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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

見水自選第2句集「鉄の星」2024年5月

2024-05-01 | 句集

 

牧場へと続く山道風涼し      21・森林植物園・弓削牧場句会

ヤルゴイは草原の花夏の牛     21・森林植物園・弓削牧場句会

緑蔭の句会にひらり蝶の来る     21・森林植物園・弓削牧場句会

アオサギの巨体のっそり原生林   徳島

ホーホケキョ同行二人の笠の上   徳島

俘虜の地は夏の緑に囲まれて    徳島

くねくねと黒塀の道新酒の香    22・魚崎郷ほろよい句会

この沖に新酒番船集結す      22・魚崎郷ほろよい句会

 

島渡る船を待つ人春を待つ      日生港

海うらら自転車道は岬へと      小豆島

春山を背に黒々と醤油蔵       小豆島

これがまあ放哉庵か咳ひとつ     小豆島

現れた砂州また消えて春の波     小豆島

海鼠ゲタメバルぶちまけ並べられ   小豆島

かわらけが突き抜け空も海も春    小豆島・寒霞渓

葡萄づる勢いを増す夏の空      23・夏の神戸ワイナリー句会

ひばり鳴き山桃実るワイン城     23・夏の神戸ワイナリー句会

仰ぎ見る主塔すっくと天高し     24・海峡スケッチ句会

玉葱は完売しました道の駅      24・海峡スケッチ句会

三ケ日の潮風やさし甘蜜柑      浜名湖

 

さげもんがゆれる川面を雛の舟   柳川

庭眩しつつじ赤白咲き始む     25・北野工房寄り道句会

薫る風館の鎧戸開け放つ      25・北野工房寄り道句会

燕飛ぶハイカラ神戸坂のまち    25・北野工房寄り道句会

ろうそくに春の楽しさ塗りこめる  25・北野工房寄り道句会

遊覧のデッキに群れる冬鴎     26・神戸開港150年句会

冬鴎突然高く舞い上がる      26・神戸開港150年句会

小春風飛鳥出港十七時       26・神戸開港150年句会

元町に波止場の名残冬温し     26・神戸開港150年句会

本堂は紅葉伊吹山は雪       東近江

 

 

孫 文

 

レーニンや毛沢東やチェ・ゲバラが英雄だった頃

孫文もまた偉大な英雄だった

 

文革が失敗し、ソ連が崩壊し

毛沢東もレーニンも、忌まわしい独裁者になった

 

「革命いまだならず」

それでよかったのだ

孫文はいい時に死んだ

 

夏来る夢見ぬ男のゆめの跡     27・初夏の舞子海岸句会

吊り橋の消えゆく先に青岬     27・初夏の舞子海岸句会

藤村の詩を朗誦す夏座敷      馬籠

一万騎過ぐ涸れ川の湊川      28・湊川まちぶら句会

枯尾花イギリス積みの煉瓦壁    28・湊川まちぶら句会

冬空にここぞと立てり赤鳥居    鎌倉

冬ざれの参道長し鶴岡宮      鎌倉

舞殿は今日は凩舞ふばかり     鎌倉

江ノ電に家々迫る冬隣       江ノ電

冬波の寄せくる七里電車ゆく    江ノ電

冬鳩を追って大路の豊島屋へ    鎌倉

大輪の山茶花の赤ちらほらと

 

容赦なき機銃掃射の塀薄暑    29・城下町尼崎句会

夏草を食む赤き牛霧深し     阿蘇

花蜜柑段々畑の丘の道       宇土半島

胸おどる藍より青き夏の海    天草

絵にしたい四郎ヶ浜の夏の雲   天草

ちょこちょこと瓜坊六甲お出迎え

蚯蚓鳴く悲話語り継ぐおとめ塚  30・御影ハイカラ建築句会

寒稽古飄然と立つ治五郎翁    30・御影ハイカラ建築句会

 

 

鉄の星

 

宇宙から降る素粒子は

隙間だらけの地球を

難なくすり抜け

宇宙の彼方へ飛んでゆく

 

地球は卵のような星

薄い殻の大地

白身のマグマが煮えたぐり

黄身は鉄とニッケル

 

地球の三分の一は

鉄とニッケルの塊で

その磁力のために

天空をオーロラが泳ぐ

 

虚しくはないのだろうか

この星の科学者たちは

 

春めくや小さな駅の待ち合わせ  三木下見

日脚伸ぶわが青春の城下町    三木下見

五月には萌える新緑寒雀     三木下見

冬ぬくし地産地消のバイキング  三木下見

春隣昭和の町をそぞろ行く    三木下見

上の丸二の丸黒し冬銀河     三木下見

巣篭りの庭にちいさな菫草

春眠は出口の見えぬ夢ばかり

鯉幟くねる里山千の風  

所在なく季節過ぎゆく夏木立   31・夏のおうちde句会

日溜りに三人三様秋惜しむ    32・秋のおうちde句会

ふりそそぐ小春の光ちぬの海

  

花堤抜けて顔出す昼列車        33・春のおうちde句会・三木句会

紋黄蝶保育園児のように逃げ      33・春のおうちde句会・三木句会

巨大なる夏雲一瞬顔となる       34・夏・俳句日記句会

長嶋の一歩は待てる夏五輪       34・夏・俳句日記句会

はちきれんばかりの獅子唐苦み良し     34・夏・俳句日記句会

北神ねぎ入口に盛る道の駅       35・淡河本陣マスク句会

納屋カフェの太き煙突薪暖炉      35・淡河本陣マスク句会

冬日射す三百年の石灯篭        35・淡河本陣マスク句会

凍空に温し淡河の十割蕎麦       35・淡河本陣マスク句会

久々に集ひし句座の暖かし       35・淡河本陣マスク句会

古希祝小春の街の中華飯

六甲の峰ベランダに蒲団干す

 

 

1972年

 

生まれ変わる札幌の街で冬のオリンピック

恥ずかしながら横井さんがグァム島から帰還

山岳での陰惨な連合赤軍事件の総括

 

米軍基地を抱えて沖縄が復帰

独りテレビに向かって佐藤栄作が退陣

逗子のマンションで川端康成が自死

日本列島改造論を手に田中角栄が首相

ニクソンに続いて中国に行き国交を回復

 

この年、二十歳だった

若い助教授の刑法ゼミで「自由」を議論し

裁判の傍聴や刑務所の見学に出かけた

 

翌年ベトナム戦争がようやく終わり

オイルショックで何もかも値上げ

 

あれから半世紀が経った

 

「自由とは」半世紀前のゼミの春

赤豌豆そよ風の庭咲き揃ふ

風ぐるま地球クルクル棲み難し

鯉のぼり泳げ平和の空泳げ       36・祝20周年みたび、有馬句会

ねね橋にみたび参りて若楓       36・祝20周年みたび、有馬句会

緑さす炭酸泉源のぼりきて       36・祝20周年みたび、有馬句会

梅雨明けて印南野からの千の風     播町さん弔句

マドンナ逝く雨の六甲ねむの花     だっくすさん弔句

未来図に寂しさもあり秋うらら     37・回想の三宮句会

市庁舎に冬の日差しが降り注ぐ     37・回想の三宮句会

メタセコイヤの巨人たちみな紅葉    37・回想の三宮句会

小春日の海風やさし花時計       37・回想の三宮句会

 

永き日に欠伸を一つ本を閉ず    38・花の大中遺跡句会

悠久の大中遺跡青き踏む      38・花の大中遺跡句会

洗い場に下りていきたい夏の川   若狭熊川宿

次から次赤蜻蛉来る琵琶湖畔    彦根

夕焼雲鯖街道の鯖を焼く      彦根

舞い上がりやがて着水夏の湖    彦根

ソーラーがしれっと並ぶ炎天下   近江路

酋長の座す草屋根の夏館      近江八幡

紅葉散る平氏栄えし湊山      39・みなとやま水族館句会

六甲颪神戸の街を吹きわたる    39・みなとやま水族館句会

 

船溜まり雨に打たるる残り鴨    40・新長田・駒ヶ林ひねもすのたり句会

春雨に打たれ鉄人飛び立つか    40・新長田・駒ヶ林ひねもすのたり句会

其の日此の日やがてはあの日春惜しむ

野も山も若葉の萌ゆる鉄の星

 

 

 

4月3日、新長田・駒ヶ林で第40回神戸RANDOM句会を開催。その後、桜を長く楽しんだ。

2014年に播町さんがネット句集を提案され、翌年、ブログに句集「二万世紀」の99句をアップした。あれから9年が経っている。

 遅き日のつもりて遠きむかし哉  蕪村

日が永くなったので、「二万世紀」以降の、第21~40回の句会(未投句の句を含む)や旅先、見水庵(6畳の自室)で詠んだ350句から100句を選び、第2句集を編んだ。後半のコロナ禍や播町さんとだっくすさんの旅立ちで心の重い日々に詠んだ句も、愛おしいあの日の記憶。絵や写真や詩を混ぜた‟見水ワールド”で再び遊んだ。

コロナ禍の巣籠もりで、わが地球のことを調べていたら、地球の1/3は鉄の塊であることを知り、詩にした。詩のタイトルの「鉄の星」を、句集のタイトルにした。

5月になった。いま、空も海も山野も命の満ちあふれる列島である。

見 水

  見水・プロフィール…1951年に生まれ、神戸で暮らし続けている。

 

********************

見水自選第2句集

鉄の星

著者:見水

2024年5月1日

発行 KOBE@RANDOM

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2023=20句シリーズ つきひ

2023-01-24 | 句集

  姫新線の四季  つきひ

入学の子等どっと乗りどっと降り

播磨路の寝釈迦てふ尾根なだらかに

太陽光パネル抱へて山笑ふ

花見客ぱんぱんに詰め一輌車

各駅停車拾ひつつ行く春の色

果物のおしゃべり封ず袋掛

軽鴨の放たれし田の二三枚

ウクライナ国花ひまはり項垂るる

夏草に構へ撮り鉄らしき人

一輌車丸洗ひして大夕立

集落は途切れ花野は続きをり

二時間に一度の列車蒲の絮

お伽噺のやうな集落蕎麦の花

峡深し秋の田天に金放つ

幾重にも棚田の畦の曼殊沙華

「御座候」買うて温める悴む手

眠る山へ玩具のやうな汽笛かな

寒林の解体図めく一樹かな

終列車帷子雪の無人駅

木版画めく県境の斑雪

     

姫新線の事は、私の句集「俳句の時間」にも書いたことがあります。赤字路線、廃止路線の話題には必ず出て来るJR路線です。「俳句の時間」発行から15年経ちました今も、私の明石と岡山美作の二拠点生活が成立しているのは、この路線のお陰です。私が利用しているのは姫新線の一部ですが、各駅に、沿線の四季の景色に、思い出があります。

姫新線が走っている間、私の足が動く間は、今の二拠点生活を続けようかなと思っています。

姫新線写真:tukihi,写真構成:mimizu(2023年1月)

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2022=20句シリーズ つきひ

2022-02-10 | 句集

タイトルを付けて20句まとめるというスタイルで、先に「私の40句」-「蝶と遊ぶ」(2017年)、「蜘蛛の囲」(2019年)-を掲載させていただきました。その後、このスタイルで「街に咲く花」(2020年)、「虹」(2021年) を詠み、20句シリーズの句集にしました。

コロナ禍が続きますが、八十姉は元気に俳句と遊んでいます。

 

 

悠久の空たまゆらの虹掲ぐ

病む国へ神慮の虹と思ひけり

夕虹や仕掛け絵本のやうな空

警報の解けたる街に二重虹

豪雨止み安堵の街を包む虹

被災地のあたりか虹の片足は

子午線と交差してゐる二重虹

虹の輪を水平に行く機影かな

あの世との往き来は自在虹の橋

叡子師と椿子渡る虹の橋

 

