北都留森林組合blog

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『JForest北都留森林組合ビジョン2030』策定

2023年02月08日 | Weblog

北都留森林組合では、10年後の夢・目指す姿を描いた『JForest北都留森林組合ビジョン2030』を策定しました。

Ⅰ.全体概要

1.全国統一目標(スローガン)

~地域森林の適切な利用・保全と林業経営の更なる発展に向けて~

 我々森林組合系統は、厳しい林業経営環境において、地域の森林を守り育て、組合員の経済的社会的地位の向上に取り組んできた。

 令和6年度より森林環境税が広く国民から徴収される中、地域の森林整備の主たる担い手として、森林環境譲与税の活用に協力しつつ、引き続き適切な森林の利用・保全を通じて森林の持つ公益的機能の維持・増進を図り、SDGsの達成に貢献していく。

 その上で、先人たちが植えた人工林が成熟期を迎えた今こそ、森林組合系統を挙げて、持続可能な林業経営を通じて、以下の3つの課題に取り組むこととする。

 (1)組合員サービスの向上

   組合員の意向が多様化している中、協同組合として組合員に対して「何ができるか」を考え実践する。その一つとして、組合員への一層の利益還元を実現する。

(2)働く人の所得向上・就業環境改善

  他産業との賃金格差や労働環境等の課題がある中、内勤職員・現場技能者について所得の向上・労働安全対策をはじめとした就業環境改善を進める。

(3)事業拡大・効率化による経営の安定

   人工林が成熟期を迎え林産事業・販売事業が拡大し、また森林環境譲与税や森林経営管理制度、森林組合法改正などの新たな仕組みが始まった中、事業拡大やICTの活用を含めた効率化を進め、安定的黒字経営を実現する。

2.運動期間

 令和12年度末まで

Ⅱ.10年後の夢・目指す姿

1.夢

① 北都留森林組合(以下「組合」という。)は、組合員や活動区域内の市町村(以下「市町村」という。)の信頼を得て、地域の森林・林業を担い、先導する中核的な存在となっている。

② 組合は、経営感覚を持つ実践的能力理事を配置するとともに、「意欲と能力のある林業経営体」認定を受けることで、森林経営管理制度に取り組み、組合経営の安定化を図っている。

③ 組合には、森林経営プランナー、認定施業プランナー資格を持つ職員がいて、再造林可能な利益を確保しつつ、主伐再造林による循環型林業を推進している。

④ 市町村に交付される国の森林環境贈与税(令和6年度以降は「森林環境税」)の使途について、地域の森林・林業が抱える課題解決のための事業提案や組合員との連携を行い、市町村から森林環境税事業を受託している。

⑤ 現場においては、ドローンやICT、高性能林業機械等を駆使したスマート林業が実践できる専門集団となっている。

⑥ 森林組合は、職員の所得向上や福利厚生を充実し、現場での労働負荷の軽減と無事故・無災害を推進することで、地域の有力な就職先となっている。

⑦ 組合は、自己研鑽に励み、コンプライアンス持った職員の育成に努めている。

⑧ 組合は森林整備や素材生産等の事業活動、並びに異業種交流や林福連携に積極的に取り組むことで、国連が進めるSDGsに合致し、地域での認知度や存在感が増して、組合員のみならず女性や若年層の関心を引き、支持も得ている。

2.目指す姿

 (1)職員・組合員について

全従業員の物心両面の幸福を実現すると共に組合員や地域社会の進歩発展に貢献している。

 (2)事業について

その時々の社会・経済情勢を的確に捉え、洞察力と先見性を持ちながら全体を大局的に判断し機を観ながら常に創意工夫と改良改善を積み重ね事業収益力向上により組合員への更なる利益還元を実現している。

 (3)その他

① 山梨県東部地域唯一の木材流通拠点である甲斐東部材産地形成事業協同組合の最善の経営体制がどのようなものなのかをあらゆる角度から分析し、共に経営している大月市森林組合、南都留森林組合と合意を図りながらより良い体制実現に向け努力している。

② 森林組合内に森林組合監査士を養成し、組合監査の充実を図ると共に更なるコンプライアンスの徹底に努めている。

3.ダイナミックな組織・事業再編の検討

郡内4森林組合(北都留森林組合、南都留森林組合、大月市森林組合、富士北麓森林組合)の活発な地域間連携が図られている。また、県境を越えたひとつの「多摩川と相模川流域」内である東京都、神奈川県の森林組合系統との更なる広域連携も実現している。

