

   (添削後)豆腐屋の鈴なつかしき冷奴

   としてみました。

2例目(添削前)蝉叫ぶカンカン照り下畑に出る を、

   (添削後)カンカン照り下畑仕事や蝉しぐれ

   としてみました。蝉叫ぶといわなくてもカンカン照りで厳しさは十分伝わってきます。

3例目添削前)コロナ禍に思うことなど夏の月 を、

   (添削後)コロナ禍や赤く大きな夏の月

   としてみました。赤い月で不安感が伝わらないでしょうか。

4例目添削前)コロナ禍に憎々しげな冷奴 を、

   (添削後)コロナ禍を怒る字面の冷奴

   としてみました。作者のコメントをそのままの方がわかりやすいのでは。

   怒る字面が面白いと思いました。

獲得点数により賞が決まりました。

優勝はへるめんさん(11点)、準優勝はだっくすさん(10点)。

他のメンバーは、さくらさん(9点)、どんぐりさん(9点)、弥太郎さん(7点)、播町さん(6点)、一風さん(5点)、つきひさん(4点)、ろまん亭さん(3点)、見水さん(3点)、稲村さん(2点)、英さん(1点)、蛸地蔵さん(0点)、ひろひろさん(0点)。

さくらさん、だっくすさん、へるめんさん、播町さん、弥太郎さんは投句した句すべて得点し、パーフェクトです。

今回の兼題ごとの高得点者にも賞。『冷奴』はさくらさん(4点)、『炎暑』はどんぐりさん(7点)、『自由句』は弥太郎さん(4点)。

つきひさんが選ぶ「つきひ特別賞」は「ただ昼寝している如し今日も病む」を詠んだろまん亭さんに。「季題は昼寝。傍目には昼寝しているのか、安静のために寝ているのかわからない。病む人の切ない気持ちが出ています」が選定の理由です。

賞品は、ステイホームにふさわしく図書カードを送らせていただきます。

 

            受賞者       賞 品   

 優 勝(向日葵賞) へるめんさん   2000円の図書カード

 準優勝(朝顔賞)  だっくすさん   1000円の図書カード

 冷奴賞       さくらさん    1000円の図書カード

 炎暑賞       どんぐりさん   1000円の図書カード

 自由句賞      弥太郎さん    1000円の図書カード

 つきひ特別賞    ろまん亭さん   1000円の図書カード

 

女性軍対男性軍では、女性軍5人で43点、男性軍9人で27点。男性軍の倍返しの悲願空しく、今回のステイホーム句会でも女性軍大勝利で句会は終了しました。

パソコンやスマホでお互いの顔を見ながら行う「リモート」句会にはなりませんでしたが、どこかでみんなで一緒に集まったかのような、楽しい句会になりました。

さて、今夜は、お気に入りの豆腐に好きな薬味を載せて醤油を垂らし、冷えたビールか冷酒、ノンアルコールビールでもぐいっと飲んで、残暑を吹き飛ばしましょう。

今回の企画にご協力いただき、ありがとうございました。

コロナ禍は8月14日現在、国内で5万人、世界で2千万人が感染。まだまだ続きそうです。

お気をつけてお過ごしください。全員でお会いできる日が楽しみです。

次回のご希望やご提案があれば一風幹事長まで。

 

 

 2020.8 絵手紙/bantyo,tukihi・書/herumen・写真/mimizu・文/mimizu

 

 

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2019=御影ハイカラ建築句会

2019-11-03 | 吟行句会

 

秋が深まると、六甲の裏に広がる酒造会社の幟の立つ兵庫の稲田は黄金色に輝き、酒米が刈り取られていきます。

10月は、消費税10%への増税に始まり、吉野彰さんのノーベル賞受賞、日本でのラグビーW杯開催で沸き、各地の秋祭りで盛り上がる中、台風15・19・21号の東日本豪雨が広範囲に河川を決壊させ甚大な被害。天皇即位祝賀パレードも11月に延期され、自然災害と隣り合わせの列島を実感しました。

第30回神戸ランダム句会は、過去の水害・戦災・震災に耐えて2年前に蘇ったハイカラ建築・御影公会堂をめざし、新酒の仕込みの始まった灘の酒蔵にも足を延ばします。4年前の第22回の句会では御影郷の東端から魚崎郷、住吉川を歩きましたが、今回は御影郷の西地区と石屋川を歩きます。

