チュンサンはウエディングドレス姿のユジンに、黄色のバラとカスミソウのフラワークラウンを載せると、ユジンは誓いの言葉を厳かに言った。
「わたしチョンユジンはカンジュンサンを夫とし、生涯慈しみ愛することを誓います。」
その瞳に迷いはなくどこまでも澄み切っていた。
一方チュンサンは苦しい表情で言葉を絞り出した。
「わたしカンジュンサンは、チョンユジンを妻とし、生涯慈しみ愛することを、、、、」
チュンサンは思わず言い淀み、少し口籠もってしまった。なぜなら誓いの言葉は神にも背くものだったからだ。
その時だった。突然教会の扉が開き、サンヒョクがつかつかと入ってきたのだった。ユジンはびっくりしてサンヒョクを見つめていたが、チュンサンはサンヒョクを一目見て、すぐに彼がすべてを知ったことを悟った。チュンサンは氷のように固まってしまい、動くことができなかった。
サンヒョクは「行こう」とユジンの手を無理やり引っ張った。ユジンは泣き叫びながら「チュンサン、チュンサン」とチュンサンにすがるような目で追いながら、引っ張られていった。
「式さえ挙げれば許されるのか?そんなの絶対だめだ。僕が許さない。絶対に結婚はさせない。」と叫ぶとユジンを連れて教会を出た。
ユジンの頭からはフラワークラウンが、教会の床に無残に落ちた。ユジンは泣き叫びながらチュンサンの名前を呼んだが、チュンサンは固まったまま、悲しそうな顔でユジンを見ているだけだった。サンヒョクはユジンの言葉に耳を貸さずに、怖い顔をしたまま車に押し込むと、車をスタートさせるのだった。
チュンサンが呆然と床に座り込んでいると、キム次長がぶらぶらと歩いてくるのが見えた。キム次長は、サンヒョクが血相を変えて、チョンアにユジンの行き先を聞いているのを見て、心配して教会までやってきたのだった。
「ミニョン、お前どうしたんだよ。サンヒョクさんがお前たちを探して血相を変えてたぞ。何かあったのか?ユジンさんはどこだ?」
しかしチュンサンはショック状態で目もうつろだった。
「誰も知らないのかと、、、絶対に誰も知らないと思ったのに、、、知ってたんです、、、」
「おい、ミニョン、今度はどうしたんだよ?なんでそんな恰好をしてるんだ?サンヒョクさんが彼女を連れて行ったのか?」
しかしチュンサンは何も言わずに険しい顔で出て行ってしまった。キム次長は独り困ってしまい、頭をかかえてため息をつくのだった。
そのころユジンは、サンヒョクに連れられて、ソウルのアパートに帰ってきた。自室に押し込められると、ユジンは怒りで泣いていた。ベッドの上でウエディングドレス姿で泣き続けるユジンは、窓際で立ち続けているサンヒョクに言った。
「どうしてよ?理由を教えて。」
その声は怒りに満ちていた。
「結婚させたくなかったんだ。確かに僕は君を手放そうとした。でも結婚は許せない。やっぱりチュンサンには渡せない。彼と別れるんだ。」
サンヒョクにはどうしても本当のことを言うことはできなかった。でも、二人を結婚させることは、人としてできなかった。ここは自分が悪役になるしかないのだ。
「そんなことできないってわかってるでしょ。」
ユジンは氷のような眼差しでサンヒョクを見つめる。サンヒョクは懇願した。もはやユジンのために言っているのか、自分の中でくすぶっている恋心が言わせているのかわからなくなり、自然に涙が浮かぶ。
「すぐに戻らなくてもいいから。とにかく別れてほしい。辛くてもきっと立ち直れる。僕が支えるから。前の僕たちの関係に戻ろう。きっとやり直せる。」
しかしユジンはきっぱりと言った。
「いやよ。絶対嫌。そんなことできない。」
「どうしてだよ?君のお母さんも、チュンサンの母親も猛反対してるじゃないか。誰も祝福してないのに」
「そんなこと関係ないから。誰からも祝福されなくても、反対されても構わないの。全然悲しくなんてないわ。世界中の人に反対されたってかまわないから。チュンサンの愛さえあれば何もいらない。」
涙を浮かべて毅然とした態度で言うユジンに、サンヒョクは衝撃を受けた。ユジンのゆるぎない愛をはっきりと見せつけられたからだった。
「ユジン、とにかくダメなんだ。とにかく、、、ダメなんだよ。」
絞り出すように話すサンヒョクの顔もまた苦しそうだった。ユジンはなおも食い下がろうとしたが、あまりにつらそうなサンヒョクの顔を見て、黙ってしまった。そして静かに涙を流し続けるのだった。
部屋の外で、二人の激しい口論を聞いて、ヨングクとチンスクはうなだれていた。何が何だかわからずに、心を痛めるしかなかった。するとサンヒョクがやつれた顔をして出てきた。チンスクが責めるように言った。
「ユジンの幸せのためなら身を引くといったじゃないの」
「チンスクやめろよ、でも、今まで耐えてたくせに、お前なんで今頃こんなことするんだ?」
「二人とも俺を信じてるだろ。頼むから何も聞くな。二人とも俺を信じてくれ。こうするしかないんだ、、、。お願いだ。」
そういうと、サンヒョクは静かに去っていくのだった。二人ともサンヒョクのただならぬ雰囲気に圧倒されて、黙って立ち尽くしてしまった。
サンヒョクがユジンのアパートを出ると、暗闇に誰かが立っているのが見えた。それはチュンサンだった。二人は静かに視線を合わせて近づいていった。サンヒョクときちんと話さなければならない、チュンサンは覚悟していた。