神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

2016=夏の神戸ワイナリー句会

2016-06-25 | 吟行句会

 朝刊を大きくひらき葡萄食ふ 波郷

第23回神戸RANDOM句会は、「夏の神戸ワイナリー句会」。神戸市西区の神戸ワイナリー(農業公園)で陶器の絵付けとバーベキューの吟行です。

神戸市立農業公園の開園は1984年。それから32年、阪神淡路大震災や平成不況を経て、神戸ワイン城はどう変わったでしょうか。

今回は日曜日。朝刊をチラッと眺め、家を出ます。本日の天気予報は曇りのち雨。向かう電車から空を見ると、すこし青空ものぞいています。

 水をはると水田はうつくしほととぎす 井泉水

 

ワイナリーぶらある記―――――――

 

                                                              ―神戸ワイナリーHPより転載―

集合は6月12日(日)午前9時40分、神戸市営地下鉄西神中央駅の改札口。

本日の参加者は、さくらさん、だっくすさん、つきひさん、へるめんさんと女性4名。男性は一風さん、蛸地蔵さん、英さん、播町さん、見水さん、ろまん亭さんの6名で総勢10名。

神戸ワイナリーに直行の3名を除く7名が、地下鉄西神中央駅改札口に集合し、西神中央駅10番乗り場から午前9時50分発の神姫バスに乗車。青蔦のゲートをくぐり、午前10時に神戸ワイナリー到着。31haの園内には紫陽花もすがすがしく咲き誇っています。

バス乗り場で、英さん、一風さん、つきひさんがお待ちでした。

 梅雨晴やところどころに蟻の道 子規

駐車場を抜け、ワイン専用のぶどう畑の丘の道を陶芸館に向かいます。曇り空ですが頭上で雲雀が気持ちよさそうに鳴いています。

「ほととぎすも鳴いていたわよ」「テッペンカケタカですね」

会話がはずみます。

「ぶどうは秋の季語?」「いまの季節なら青葡萄ね」

 青葡萄天地ぐらぐらぐらぐらす  鷹女

 

つきひさんは、本日はワイナリーで借りた車椅子に乗って吟行。

優しく車椅子を押すのは一風さん。ぶどうに細菌がつかないように植えておくというバラの花にも寄り道をして香りを楽しみます。垣根仕立てのぶどうのつるには粒の小さい緑色の実がびっしり。

絵付けに挑戦

ぶどう畑の中に建物が出現。陶芸館です。スタッフの姿が見えます。

中に入って席に着くと、目の前のテーブルにろくろと土と絵の具と筆。隣のテーブルでは別のグループが楽しそうに土をこねて何か作っています。

 

「ここの教室は安いわ」料金表示を見た蛸地蔵さん、大いに関心ありそう。

手続きが終わって、予定どおり絵付けに挑戦。ろくろと土は片付けられ、別の場所においている気に入った皿やマグカップを一つ選びます。

スタッフの人が、絵の具や筆の使い方をていねいに説明してくれます。

 葡萄食ふ一語一語の如くにて 草田男

 

「何を描こか」。13年前の第2回篠山句会での陶芸や3年前の第17回絵手紙句会の記憶を呼び起こして、しばし思案。紫陽花やひまわり、サクランボ、ぶどうなどの絵や俳句を冷や汗いっぱいで描きました。

作品は、完成祝ランチ会にて披露。忘れかけた頃にまた汗をかきましょう。

 

 何見るとなく見て遠き夏景色 龍太

午前11時、陶芸館を出て、ぶどう畑の道を抜けワイン城の隣にあるバーベキュー場へ。坂を上っていくと、空気が澄んでいるので、のどかな西区のシンボル・雄崗山、雌崗山(神出富士)が望めます。このあたりは英さんの故郷でもあります。

バーベキューの宴

バーベキュー場の端の予約席に着くと、係の人が愛想よくバーベキューの肉と野菜のパックとおにぎりにワインやビール、ウーロン茶、ジュースを運んでくれました。紙のエプロンをして透明プラカップに芳醇な神戸ワインを注いでもらい、1人分にはやや多い国産牛と野菜をジンギスカン鍋でジュージュー焼き始めると、だんだん楽しくなってきて、世間話・噂話が尽きません。

 

 昼の酒濁世の蛙聞きながら 飴山實

広いバーベキュー場の空席も埋まってゆき、家族連れ、シニア組、若者グループで大賑わい。

ほろ酔いになった頃、すぐそばのヤマモモの木に実が生っているのを発見。真っ赤に熟し甘酸っぱい実は、この時季限定の果実。

 

神戸でもかつては須磨区の白川村ではヤマモモが献上品だった、などのウンチクで盛り上がります。

楽しいバーベキューの宴のあとは、句会。会場はワイン城の2階です。

ワイン城をバックに全員集合写真を、と、近くにいた若者グループにシャッターをお願いすると快くOK。すっかりシニア組のわがメンバー、思わずVサインをしてしまいました。