虹にさへ涙腺緩む戦中派

二重虹奇跡信じて合掌す

昼と夜のあはひを虹のグラデーション

虹の色こぼれてハンディファンの色

お隣も虹を仰ぎてゐるらしく

虹消えて街の騒音立ち上がる

虹消えて地表に増えてゆく灯

二重虹見し幸せを写メールに

虹消えて夕べの風の身ほとりに

虹消えて戻る疫の世夕支度

 

神戸の東遊園地に

虹の足とは不確かに美しき という後藤比奈夫の句碑がある。神戸市役所に用事があり、句碑まで足を延ばした。今は亡き花時計の専門家矢木勉氏が建立に関られたと聞いていた。

句碑を問うて間もなく幸運にも虹に出会えた。駅近の我が家は近くにマンションが立ち並び空が狭く、月の出も虹も見えにくい状況の中で。私の心や身体がふっと軽くなるひとときだった。(2021)

 

 

ふらここへながみひなげし飛び越えて

時計草へ風の運んでゐる時報

縷紅草絡む垣根のうらおもて

あぶら虫薔薇の蕾の痒さうな

ぽたぽたと凌霄花の朱に染まる庭

よぢのぼる凌霄花の持つ視覚かな

かんばせを市民花壇に黄蜀葵

黄蜀葵夢もうつつも時の間に

蛇瓜に良き花言葉朝涼し

蛇瓜の赤きとぐろに夏の月

 

箒草に雨しぽしぽと降る日かな

ふところにほのとくれなゐ箒草

人工衛星観測時間女王花

露草の花のマジック朝の庭

露草のπのかたちの金の蕊

咲き終へて再び拝む露草に

橡の実の落ちて緩びし亀裂かな

橡の実のしかめ面して石の上

鴇色に染まる決意の酔芙蓉

白木槿たたむ落花もつつましく

 

天気がよく気分の良い日は短い散歩をする。近くに公園があり季節ごとの花や草木が楽しめる。嵐の翌日、橡の木の下で思いがけなく拾った橡の実。ハレハレ葉っぱの落葉を拾って来て土の上に置いていたら、葉っぱを縁取るように芽と根が出て来て今は鉢の中で青々と茂っている。

       

『植物は知性を持っている』という本を読んで以来、植物は『動かない』『感覚を持たない』というレッテルを外して植物と付き合っている。(2020)

 

 

蜘蛛の囲にじたばたと音動く闇

雁字搦めに息の根止める蜘蛛の糸

腸啜る蜘蛛の表情見えずとも

鮮やかな球団カラー黄金蜘蛛

黄金蜘蛛ソックスも又縞の柄

一つ囲に二匹居るはず蜘蛛見えず

振動にすぐ身構へて黄金蜘蛛

蜘蛛の囲に迫る殺気のひたひたと

獲物抱へラガーの様に走る蜘蛛

蜘蛛ジャンプきらきら光る命綱

 

逆さまに宙に浮く蜘蛛昼の月

風の日の蜘蛛己が囲に張り付きて

雨粒が描き出したる蜘蛛の網

雨粒の重さに弛む蜘蛛の糸

造化とは雨を宿せる蜘蛛の網

蜘蛛の囲に白き花びら二三片

蜘蛛の囲にみどりの翅の遺りをり

蜘蛛身軽網一枚に寝起きして

網はパオ蜘蛛の暮しの遊牧めく

蜘蛛の囲の跡形もなく消えてをり

 

 

跨線橋渡り切ったる春の蝶

中空にジグザグとある蝶の道

蝶飛べり空の起伏を楽しみて

青空に蝶の軌跡の点と線

飛ぶことに倦めば吹かれて風の蝶

蝶時に鳥より速き急降下

草原に沈みて長き蝶の時

帆のやうに翅傾けて風の蝶

対馬丸沈みし海に蝶放つ

なんじゃもんじゃの花に番の黒揚羽

 

麝香揚羽世界遺産の二の丸に

目の前を泰然とゆく夏の蝶

影先に着地してをり夏の蝶

汝の幼虫吾の油点草食ひ尽くす

食草に仮寝の揚羽星の声

胴曲げて曲げて産卵揚羽蝶

秋蝶の翅の蜆の欠けてをり

秋蝶を空の深井に見失ふ

冬の蝶命ぬくめる石の上

扁平に命たたみて蝶凍つる

 

写真:tukihi,タイトル:mimizu+Henri Rousseau(1844-1910) (2022年2月)

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2021=俳句かるた・続 見水

2021-12-13 | 句集

見水の俳句遊び

11月29日、2年ぶりの吟行の第35回神戸RANDOM句会「淡河本陣マスク句会」が無事終了。その後、オミクロン株が全世界で急拡大し、今後どうなるのか予測がつかない。相変わらず、マスク、消毒、自粛、巣ごもり生活が続いていくようだ。

巣ごもりしながら、神戸RANDOM句会のまとめから20年間の句をエクセルに集約した。漏れた句もありそうだが1,900句ほど集まった。

あんまり実感がわかないが、もうすぐお正月。「神戸RANDOM句会かるた」作りを試みた。かるた作りの条件は、①35回の各句会から必ず1句以上選ぶ、②句会の現メンバー全員と当日のゲストの句を選ぶ、とした。

 

い  石畳ミモザの似合ふ香櫨園 へるめん

              第14回  ちょっとセレブな夙川句会 2012.4.7

ろ  老々の売り手買い手や秋茄子 播町

              第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11

は  初吟行福良の春にどっぷりと ころな

              第19回 淡路福良人形句会 2014.4.15

に  人形が泣けば人泣く春蔭に つきひ

              第19回 淡路福良人形句会 2014.4.15

ほ  望郷と祈りの葉月巡りくる 弥太郎

              第31回 夏のおうちde句会 2020.8.15

へ  平成を締める句会や菊日和 さくら

    第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11

と  年ごとに増えて行く忌の燗熱く つきひ

              第32回 秋のおうちde句会 2020.11.16

ち  地球のやうならふそくに描くチューリップ つきひ

              第25回 北野工房寄り道句会 2017.4.27

り  緑蔭に乳の匂ひの風過ぐる どんぐり

    第21回 森林植物園・弓削牧場句会 2015.6.29

ぬ  布引の水や旨しと冷奴 播町

              第31回 夏のおうちde句会 2020.8.15

る  ループバス元町みなと秋を行く 稲村

           第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6

を  乙女背に渡りし秋の飛鳥川 弥太郎

              第7回 明日香村句会 2008.11.23

わ  棉の花活け衣装蔵なまこ壁 どんぐり

              第35回 淡河本陣マスク句会 2021.11.29

か  観音も少し艶めく春の寺 蛸地蔵

              第6回 源氏千年紀・石山寺句会 2008.4.19

よ  用水路みな美しき花の町 見水

              第8回 龍野句会 2009.4.4

た  短日の光集めし朱のタワー さくら

              第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6

れ  歴史継ぐ柿衛文庫残り柿 かをる

      第5回 伊丹探鳥忘年句会 2007.12.9

そ  外は春だけど静かな昼ごはん 一風

             第10回 有馬湯けむり句会 Arima Again 2010.4.4

つ  梅雨晴れの風に押されてロマン館 楽水

              第2回 「花の木」フレンチ句会 2003.7.26

ね  ネパールの寂光まとう春ショール 播町

              第33回 春のおうちde句会 2021.4.30

な  夏潮のゆらぎガラスのゆがみかな どんぐり

              第27回 初夏の舞子海岸句会 2018.5.10

ら  落花浴びカピパラは目を細めをり つきひ

              第12回 桜乱舞 王子動物園句会 2011.4.16

む  無為にして地球は縮む無月かな 播町

              第34回 2021夏・俳句日記句会 2021.8.5

う  海の碧深めて秋の風わたる へるめん

              第24回 海峡スケッチ句会 2016.10.24

ゐ  遺句集や海には海の秋の声 へるめん

              第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6

の  濃淡のしだれ桜の揺れ交はす つきひ

              第1回 春らんまん有馬湯けむり句会 2002.4.13

お  大橋を置きて小春の時の道 さくら

              第9回 明石taco句会 2009.11.15

く  空港も沖行く船も霧に消ゆ へるめん

              第13回 布引ハーブ園句会 2011.10.30

や  山桜単線電車通過待ち どんぐり

              第8回 龍野句会 2009.4.4

ま  薪を焼(く)べ大釜で炊く今年米 だっくす

              第30回 御影ハイカラ建築句会 2019.10.30

け  玄米茶熱きをすする夜長かな へるめん

              第11回 神戸駅前フォト句会 2010.10.24

ふ  降っているいないとも見ゆ春の雨 かをる

              第4回 須磨寺かいわい雨中吟 2007.4.22

こ  告白は明日では遅し七変化 さくら

              第21回 森林植物園・弓削牧場句会 2015.6.29

え  江戸明治水車精米灘の冬 ひろひろ

              第22回 魚崎郷ほろよい句会 2015.11.6

て  寺町を曲がれば枇杷の熟るる路地 さくら

              第29回 城下町尼崎句会 2019.5.18

あ  逢いたいなあ冬の来る前わらべ歌 ろまん亭

              第15回 しあわせの村句会 2012.11.25

さ  三笑の謂れひもとく冬座敷 どんぐり

              第18回 天王山もみじ句会 2013.11.19

き  金泉に春愁の身を沈めをり だっくす

              第1回 春らんまん有馬湯けむり句会 2002.4.13

ゆ  行く秋のトンネルの先異界かも だっくす

              第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11

め  名産をひとつまみして花の路 波平

              第8回 龍野句会 2009.4.4

み  岬まで続く冬木の桜かな だっくす

              第16回 相生牡蠣喰えば句会 2013.2.1

し  時雨るるや上野寺町虫籠窓 つきひ

              第3回 伊賀上野BANANA句会 2004.10.30

ゑ  会下山をくぐりて秋をたずねけり 英

              第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11

ひ  ひしめきて無限の未来青ぶだう つきひ

              第23回 夏の神戸ワイナリー句会 2016.6.12

も  もの言わぬ石の声聞く冬ぬくし 弥太郎

              第20回 国宝太山寺句会 2014.11.28

せ  青春も昭和も遠し桜桃忌 つきひ

              第17回 夏の絵手紙句会 2013.6.17

す  澄む秋の水琴窟や月照寺 だっくす

             第9回 明石taco句会 2009.11.15

 

かるたは以上。参考に、再掲句もあるが、20年間の句会で8点以上を獲得した人気の傑作句を列記する。

 

金泉に春愁の身を沈めをり だっくす

花の坂人形筆は行儀よし さくら

春陰の老舗に選りぬ有馬筆 つきひ

            以上、第1回 春らんまん有馬湯けむり句会 2002.4.13

降っているいないとも見ゆ春の雨 かをる

            第4回 須磨寺かいわい雨中吟 2007.4.22

秋天にたじろがざるもの石舞台 播町

           第7回 明日香村句会 2008.11.23

人生の節目節目の桜かな つきひ

            第8回 龍野句会 2009.4.4

母に歩を合はせし日あり菊花展 つきひ

この感じ今も好きよと枯葉踏む へるめん

はふはふと蛸ほうばりて冬楽し 見水

大橋を置きて小春の時の道 さくら

            以上、第9回 明石taco句会    2009.11.15

見下ろして見上げて花の有馬かな つきひ

         第10回 有馬湯けむり句会 Arima Again 2010.4.4

秋の雨静かに海に浮かぶ街 見水

            第13回 布引ハーブ園句会 2011.10.30

五分咲きを待ちかね花の人となる へるめん

            第14回 ちょっとセレブな夙川句会 2012.4.7

身の丈のしあわせのあり村小春 さくら

            第15回 しあわせの村句会 2012.11.25

古時計迷路めきたる冬館 つきひ

三笑の謂れひもとく冬座敷 どんぐり

            以上、第18回 天王山もみじ句会 2013.11.19

初吟行福良の春にどっぷりと ころな

            第19回 淡路福良人形句会 2014.4.15

告白は明日では遅し七変化 さくら

緑蔭に乳の匂ひの風過ぐる どんぐり

            以上、第21回 森林植物園・弓削牧場句会 2015.6.29

海の碧深めて秋の風わたる へるめん

クレヨンで描き切れない秋の潮 つきひ

            以上、第24回 海峡スケッチ句会 2016.10.24

望郷も追慕も秋の港ゆえ 播町

            第26回 神戸開港150年句会 2017.11.6

行く秋のトンネルの先異界かも だっくす

            第28回 湊川まちぶら句会 2018.11.11

寺町を曲がれば枇杷の熟るる路地 さくら

            第29回 城下町尼崎句会 2019.5.18

熱燗や鬼籍の夫の誕生日 どんぐり

            第32回 秋のおうちde句会 2020.11.16

揖保川の瀬音も馳走鮎御膳 さくら

            第34回 2021夏・俳句日記句会  2021.8.5

(2021.12見水記)

