2009年3月27日のブログ記事一覧-ギャラリー貴祥庵 ―《貴志 理の 日々の思いついたままのイメージ絵画、心に残る言葉、歳時の記録を綴る》―


春慶9

 

  ルフラン            ― 谷川俊太郎 ―

 いくらか誇張されいくらか
 縁飾りをつけられていたけれど
 その物語はとても本当の人生に似ていて
 だがそれを読み終えたあとも
 自分の暮らしは続いていることに
 気づかないわけにはいかない
 電車の窓外では街並が切れ一面の菜の花

 たとえば<たとえば>と言ってみて
 ふと<ふと>と言ってみてそのあとに
 生きることのこまやかな味わいのあれこれを
 目録のように並べたてても矛盾は解けない
 束の間の慰めなら一杯の紅茶でも事足りる
 それからいったいどうするのか
 電車の窓外では街並が切れ一面の菜の花

 

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