御影塚町・石町を歩く―――――――

                         

令和元年10月30日(水)、午前10時15分、阪神電車・新在家駅前が集合場所。

  秋佳日るんるんるんや句会便 ひろひろ

  暑い秋やっと過ぎると夜寒かな 

  六甲の黄砂の空に鰯雲 英① (丸数字は句会での得点) 

  楽しきは句会と仲間秋日和 蛸地蔵①

昨日の雨が上がり朝の霧も晴れて気持ちのいい秋晴です。ただし天気予報では季節外れの黄砂が飛んでくるとのこと。

句会の参加者は、さくらさん、だっくすさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさんと女性5名。男性は一風さん、蛸地蔵さん、英さん、播町さん、ひろひろさん、見水さんの6名で総勢11名。

用意してきた本日の吟行のコースとスケジュール表を全員に配ります。

吟行のスタートです。少し東へ歩くと浜田公園。近くの保育園児らが保母さんと元気一杯遊んでいます。横を通り抜けながら蛸地蔵さんはわがお孫さんを思い浮かべ、会心の一句、

  赤白の兵隊帽の児秋遊び 蛸地蔵

を詠みましたが、なぜか選句に入らず。この公園を過ぎると東灘区。昭和初期のハイカラ建築「甲南漬資料館」が見えてきます。

甲南漬資料館

 

南側は国道43号線と阪神高速、北側は阪神電車石屋川車庫に挟まれていますが、この一画は都会のオアシスのよう。他の観光客も訪れています。

建物は1930年築で、設計者は、今日の午後に向かう御影公会堂を設計した清水栄二。蒲鉾型の屋根や階段室の窓、玄関の庇のデザインが独特です。

清水栄二(1895~1964)は地元六甲村出身の建築家で、東京大学で学び、古い伝統に挑戦し当時世界的に流行した表現主義などを取り入れた建築を、神戸中心に数多く手がけました。

高嶋平介商店の2代目当主は、甲南漬(奈良漬)の製造で成功し、清水の設計でこの邸宅を建てました。現在は国登録有形文化財に指定され、甲南漬資料館として保存し公開しています。内部も海外の調度品を集めた重厚な造りです。

 

玄関を入ると天井の高い1階の廊下沿いに、奈良漬の歴史や酒粕と灘五郷の関わり、髙嶋酒類食品150年の歴史、味醂作りの道具などを展示。阪神・淡路大震災で倒壊する前の魚崎郷・御影郷の模型もあります。格式高い洋室は喫茶コーナー、日本庭園に面した和室は食事処。

建物を出ると、日本庭園が残され、片隅に鬼瓦も置かれています。

  鬼瓦屋根を下され暮の秋 どんぐり⑤◎ は特選句で2点)

外にかまどがあり、店の人が5升炊きの大釜で御飯を炊いていました。

  冬支度羽釜飯炊く薪を積む どんぐり④

  薪を焼()べ大釜で炊く今年米 だっくす⑤

  炊き立ての新米にぜひ甲南漬 見水①

日本庭園を抜けた「武庫の郷」では、甲南漬や関連商品を販売。句会の賞品の甲南漬を調達。

 

  

「武庫の郷」を出て東へ歩きます。「高羽川」の表示のある用水路のような川をふと覗くと、海抜が低いため海水が逆流しています。潮に乗って小さな稚魚。

「ボラの子やな」

思わぬプレゼントでした。

処女塚

 

さらに東へ歩くと、こんもりした森が見えてきます。処女塚古墳です。

処女塚古墳は、全長70mの前方後方墳で4世紀前半頃に築造。国の史跡に指定されています。車の交通量が多く、古墳には石段もあるので、見て通り過ぎる予定でしたが、

「いままで来たことがなかった。せっかくなので寄ってみたい」

の声があがり、天気もいいので自由に見学し、神戸酒心館で11時30分に合流することに。

  金柑や石段登り処女塚 だっくす

  秋風や処女塚から家並見る 一風

  処女塚桜色づき初めんとす へるめん

万葉集や大和物語には、この地の伝説として、菟原処女(うないおとめ)が菟原壮士(うないおとこ)と茅渟壮士(ちぬおとこ)の激しい妻争いに耐えられず命を絶ち、男達も後を追って、遺族が3つの墓を造った話を残しています。西に2km離れた場所に西求女塚古墳、東に1.5km離れた場所に東求女塚古墳があります。 