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2021=俳句かるた 見水

2021-11-23 | 句集

  見水の俳句遊び

  

11月14日の日経新聞の文化面で、作家・北村薫さんの「かるた作り」の楽しさを書いたエッセイを見た。気に入った小説のフレーズなどを集めて、自分だけの「日本文学かるた」を作るのだという。読者にもお正月に向け、好きなジャンルで作ってみては、と提案している。

江戸時代の「いろはがるた」は、「犬も歩けば棒に当たる」「論より証拠」「花より団子」と、ことわざを並べている。

誰もが考えつきそうだが、俳句で作ればどうだろう。①49人の俳人から1句ずつ選ぶ、②著名俳人の句集から選ぶ、という方法がある。とりあえずは、生涯1000句を残した俳聖・松尾芭蕉の句集から選んでみようか、と、山本健吉「芭蕉全発句」(講談社学術文庫)を開いた。索引があるので、「いろは…」は埋まっていく。「た」は迷った。「旅人とわが名呼ばれん初しぐれ」「鷹一つ見つけてうれしいらご崎」「蛸壺やはかなき夢を夏の月」「田一枚植ゑて立去る柳かな」「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」など名句が多い。どれを選ぶか。明石の魚の棚の明石焼きが目の前に浮かんで3番目を選んだ。「あ」や「さ」も同様。「れ」は上句に無いので下句で。「ん」は「うん」が無いので「蒟蒻」に。

 

い        石山の石にたばしるあられ哉

ろ        六月や峰に雲置くあらし山

は        初しぐれ猿も小蓑をほしげ也

に        似あはしや豆の粉めしにさくら狩り

ほ        ほととぎす消え行く方や島一つ

へ        蛇くふときけばおそろし雉の声

と        ともかくもならでや雪のかれお花

ち        ちさはまだ青ばながらになすび汁

り        両の手に桃とさくらや草の餅

ぬ        ぬれて行くや人もおかしき雨の萩

る        留主のまにあれたる神の落葉哉

を        荻の穂や頭をつかむ羅生門

わ        若葉して御めの雫ぬぐはばや

か        かたつぶり角ふりわけよ須磨明石

よ        義仲の寝覚の山か月悲し

た        蛸壺やはかなき夢を夏の月

れ        瓜の皮むいたところや蓮台野

そ        其ままよ月もたのまじ伊吹山

つ        月さびよ明智が妻の咄しせむ

ね        葱白く洗ひたてたるさむさ哉

な        夏草や兵共がゆめの跡

ら        蘭の香やてふの翅にたき物す

む        むめがかにのっと日の出る山路かな

う        うきわれを淋しがらせよかんこどり

ゐ        猪もともに吹るる野分哉

の        野ざらしを心に風のしむ身かな

お        おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉

く        草臥れて宿かる頃や藤の花

や        山路来て何やらゆかしすみれ草

ま        先ずたのむ椎の木も有り夏木立

け        けふばかり人も年よれ初時雨

ふ        古池や蛙とびこむ水の音

こ        此道や行人なしに秋の暮

え        枝ぶりの日ごとにかはる芙蓉かな

て        寺にねて誠がほなる月見哉

あ        荒海や佐渡に横たふ天の河

さ        五月雨を集めて早し最上川

き        菊の香や奈良には古き仏達

ゆ        行春を近江の人と惜しみける

め        名月や北国日和定めなき

み        水無月や鯛はあれども塩くじら

し        閑さや岩にしみいる蝉の声

ゑ        ゑびす講酢売に袴着せにけり

ひ        雲雀より空にやすらふ峠かな

も        物いへば唇寒し秋の風

せ        せつかれて年忘するきげんかな

す        須磨寺やふかぬ笛きく木下やみ

ん        蒟蒻のさしみもすこし梅の花

京        京にても京なつかしやほととぎす

 

以上、下句が重ならないように選んだ。百人一首のように上句から詠みあげ、並べた下句の取札を取り合うかるた取りもできる。

山頭火や放哉なら面白いかとやりかけてみると、山頭火は語彙が少なく足で書いたような句が並ぶ。放哉は語彙は豊富だがシュールな句が多い。なるほど面白い発見だ。蕪村、一茶、鬼貫ならいい句が選べそう。

と、ここまできて、インターネットで「芭蕉かるた」を検索したら、出るわ出るわ、芭蕉、去来、蕪村、一茶のかるたが絵入りでゆかりの地の土産物などとして販売されている。俳句もかるたも日本人にはまだまだ人気が高い。どの句を選んだのだろうか。取り札は中七から書いている。夏井いつきさんがいっちょかんだ俳句かるたまである。

49人の俳人から1句ずつ選ぶアンソロジー作りも面白そうと思ったが、もう誰かが立派なのを完成させているだろう。RANDOM句会かるたか自選句かるたを作るしかないか。

(2021.11見水記)

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2020=私の40句 つきひ

2020-04-20 | 句集

私の40句 つきひ

    楽しみにしていた「新緑の播州三木句会」が新型コロナウイルスのため中止になりました。見水さんの下見紀行文を拝読し、貴重な一日を失った気がして残念です。下見に行ってくださった一風さん、見水さん有難うございました。
    タイトルを付けて20句まとめるというスタイルで、俳句を作ってみました。蜘蛛の囲は2019、蝶と遊ぶは2017年の作です。
    八十姉は元気にしていますというランダム句会の皆様へのメッセージです。

 

蜘蛛の囲

蜘蛛の囲にじたばたと音動く闇
雁字搦めに息の根止める蜘蛛の糸
腸啜る蜘蛛の表情見えずとも
鮮やかな球団カラー黄金蜘蛛
黄金蜘蛛ソックスも又縞の柄
一つ囲に二匹居るはず蜘蛛見えず
振動にすぐ身構へて黄金蜘蛛
蜘蛛の囲に迫る殺気のひたひたと
獲物抱へラガーの様に走る蜘蛛
蜘蛛ジャンプきらきら光る命綱


逆さまに宙に浮く蜘蛛昼の月
風の日の蜘蛛己が囲に張り付きて
雨粒が描き出したる蜘蛛の網
雨粒の重さに弛む蜘蛛の糸
造化とは雨を宿せる蜘蛛の網
蜘蛛の囲に白き花びら二三片
蜘蛛の囲にみどりの翅の遺りをり
蜘蛛身軽網一枚に寝起きして
網はパオ蜘蛛の暮しの遊牧めく
蜘蛛の囲の跡形もなく消えてをり

   

    蜘蛛はどちらかと言うと嫌いだったのですが、観察していると、その丸見えの生き方を好ましく思うようになりました。蜘蛛の本に蜘蛛は囲を遺さないと書いてあり、その通りであったことに感動し、蜘蛛の囲の最後の一句が出来ました。

 

 

 

蝶と遊ぶ

跨線橋渡り切ったる春の蝶
中空にジグザグとある蝶の道
蝶飛べり空の起伏を楽しみて
青空に蝶の軌跡の点と線
飛ぶことに倦めば吹かれて風の蝶
蝶時に鳥より速き急降下
草原に沈みて長き蝶の時
帆のやうに翅傾けて風の蝶
対馬丸沈みし海に蝶放つ
なんじゃもんじゃの花に番の黒揚羽


麝香揚羽世界遺産の二の丸に
目の前を泰然とゆく夏の蝶
影先に着地してをり夏の蝶
汝の幼虫吾の油点草食ひ尽くす
食草に仮寝の揚羽星の声
胴曲げて曲げて産卵揚羽蝶
秋蝶の翅の蜆の欠けてをり
秋蝶を空の深井に見失ふ
冬の蝶命ぬくめる石の上
扁平に命たたみて蝶凍つる

   

  田舎の我が家の庭に藤袴を植えて10年ほどアサギマダラを待っていますがいまだに来ません。
   油点草を食べ尽くしたのは、ルリタテハの幼虫です。ルリタテハは幼虫からは想像も出来ない美しい蝶です。
  近所にジャコウアゲハを育てている人がいて、羽化すると我が家にも飛んできます。今年も我が家の更紗卯木に群れるジャコウアゲハを見たいと思っているのですが・・・

                             

                                                                                    写真 : mimizu (2020年4月)

  

 

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だっくす句集 山の街にて  2015年6月

2015-06-22 | 句集

だっくす句集 山の街にて  

腰痛で動けなくなり2014年11月12日に入院しました。悪い箇所を全て把握するのに時間がかかり、手術をしたのは12月2日です。

 

退院の人見送りぬ寒波の日

湯豆腐の冷めて届くや患者食

点滴を終えて明けゆく冬至の日

短日のカーテン早めに閉めにけり

 

 

 リハビリも順調に進み年末に退院することに。ところが感染症にかかり26日に緊急手術。ナース室の前の病室で、いろんなチューブをつけられた状態のまま越年することになりました。

 

行く年の退院ひと月延びにけり

退院の延びて不要の年用意

点滴のしづく見つめる大晦日

大晦日テレビ故障の病室に

 

 

年末年始は患者が半減し、ゆったりした感じです。

 

歳晩のナース室より笑ひ声

去年今年痛みこらへるベッド上

元朝のナースコールを躊躇して

去年今年休まぬ医師に励まされ

入院の留守宅になき注連飾り

古暦掛けかへる日はいつのこと

病院の雑煮は喉を詰めぬ餅

三か間日替わりおせちの患者食

 

 

ようやくベッドの外へ出られるようになりましたが、発熱や薬の副作用で治療が難航し、リハビリも中止のまま。個室に移ったので気分が少し楽になりました。

 

退院の話途絶えて寒に入る

雪催ひ点滴の針入らざる

入院の日々はさながら冬ごもり

患者食また大根の出てきたる

二切れの沢庵欲しき患者食

愛らしく偉大な母を偲ぶ冬

 

 

思いがけず入院が長引いています。

 

冬ざれや退院またも遠ざかる

退院のまた遠のきぬ寒の雨

寒暁の祈り震災二十年

止まぬ雪猪(ゐ)ころびの坂友帰る

冬靄や闘病生活中だるみ

冬の靄先行き見えぬ焦りかな

右耳のすぐに外れるマスクかな

風花の真横に駆ける風の道

入院の長きに出番なき炬燵

癒されて姿見えざる冬の鳥

リハビリを拒否する患者寒鴉

 

 

順調にいけば、の前置き付きで退院目標が決まったので少し元気が出ました。

 

退院の話題ちらほら春を待つ

リハビリに精をだす日々春近し

春隣退院の目途たちにけり

退院日ようやく決まり一月尽

点滴の三回減りて冬終る

節分や留守宅の鬼居座るか

春暁やすでに灯ともるケアハウス

春立つや真白き雲のほどけゆく

退院のあとの生活春愁ひ

 

 

 2月18日に99日間の入院を終えてようやく退院。

 

早春の退院の日の慌ただし

古稀の春ホームヘルパー頼る身に

古稀の春息子ふたりは老眼に

隔日の点滴通ひ春浅し

黄砂降る加湿を兼ねて部屋干しに

無謀かないかなごくぎ煮作りをり

案の定いかなご炊いて寝込みけり

つらきことみな春愁と決め過ごす

春愁やピンクの服を着てみたる

靴下をひとりで履いた春の夢

山の街今朝うぐいすの谷渡り

 

 

 

