船乗りの航跡

地球の姿と思い出
ことばとコンピュータ
もの造りの歴史と生産管理
日本の将来

ヒューストン再訪(5)---大学内のスシ店と日本車

2016-09-10 | 地球の姿と思い出
ヒューストン再訪(4)から続く。

(6)大学のスシ店
母国を離れた留学生が多くの時間を過ごすのはどこか?・・・筆者の場合は、学生センターと図書館だった。多くの時間を過ごしただけ多くの思い出が残っている。

二つの建物は、下の写真のように隣同士、外観は50年前とほとんど変りない。しかし、建物の中はすっかり今風に生まれ変わっていた。

            図書館(左)と学生センター(右)
            

かつての学生センターには、食堂、書店、日用品店、郵便局、理髪店、ボーリング場など、何でもそろっていた。特に、自炊をしない筆者には食堂は必須の場所だった。

1967年の秋、あるHonor Societyのヒューストン支部へのイニシエーション(入会式)もこの建物だった。2階の部屋で、ただ1本のローソクの明かりを前に、筆者の入会は認められた。居並ぶ人たちは黒いアカデミック・ガウンに四角い帽子、闇に浮かび上がる人びとのシルエットは幻想的な光景だった。もちろん、その儀式は現実の話、入会の証書と証(アカシ)の金製バッチは今も手元に保管している。

また、大学を訪れるたびに1階の書店で書物を買い求め、そのまま地階の郵便局から船便で自宅に発送した。専門書は重く、1冊1.5kg近くのものもある。今は齢相応にビジネス・クラスに乗っているが、エコノミー時代は手荷物の重量制限が気になった。この書店ではあれもこれも買いたくなる。

最近のリフォーム(Renewal)で学生センターの内部はすっかり変わってしまった。その一つは、日本庭園と呼ばれた庭がなくなったことである。20mX30m程度の小さな庭だった。

筆者が入学した1966年8月から聴講生として再入学した2003年秋まで、その庭園はこの学生センターの地階に存在した。1階の回廊から見下ろせたその庭園は、下の写真のようにステージ階段に変身した。ステージ階段は一種の階段教室である。

            日本庭園がステージ階段に変身
            

もともと、あまり日本風とはいえない庭だったが、今では跡形もなく消失した。さらに、庭園に面した学食は大きなフード・コートに変わり、マックやパンダなどが入っている。また、昔の日用品店はUHのロゴ入りコロンブス衣類店に発展、書店はスタバの横に読書コーナーを設けて1階から地階に移転、売場を拡張した。

建物の内部だけでなく、学生センターの北隣りに学生センター北館、美術館近くにサテライト学生センター(分館)も増設した。北館は体育系の施設、サテライトはフード・コートである。学生数の増加で、建物の増改築と駐車場の立体化が進み、270万m2(縦横約1.6km)の敷地も建物だらけの感がある。

下の写真は、サテライト学生センターのテラスである。テラスは地下になっており、建物は地下に隠れる構造になっている。

            サテライト学生センター(分館)
            

下の写真はサテライトのフード・コートである。今回、写真の右奥にスシ店があるのを知った。その名はスシック(Sushic)、しかし、サマー・タームは休店とのことだった。ニギリなどの「生もの」を扱うからかも知れない。

            サテライトのフード・コート
            

下の写真はスシックの店構え、背面にメニューがある。ニギリズシの写真もあるが、壁のメニューからロール(西洋巻き寿司)が中心の店だと分かる。

            サテライトのスシック
            

筆者は西洋寿司を食べたことがないので、外観と味はわからないが、壁のメニューを要約すると次のようになる。
注:メニューの英語は原文とおり、カッコ内の日本語は筆者のコメントである。ここでは「Imitation Crab(偽物のカニ)」はカニカマと訳す。また、手掛かりがないものは「内容不明」とした。
CONVENTIONAL ROLLS(伝統的で標準的な巻き寿司)
 CALIFORNIA ROLL(*1補足参照)、PHILADELPHIA ROLL(*2)、ATOMIC ROLL(アトミック巻き=内容
 不明)、CATERPILLAR ROLL(*3)、CRUNCHY ROLL(天かす巻き)、RAINBOW DRAGON ROLL(*4)、
 SHASTA ROLL(シャスタ巻き=地名?内容不明)、TEMPURA ROLL、TEMPTATION ROLL
 以上の巻物はいずれも一品$5.99~$9.99程度
COMBOS(盛り合わせ)
 ALL STAR COMBO・・・・・$11.99(カリフォルニア・ロールとカニカマなどのオール・スター盛り合わせ)
 DELUXE NIGIRI SUSHI・・・・・$7.99(デラックス・スシ=ニギリ6個、すし種は不明)
TERIYAKI BOWLS(テリヤキ丼)
 CHICKEN・・・・・$7.99(トリ)
 SHRIMP・・・・・$7.99(エビ)
 VEGGIE・・・・・$6.99(野菜=人参、椎茸、ブロッコリ、ピーマン、玉ネギ)
以上、29種類の料理のうち、主なものをリストした。

