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冬のソナタに恋をして

あの日の夜1


ジヌは幼少時から、ミヒと結婚するのだと信じて疑わなかった。彼の家もミヒの家も裕福で、春川では有名だったので、両家は何かあるごとに交流をしていた。誕生日、春節、入学式や卒業式、ジヌのアルバムにはいつも利発そうなミヒの笑顔が収まっている。一方で恋心を募らすジヌに、ミヒはいつもそっけなかった。それはまるで姫と家来のようで、勝ち気なミヒはいつもジヌにいろいろ命令してはジヌを思い通りに動かしていた。それでも、おとなしくて純朴なジヌは、彼女といることがうれしくてたまらなかった。

そんな二人の関係が変わったのは、春川第一高校に入学してしばらくしたころだった。高校でも美しくて聡明でお金持ちのミヒは、相変わらず一目置かれていた。子分のようなおとなしい女子生徒たちやジヌを従えては、自由気ままにふるまっていたのだ。しかし、隣のクラスのチョンヒョンスと出会ってから、ミヒは少しずつ変わっていった。傍若無人の振る舞いが少なくなっていった。一方でジヌも、ミヒを通じてヒョンスと知り合い、やがて友情をはぐくんでいった。ヒョンスは周りにいる金持ちの友達とは違って、苦労をしている分優しくて懐が深い一面を持っていた。ミヒがヒョンスに夢中になっていったのと同じような理由で、ジヌもまたヒョンスのことが大好きになっていった。ジヌはミヒがヒョンスを好きなのは知っていたが、自分もヒョンスの親友だったので、特に嫉妬することもなく、3人は次第にいつも一緒にいるようになっていた。


ある日のことだった。ジヌの家にヒョンスとミヒが遊びに来ていた。いつものように庭でおいしいケーキとお茶を飲んだり、ミヒのピアノに酔いしれたり、大好きな詩を朗読したり、楽しんでいた3人。しかし、ジヌの父親が3人の写真を撮ろうとしたときにそれは起こった。ポーズを決めて、と言う父親に、ミヒはそっとヒョンスの右腕に自分の腕を絡ませて、悠然と微笑んだのだった。固まって困惑した表情になったヒョンス、びっくりして真顔になった自分が写真に納まっている。そのときジヌは初めて嫉妬という感情を覚えたのだった。

それから時は流れて、3人は高校を卒業してジヌとミヒはソウルの大学に、ヒョンスは春川で就職をした。ジヌはミヒとソウルで何度か会ったが、彼女はいつもヒョンスの話ばかりしていた。二人は付き合っており、ミヒは相変わらずヒョンスに夢中だった。そんな彼女に、ジヌはいつも自分の心を押し隠して相槌を打つのだった。ジヌにとって、二人は完璧なカップルに見えていた。きっといつかは結婚してしまうのだろうと、寂しい気持ちでミヒを見つめていた。

しかし、大学3年の時思わぬことが起こった。しばらくぶりに会ったミヒは驚くほど憔悴しており、ジヌに会うと無表情のまま、ヒョンスが心変わりをして別れたことを打ち明けた。ジヌはびっくりして、その足で春川に帰ってヒョンスを訪ねた。すると別れを告げたヒョンスもまた憔悴した表情で次のように話した。「ミヒは理想の女性だった。でも結婚して生活を共にすることは考えられなかった。そんなとき、同じような境遇の女性に会った。僕は自分を理解してくれる彼女と結婚して家庭を築きたい」と。聡明なジヌは、ミヒの気持ちもヒョンスの意見も、両方とも納得できるものだと思った。だからどちらとの友情も続けようと考えた。

その次の年の1月、ヒョンスと相手のギョンヒは通っている教会で簡素な結婚式を挙げた。もちろんミヒは欠席だったが、相手のギョンヒもまたヒョンスに劣らず芯がしっかりして心優しい女性だったので、ジヌは心から二人の結婚を祝福した。その夜のことだった。その日はジヌの両親は海外旅行に出かけており、ジヌは独りきりで酒を飲みながら、ヒョンスの結婚式を思い起こしてほっこりとした気分で酔っていた。すると突然電話が鳴った。それはミヒからだった。ミヒはとても暗い声で泣いているようだった。


「わたし、わたし、、、、今日ヒョンスの結婚式を見てたの、、、、彼のあんなに幸せそうな顔を見たことがなかった、、、許せない、、、あいつもあいつの女も許せない、、、、彼は私と結婚するはずだったのに、、、指輪ももらったのに、、、、」

そういうと後は言葉にならずに嗚咽が延々と聞こえてきた。

「ジヌ、わたし死ぬ、、、今すぐ死ぬ、、、」

ろれつの回らない口調でミヒはつぶやいた。どうやら泥酔しているようだった。

「ミヒ!いったいどこにいるんだ?家か?」

ミヒは泣きながらわめいていたが、最後にぽつりと言って電話を切った。

「あなたたちと高校の時に、、、よく行っていったところ、、、。」

ジヌは車のキーをひっつかむと、全速力で高校時代によく訪れた春川の川のほとりに向かった。どうか間に合ってくれと祈りながら。

コメント一覧

kirakira0611
@breezemaster さま、ありがとうございます😊
たしかに写真を見たら悲しくなりますよねー。わたしもそう思います。
入水自殺を結婚式の日にはかったのをジヌが助けたのはストーリー上動かせないので、あとは創作で書いてみました。
ジヌは本編では脇役でボーっとした感じですが(笑)教授の割には、、、かなりのキーマンでこの人がいろいろやらかさなかったら、話はごちゃごちゃにならなかったでしょう(笑)
今日もありがとうございました😊
良い週末をお過ごしください♪
breezemaster
こんばんは^^
お姫様だったミヒ、
純朴なジヌは、彼女といることがうれしくてたまらなかった。
そんなジヌの気持ちを変えさせた3人での写真、
何度も見たこの写真に、まさにこんな物語があったと感じさせていただけるストーリー、
kirakiraさんの文章力、ストーリー構成のアイデアに、
今日も感心しきりです。
私がジヌだったら、私がこの写真を見たら、悲しさと嫉妬、
そんな気持ちを持ったと思います。
それでもミヒから、嗚咽の電話を貰ったら、全速力で向かう気持ち、
今回、ドラマだと見えなかった、
ジヌの気持ちの変化をたくさん感じさせていただきました。
ありがとうございます。
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