腰部脊柱管狭窄症、第一腰椎破裂骨折、脊髄陥没のため大掛かりな手術を受け、脊椎と腰椎を22本のスクリューで固定しているため、背を丸めたり体をねじったりすることができなくなりました。

重いものを持つことや掃除機をかけたり拭き掃除などはホームヘルパーさんに助けてもらっての生活です。

 後ろを振りかえることができないので、とにかく前向きに生きていくことをモットーにボチボチ歩んでいこうと思っています。

(2015年6月)

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見水自選句集『二万世紀』2015年5月

2015-04-25 | 句集

 

 

雲さわぐ天に夏の木茂りあがる

 

金網の向うにもそよぐ夏草あり

 

ホチキスを握れば冷たし針かたし

 

絵の具つくわが手のひらも冬の色

 

照る月のやたらまぶしき熱帯夜

 

夏草にふと秋の空見つけたり

 

 

「風」 1977

 

吹き上げる谷風は

かぶと虫の好きな

甘い木の葉の

においがする

 

くぬぎの林を

なぎたおし

あわい朝の光を

かきまぜたあげくのはてに

 

得意満面に

わたしに

ほほえみかけ

 

首に巻きつけたタオルを

青空に

泳がせるんだから

 

      

 

堀割に浮かぶれんぎょうゆきやなぎ

 

きぬさやが大豊作の三四日

 

もえあがる木もれ陽の下ペダルこぐ

 

夏服のメイとサツキが走り去る

 

子を空へヒコーキをする夏畳

 

「ただいま」と麦藁帽脱ぐまっ赤な子

 

水遊び習った歌を鼻唄に

 

 

「まーくん」 2011

 

家族がそろっているのに

まーくんがいない

まーくんはと聞いたら

汗びっしょりで帰ってきた

 

妻がバスタオルで

しっかり汗をふいてやると

まーくんは

みんなと野球してきたと言っている

 

野球なんかできるのかと感心して

あれえ家族は三人だったのでは

と思ったとたん

 

二十六歳のまーくんが

ネクタイをして

ソファで日経新聞を読んでいた

 

 

   

     

八月の馬なでてゆく草嵐

 

振り向けば二万世紀を抜けた夏

 

火の国を行く八月の馬となり

 

芝刈って暮れる時間を愛おしむ

 

寒さ沁む乗換駅の看板字

 

そよ風に消えるいら立ちシャボン玉

 

ほっとして枝豆の皮山に盛る

 

 

「にこにこ」 ―2000―

 

ねこにこにこ

からすにこにこ

はっぱにこにこ

かぜにこにこ

 

くもにこにこ

おひさまにこにこ

ほしにこにこ

よっぱらいにこにこ

 

こんなににこにこ

していていいのか

なんていわない

 

にこにこにこにこ

ずっと一生

にこにこ

 

 

   

   

風も樹もミミズもボッティチェリの春

 

風止んでしだれ桜に人溜まる

 

路地ぬけて人もツバメも風になる

 

空蒼くカラス群れ飛ぶ麦の秋

 

兄弟の墓に降り積む青い雪

 

屋根裏の絵に南仏の夏の風

 

旅人に角ふりわけよ秋蝸牛

 

秋時雨バナナ一盛二百円

 

行く秋を莫山先生の字と惜しむ

 

参道の穴子香ばし雨の午後

 

須磨の海つつじの花の蜜香る

 

風強し青葉の山の大掃除

 

ゆりかもめ舞い空中都市出現す

 

澄みわたる清酒こんこん冬の空

 

着ぶくれて酒蔵の郷徘徊す

 

春風を背に源氏の間覗き見る

 

お聖さんの直筆原稿春のどか

 

とうとうと春の湖水は唐橋へ

 

泥に足とられて見上ぐ小春の日

 

柿食へば百年のちも鐘が鳴る

 

ひさかたの冬日が包む畝傍山

 

 

「むぎわらぼうし」 ―2005

 

むぎわらぼうしを

買いました

ホームセンターで

買いました

 

かぶるととても

なつかしい

 

夏の休暇の

キャンプ場

薪のにおいが

してきたよ

 

沖本真彦が笑ってる

三十五年の時を越え

若いみんなが

笑ってる

 

 

    

 

花群れを追いかけてゆく春列車

 

用水路みな美しき花の町

 

しょうゆもちしょうゆまんじゅうさくらもち

 

揖保川の瀬音切りさく群れつばめ

 

ほろ酔ひて春はわが身にとどまらず

 

はふはふと蛸ほおばりて冬楽し

 

子午線の冬青空を鳶が飛ぶ

 

海峡の流れは早し冬の雲

 

さざんかの花びら一つ石手川

 

焼餅を二つ買い込む冬遍路

 

吾輩は元気ぞなもし椿の湯

 

かなしみを燃やし尽くしていまは春

 

 

「啄木」  2010

 

とんでもない奴だった

一言で言えない悪党だった

いやな奴だった

みんな煙たがった

 

人のいい金田一京助も

金の無心が続き

悪い友達を持ったものだと

少し後悔した

 

啄木が死んで

みんなせいせいして

何年も忘れた

 

よせばいいのに

本にまとめた馬鹿がいて

もうだれも忘れられない

 

 

    

 

春うらら湯けむり交番今日は閑

 

花見客睨みつけてる鬼瓦

 

金の湯を一口含み春の坂

 

桐の花ところかまわず落ちており

 

閑かなる駅を抜ければ蝉しぐれ

 

コスモス揺れ空には雲の天使達

 

秋時雨雨アルトキハ雨ニ酔フ

 

スピードを落としてみれば冬案山子

 

神戸では桜の海を河馬がゆく

 

ぞうキリン惨禍を知るや春風に

 

北上の岸辺の無残啄木忌

 

しっかり人しっかり仏桜散る

 

人に皆没年のあり夏の河

 

夕映えの丘をくだれば花いばら

 

秋の雨静かに海に浮かぶ街

 

ゆずり葉の一枚となり館を辞す

 

 

「三十八億年」 2010

 

ぼくは父母から生まれ

父母は祖父母から生まれ

祖父母は曽祖父母から

生まれた

 

どんどんさかのぼっていくと

たどりつくのは

三十八億年前に

この星に生まれたいのち

 

ぼくのいのちは

五十年や百年のいのちでなく

三十八億年のいのち

 

ご先祖様バンザイ

きょうの日

バンザイ

 

 

     

 

震災の記憶も戻る寒戻り

 

せせらぎに春の電車の音混じる

 

夏雲に誘われてゆく伯耆みち

 

ゲリラ雨あがり夏空ただ西へ

 

湖わたり涼しさ天守吹き抜ける

 

ひぐらしの声に聞き入る露天の湯

 

緑陰を抜けて二ノ沢三ノ沢

 

鬼女台(きめんだい)大山蒜山夏姿

 

鵬の翼ひろがる秋の空

 

舟屋よりゆらり漕ぎいで春の海

 

春耕を山猿たちと眺めおり

 

ジオパーク息づく春の暮らしあり

 

波寄せる浜の草にも春は来て

 

人類の滅ぶ日もあり春渚

 

かたばみの種はじけ飛ぶ小宇宙

 

しあわせな気分胡瓜の花黄色

 

 

「りんご」 ―2012―

 

あの水浴図を見て

うまい絵描きと思うか

セザンヌって

へたくそやで

 

金もうけの得意な父は

町一番の大金持ち

母は息子に苦言した

なんで絵描きで苦労をするの

 

少年の日まぶしい緑の中で

親友ゾラがりんごをくれた

親友ゾラは知らずに死んだ

 

未来の少年たちはみな

セザンヌのように

りんごを描くことを

 

 

    

     

ランドセル横一列の枯葉道

 

桂宇治木津吹きわたる秋の風

 

彫り終えて志功夜寒の大笑い

 

広告で紙の舟折る冬日向

 

かかさんの名はゆみ春の人形座

 

ときめきを乗せ観潮船出航す

 

寅さんがふらり立ちよる夏の海

 

UEDA-CHO夏の砂丘は人まばら

 

かけのぼる姿残して道に蝉

 

本堂の朱は落剝す朱紅葉

 

幽閉の身にも紅葉の華やいで

 

朝の駅蟹客乗せてキハ止る

 

クルーズの春待つ港照り返す

 

この国の終わり始まり春一番

 

 

「ポンペイ」 2013

 

パン屋の夫婦

と名付けられた

知的な女と陽に焼けた男が

しっかりこちらを見ている

 

二千年前のフレスコ画は

火山灰に含まれるシリカゲルで

色鮮やかに保たれた

 

二人は

さっき起こった出来事を

いまにも話したい様子だ

 

ポンペイの幸福と

ポンペイの不幸と

そしてやってきた

最後の日のことを

 

 

  

「さじなめてーわらべ たのしも なつ ごおりー」

悪童ども大はしゃぎしながら、中学校の授業ではじめて俳句を作った。俳句に興味を持ち、「夏草に汽罐車の車輪来て止る」や「ピストルがプールの硬き面にひびき」などの句に引かれて、新潮文庫の「誓子自選句集」を買った。

息子が生まれてからは、北六甲の自然に親しみ、休暇は九州の筑後で暮らした。

1995年1月の阪神・淡路大震災。突然家が激しく揺れ、街は壊滅した。復興20年。神戸は何事も無かったように再生した。

2002年の春、有馬での第1回RANDOM句会へのお誘いを受けた。その朝、家を出る前に庭で草を引いていたらミミズに出会ったので、俳号を「未見」「見水」と付けた。

心優しい先輩たちと俳句に遊んで10数年。昨年、先輩たちがネットで句集を発表された。当方も250の駄句から99の句を選び、絵や写真や詩もこき混ぜて句集に。

「二万世紀」はシュペルヴィエルの詩「運動」から拝借。

振り向いて、200万年の間、誰も見たことのないものを見て、また草を食い続けた馬のように、悠々淡々と残日を過ごしたい、の思いを込めた。

                                                見 水  

   見水・プロフィール…1951年生まれ。神戸で育ち、働き、今日に至る。  

********************

見水自選句集

二万世紀

著者:見水

2015年5月1日

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com

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宮田マスヨ句集『花季(はなごよみ)』2014年8月 

2014-07-26 | 句集

 

 

 

  

風やさしければやさしく舞ふさくら

 

交差する出会ひと別離花の下

 

永年の勤続終へて花の旅

 

離陸する花に思ひを残しつつ

 

ゆるやかに金の湯に解く花疲れ

 

花散りてより繚乱の百花かな

 

面差しの気になる人や薄紅梅

 

梅の香の海に流るる綾部山

 

遠き日の吾子の微笑み梅の花

 

梅の香や白衣のままで友は逝き

 

二輪草育て亡き人偲びをり

 

風生まる紫小さき山すみれ

 

紫木蓮チャイナタウンへ続く道

 

椿寺太閤愛でし五色八重

 

一つ散り一つ花咲く玉椿

 

草萌ゆる音す瓦礫の下からも

 

生きてます避難所のメモ春日射す

 

抱きしめて雛流す列待ちにけり

 

聞かせつつ問ひつつ雛に去年の地震

 

うつうつと犬も長生き春眠る

 

病得て白衣脱ぐ医師鳥雲に

 

春愁や靴もバッグも重たくて

 

村中が息吹く音する水の春

 

国生みの島のまあるく山笑ふ

 

春うららふらつと入る壺焼き屋

 

春の昼ふくふく旨し明石焼き

 

ガス燈のおぼろに溶けて港町

 

過ぎしことみな美しき花筏

 

 

 

 

この坂を登れば故郷花みかん

 

花合歓やためらひがちに昼の月

 

花菖蒲雨に乱れぬ立ち姿

 

観音の指やはらかや合歓の花

 

父母在りし頃ひまはりの広き庭

 

原爆忌千の黙秘め千羽鶴

 

黙祷のサイレン響く雲の峰

 

遠雷やベルリンの壁思ひゐる

 

市花なれやあぢさゐ深き海の色

 

群れて咲き一人静のなほ寂し

 

さくらんぼ食ぶみちのくをしみじみと

 