【補足説明】
以下、Wikipediaの「巻き寿司」の説明で上のメニューを補足する。

*1)カリフォルニア・ロール
補足=アボカド、カニ(またはカニカマ)、きゅうり、トビコ(またはマサゴ)を巻いたもの。裏巻きにする場合はトビコ(マサゴ)を外側に乗せたり、白胡麻をまぶすことがある。

*2)フィラデルフィア・ロール
補足=ベーグル・アンド・ロックス(ベーグル#動向を参照)が基になっており、生またはスモークサーモン、クリームチーズを使用。きゅうり(またはアボカド)やネギ(または玉ネギ)を含むものもある。

*3)キャタピラ・ロール
補足=カリフォルニアロールの上にアボカドだけを乗せたもの。「キャタピラ」はイモムシのこと。

*4)レインボー・ドラゴン・ロール
補足=カリフォルニアロールの上にマグロ、サーモン、白身(ハマチ、タイ、アバコ、ヒラメ、オヒョウなど)、エビ、(またはエビの天ぷら)、アボカド、アナゴ(またはウナギ)などを乗せたもの。
---補足説明おわり---

学生センターから日本庭園がなくなり、代わりにスシ店が現われた。どちらも「生粋の日本」とは言い難いが、「アメリカ生れの日本」には違いない。

(7)学内の日本車の割合
前回の2003年秋に続き今回は約10日の滞在、キャンパスを歩きながら思い出すたびに駐車している車が日本車か否かを「Yes/No」とカウントした。

前回は約2ヶ月の滞在、サンプル数は忘れたがキャンパスの車の6割以上が日本車だった。その理由として、学生は中古でも故障が少ない日本車を好むと推定(独断)した。

今回は、サンプルの総数が217台、うち日本車が106台、日本車の比率は約48.8%だった。本当は、1000台ほどのサンプルが望ましいが、今回はサンプル数が少なかった。また、今回は6月のサマー・ターム、学生は少なく職員や一般の訪問者の車が多かった。なお、日本車のメーカーはトヨタ、ニッサン、ホンダ、マツダの順に多く、スズキとミツビシそれぞれ1、2台だった。

(8)50年の時の流れ
今回の再訪で、このキャンパスに立って50年の時の流れを振り返った。

昔に比べてキャンパスの大きさはほとんど変わらないが、古い建物に新しい建物が加わり、バリアーフリー化と自動扉化やコンピューター化など、その中身は大きく変化している。ウエルカム・センター(歓迎館)やビジネス・センターや研究所の新設だけでなく、出入りする人々の幅も幼稚園児からシニアまでに広がっている。先頭と後尾を先生が誘導する幼児の集団を2回ほど見た。売店では子供のスポーツ服を売っている。

一方、大学内ではエスカレーターを見たことがない。ふと、60年代にロンドン地下鉄で見た大規模なエスカレーターは、今や時代遅れになったのだろうか?と思った。

いつの間にか消滅した日本庭園、代わりに現れた「アメリカ生まれの巻き寿司」、学内の半数近くが「日本車」という事実・・・「社会・文化的な距離」が日本から一番遠いこのキャンパスに「日本」が存在する。さらに、もう一つの驚きは、アメリカでも最も典型的な車依存社会といわれたヒューストンで、キャンパスを取り囲むように路面電車が走っている。その案内書は英語とスペイン語の2ケ国語である。

また、目を筆者の傍らの孫と娘に移せば、孫は朝8時から夕方6時まで10時間のパソコン教室、友だちもでき皆との食事も楽しく、ヒューストンが大好きと言う。娘もアメリカ国内でしか入手できない品物を手に入れ大満足、この地でアメリカを感じると言う。

今、このキャンパスには筆者と娘と孫の過去と現在と未来が混在している。その混在の一つの共通項は「フレンドリー(Friendly)」、そこに新しい視界が開けて未来への方向性を感じ取った。これは大きい。

10日少々の旅を終えて、娘と孫は知人たちの待つNYへ、筆者はダラス経由成田へ、ヒューストン空港からそれぞれの目的地に向かう。

今回のヒューストン再訪は三段ロケットにみえる:筆者は第一段目のロケット、娘と孫は第二段と三段目のロケットである。ミッションを終えた第一段目は、思い出深いヒューストンで娘・孫と別れ、気ままな一人旅モードでダラスを経て故国日本に向かう。・・・補足:2016/10/6の脳梗塞でこれが最後の海外旅行になった。

次回は国内旅行「小諸」に続く。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヒューストン再訪(4)---... | トップ | 小諸城址再訪 »
最新の画像もっと見る

地球の姿と思い出」カテゴリの最新記事