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冬のソナタに恋をして

初雪のデート 高校生⑫

 ヒジンの「初雪だ」という声で、ユジンは飛びあがって窓辺にかけよった。待ちに待った初雪の日。チュンサンと落ち葉焚き当番で約束したデートの日。

ユジンは薄緑色のダウンジャケットと緑のセーターに白いズボンという格好で南怡島に出かけた。チュンサンは来るかしら、と胸がドキドキする。
 
一方、チュンサンはグレーのダウンジャケットに紺色のセーター、茶色のズボンという格好で内を飛び出した。雪が積もる南怡島で、ユジンは待っていると信じて。
 
ユジンは誰一人いないメタセコイヤの並木道をひとり歩いていた。雪は深々と降り積り、何の音もしない。世界で一人ぼっちになった気分になった。

そのときどこからが雪玉が飛んで当たった。
チュンサンがとびきりの笑顔で笑っていた。
「何してるの?」
「誰かさんと待ち合わせ」
「ユジナは?」
「わたしも待ち合わせ。もうすぐ来ると思うの」
「じゃあそいつのかわりに遊んでやるよ」
 
ふたりは満面の笑みで微笑みあった。ユジンは木の枝を揺さぶってチュンサンに雪をかけた。すると、チュンサンは雪玉を投げて、ユジンの服に次々と当てた。
 
雪は、お日様の光を浴びて宝石のようにかがやいていた。ユジンは白い肌を薔薇色にして、夢中で雪合戦や雪だるま作りをした。
チュンサンもまるで小さな子供のような無垢な笑顔で雪のバレーボールや、誰もいない雪原に足跡をつけるのに夢中になっている。
ユジンはひょこひょこと歩くチュンサンの足跡をなぞるため、思い切りジャンプをして、チュンサンの後を追った。いつまでもチュンサンの跡を追いかけていたかった。


やがて、2人は小さな雪だるま作りを始めた。ひとつはチュンサン、ひとつはユジンだ。ユジンは雪玉に口をつけながら、そういえばまだチュンサンに自分の気持ちを伝えていないことを思い出した。
「この子があなたに話したいことがあるって。今度教えてあげるね」
するとチュンサンが二つの雪だるまを近づけてキスをさせた。
「おまえたちはいいなぁ」
ユジンはしばらく考える仕草をして、チュッとチュンサンの左頬にキスをした。
すると、チュンサンがニッコリ笑ってユジンを優しく見つめたあと、
「ユジナ」と柔らかな声で名前を呼んだ。
そして振り向いたユジンの唇に素早くキスをした。
ユジンは急なキスにびっくりしてしまい、目をまんまるくした。するとチュンサンは、可愛くてたまらないという風にまた飛び切りの笑顔を見せた。
初めてのキス。
冬の日差しがキラキラと2人を照らし出す中で、顔を見合わせて照れ臭そうにいつまでも笑っていた。誰かと一緒にいて、こんなに幸せなのは初めてだ。今日が終わらなければいいのに、2人は日暮れまで汗びっしりになって遊んだ。
 
 


夕方近くになり、おなかが空いたので、2人は島の喫茶店に入った。そこで、アツアツのホットックとココアを一緒に食べた。
「2人で分けて食べると美味しいね」
ユジンはストーブで顔を赤く染めながら、太陽のような顔で笑った。
チュンサンはまだ冷たいユジンの両手を握りしめながら、一日を振り返っていた。こんなふうに、これからもユジンと毎日を過ごしていきたいと心から願った。母親は年末にチュンサンをアメリカに連れて行くつもりだけれど、父親のこともユジンのことも中途半端なまま韓国を離れるのは嫌だった。
 
帰り道、チュンサンはユジンと大晦日にデートの約束をした。まだ、ユジンに愛しているとも付き合ってとも言っていない。年内にきちんと気持ちを伝えたかった。今では何もかも包み込んでくれるユジンなしでは生きていけないとすら思っていた。それに、とっておきのクリスマスプレゼントも渡したい。
「チュンサン、お互いに好きな物を言い合いましょう。好きな色は?」
「白」
「好きな季節は?」
「冬!」
「なぁ、一緒に言い合うんじゃなかったの?」
「チュンサンが好きな物を全部覚えておきたいの」
ユジンは無邪気に笑った。
「じゃあ好きな花は?」
「白いバラ!」
「好きな動物は?」
「犬。チュンサンは?」
「人間!」
「だあれ?教えて」
「大晦日にツリーの下に来て。教えてあげるよ」
「じゃあわたしも好きな動物を教えてあげるね」
二人は幸せそうに微笑みあった。
 
 
それからも2人は、ゆっくりゆっくりと帰り道を歩いていた。もうすぐうちに着いてしまう2人は寂しくて、離れたくない気持ちが抑えられなかった。今日という日が終わらなければいいのに、とさえ思った。ユジンはそっと繋いでいた手を離して、濡れてしまったチュンサンの手袋の代わりに、自分の手袋を貸してあげた。
「大晦日に返してくれればいいから」
そうすれば、チュンサンとの約束が確実になるような気がして、思わずそう言った。
そして名残りおしそうなチュンサンを夕食に誘った。
「良かったらうちでご飯を食べてく?」
するとチュンサンの顔がパッと明るくなった。ユジンは手を引いて、うちの中に彼を引き入れた。

コメント一覧

kirakira0611
おはようございます。コメントありがとうございます😊
何度も足を運んでいらっしゃるんですね。
うらやましいです。
ユジンのうちはソウルなんですね。
多分いろんな場所が建て替えになったんでしょうね。時の流れを感じます。
お土産屋さんとか、商売に関係する方は日本語がペラペラですよね。商魂てスゴイです、、、。
ありがとうございました。
aqua_marine
懐かしいです。南怡島の雪だるまの乗ったテーブルとベンチ…見てきました。階段を上ったところにあるユジンの家もソウル中央高校(遅刻しそうになり走った校門)のすぐそば。今はお医者さまが買われて建て替えされています。ソウルに行ったらすぐそばの土産物屋さんのオバさんを訪ねて世間話をしています。日本語でですが💦
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