若葉風白き卓布のレストラン

 

大楠公御墓所を被ふ楠若葉

 

鯉幟一匹づつに子の未来

 

着るといふ感覚パリのサングラス

 

踊りの手昼はメス持つ医師の連

 

夏に入る急に変はりし風の色

 

夏帽子賑はつてきし須磨の駅

 

首元にまつはる暑さネックレス

 

夕蛍ふと亡き母に呼ばれたる

 

母恋しかなかなは声震はせて

 

忌日過ぎ開くことなき日傘かな

 

父祖の地の安らぎにあり盆の月

 

ならぬことならぬと会津麻のれん

 

風の道見ゆるもてなし夏座敷

 

後を追ふ光鋭き恋蛍

 

ほうたるの幽玄ライトにかき消さる

 

しあわせの村の一員夏つばめ

 

神戸港巡る船上ビヤガーデン

 

 

 

 菊人形花咲き大きくなりにけり

 

翔んでみて寝ころんでみて大花野

 

鷺草のまさに飛び立つ構へかな

 

いつまでも見送る母や月見草

 

手をつなぎ母待つ姉妹秋夕焼

 

飛騨奥へ奥へ芒の旅となり

 

安らぎの光と思ふ薄原

 

薄墨の波眠りたり夕芒

 

なでしこの神戸に咲きて逞しく

 

見はるかす神戸空港紅葉越し

 

天高し五輪招致の成りし首都

 

金秋や千の句遊ぶ夢舞台

 

被災地の心一つに秋祭

 

上棟の音高々と菊日和

 

身の丈のしあわせのあり村小春

 

干し柿の音符のやうに吊るさるる

 

暴れしも今は水澄む紀伊の川

 

嵐山ぐらりと揺らし秋出水

 

月今宵被災の古都を慈しむ

 

満月の不思議な力もらひけり

 

青き影畳に映し十三夜

 

穏やかや神旅立ちの明石の門

 

足音を闇に流して風の盆

 

茅葺きの一村ひびく虫時雨

 

五箇山の渓堰き止めて芋水車

 

また一人偲ぶ人増ゆ鉦たたき

 

 

 

寒菊やあの大地震を知らぬ子等

 

鎮魂のルミナリエ消え冬銀河

 

冬将軍またみちのくを脅かす

 

雪掻きやお天道様の待ち遠し

 

掻く雪の重さ八十路に容赦なく

 

どの道も淡路は石蕗の花盛り

 

一輪の真紅の気品冬薔薇

 

駅出れば雪の立山迫り来る

 

雪催今宵鎮もりゐる赤穂

 

風鳴りて早や六甲に冬を聴く

 

病床へ写真メールで石蕗の花

 

その隅に父植えくれし花八手

 

雨粒に花柊の香を閉ざす

 

二十四の瞳の島も雪化粧

 

蓑笠を被り地蔵も冬支度

 

咳込んで視線の痛き車中かな

 

一病を深々沈め柚子の風呂

 

突然に逝きし妹星凍る

 

忘れたきこと多き日よ落葉焚く

 

落葉して風の見えなくなりにけり

 

冬日和メールより文書きたくて

 

夢千代を偲ぶ湯村のなごり雪

 

枯野には枯野の音を足が聞く

 

時雨忌や琵琶湖一面細波(さざれなみ)

 

風花や色の褪せたる湯屋のれん

 

大皿に開く花びらふぐ刺身

 

新しき夢を紡いで年忘

 

 

 

地震の傷癒えてお礼の初詣

 

元朝や争ひのなき空の色

 

初詣世界の子供に幸あれと

 

夫婦杉樹齢に満つる淑気かな

 

須磨の海黄金に染めて初明り

 

初春の光曳きつつ通る船

 

横書きの句に絵文字添へ初メール

 

初鏡襟を正せる年女

 

去年今年仮設住居の人のこと

 

一人居の仮設家小さき注連飾

 

 

 

  季は俳句で四季折々の景物を詠じ入れることとあります。季節、時節、時期であり、春夏秋冬を指します。

  季節は移ろうもの、暦も又年代、歳月、齢、等自然界の事象物事が移り変わっていく様子を表します。人間も自然界の一部、人そのものも心も移ろいます。

  この世に存在する全てのものは季、暦である、その思いを花に託して花季(はなごよみ)というタイトルにしました。

 

 平成7年神戸は大震災に見舞われ多くの人が被災しました。

  被災しながらも仲間と一緒に俳句を作り、悲しみ苦しみそして感謝等心の内を十七音に託し、思いを共有して乗り越える事ができました。

  十七音で繋がっている心強さ、俳句があるから希望をもって前に進む事ができました。

 

 ランダム句会で趣向を凝らした句会や吟行を通して句友達と勉強しながら楽しく作句を続けています。

「俳句は詩である、そしてそこには愛があること」

  この師の教えを胸に作句をしながら、私の人生の目標「感動と共に」を貫けたらと思います。

 句集を作るに当たり御指導御協力をいただきましたランダム句会の諸先輩、句友の皆様に深く感謝を申し上げます。

 

    平成26年朱夏           宮田マスヨ

 

 

 

私の好きなマスヨさんの句 

駿河亜希

 

花合歓やためらひがちに昼の月

  ためらいがちに出るとは昼の月にぴったりの表現。合歓の花の淡い雰囲気が 

上手く言えている。

 

しあわせの村の一員夏つばめ

   しあわせの村に相応しい一句。巣作りに子育てに忙しい夏つばめを村の一員

  とはまさにノーマライゼーションの世界。一員と言い切ったところがいい。

 

干し柿の音符のやうに吊るさるる 

 干し柿が音符に見えたとはユニーク。秋の日を受けて出来た干し柿の濃い影が音符さながらであったのではと想像出来る。

 

雪催今宵鎮もりゐる赤穂

 今宵とは12月14日。折りしも空は雪模様。誰もが知っている忠臣蔵の里

 赤穂。赤穂以外は考えられない地名の使い方、見事。

 

落葉して風の見えなくなりにけり

 風が見えると言う句は多いが見えなくなるという句は珍しいのではないか

 落葉を使って見えない風を詠んだところが手柄。風の中の裸木の様子が見えてくる。

 

 妻、母、祖母、ナース、三味線、胡弓、二胡奏者etc多彩な顔を持つマスヨさん、俳句も自由自在で生き生きと屈託が無い。                        

 

わが青春布引にあり燗熱く 

 その昔、布引に中央市民病院があり、看護学校があった。こよなく神戸を愛するマスヨさんの原点とも言える句である。句とは裏腹にマスヨさんアルコールは苦手。

  

黒豆パンうふふ!小さき夏の旅 

風柔しふふっと六甲山笑ふ   

 

 お茶目で可愛らしい句もマスヨさんらしくて私は大好きである。

  益々の御健吟を祈りつつ

 

 

 

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句集 花季(はなごよみ)

 

著者:宮田マスヨ

maiko575mm@yahoo.co.jp

 

2014年8月1日

 

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com

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増本由美子句集「裏六甲」2014年7月

2014-06-25 | 句集

 

      

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裏六甲すこし遅れて春の色

 

自転車をドミノ倒しに春一番

 

紅椿落ちて始まる川の旅

 

肩寄せてバレンタインの日の花火

 

いかなごのくぎ煮作りは母まかせ

 

いかなごのくぎ煮作りを引き継ぎぬ

 

雛しまふ時にやさしさ育まれ

 

村人に誘はれて摘むつくしかな

 

花の風有馬は坂の多き街  有馬4句

 

ねね橋をゆつくり渡る春日傘

 

金泉に春愁の身を沈めをり

 

剃りすぎし眉を描くも春愁ひ

 

諸々のことはさておき花人に  夙川2句

 

その中にひつそりとした花筵

 

春らんまん満を持したる初句集  亜希『俳句の時間』

  

手にふれし枝垂桜の重さかな

 

春風や前置き長き猿の芸

 

今日の日のための落花と思ひけり  神戸王子動物園2句

 

弁当に彩り添へる落花かな

 

遅桜一弦琴の聞ゆ寺  須磨

 

朧夜のハンター坂のバーに酔ふ

 

囀りのいづれが好きと問はれても

 

百千鳥気がかりなこと忘れをり

 

春愁や花屋の前を通りすぐ

 

人形の白き指先春愁ひ  淡路福良2句

 

人形座出れば港や風光る

 

 

 

 

母の日の母に看病されてをり

 

母の日やいまだにできぬ親離れ

 

手土産は迷ふことなく新茶なり

 

豆飯でしめくくりたる京料理

 

着ぬままにまた仕舞ふ服更衣

 

明易や鳥の声より早く起き

 

三十三間堂薫風千の像を撫で

 

くにうみの島引き寄せて風薫る

 

さくらんぼひとつふたつと憂ひ消え

 

篠山の妻入商家麻のれん  篠山2句

 

閉ぢられし能楽殿や蝉しぐれ

 

夜濯や今日のできごと明日のこと

 

冷蔵庫あれもこれもと孫来る日

 

冷蔵庫減量レシピ貼りしまま

 

バス停の扇子の列に加はれり

 

サングラス掛け旅人の貌となる

 

雲海を抜け雲海の上を飛ぶ

 

七月の窓に氷柱やモンブラン  スイス

 

裏窓を開ければ蛍見ゆ暮らし  美作2句 

 

今摘みし夏の蕨をおひたしに

 

空蝉や生まれ変りたきあした

 

凌霄や白き館の白き塀

 

公園に残る自転車夜の秋

 

あと一品母の十八番の胡瓜もみ

 

笑む母の遺影と語る夏座敷

 

 

 

 

爽やかや初対面にて意気投合

 

秋涼し母に試歩をと勧めけり

 

盆近し仏具の増えし荒物屋

 

輪踊りにとけこんでをり宿浴衣  奥飛騨

 

十五夜の大阪湾より飛機発ちぬ

 

澄む秋の陽関に聴く王維の詩  敦煌2句

 

葡萄棚砂漠の中にある不思議

 

秋の夜の般若の面と向ひ合ふ

 

遅れ来て秋の扇を五分使ひ

 

日程は月に合はせる宴かな

 

秋扇しのばせて行く古都の旅

 

虫の窓閉めて一日を終へるなり

 

敬老日今年の顔を撮つておく

 

萩の径いつまで続く立ち話

 

また一人生徒減りたる夜学かな

 

ハーブの香満ちたる園に秋惜しむ

 

鵙の声ふいに覚えし胸さわぎ

 

秋晴れの潮の香届く札所かな

 

軒ごとに句のある街に秋惜しむ 伊賀上野

 

新米の水ひかえめに炊きにけり

 

僻地にて暮す決意の冬支度

 

木守柿峡に一軒だけの家

 

花器に入れ言ふこときかぬ庭の菊

 

澄む秋の水琴窟や月照寺  明石3句

 

子午線の古びし標柱冬隣

 

菊花展気ままに咲くを許されず

 

 

 

 

住む国の風習に慣れ七五三

 

この風邪は長男一家の置土産

 

時雨るると出先で聞きし予報かな

 

黙々とバス待つ列の息白し

 

かけ声を出さねば立てぬ炬燵かな

 

着ぶくれの癖は地震にあひてより

 

着ぶくれの母の支度に手を貸しぬ

 

枯芒耐へねばならぬことのあり

 

冬の日の室にさし込む石舞台  明日香村

 

酒蔵のまちの旧家の冬座敷  伊丹

 

冬凪や万葉歌碑は海を背に  相生

 

短日の芝居見物昼の部に

 

友よりの電話湯冷めの予感して

 

暖房をほどよく効かせヨガポーズ

 

なぐさめは言はず熱爛すすめけり

 

ルミナリエ神戸の街の聖樹とも

 

ルミナリエより始まりし年忘れ

 

屋根に雪載せて来られし通夜の客

 

家中の時計合はすも年用意

 

賀状にてつながる縁途絶えけり

 

初詣干支の土鈴を買ふならひ

 

豆撒や愛嬌のある鬼の面

 

いつせいに山眠りをり裏六甲

 

 

 