ワイン城入場

 

                                                               ―神戸ワイナリーHPより転載―

久々のワイン城入場。ここにはバーベキュー場の賑わいはなく、1組のグループが腰かけてくつろいでいるだけでした。オルゴールの音が流れ、32年前にこの南欧風の施設をつくった当時の神戸の熱気がまだ微かに感じられます。

神戸ワイナリー(農業公園)は、2005年に入園料・駐車料を無料にしてホテルやレストランを休止し、ワイン醸造施設に特化。園内で栽培・収穫するぶどうだけでなく、西区平野町、北区大沢(おおぞう)町の契約農家分を合わせた300haの畑で収穫したぶどうで年間400トン(通常の瓶30~40万本)の神戸ワインを生産・出荷しています。

神戸ワインの特色は、発酵・熟成・瓶詰をすべて低温管理で時間をかけて行っていること。この製造方法により新鮮でフルーティーなワインになります。

 甕たのし葡萄の美酒がわき澄める 久女

幹事さんは今日の句会の賞品は神戸ワインと決めていたようで、試飲もできるワインショップで賞品選び。賞品を期待していないメンバーは自費でワインやお菓子などのお土産を選んでいます。

 

8月下旬~10月上旬のワインの仕込みの時期にはここでいろいろな作業が見られるようですが、いま見られるのは、地階のワイン熟成中の約300個の樽。

 亀甲の粒ぎつしりと黒葡萄 茅舎

播町さんから「見ておこか」と声をかけられ、涼しく温度調整された地階を巡回しました。

樽はフランス産のオーク樽で、中には発酵を終えてろ過されたワインが入っています。熟成期間は、白ワインが約6ヵ月、赤ワインが約6~12ヵ月。熟成で色や香り、味わいに複雑さ、まろやかさが生まれます。

ワイン城句会―――――――――――

 

午後1時前に、ワイン城の2階会議室の句会場へ全員移動完了。

午後1時から句会の始まり。午後1時15分までに各自5枚の句を書いた短冊を提出し、短冊をばらして選句表に清書します。

 葡萄の種吐き出して事を決しけり 虚子

清書した選句表を、受付事務所で人数分コピーしてもらいます。

全員に選句表を配付し、15分間で、各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者10名の総点数70点の争奪戦です。

 

つきひさんからお菓子の差し入れ。明石・分大の「うすぐも」。しっとりした薄皮饅頭をいただきます。

午後2時、つきひさんの進行で特選句から順に発表。作者も明かされます。

選句発表

今日はどんな名句ができたでしょうか。数字は句会での得点、は特選句。

ろまん亭

入梅に今日より薬一つ減り ②

蛙の音枕辺に聞くか古里で 

ランドセル柿若葉映え一年生 

バーベキュー煙の中か山桃が 

山桃もワインありますこの季節 

さくら

ぶどう若葉ゆれゆれワイナリー広し ①

神戸ワイン掲ぐグラスの涼しかり 

スパークリングワインのやうな一夏よ ①

デザートは捥ぎし山桃バーベキュー ①

風光る異国めきたるワイン城 さくら②

一風

賑いはいつの頃かと草茂る ③

絵付する人の背中に青ブドウ ①

香り乗せ煙流るるバーベキュー 

デザートというや李の枝を折り 

梅雨空に若者頼みVサイン 

緑なすブドウを守る紅のバラ ①

みどり満ちせまりくるのは雄崗山 ②

故郷で薫風受けつ飲むワイン ①

緑陰にワインビール肉もうまし 

なつかしや友の家でのやまもも喰い 

蛸地蔵

紫陽花やワイン城では片すみに 

目に青葉足どり緩く梅雨晴れや ①

梅雨晴れ間ブドウもワインを夢にみて ①

マグカップ絵付けの柄のあじさい花 ①

水無月はほろ酔い句会なごやかに 

 