Ⅲ.取組内容

項目1:都道府県・市町村と連携した地域森林管理体制の確立

(1)地域の森林管理方針(長期ビジョン)の協議

北都留森林組合は、県が本県の森林・林業・木材産業が目指す将来像を描いた上で「森林の公益的機能の強化」と「林業の成長産業化の推進」を2本柱とする「やまなし森林整備・林業成長産業化推進プラン」を令和2年3月(令和4年1月改定。計画期間は令和2年度から令和11年度末までの10年間)に策定したのに合わせて、県が進める施策の展開に積極的に協力、推進する。

北都留森林組合は、森林環境贈与税や森林経営管理制度により地域の森林管理における市町村の役割が高まっていることを受け、地域の森林の長期的な管理方針について市町村に提言・協議を行い、持続可能な林業経営につなげる。

 (2)森林環境譲与税の有効活用

森林環境贈与税が森林整備やその推進に資する施策に余すことなく活用されるよう北都留森林組合は、森林所有者を代表して使途に関する提言・要請を行うとともに予算化された施策の推進に協力する。

 提言・要請は、市町村はもとより姉妹都市・上下流域等で関係のある都市部も含めて積極的に展開、推進する。

人と森林との関係が離れてしまい森林が身近な存在ではなくなってしまった納税者に森林整備の重要性や山村の現状を理解してもらうために北都留森林組合は、市町村と共に森林環境贈与税の使途や成果について積極的な広報・普及啓発活動(一般市民・学生向けの木育・環境学習等)に努める。このことにより、各地域において森林環境贈与税が納税者の賛同を得て有効に活用され続ける形を実現する。

 (3)森林経営管理制度の推進

北都留森林組合は、森林(特に人工林)を有する市町村に対して、森林経営管理制度が円滑に進むよう対象地の選定、森林所有者への意向調査、所有者不明森林への対応等の取組強化を要望するとともにその実施に協力する。

林業経営が成り立つ森林については、これまで進めてきた森林経営管理制度に基づく森林所有者と北都留森林組合の森林経営委託契約(施業集約化)を推進すると共に森林経営管理制度において市町村より経営管理実施権の募集があった場合には、北都留森林組合は長期的に林業経営が成り立つかどうかのリスクを十分に勘案した上で取得を推進する。その前提として北都留森林組合は森林経営管理法第36条に定める「意欲と能力のある林業経営体」としての登録を受ける。

項目2:循環型林業の確立と系統の木材販売力の強化

(1)森林の適切な整備と災害対応

北都留森林組合は地球温暖化防止のため温室効果ガス削減目標の達成に加え、近年多発する豪雨災害を受けて森林の持つ国土保全・水源涵養などの機能に国民の期待が高まっていることを踏まえ、健全で豊かな森林づくりに向けて引き続き間伐等の森林整備を推進する。

また、市町村と連携し、都市近郊林や里山林等についても管理を進める。

災害発生時には、北都留森林組合は行政や電力・道路等重要インフラ管理機関と連携し被害調査や孤立集落の支援、支障木除去などに貢献する。

 (2)低コスト・循環型林業の確立

北都留森林組合は事務・管理含めたコスト低減に向けICT技術の導入等のスマート林業を進めるとともに自然条件を踏まえた効率的な施業方法、伐期、造林樹種等の施業体系を定め、地域にあった低コスト・循環型林業を確立し、山元立木価格の上昇を目指す。

これらの取組を進める基盤として北都留森林組合は県・市町村と連携し、施業集約化・森林経営計画策定や林業専用道・森林作業道の整備を引き続き推進する。

また、森林経営管理法に基づく森林の集積や改定国有林野管理経営法に基づく国有林の樹木採取権の取得を進める。

 (3)原木共同販売体制の構築と事業連携の推進

甲斐東部材産地形成事業協同組合が行う原木市場の活性化、並びに県内で操業して間もない合板工場や木質バイオマス発電所への原木供給をさらに推進する。

また、森林整備・林産・販売・加工事業等について組合間での事業連携(改正森林組合法による事業譲渡・吸収分割・新設分割に限らす幅広く)を検討する。

これらの取組により森林組合系統での流域材の安定供給と市場シェアの拡大による価格交渉力を強化し、主伐後の再造林が可能な立木価格(森林所有者への利益還元)の確保を実現する。