  身に入むや身焦がす恋の処女塚 さくら

  蚯蚓鳴く悲話語り継ぐおとめ塚 見水⑤◎◎

天気がいいので、蝶や小鳥も来ています。

  カップルで処女塚舞ふ秋の蝶 さくら④

  処女塚近き公園小鳥来る どんぐり

古墳の傍らには古い石碑が2つ建っています。1336年の湊川の戦いに敗れた総大将・新田義貞を京に逃すためここで討死した小山田高家の石碑と、処女塚に立ち寄って詠んだ万葉歌人・田辺福麻呂の歌碑です。

  

処女塚古墳の東隣には、東明の地名の由来となった神功皇后ゆかりの東明八幡神社があります。1700年前に武内宿禰が植えたという幹まわり5mの「武内松」の巨木が摂津の名所として明治時代まであり、近在からも大勢訪れたそうです。

神戸酒心館

 

国道43号線を渡って、御影郷の酒蔵へ。

  行く秋の昭和を醸す酒どころ 播町④

  御影郷新酒の香り訪ひ歩く さくら①

神戸酒心館に到着。堂々とした門を入ると、萩やすすき、柿などが植えられた庭が目に飛び込んできます。

  萩に柿酒屋の庭の門構え 蛸地蔵②

  酒蔵に萩・すすき・友せいぞろい 英③

ここは御影郷の清酒「福寿」の蔵元の酒造会社。

福壽酒造は1751年にこの地で清酒の醸造を始めましたが、1995年1月の阪神・淡路大震災で木造蔵が全壊し、2年後に豊澤酒造とともに神戸酒心館を設立。蔵元のほかに、酒の量り売り販売も行う東明蔵や、「旬の酒と肴」をテーマにした料亭「さかばやし」があります。

 

門の脇に2つの大きな桶が置かれ、中に板があって休憩できるようになっています。

立札には、「お酒の仕込みに用いました。約6キロリットル入ります。毎日180mlずつ飲むと87年かかります。昔は酒造りが終わると桶を洗い、これを蔵の外で干すため子供の恰好の遊び場になっていました。」の説明が英文でも書かれています。

中に入って座ると開放的で風も心地よく、大樽に住んでいた古代ギリシアの哲学者の気分。

処女塚をゆっくり見学したメンバーも、「さかばやし」の予定開始時刻の11時30分に到着。早速、昼宴を始めます。

1階の奥の個室に案内され着席。手作りの新豆腐や湯葉を使った季節料理が並んでいます。席に着いて、会費の徴収。続いて、11時40分に乾杯。

今回は、ノーベル賞受賞後の晩餐会で提供される福寿の青瓶を注文し、全員の杯に注ぎ、係りの人に乾杯の写真のシャッターをお願いしました。

   

  ノーベル賞福寿の新酒出番待つ 一風②

  ノーベル賞誉は灘の新酒とて さくら①

  ノーベル賞流石神戸は粋な街 ひろひろ

  ロウソクの科学に乾杯新酒注ぐ 見水

今年は12月10日に名城大教授で旭化成名誉フェローの吉野彰さんがリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞します。2008年に4人の日本人がノーベル賞を授与した時期から、日本人がノーベル賞を受賞した晩餐会では「福寿純米吟醸(青瓶モデル)」が出されています。

吹田市出身で、小学校4年の担任教諭にファラデーの「ロウソクの科学」を読むよう薦められて科学への目を開かせたという、カラオケと日本酒が好きな吉野先生、晩餐会の「福寿」の乾杯で大いに盛り上がることでしょう。

「リチウムイオン電池も、初めはなかなか使い途が無かったらしいな」

一風さん、かつてラジオ講座で3ヵ月間、吉野彰さんの講義を熱心に聞いたとか。

  おっとっともちょっと飲ませ今年酒 一風①

  古酒新酒世間ばなしを山盛りに つきひ①

少しお酒が入ったところで、句会幹事長の一風さん、

「幹事にこの句会への意見があればお聞きします」

「ないない、いつも、ありがとう」

「ありがトウならミミズはハタチ。イモムシ十九で嫁に行く」

「何それ?」

と、しばし、世間話で盛り上がります。

  冷し酒神戸憂える一語あり 播町

  新酒酌む男老いても凛として 播町⑤

 