播町

だらだらと起伏の丘や青ぶどう ④

梅雨晴間笑うひまわり絵付けして 

バーベキュー噂話はひろげっぱなし ②

三百の樽の眠りて蔦茂る ②

ワイン眠る虹美しき地に生まれ 

へるめん

六月の雨くる前の句会かな 

未だ堅しやがて醸さる青葡萄 ①

掌(たなごころ)梅雨の陶土と馴染みたり 

桜桃忌ロゼのため息すきとほる ⑥◎◎

やまももや赤ワイン苦手と言ひつつも 

見水

沿線の水田に写る空と雲 

葡萄づる勢いを増す夏の空 ⑥◎◎

梅雨空に雲雀が揚がる神出富士 ②

梅雨曇肉焼く香りワイン城 ③

中庭のオルゴールの音夏休み 

つきひ

水無月の森ワイナリー沈めけり 

ひしめきて無限の未来青ぶだう ⑤◎◎

薔薇の香に寄り道をして車椅子 ⑤

有り無しの記憶過ぎるや梅雨の蝶 ③

上納の歴史あるとや楊梅に ②

だっくす

青蔦のアーチくぐればワイン城 ③

車椅子やさしく押して梅雨晴間 ③

自作の句皿に描けば汗ばみぬ ③

バーベキュー山桃採りてデザートに ①

青ぶだうオルゴール聴き育ちをり ①

高得点句

本日、高得点を獲得した句は、

桜桃忌ロゼのため息すきとほる へるめん⑥◎◎

6月13日は太宰治の忌日。サクランボ、ロゼワイン、ため息が透き通るお洒落な句は男には作れません。

葡萄づる勢いを増す夏の空 見水⑥◎◎

元気に育つぶどう畑の力強い句。青い夏空の願望をこめて。

ひしめきて無限の未来青ぶだう つきひ⑤◎◎

ぶどう畑の実際の青葡萄をよく観察して詠んだ若々しい句。

薔薇の香に寄り道をして車椅子 つきひ⑤◎

バラの香りを感じるところまで車椅子を寄せる優しさに感謝。

だらだらと起伏の丘や青ぶどう 播町④

水はけのいいぶどう畑の丘の感じがよくわかるうまい表現。

表彰式

午後3時半。表彰式です。

 

優勝は、つきひ(15点)さん。続く高得点者は、だっくすさん(11点)、見水さん (11点)。

他のメンバーの得点は、次のとおりでした。

播町さん(8点)、へるめんさん(7点)、さくらさん(5点)、英さん(4点)、一風さん(4点)、蛸地蔵さん(3点)=ブービー賞、ろまん亭さん(2点)。

今回の賞品は、ワインショップで選んだ神戸ワイン尽くしです。

1位(金賞):神戸印路シナノリースリン

2位(銀賞):MERLOT

2位(銅賞):神戸セレクト(白甘)

4・5位 :神戸カシスワイン or 神戸うめワイン

6~8位 :ミニグラスワイン+お菓子

ブービー賞:神戸セレクト(白辛)

10位           :ミニグラスワイン+お菓子

総点数70点の行方は、女性軍4名の得点が38点、男性軍6名の得点が32点。だっくすさんは出句した句すべて得点しパーフェクトです。

午後4時、各自、賞品を提げてバス停留所へ。つきひさんは一風さんの車で自宅へ。バスは午後4時20分に神戸ワイナリーを出発し、午後4時30分に西神中央駅に到着。帰路は雨になりました。

 さみだれのあまだればかり浮御堂  青畝

鬱陶しい季節ですが、芳醇な神戸ワインを飲んで爽やかに乗り切りましょう。

そして今年もぶどうが元気に育ち、いい神戸ワインができますように。

半年後の次の句会が待ち遠しいです。

 

2016.6 写真/romantei 文/mimizu  

 <追記・絵付け完成祝いランチ会> 

 陶芸館での絵付けが完成。一風さんが全員の作品を受け取り、完成祝いランチ会で披露することになりました。 

7月7日(木)12:00、三宮ミント神戸8階の「うおまん」に、織姫・彦星が全員集合。

 

  

 

◆できあがった絵付け作品に1句そえて……。

 

  

←あじさいも絵柄となりて変化する  蛸地蔵④ 

→告白の返事ときめく星祭  さくら①

 

  

←先頭は山桃の丘軽々と  播町③ 

→焼物のでき見て笑う人の汗  一風

 

  

←出来映えはさて置きビール酌み交はす  だっくす 

→酒を酌む今日の名目暑気拂ひ  つきひ①

 

  

←梅雨あけぬ汗がポタリとパソコンに  英① 

→梅雨明や出来映え上上マグカップ  へるめん⑤

 

 

←ビール飲もっカップの絵付語りつつ  見水① 

→入梅や今日より薬一つ減り  ろまん亭③ 

* 

食事をしながら、作品を回し、一つひとつ手に取って、出来映えを確認。 

「さすがや、ええ色でてる」 

「思っていたよりいい出来」 

「期待していた色がもう一つね」 

感想はさまざま。自作のウンチクや思い入れも一言二言。 

せっかく集まったので句作を1句ずつ。ひとり2回挙手の人気投票も(数字は得点)。得点は俳句に対するもので、絵付け作品の評価ではありません。 

* 

「うおまん」を出て、駅の山側の「にしむら珈琲」に場所を移します。 

梅雨明け宣言はまだですが、外はもうカンカン照りの快晴。 

神戸の街のお洒落な夏の午後、久しぶりにのんびり過ごしました。  

2016.7 写真/romantei 文/mimizu 

 

 

コメント (4)
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