 あじさい俳句会という職場の句会に誘われて、よちよち歩きで俳句を始めました。その後高齢予備軍の遊び探しというグループの吟行に参加し句作を続け、みんな一回り年をとった現在も予備軍と名乗り年2回句会を開いています。

 その神戸RANDOM句会の句友たちがネット上で句集を出そうと決まり、私もいくつか残っている句帳の257句から100句を選んで参加させていただくことにしました。

 句集名を「裏六甲」としましたのは、俳句を始めたころに居を移した六甲山の北側の我が家から眺める山々が、ほんとうに眠っているようだったり、笑っているようだったり、季語のとおりのうつろいを身近に感じているところから名づけました。

 お世話になった句友のみなさんに、いい思い出を作っていただき心から感謝いたします。

 

  平成26年夏                                 増本由美子

 

**********************

句集 裏六甲

著者:増本由美子

msmtlana@yahoo.co.jp

Title:Fuhko Kawase

Illustration:Junya Daisaku 

2014年7月1日

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com

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駿河亜希第2句集『時の濃縮』2014年6月

2014-05-17 | 句集

                          時の濃縮  駿河亜希 

 

 

 

 

 

 

  平成20年~紅葉包囲す~

 

 

初花を愛づる熊本弁やさし (熊本城)

 

豆ひひな一人倒れて皆倒す

 

春深し古典は永久に亡びざる

 

春闌けて屏風絵の金剥落す  (石山寺)

 

ゆすらうめ思ひ出ほどに甘くなく

 

鬼貫忌季語分類に酒の部も

 

程々の無愛想よし夏館

 

端居する昔ながらのあっぱっぱ

 

CGの飛鳥美人と会ふ冬野 (飛鳥)

 

満天星の紅葉包囲す村役場 (飛鳥)

 

母逝きぬ刃物の如き寒波来て

 

凍星となりたる母と交信す

 

灯籠を灯せば母の在る如く

 

 

平成21年~時の濃縮~

   

教へ子の顔文字泣きて卒業す

 

人生の節目節目の桜かな (龍野)

 

会へさうで出会へぬ町や花曇 (龍野)

 

翻るとき色変へて谷若葉

 

清貧の父母の当時を虫干す

 

酒都俳都柿衛文庫鬼貫忌

 

二重丸つけたし今日の爽やかさ

 

ちりちりとすぐ乾く葉や山ぶだう

 

いにしへの時の濃縮城紅葉 (明石城)

 

母に歩を合はせし日あり菊花展

 

短日の文冗漫を戒めて

 

返り花征きて帰らぬ墓の上

 

 

 平成22年~昨日は過去と~

 

見下ろして見上げて花の有馬かな (有馬)

 

峡一戸春分の日の日章旗

 

陽炎や人は儚きものを恋ひ

 

あぢさゐや昨日は過去と割り切って

 

シャワー浴び汗の重さを落としけり

 

鳴り過ぎる風鈴にやや苛立ちて

 

やや荒き江戸風鈴の金魚の絵

 

雨の日は休業らしき蟻地獄

 

お年寄次々消えし熱帯夜

 

文字ごとに翳持つ点字秋灯下

 

七五三ポーズをとれと云はれても

 

秋深しコントラバスのためし弾き

 

歳晩といふ早送りめく時間

 

 

平成23年~風の居どころ~

 

雪解や屋根毎にある裏表

 

パンダ舎へ花の風紋踏みながら (王子動物園)

 

義経のかくれ里とや山桜 (吉野)

 

花冷の吉野に心残しつつ (吉野)

 

岬とは風の居どころ夕桜 (佐多岬)

 

咲き終へて球根痩せしヒヤシンス

 

湿度計大きく動き菜種梅雨

 

父の日や遺愛のルーペ取り出して

 

暮れ切って蛍の闇過疎の闇

 

梅雨じめりして古本の重さうな

 

廃校となりし母校の草いきれ

 

スーパーも伊丹様式爽やかに

 

ハーブよく匂ふ湿度と秋冷と (布引ハーブ園)

 

蒲団干すふとんに出来しゑくぼかな

 

木偏の字思ひ出しつつ掃く落葉

 

 

平成24年~みどり戻らぬ~

 

放射能降る啓蟄の地表かな

 

まんさくに公園の風集まれり

 

夙川のちょっとセレブな花の風 (夙川)

 

春眠といふ重力のなき世界

 

亡びゆく平家絵巻に春惜しむ

 

みちのくにみどり戻らぬみどりの日 (気仙沼)

 

咲き登るぺんぺん草に撥いくつ

 

母の日や母の匂ひのする絵筆

 

この山の無尽の水の滴れる

 

羽たたむ時見失ふ川とんぼ

 

原発に揺れる列島原爆忌

 

根こそぎといふ爪痕に濃き西日 (南三陸)

 

津波浴び夏の木蔭の出来ぬ木々 (南三陸)

 

夕菅の黄を溶かしゆく夜のとばり

 

徘徊の老人探す日短か

 

忘却といふ癒しあり返り花

 

臘梅に臘梅色の月も出て

 

被災地にサンタクロース集合す

 

 

平成25年~天界からの~

 

春を待つ暦に喜寿を祝ふ日も

 

牡蠣といふ文字書けずとも牡蠣旨し (相生)

 

卒業に入学に留守両隣

 

槍鉄砲物騒な名も春の草

 

憲法の日や平穏に感謝して

 

薫風も乗せて観光バス発車 (しあわせの村)

 

市旗村旗開村記念旗五月晴 (しあわせの村)

 

実梅売る傍に瓶やら砂糖やら

 

十薬の花に重たき夜風かな

 

予測した所へ飛ばぬ蛍かな

 

みちのくを支援す短夜の雑魚寝 (気仙沼)

 

被災地に夏燕来てピエロ来て (女川町)

 

報道が猛暑を更に暑くして

 

被災地を想ふ風鈴ずんだ餅

 

いにしへの乾きたる香や藤袴

 

鶺鴒の叩きし石に坐りけり

 

我が庭へ天界からの朴落葉

 

古時計迷路めきたる冬館 (大山崎山荘)

 

忘年会万年幹事居て続く

 

二次会に付き合ふ元気忘年会

 

ノーベル賞称へる雪と思ひけり

 

 

平成26年~豊かなる未知~

 

老といふ豊かなる未知初暦

 

塩味の五臓六腑に薺粥

 

居酒屋に鮊子釘煮派釜揚げ派

 

胃袋で光りはせぬか蛍烏賊

 

流觴の巫女に押されて流れけり (生田神社)

 

人形が泣けば人泣く春蔭に (淡路福良人形座)

 

旅人もバスも溶けゆく島おぼろ (淡路)

 

陽炎の集ってゐる交差点

 

 

 

☆しあわせの村

 平成24年晩秋のしあわせの村ランダム句会直後にしあわせの村で俳句募集をしたいと当時の事業推進課長から相談があった。ねんりんぴっくなどに行って高齢者の俳句人口が多いことを知ったとのこと。投句箱、投句用紙、選句方法、選者など決めて平成25年3月、募集スタート、四季ごとに年4回選句。選者は千原叡子氏。表彰式も行い記念品も贈られる。回を重ねるたび投句数も増え質も高いと選者の言葉。しあわせの村は平成26年に開村25周年を迎えるそうだ。

   市旗村旗開村記念旗五月晴

 

☆東北支援の旅

 平成24年5月、一人で気仙沼へ行った。宿だけ予約し後はすべて飛び込みの覚悟。

 仙台まで新幹線、仙台から南三陸回りのバスで気仙沼へ。気仙沼の宿は工事関係者等で満杯状態。予約した宿は、夕食なし、女性風呂なし、部屋の鍵なしと言う状況。ふすま一枚隔てた部屋からは男性の大いびき。

   みちのくを支援す短夜の雑魚寝

はこの時の作品。全国俳句大会、斉藤始子先生特選は私の暴走へのご褒美と受け止めた。

  この時の宿の若女将が市立保育所とコンタクトを取って車で案内してくれた。宿や保育所とはその後も交流が続いている。

 

☆NPO法人 食ネット

 女子大を退職した平成21年3月。神戸市に勤務している後輩から、事業を委託したいが受け皿がなくて困っていると相談を受けた。シーズ加古川でNPOのノウハウを学び定款づくり、仲間集めからスタートし平成22年1月に認証、登記。仕事は順調に進み、5年目の平成25年度の事業は年間60回、参加者2200人までに増えた。

 この様な仕事は今まで経験したことがなかったので、多忙にも拘らず子供の頃のごっこ遊びにも似た楽しさを味わったりしている。

   老といふ豊かなる未知初暦

 

☆あとがき

 このたび、ランダム編集部のご厚意で思いがけなく第2句集が出来ることになった。

 第1句集『俳句の時間』から早7年近く経っている。その間の出来るだけ自分らしい句100句を集め、それぞれの年にタイトルをつけてみた。俳句における省略には言葉の濃度を高める濃縮が必要ではないかと勝手に決めて平成21年のタイトル『時の濃縮』を句集名とした。

 その昔、俳句の蟻地獄に引きずり込まれて以来、句会、吟行、投句と適当に楽しんでいる。上達はしていなくても俳句が益々好きになっていることは確かである。

 ランダム編集部のご厚意に感謝しつつ。

 

 平成26年夏                      駿河亜希

 

 

*****************

句集 時の濃縮 

著者:駿河亜希 

surugaaki@carol.ocn.ne.jp

photo : Naka Fujisawa 

2014年6月1日 

発行 KOBE@RANDOM 

naka.kobe@nifty.com

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中作清臣第2句集『繭の坂』増補改訂版

2014-03-20 | 句集

中作清臣第2句集増補改訂版

 

繭の坂 MAYU NO SAKA

 

 

 

早春の走り過ぐものみな光る

 

早春の膨らみしものみな匂ふ

 

 

 

鶯の荒地に来たりすぐに去る

 

囀りも鳥影もみな辞書の中

 

 

 

小さき春見つけて子らの列乱る

 

正装はセーターでよし風光る

 

 

 

闘魂の病なりけり冴返る  

 

揚羽きて兄かと思ふ戯るる

 

 

 

春は曙くずし字辞典の厄介な

 

春火鉢向田ドラマはや遠し

 

 

 

塵あまた宇宙も春も電網も

 

土に還りやがて芽吹くと思うかな

 

 

 

こころよき疲れ職辞す弥生かな

 

春昼のだれも遅るゝカフェテラス

 

  

 

制服に春の光やペダル踏む

 

京までの難所語らず桜かな

 

 

 

花の下ねねに一筆まゐらせそろ     

 

一の老二の老支へ花の坂  

 

  

 

老桜の水吸ふてなほ艶めけり

 

さきみちてさくらくらくらめくるめく

 

 

 

桜ふぶくわがロスタイム酔いの中

 

みみたぶもまぶたもタブー春の闇

 

 

 

八重桜九重部屋の七人衆

 

馬場さんの一蹴り千本桜散る 

 

 

 

貼紙に落花しきりと二王門

 

落花しきり寂聴源氏巻ノ三

 

 

 

ひとひらは脱力系として落花

 

美しき噂のやうな花掃ふ

 

 

 

四月尽カワイ、スゴイのほか知らず

 

網塵とブログを訳し万愚節

 

 

 

老いては子猫に従へ従いぬ

 

加齢とは劣化ぞ時に冴返る

 

 

 

絵付けして春の光のこぼれ落つ

 

春暑し蒼茫の地にイぺ咲いて

 

 

 

テレビから煙草の消て昭和の日

 

別れやうか店畳まうか啄木忌

 

 

 

町行けば理髪屋多き遅日かな

 

画家の居ぬ坂にキャンバス日永かな

 

 

 

アメフトの男放てり春疾風

 

振り払ふ春愁がばと顔洗ふ

 

 

 

古稀の春夢あわあわと語りけり

 

楢山も蕨野もなき古稀の春

 

 

 

春やその㐂の字に舞うてあと余白

 

さうかさうかこれが余命といふ春か

 

 

 

 

 