福寿の酒瓶の濃いブルーの色に、しみじみと見惚れます。

「きれいな青色やな」

「福寿ブルーや」

「ノーベル賞のお酒・福寿ブルー、いいわね。句に詠みたい」

  秋灯下福寿ブルーの吟醸酒 つきひ②

  先生は福寿ブルーの今年酒 播町①

「最近は『阪急ブルー』もできたんや」

神戸・三宮では、10月にそごう神戸店が85年の歴史を閉じ、神戸阪急に交代。

神戸阪急はイメージカラー「神戸ウインドブルー」を万年筆インクの「Kobe INK物語」を手がけるナガサワ文具センターと共同開発し、この色を使った帽子や小物などのオリジナル商品を販売。ほんのり緑がかった鮮やかな青色で、港からの潮風と自然豊かな六甲山からの風を、新店舗の新風として吹かせます。

  桐一葉青春はそごうに花時計 へるめん

12時30分、御飯とデザートのシャーベットをいただき、ほろ酔いで「さかばやし」を出ます。

  今年酒飲める幸続けよと 蛸地蔵①

  深秋やほどよく酔ひて老い楽し へるめん②

  美酒からだ廻り御影の秋惜しむ へるめん

  秋うらら昼酒に酔ひ御影郷 だっくす①

あとは、御影公会堂での句会です。5句を作らなくては。

  新酒呑むランダム句会ほろ酔いや ひろひろ

  灘五郷五臓六腑の熟柿句を ひろひろ④◎◎

  御影郷古酒を楽しむ吟行と 

  新酒(あらざけ)に気分洋々いざ句会 蛸地蔵①

  

   

神戸酒心館の庭はよく手入れされ、すすき、萩、ザクロ、柿など季節感たっぷり。さらに目敏く、水引草、錦木、池の鯉、みのむし(鬼の捨て子)、1~2輪の冬桜などを見つけて句づくりに活かしたメンバーもいれば、目が節穴のその他大勢のメンバーも。

  小流れに白水引のひそやかに さくら①

  一献の昼餉錦木紅葉かな どんぐり②

  水澄みて日本画めきし鯉現るる つきひ

  宙ぶらりん鬼の捨て子と酒林 つきひ 

  酒蔵の壁にまぎれて冬桜 どんぐり③

  ほろ酔ひの至福に仰ぐ冬桜 つきひ①

一風さんは、大樽の中でちょっと一息。

  昼食べて樽の中からすすき見る 一風

  忙しく句づくり励み秋惜しむ 一風

 句会のスケジュールが押していますが、ここ東明蔵の販売所での句会の賞品調達もあり、御影公会堂での句会の開始時間を少し遅らせます。

  母在れば土産にしたし新酒糟 だっくす④

  酒蔵の町に短き秋惜しむ だっくす④

予定では、全員揃って神戸酒心館を出て、句会場の御影公会堂までの約1kmの酒蔵の道と石屋川を吟行することにしていましたが、皆さんいよいよ「老人力」がつき、行動緩慢、時間無視、ばらばらの動き。午後1時半頃までに各自で句会場に着くことにして、移動を開始。

酒蔵の道・石屋川を歩く

 

  

神戸酒心館の東側の泉酒造も今年の酒造りを始めています。「酒蔵の道」には御影郷の酒蔵のイラストや案内図も掲示。江戸時代には海に面して酒蔵がひしめくように建っていたようです。

酒蔵の道から石屋川に沿って北へ43号線と阪神電鉄を抜けます。遊歩道や公園のある川の左岸(東側)を歩きます。昔から残された松の緑も多く、少し色づき始めた六甲山や秋の雲を眺めながら歩くと、2019年の神戸の街中にいることを忘れさせます。

  石屋川秋の水流れ茅渟の海 

  表現は自由ぞおおい秋の雲 へるめん

 

公園を抜け、国道2号線を渡って、御影公会堂に到着。

御影公会堂

  

