絵本をひらくと、海がひらける。若葉にはまだ、海がわからない。 若葉よ。来年になったら海へゆかう。海はおもちゃでいっばいだ。 うつくしくてこはれやすい、ガラスでできたその海はきらきらとして、揺られながら、風琴のやうにうたってゐる。 海からあがってきたきれいな貝たちが、若葉をとりまくと、若葉も、貝になってあそぶ。 若葉よ。来年になったら海へゆかう。そして、ぢいちゃんもいっしょに貝にならう。
絵本をひらくと、海がひらける。若葉にはまだ、海がわからない。
若葉よ。来年になったら海へゆかう。海はおもちゃでいっばいだ。
うつくしくてこはれやすい、ガラスでできたその海はきらきらとして、揺られながら、風琴のやうにうたってゐる。
海からあがってきたきれいな貝たちが、若葉をとりまくと、若葉も、貝になってあそぶ。
若葉よ。来年になったら海へゆかう。そして、ぢいちゃんもいっしょに貝にならう。
― 金子光晴 ―
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