日本の美術界100年に一人の天才とも称される加山又造は、東京藝術大学教授などを歴任し、2003年には文化勲章を受章した、日本画の大家。"伝統と革新"を作品作りのテーマに、日本の様式美に現代の革新的な手法を取り入れることで、独自の表現を生み出した。ラスコーの洞窟壁画から、ブリューゲル、ルソー、ピカソに至るまで、幅広い時代の西洋絵画に大いに触発され、その手法を自身の日本画のなかに現代的な感覚で取り入れている。
「春秋波濤」(1966) 東京国立近代美術館
口語短歌
「美しさ 波の曲線 生きている 紅葉の山と 満月の調和」
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京都、西陣織の図案家の子に生まれ、幼い頃から伝統的な日本の様式美に囲まれて育つ。この絵ですごいのは波の曲線です。線の美しさを熟知し、常人の発想では考えだせないような曲線を生み出しているところです。生きているような錯覚を感じ、それでいて美しい。手前の紅葉の山には、金箔を細く糸のように切って貼り付ける切金という技法をつかっています。
「千羽鶴」1970年 (国立近代美術館)
口語短歌
「満月と 上弦の月 鶴の群れ 4次元世界 宇宙現す」
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冬の鹿児島県の出水(いずみ)で、数千羽の鶴が飛び立つ光景を目の当りにしたという加山は、「千羽鶴」の主題を描くうえで、琳派の造形言語を研究しました。左右に配された日月と、両者を分かつ波濤文を背景に、群れをなす鶴が、右隻から左隻に向かって、まるで螺旋を描くように旋回しながらとんでいく。同形の反復によって生まれる鶴の帯は、その雄大な空間の生み出す効果は加山の独創といえるでしょう。
久遠寺 「墨龍」 1984年 久遠寺蔵
口語短歌
「金箔の 護り黒龍 火災除け 人間守護も 教えの雨降らす」
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金箔の上に墨で描かれた五本爪で玉を持たない「墨龍」は1984年に日蓮宗総本山身延山久遠寺本堂の天井画として制作され、護り神として鎮座しています。龍は古来より人間を守護する神といわれると共に、水を司る神ということで、教えの雨を降らす意味、火災除けの意味もあります。
「おぼろ」 1986年 個人蔵
口語短歌
「しだれ桜 月夜に描く 公園の 京都の文化 優雅さに凄み」
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「おぼろ」では染職工芸の「ろうけつ染め」の手法を使っている。加山は、この頃から自分の生まれ育った京都の文化、その優雅さや凄み、自分のルーツというものを意識し始めたような気がする。円山公園のしだれ桜を月夜に描いたものである。月に雲がかかっているのはリアルである。
参照
https://turara-an755.hatenablog.com/entry/2017/09/23/220641
https://www.fashion-press.net/news/37849
「2021年軽井沢レイクガーデンに咲いた薔薇」
「スキャボロフェアー」2021年8月7日撮影
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/12/37/0816d459cbe498a47ca7d29ec3ef874e.jpg)