御影公会堂は、国の登録有形文化財に登録され、集会施設に利用されるほか、地階の老舗洋食店のオムライスが有名です。

建設当時、東灘区はまだ神戸市に編入されておらず、公会堂は御影町の施設として建てられました。建設費用のほとんどは、白鶴酒造の7代当主・嘉納治兵衛(1862-1951)の寄付で賄われ、1933年に竣工。公会堂の玄関ホールに嘉納治兵衛の胸像が掲げられています。

建築家・清水栄二にとっては、今日最初に見学した甲南漬資料館(高嶋邸)から2年後の設計です。丸窓、アーチ窓、アールをつけたコーナー、重厚感のあるタイルの外装、水平を強調する庇、太い円柱が並ぶ館内の通路等、斬新な建築スタイルが満載。

  築百年秋気に澄みてモダンなる 播町①

  公会堂ハイカラ建築秋御影 ひろひろ

  公会堂の米寿を祝ひ山粧ふ 見水②

  

1945年、3度にわたる神戸大空襲により御影町は焦土と化し、公会堂も被災しました。

1950年に御影町と神戸市が合併した後、市が修繕・改修し、1953年から使用を再開。1957年から結婚式場を設置し、最盛期には年間1100組が挙式しましたが、その後各地に結婚式場ができ1983年に閉鎖。施設の利用も次第に減少しました。

1995年の年初、神戸市は公会堂を大改修して柔道の殿堂「嘉納記念館」とする構想を立案。が、半月後に阪神・淡路大震災が発生。約1年避難所として活用し、構想は立ち消えになりました。

震災から21年後の2016年、神戸市は耐震化、老朽化修繕及びバリアフリー工事を行い、2017年4月に再オープン。地階に御影郷土資料室と嘉納治五郎記念コーナーが設けられました。

 

嘉納治五郎(1860-1938)は、御影で生まれ、東京大学で学業を修め、高等師範学校の校長などを務めた教育者。学業のかたわら柔術を習得・研究し、21歳で講道館柔道を創始。国民への体育の普及とスポーツを通した社会貢献に力を注ぎました。柔道の精神として唱えた「精力善用」「自他共栄」は、設立に関わった現・灘中学校・高等学校の校是にもなっています。世界的な視野を持つ国際人で、ユーモアがあって人望があり、小泉八雲や魯迅、クーベルタンらとも心を通わせ、柔道は世界的なスポーツになりました。

今年のNHK大河ドラマ「いだてん」では、50代以降の治五郎の、日本のオリンピック初参加や東京開催招致の成功などの尽力を、役所広司が熱く演じ、治五郎の知られざる魅力を引き出しました。

  寒稽古飄然と立つ治五郎翁 見水

ご本人は、記念コーナーの柔道着姿の銅像ほどの小柄な飄々とした方だったようです。

御影句会――――――――――――

午後1時30分過ぎ、句会場の御影公会堂303集会室にようやく全員集合。この部屋は最上階の南西の部屋で、天井が高く、コーナーはこの建物の特徴のアールがつけられています。11人が座るには十分ですが、部屋の真ん中の円柱が少しじゃま。改修してまだ2年半なので隅々まできれいです。

各自、自由に席に着き、渡された5枚の短冊に句を書いて提出。出句の締切は午後2時です。

 

午後2時、集まった短冊をばらして選句表に清書し、清書した選句表を受付事務所のコピーサービスで人数分コピー。清書からコピーができるまで、つきひさん差し入れの和菓子・ほうらく饅頭をいただきながら、コーヒー&ティータイム。

 

午後2時40分全員に選句表を配付し、各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者11名の総点数77点の争奪戦です。

午後3時、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。55句全部に点数が付けられて作者が明かされました。