お手上げの手で指切りやこどもの日

どの家も庭に子ら出て五月青し

 

百人のダーウィン見上ぐ夏のキリン

少年になつて炭酸水の夏 

     

助走して積乱雲にハイジャンプ

長靴が好きな子ばかり梅雨に入る

 

玄関のノブに虫籠お昼寝中

素裸の子らの飛沫や終戦日

 

風騒ぐなり新緑の濃く匂ふ

定年やまだ夏帽の定まらず

 

葉桜や木の下のことはや悔やむ

木の上に木のあり塔も青葉して 

 

薔薇園や真つ赤な嘘が潜伏す

胸に薔薇なき生涯ぞ(笑)

 

あじさいの剪られて藍のさらに濃く

七色の嘘の終りの紅あじさい

 

ケータイの耳が勃起す梅雨じめり

汗ばみし街よカメラが作動中

 

戻り梅雨劣化進みし家具家電

魚屋の向い魚屋水を撒く

 

待つといふやはらかきとき初蛍

奥入瀬のしぶき蛍となりて消ゆ

 

素足なり水の地球を慈しむ

雨雫より生まれ落つ糸とんぼ 

 

客席の宙翔ぶサーファー麦わら帽

借りて着る浴衣ですけど勝負服

 

サングラス噂を撒きにゆく途中

デ・ニーロへアル・パーチーノのサングラス

 

鮎食へば川音高き鞍馬かな 

庄川を下れば即ち鮎の店

 

冷奴ふう生チーズ旨梅雨晴間

上司への上目の上司どぜう鍋

 

粥売の粥の湯気立つ火炎樹下

夕焼けをトマトに閉ぢこめ捥ぎにけり

 

泡立ちしワインの白も立夏かな

料理長いてパティシエもいて夏館

 

置賜庄内実を振り分けよさくらんぼ

すききらいすきうそほんとサクランボ

 

かなかなや既に避暑地の領域に

蝉の声老いの階もう一段

 

ようやくに海坂藩や蝉しぐれ

源氏の間の奥は闇の間蝉しぐれ 

 

旱雲船攫はれて曝されて

仮設家といへど路地あり水を打つ

 

三陸に山背仮設の朽ちかけて

原発や夏の怒涛の真正面

 

坊ちやんの間といふ道後夏座敷

四万十に足抛げ入れよ夏の果て

 

コキリコや老女日陰に草履編む

風鈴の音の中なる金屋町

 

バイク百恋人二百夜涼かな  

遊船や締めはジェンカの総踊り

  

美ら海の青七色に夏来る       

下闇にひめゆりの塔やうやくに

 

夏濤やむかし革命というロマン

孫文の休息の地や海市立つ

 

風太郎日記全巻読破大暑

夏痩ぞ闘病のひと呵呵大笑

 

孤独とは加齢の深間蝉烈し

四肢の骨ぬきとつてゐる昼寝かな

 

半日は蟻の行方を追つており

だらだらと生きて暑さを知りませぬ

 

 

秋草の名一つ覚え一つ買ふ

コスモスのどこにでも咲くから綺麗

 

ここかしこ芭蕉さんいて伊賀の秋  

フライトの邦字紙灯下親しみて

 

老々の売り手買い手や秋茄子

覗かねば見えぬ川あり秋彼岸

 

あまりにも昭和ぞ秋刀魚と卓袱台と

秋刀魚けぶらせ背も腹も代へませぬ

 

秋潮やエンジンどよむ島渡船

秋空へ釣糸投げる代休日

 

長き夜の時計しずかに狂ひ始む

長き夜の指が記憶を反芻す

 

おわら果て暁に咲く酔芙蓉

散るだけと知つて芙蓉の酔つて落つ 

 

寄り添ふといふ語疎まし秋簾 

攫われし船が陸路に無月かな

 

国が捨つ紅葉且つ散る村しんしん  

小春日の塵なき地へ子ら攫おうか 

 

柿一つ空に残して明日香村

木守柿八年先の村のこと

 

秋天にたじろがざるもの石舞台

秋日和摘むこと捥ぐこと千切ること

 

単線に乗換へてより黄落に

灘の生一本下げて訪ふ秋風裡

 

秋時雨ほんまやねんなと喪服きる   

汝ひとり新酒酌む世へ我も途上

 

母一人棲むに炬燵の間で足れ

母の骨納め亡父と呑む新酒

 

俳句にも加齢臭ありそぞろ寒

木犀のこぼれし夜のスニーカー  

 

どんぐりや熊に出会つてさあたいへん

鵯鳴いて山のあなたは空ばかり 

 

のぼり吐息くだり溜息山粧ふ

紅葉も黄落もなく朽ちにけり

 

川といふ天高くする装置あり

黙考も沈思も秋の波止場ゆえ

 

 

 

望郷も追慕も冬の波止場ゆえ

港とは待つ場所である時雨くる

 

冬めきて小刻みに鳴るランドセル

三三五五一二一二七五三

 

恐竜の骨背伸びする春隣

大丸を出て汽笛きくクリスマス

 

溺るるものなき身の釣瓶落しかな

嚔して眼下に富士の現はるる

 

凩一号君の妻より喪中につき    

隣席に亡きひとの坐し日向ぼこ

 

凩の来るか煮大根はふはふと

コンビニから派遣村見え一葉忌

 

逆上がりせよと囃されかいつぶり

ウ科カモ科カイツブリ科冬日射す

 

熱燗も煮湯も飲んで上司醒む

牡蠣焼いて涙一滴加えけり

 

賭けやうか酔はうか寒暮の三叉路に

棒に振る無い袖も振る師走かな

 

歳末のむかし新年特大号

冬至湯やマラソンランナー御一行

 

引いて割り足し算もして四温かな

三寒の鰭酒四温の生ビール

 

切れ者が切れてしまいぬ年忘れ

借金も掌も返しマスクする

 

サンタさんいらっしゃいと貼りイヴ早寝

冬休み孫のエプロンキッチンに

 

老々の熱燗二合にて散会

マスクはづしてワンコインだけの暖

 

短気怒気嫌気の棄て場日向ぼこ

ぐちぼやきこごとためいき日脚伸ぶ

 

数へ日の部下のメールのずかずかと

数へ日のつけっぱなしに第九など

 

望郷の晦日や貨車の音やまず

六甲におもてうらあり裏は雪

 

冷まじや姑息・隠蔽・野卑つづく

しはぶくや記憶記録の無きをいふ

 

六千四百三十四柱凍てしまま

エンディングノート追加す年用意

 

印南野の平かにして凧一つ

もういくつ寝るとあの世で凧あげて

 

去年今年せいてせかへんねんけんど

去年今年貫く棒のふにやふにやに

 

揺さぶればまだ余地のあり年迎ふ

元旦の一族と云へ小家族

 

従心のたくらみあまた書初に

これはこれは嫌な上司から賀状

 

お降りやされどハワイの大花火

年玉を父あるときの父のやうに

 

年玉は孫に貰つた言い張りぬ

LINEしか孫現れぬ御慶かな

   

     

  繭(まゆ)というハンドルネームだった。それは句会だったから、俳号というべきかもしれない。インターネットがまだ普及していなかった90年代に、パソコン通信での句会に参加していた。

  初心者なので包み込んで保護する覆いのようなものが欲しい。すなわち繭の由来である。繭は、蚕が羽化し、やがて蛾に。いやきっと薄羽白蝶に。意表をついて巨大なモスラに変身するのもいい。ところがいっこうに上達せず、繭の下に位置する意味で繭々(けんけん)と改名した。さらに転げ落ちれば繭三(けんぞー)としようと思ったが、そのころにはネット句会は消滅状態になった。

  2001年に、50代の1000句のうち300句を集め、図々しくも第1句集『水の家』を編んだ。その後、高齢予備軍の遊び探しの一つとして年来の友人たちと初心者ばかりで句会を試みた。師を持たぬ句会は、年2回の吟行、句会、宴会という3点セットで今も続いている。

  当方の句を年代順に並べてみると劣化著しく、このあたりが潮時かとおもい、句集以後の60代の約1400句のうち160句を選んでネット上で編み、第2句集とした。タイトルを『繭の坂』としたのは、蝶やモスラにならず繭のまま坂をゆるやかに転げ落ちるのをイメージした。 

――2014年4月 

**

 かつて“高齢予備軍”の遊びとして発足した「神戸RANDOM句会」は、宴会は昼の部となったものの今も続いており、“後期・末期高齢者”の集まりとなった。   

 当第2句集も60代の句を再吟味し、新たに70代の句を加え、計1700句から190句を集め、増補改訂版とした。

 弔句など記録性や作品の出来よりも軽みや俳味に重点を置いて選句し、また前書きは省略した。

 

――2018年12月

 

 

 

中作清臣 1941年1月、兵庫県生まれ。1990年から句作。1995年からネット句会に参加。2001年1月、句集『水の家』(ふらんす堂、ISBN:4894023819)。

 

*****************

句集 MAYU NO SAKA

繭の坂 増補改訂版

著者:中作清臣

Illustration:Junya Daisaku

2014年4月1日初版

2018年12月31日増補改訂版

発行 KOBE@RANDOM

naka.kobe@nifty.com

 

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2012 十句集

2013-02-27 | 句集

神戸RANDOM句会

十句集 -2012-








一風

外は春

だけど静かな

昼ごはん
 

      

桜花食うキリンの舌がすっと伸び

男子(おのこ)等のここが見せばぞ秋祭り

春待ちて開く湯の家に地域沸く

猿回し見ている人に春の風         

今日の日に逝きたる大和桜咲く

秋茄子の写真撮る娘(こ)に父母の微笑(えみ)  

誰を待つこともなく過ぐ秋の暮  

冬空に孫抱いて見るカワウ           

賑やかな年寄り見守る山桜  






かをる

降っている

いないとも見ゆ

春の雨 


 

生誕を祝う美酒あり伊賀街道

秋時雨祭りの後のしとど降る

花冷えに心の澱は融けきれず    

無言なる礎石に冬日集まれる  

子等の声おこる羽音にかき消され  

石舞台日矢射し込みて暖かし 

子午線をまたいで天空秋日射す 

お決まりの席は窓際蔦紅葉

大弓を射る一呼吸秋日濃し







さくら

花の坂

人形筆は

行儀よし




木の芽風須磨には須磨の香りあり  

若葉雨百花の彩を際立たす  

返り花飛鳥美人の紅ほのか  

鳥語浴び石山寺の春深し     

距離おきてまた寄り添ひて春の宵  

ゆくりなき園に一会の花吹雪

神の前相撲取る子の男振り

わが青春布引にあり燗熱く  

爽やかや足喜びしハーブの湯  







蛸地蔵

観音も

少し艶めく

春の寺 




君思い春のことなど有馬筆

春なれば心さわぐや出合いあり

年の暮今年もものを思わざり         

祝日や旗立て走る冬のバス   

千年も語ることあり春の寺      

子午線を探して歩く冬日和    

旧き街ひしをや味噌の香りして         

毎年の花の姿に違いなし

百舌鳥鳴いて心ざわめく昼下り







だっくす


菊花展

気ままに咲くを

許されず
  

   

酒蔵のまちの旧家の冬座敷      

今摘みし夏の蕨をお浸しに  

子午線の古びし標柱冬隣     

春風や前置き長き猿の芸        

今日の日のための落花と思ひけり

僻地にて暮す決意の冬支度

諸々のことはさておき花人に  

牡蠣の膳囲む句会のぜいたくさ

裏窓を開ければ蛍見ゆ暮らし 






つきひ


見下ろして

見上げて花の

有馬かな 
 

  

金泉を掬ひ春光砕きけり

丹波路のバス停ごとの青田風   

道尽きて白きペンション合歓の花

時雨るるや上野寺町虫籠窓

寄せ書きに顔文字残し卒業す          

母に歩を合はせし日あり菊花展  

会へさうで出会えぬ町や花曇   

人生の節目節目の桜かな        

七五三ポーズをとれと云はれても






稲村


待てしばし

散り急ぐなよ

句会まで




羽ひろげ桜と競う孔雀かな

夏草や下宿時代の人思う  

学舎は主は変れど蝉しぐれ  

須磨寺や若葉の中で笛をきく     

やみやぶる太鼓の音で祭知る

夕やけやとんぼとともに稲を刈る

草刈りに残してうれし秋桜花(コスモスカ)