項目3:高度人財の確保・育成

 (1)職員の新規採用と人財育成

北都留森林組合において事務職員及び現場技能者が不足しているため職員の育成やICT等を活用した効率化に努め協力関係にある民間事業体との連携強化を行う。

また、「緑の雇用」事業を活用し、林業未経験の若者や異業種からの転職希望者等の採用を進める。

さらに系統内での人事交流を検討したり令和4年4月に開校した山梨県立農林大学校森林学科の卒業生を受け入れる。

これらの取組により高止まりしている職員の年齢構成の平準化を図る。

森林組合で働く役職員一人一人が協同組合人としての意識を持ち知識・技術の向上に努めると共にやりがいを持ってその能力を最大限に活かすことができるよう組織体制の構築や幹部登用を進める。

 (2)森林施業プランナー・森林経営プランナーの育成

森林整備プランナーについては、積極的に育成を図る。

併せて主伐再造林を含めた長期的な団地形成や木材の有利販売、事業体間の連携など高度な業務をこなし、これからの組合経営を担うことが出来る者としての森林経営プランナーを育成し、職員のモチベーション向上と共に森林組合の収益力の一層の強化につなげる。

 (3)現場技能者の地位向上・労働災害の撲滅

現場においては、労働災害の撲滅に向け、休業4日以上死傷病発生人数ゼロを目指す。そのため現場技能者に高基準の安全装備品の装着徹底、ドローンやICT、高性能林業機械等を駆使したスマート林業の推進、各種研修や競技大会を通じた安全作業技術の向上等に取り組み労働環境の整備や労働安全意識の徹底を進める。

より働き甲斐のある職場づくりや定着率の向上を目指し、下刈等の労働負荷の軽減、福利厚生の充実、他産業に負けない賃金水準の確保、就業形態・賃金体系の見直し、能力評価制度の導入、地形・樹種に応じた作業技術習得のための研修等に取り組む。

項目4:協同組合として組合員に信頼される組織体制の確立

(1)組合員の参画促進・組合員ニーズへの対応

所有山林に対する組合員の関心を高めるために組合員との対話を深め、自ら林業を営む者も含めた多様化するニーズを汲み上げた事業展開を進める。

遠隔地に住む不在村も含めた組合員への情報発信強化や参画促進に向け、ホームページ等の整備・活用を進める。

市町村に対して林地台帳の精度向上を働き掛けると共に民法・不動産登記法改正により令和6年から予定されている相続登記の義務化を活かして組合員名簿を整備する。

併せて組合経営の活性化を目指し森林組合法改正で措置された推定相続人への組合員資格の付与を進め、若年層及び女性組合員の拡大とスムーズな世代交代に向けた取組を進める。

 (2)森林組合経営の強化・健全化

販売事業や経営等に関する実践的な能力を有する者の理事就任については、職員の理事登用も含めた取組を進める。

働く者が経営理念や使命を理解し男女問わず働きやすくオープンで風通しの良いコミュニケーションを有する組織風土を醸成する。

 (3)コンプライアンス態勢の強化

内部監査の導入、森林組合監査士の育成、内部・外部通報体制の整備、継続的な研修の実施等を進める。

項目5:国民生活及びSDGsへの貢献

 (1)SDGs宣言の実施

我が国を含めて世界中で国連の定めたSDGs(持続可能な開発目標、17の目標がある。)の理念が急速に普及し、法人においてはSDGsを経営理念に組み込むことが当然という意識が醸成され始めている。

加えて我が国は、脱炭素社会の実現に向けて2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする政府方針(2050年カーボンニュートラル)を表明した。

森林組合系統の活動は脱炭素社会への貢献は基よりSDGsにおいても目標15「陸の豊かさを守ろう」をはじめ多くの目標達成に貢献している。

このため令和3年10月の全国森林組合大会において森林組合系統として「SDGs宣言」がなされた。

北都留森林組合は「SDGs宣言」を行うとともにその一環として植林や間伐等の森林整備、「J-クレジット」や合法木材証明や費用対効果を踏まえた森林認証の取得等に取り組む。

そして森林組合の活動の多くがSDGsに密接に繋がっていることについて積極的にアピールし森林組合系統の認知度や社会的意義への理解を高めていく。

 (2)異業種との連携

近年、本県ににおいても農協が生協等と協同組合間、または商工会・商工会議所等と異業種交流や連携を広く展開し6次産業化を図っている。

北都留森林組合は農協に倣い協同組合間や異業種と積極的に交流・連携を行い森林組合系統の収益源や活躍の場を求めていく。

以上

(2022.10策定)

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