高得点句

本日は5点獲得句が4句と、4点句が6句ありました。

鬼瓦屋根を下され暮の秋 どんぐり⑤◎

二度と使われることのない鬼瓦が哀れです。

薪を焼(く)べ大釜で炊く今年米 だっくす⑤◎

甲南漬食事処の5升炊の釜。煙にむせる竈。

蚯蚓鳴く悲話語り継ぐおとめ塚 見水⑤◎◎

この塚を蚯蚓も土の中でずっと守ってきた。

新酒酌む男老いても凛として 播町⑤◎

男はいつまでも凛々しくあらねばならない。

冬支度羽釜飯炊く薪を積む どんぐり④◎

人は何千年もそうして暮らした。

母在れば土産にしたし新酒糟 だっくす④

粕汁か甘酒作ってみましょうか。

カップルで処女塚舞ふ秋の蝶 さくら④◎

悲恋の地の蝶たちはお幸せに。

行く秋の昭和を醸す酒どころ 播町④

あの頃は地酒ブームに沸いた。

灘五郷五臓六腑の熟柿句を ひろひろ④◎◎

五臓六腑沁みわたる酩句です。

酒蔵の町に短き秋惜しむ だっくす④◎

酒造りの文化を満喫した一日。

みんなで添削

午後4時、今回の獲得点数が決まったところで、30分間の時間をいただいて新しい試みです。点数が取れなかった句をどう添削すればいい句にできるか、テレビ番組のプレバトのようにみんなで意見を出し合ってみることにしました。

例として、4年前の句会の0点句の

 (添削前) 酒造り唄利酒でまわる酔い

を、つきひさんとだっくすさんが添削した結果、

 (添削後) 利酒に酔い酒造り唄に酔い

と直せば、言いたいことが相手によく伝わるのではないか、との結論。

          

では、今回点数が取れなかった句を1つ取り上げます。私ならこう直す、と意見を言ってください。

 (添削前) 公会堂ハイカラ建築秋御影

「公会堂は建物なので、建築、は要らないのでは」

 (添削1) ハイカラや秋の御影に公会堂

「それなら、御影公会堂の秋、がいい」

 (添削2) ハイカラや御影公会堂の秋

「これで良くなりましたか。どうでしょう」

「自分はやっぱり元のままがいいと思う」

「そうかしら。今回はこれくらいで、またやりましょう」

いい勉強になりました。次回もぜひ続けてください。

表彰式

午後4時30分、獲得点数により表彰式。14点獲得者はお二人いるので、ジャンケンします。

優勝はどんぐりさん(14点)、続いてだっくすさん(14点)、播町さん(11点)。

他のメンバーは、見水さん(8点)、さくらさん(7点)、蛸地蔵さん(5点)、つきひさん(4点)、ひろひろさん(4点)、英さん(4点)、一風さん(3点)、へるめんさん(2点)。

今回の賞品は、幹事のさくらさんとへるめんさんが武庫の郷・甲南漬と神戸酒心館・東明蔵の売店で選んだ御影の特産品です。

 

                     受賞者     賞品

 優勝 新酒賞       どんぐりさん 清酒・福寿 純米吟醸

 2位 新走賞        だっくすさん 清酒・福寿 寒造り

 3位  今年酒賞        播町さん   清酒・福寿 ひやおろし

 4位  当日敢闘新米賞          見水さん    清酒・福寿 御影郷

 5位  桔梗賞        さくらさん   甲南漬とおつまみ

 6位  秋桜賞        蛸地蔵さん  甲南漬とおつまみ

 7位  野路菊賞       つきひさん  甲南漬とおつまみ

 7位  木犀賞        ひろひろさん 甲南漬とおつまみ

 7位  白萩賞        英さん    甲南漬とおつまみ

 10位 ブービー木槿賞         一風さん   梅酒

 11位 芙蓉賞          へるめんさん 甲南漬とおつまみ

 

今回の「御影ハイカラ建築句会」は、当初は、嘉納治五郎記念コーナーのある御影公会堂と甲南漬資料館の見学をメインに処女塚、神戸酒心館、石屋川を吟行し、御影の町の様々な句が詠まれる予想でしたが、吉野彰さんのノーベル化学賞受賞のニュースもあって、福寿・神戸酒心館での句がメインになったようです。女性軍対男性軍では、つきひさんやへるめんさんの句になぜか点が入らず、女性軍がややリード、で句会は終了しました。

句会場を出て、御影公会堂をバックに全員の記念写真を撮ろうと、公会堂の方にお願いしてシャッターを押していただきました。

 

天気に恵まれた秋の一日を満喫。全員で阪神石屋川駅まで歩き、その後、有志で三宮の居酒屋で二次会を楽しみ、散会しました。

今回の事前準備と幹事の一風さん、さくらさん、へるめんさんお疲れさまでした。

さて次回は、また神戸を離れましょうか。ご希望があれば一風幹事長まで。 

 2019.11 写真/bantyo,mimizu・文/mimizu

 

 

コメント (2)
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