彼岸花酷暑に耐えて燃え盛る

夙川や耳は瀬音に目は桜    







どんぐり


傘さすも

ささぬも花の

雨なれば  




春愁のその日の来ればそれなりに

花のくずつきし雨傘たたみけり    

文具屋の軒先低くつばめの巣     

冬日和明石へとちと旅気分 

お目当ての河馬は留守なり花の昼   

時の道上り下りて小六月    

山桜単線電車通過待ち     

鉄橋の奈落最も濃き紅葉

おり立ちて木の実草の実風の丘     









春なのに

春が恋しい

雪の朝 


      

甘樫に蘇我の夢散り暮れる秋  

亀形に斉明の宴しのぶ秋   

四月馬鹿つまらぬネタで皆しらけ

秋雨にローズマリーのさえる青   

こがらしに海はれわたり淡路島   

雨けむる龍野のまちで花づかれ   

糸ざくらのどかにわたる有馬山     

はてしなく北の大地に稲の秋

間引き菜を汁の実にして母思う







播町


源氏の間の

奥は闇の間

蝉しぐれ




馬場さんの一蹴り千本桜かな

ここかしこ芭蕉さんいる伊賀の秋

木の上に木のあり塔も青葉して     

柿一つ空に残して明日香村      

句座果てて瀬田あみ定のしじみ汁   

桜ふぶくわがロスタイム酔の中      

酔うものに花、湯、優勝、まさかの恋  

みみたぶもまぶたもタブー春の闇  

紅葉も黄落もなく朽ちにけり
 





ひろひろ


布団乾す

とんとんとんと

秋の詩


       

春雨や子規闘病の須磨の浦    

ゆく春や瀬田川眼下風温む  

春先に四季折々の俳句便      

神無月夢の架橋神走る       

年の暮手足八本明石蛸     

百年に一度の豪華花吹雪

こんにちはどこでもドアで天高し

花に人行き交う顔は美男美女  

花ひかるひとひらひとひら母心






見水


はふはふと

蛸ほうばりて

冬楽し
 

  

着ぶくれて酒蔵の郷徘徊す      

柿たわわ百年のちも鐘鳴りて     

泥に足とられて小春日和かな      

昼酒や春はわが身にとどまらず

しょうゆもちしょうゆまんじゅうさくらもち      

春うらら湯けむり交番今日は閑  

コスモスや空には雲の天使達

神戸では桜の海を河馬がゆく

秋の雨静かに海に浮かぶ街       






弥太郎


大不況

桜かってに

咲いて散る
 

   

天高し慶州の風古都に吹く     

万葉の水夫(かこ)たち偲ぶ秋の海  

返り花人麻呂の弧悲(こひ)偲びけり 

土色の象の背中に花吹雪

コスモスの群落のうえロープウェイ  

須磨寺に集いし我ら林住期       

女子大の葉桜の庭空襲碑        

神鎮む石山の上散り桜         

大地から穀霊醒ます花の精







りっこ


ゾウもカバも

ホモサピエンスも

花の下




なまこ壁赤いポルシェと黒い日傘 

菜種梅雨土蔵の茶屋の珈琲かな  

春昼のノンステップバス客ふたり

囀りや鳥虫地獄谷深し         

冬薔薇の誇り高さや散りてなほ      

五分咲きを待ちかね花の人となる

この感じ今も好きよと枯葉踏む  

幹古りて花の清しき大樹かな  

だんじりの果てて今宵はぬくめ酒







ろまん亭


秋高し

ためらい一つ

吸い込んで




手づからで飲む炭酸の遠き春

馬の背か六甲の山脈かすむ春

オール光り空にはトンビ瀬田の川  

一言が思い浮かばず風冴ゆる   

落ち葉踏み角をまがれば冬が来る   

かけ声も年の瀬近く魚の棚  

うすくちが花にも人も龍野にて        

ひとつ聞きひとつ忘れる散り桜

花吹雪あの象に乗る夢を見て





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2004=七十一句・斜腸

2013-02-11 | 句集
七十一句=斜腸





 春
春深し鳥獣戯画の動き出す
春耕の土に含羞ありにけり
ほのあかき昼の月あり花の雲
春暁のラジオ仏の道を説く
春昼の老らを攫ひバス発てり
不景気の播磨の国の山笑ふ
西行の日を旅立ちの初めとす
春水のひねもす岸の石打てり
菜の花や田舎芸者の髪飾り
はろばろと補陀落発ちて燕
志低く卵も立たざりき
ほどほどの人事異動や万愚節
春一番真一文字に飛行雲
シャガールの光の春や羊雲


 夏
夏の日や逆光の島黒焦げに     
夭々たる乙女の臀や夏来る     
牡丹の逢魔ヶ刻の香りかな     
国境群雄割拠雲の峯        
動物園静まりかへる盛夏なり    
父の日を雄一匹の孤独かな     
友よりの便り滲める梅雨入りかな  
膨らみて朱き夏の陽海に入る    
薫風や腋の下より羽生える     
南瓜の尻に残りし花のあと     
無禄にて大の字ならぬ昼寝かな   
星合にジェット機の灯が渡るなり  
聖五月乙女演ずる太郎冠者     
かうばしき本のにほひや昼寝覚め  
短夜や蛞蝓がゐて蜘蛛が出て    
田水溢れ風土記の播磨平野かな   
禅寺の縁の下なる猫の恋      
ヴァチカンのドーム大きな夏帽子  
あれは円空これは木喰雲の峯    
牡丹に日除けの傘のさしてあり   
炎天にゴッホの如く樹樹燃ゆる   
「厄除け詩集」読みて大暑を凌ぎけり
  

 秋
住み分けし泡立草と芒かな
コスモスの花の高さに風流る
秋暑く播州弁の喧すし
同行の遍路となれり赤蜻蛉
一瞬の落葉の高き火音かな
人生七十いま稀ならず秋の海
皿池にそれぞれ月の宿りけり
行合の雲百万石の蝉時雨
独身の蝶蝶ばかり大花野
越の国より一茶の墓へ秋の風    
仏塔は遠しせいたかあわだち草   
海峡の橋を時雨の渡りけり     
行く雲と同行二人花野道      
図書館の本の匂ひや秋時雨     
右脳に裕次郎居る秋小樽      
廃線の駅前広場松手入       
デルヴォーの絵にありし今日の空の月

 
 冬
冬蝶を追ひチャップリンのごと歩む 
足音を凍てし街路に捨て帰る    
京かぶら京の女がさわりをり    
蓮根の掘り出されし含羞よ     
蒼穹をエッチングして枯木立    
地震の夜も昇りし寒の望の月    
風のままひねもす無為に冬の蜘蛛  
いつまでもひとりぼっちや冬の蝶  
我が影の巨人となりて枯野行く   
山寺の塔のみ照らし冬落暉     
冬の蚊に五分の意気地を刺されけり
 
 
 新年
読初を「葉っぱのフレディ」とせし私
正月の出雲街道犬眠る       
屠蘇なめて酔生夢死を希ひけり   
初凪や神話の島へ橋架かる     
日の如く虚空に在らむ明の春    
ひたすらに電車走れり去年今年   
韃靼を旅せし甥と年の酒      



俳号は斜腸


 RANDOMに私の俳句を載せてやろうと、有難いお話があった。
還暦、古稀と馬齢を加えてきた昨今、周囲では句友の句集が次々に贈られて来る。
正直言って、落語の「寝床」ではないが、御趣味の作品を読まされ、感想を求められるのは、まことにつらいものだ。
「汝の欲せざるもの、他人に施すこと勿れ」と私は自粛に努めてきたのだが、この度はその禁をあえて破ることにした。「自己中」「自分勝手」の責は都合よく忘れているのを、どうかお許しを。
 八年ほど以前、作家丸谷才一が古稀を期に「七十句」と題して句集を出した。
その顰に倣って、只今現在七十一才なるを以て、「七十一句」と題して駄句の山から自撰句を御笑覧に供したい。
一応は句誌その他で撰に入ったものとは言え、まことに恐れ入る他はない。
 旧制中学の国文の教師は短歌「水甕」派の同人であったし、たった一年だったが、旧制高校の国文学教授は「奥の細道」全文を教材にし、西鶴の「日本永代蔵」を講義しながら西鶴の俳句の世界に度々脱線した。
住吉神社で、独吟一夜二万三千五百句という有名な記録も、この時教わった。いらい短歌、俳句が好きになり、今日まで鑑賞の楽しみが続いている。
 市の最後の職場の交通局で、「九年母」に属し、新聞テレビ俳壇にしばしば入選の女史と一緒になり、句作の世界に教導される縁に恵まれて十二年、今日に至った次第。退職後の神戸新交通では、かつて県の副知事であった一谷定之丞さんの子息と出逢い、祖父が村上鬼城門という俳句好きの社員がいて、句会結成と相成るのである。ここでは坪内稔典師に年一回乍ら指導を受けている。
 恥しながらわが俳号は斜腸。社長と掛けた安易な発想。
根性が歪んだ自分の象徴としてぴったりだと自負している。
薀蓄を傾ければ「雨月物語」の上田秋成は無腸と号した。
面倒がり屋の私にしては、俳句作りはよく続いたものだ。
性分に合っていると言えば、斯道の宗匠にお叱りを受けそうだが、そう言うしかない。
懸賞俳句に次々応募しているが、残念ながら今のところ賞金獲得までは行っていない。(2004)



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2004=露の世に・つきひ

2013-02-11 | 句集
露の世に=つきひ 





星までの空間寒波埋め尽くす
凍蝶の生死は問はず離れけり     
冬桜また巡り来る地震の日      
蕾持つものから溶けて庭の雪     
遺墨てふ滅びざるもの梅薫る     
黄沙浴び髪きしきしと梳る      
転んでも起きても笑顔豆雛      
雨の日は雨の日の赤シクラメン    
朝桜守衛は今も挙手の礼       
空っぽの頭の上を春の雲

       
こでまりのひとつひとつに蒼き翳   
牡丹のひとひらごとに風遊ぶ     
前方も後円もただ万緑に       
父の忌も済みて蛍に姉いもと     
風知草にも風のなき時間あり     
百本のひまはりにある百の向き    
敬老日会ひに行かねば会へぬ母    
糸瓜忌の我が心電図異常なし     
白萩や静謐の人今は亡く       
北海道全土花野となってをり

     
生き抜いて仰臥漫録露の世に     
ゼミ室の秋灯こぼし合ふ廊下     
十人のゼミ生帰り部屋夜寒      
干し柿を瑪瑙細工とほめられし    
障子貼る器用貧乏かこちつつ     
校門を閉ず菊の鉢移動して      
ビロードのやうな秋日が仏間まで   
会ひたしといふ一行の身に入みぬ   
銀杏散る風が無い日は重さうに    
暖房に少し疲れて鉢の花       



つきひ流


私の三十句は最近の作品から季語の異なるものを選び季節順に並べて見ました。

 私が俳句を作る時に心がけていることは、平明、余韻ということです。私は難解な句は嫌いです。単純明快でありながら多くのことを想像させ余情を感じさせる句が好きです。

去来抄に『謂応せて何かある』という言葉がありますが、言い尽くしてしまっては風情が無い、読む人に想像させる余白のような部分が大切だということだと思います。

 俳句は十七文字ですから、類句ができても仕方ありませんが、出来るだけ人が言っていないこと、人が使っていない言葉を見つけるように心がけています。

 自然や人事の客観写生と教えられましたが,『胸の赤い羽根』と『胸に赤い羽根』どちらが説明でどちらが写生か未だに判らず迷ってしまいます。

 とにかく、あまり難しく考えないで『明子流』で楽しく続けて行きたいと思っています。(2004)
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