見出し画像

冬のソナタに恋をして

合宿 高校生⑪

チュンサンは最後まで放送部の合宿に参加するか迷っていた。サンヒョクにユジンのことは本気でないと言ったのを聞かれてしまった。その誤解を解きたいのに、肝心な「ごめん」のひと言が言えない自分が歯痒い。それでも、すべてが手遅れになる前に、とりあえず参加をしようと決心した。

放送室でびんたされてから、ユジンは一言も口を聞いてくれないばかりか、目も合わせようとしない。だから合宿に行っても気まずい思いをするだけだと思ったが、それでも謝りたくて、勇気を出して駅に向かった。

案の定ユジンは会ってもチュンサンの顔すら見てくれなかった。これでもかというほど、サンヒョクと楽しそうに話している。多分、わざとではないのだろうけれど、今の自分にはそう見えるのだ。みんなも微妙な空気を感じて、なんとなくぎこちない雰囲気になってしまった。嬉しそうなのはチェリンとサンヒョクだけ。それでも、ヨングクもチンスクも面白いし、冬の空や冷たい空気は気持ちよく、来てよかったと思っていた。
 
夕食後の楽しいゲームのあと、チュンサンは席をそっと離れたユジンの後を追った。しかし、ユジンはチュンサンの話をちゃんと聞いてくれず、売り言葉に買い言葉になってしまい、そのままどこかに行ってしまった。どうして僕らは素直になれないんだろう。
 
ロッジに戻ると、みんながとっくに帰っていたユジンが戻らないと騒いでいる。チュンサンは慌てて、懐中電灯を片手に、山に飛び出した。汗びっしょり💦になりながら必死に探した。
だいたいこの辺では、とあたりをつけて探していると、懐中電灯の灯りの中にユジンの姿が見えた。少し足首を捻ったようで、顔を顰めている。その顔には涙の後がいっぱいでチュンサンの胸がぎゅっと痛んだ。
「ユジナ」と叫ぶとユジンがはっと顔をあげ、すがるような目つきでチュンサンを見つめた。そして安心のあまり、わっと泣き出して抱きついてきた。チュンサンもユジンを抱きしめて「よかった。もう見つけられないかと思った。」と安どした。ユジンの甘い香りを嗅ぎながらユジンを2度と離したくないと強く抱きしめて思った。
 
チュンサンは、すっかり身体が冷えたユジンに、自分のマフラーをふわりと巻き付けた。チュンサンのにおいがユジンを包み込んで、ほっとして涙がまた流れそうになった。
チュンサンは、真剣な顔でユジンに言った。
「僕、ユジナの事本気だったんだ。どうしてもそれだけは伝えたくて、、、」
するとユジンがニッコリ笑って
「わたし、チュンサンのこと嫌いじゃないわ」と言った。チュンサンは思わず笑ってしまった。
しばらく歩いていると、ユジンが心配そうに
「山小屋がどこか分かってるの?」と聞いてきた。
チュンサンは北極星について教えてあげた。北極星はカシオペア座と北斗七星の間にある大きな星でポラリスと呼ばれていること、ポラリスは季節が変わっても決して動かないことを。
「これからは道を迷ったら真っ先にポラリスを探せば大丈夫だよ。ポラリスだけはいつも同じ位置にあるから」
ユジンはまるでチュンサンは自分のポラリスみたいだ、いつも自分を助けて安心させてくれる、と感じていた。
一方チュンサンもいつも自分を優しさで包み込んでくれるユジンは、自分のポラリスのようだ
と思った。
2人は微笑み合いながら手を繋いで山小屋に向かった。
 
次の日の朝、すっかり足首の調子が良くなったユジンは早起きして散歩に出かけた。針葉樹の木立の間から朝日がのぼり、そこら中が赤くそまり、別世界にいるような気分になった。
「おはようユジナ」
チュンサンが上着をふわりとかけてくれながら、あの溶けてしまいそうな笑顔で立っていた。上着からは焚き火の匂いと、チュンサンの匂いがほのかにしている。ユジンは、やっぱりチュンサンが大好きだ、チュンサンがもしも自分に本気でなくても構わない、と思わず思ってしまった。
2人はしばらく森の中を散歩して、昨日仲違いした分を埋め合わせるように、朝の散歩を存分に楽しんだ。やっぱり自分はユジンが大好きだ、愛おしくて離したくないとチュンサンはあらためて思った。そんなチュンサンの心も知らず、ユジンは無垢な目でチュンサンをじっと見て、太陽のような笑顔でにっこりと微笑んだ。チュンサンは心の中が満たされて、とても幸せな気持ちになった。
2人は黄金色の光の中を微笑みながら手をつないで、ゆっくりと歩いて行った。
 
一方、サンヒョクは前日とは打って変わって、不機嫌な様子だった。昨夜、帰ってきた二人が手をつないでいたのもショックだった。それだけでなく、サンヒョクは朝一人で歩くユジンを見つけて声を掛けようとしたところ、仲睦まじく話し始めた二人を見てしまったのだった。そのことにショックを受けて、春川駅でみんなが朝ごはんを食べるというのに、ひとり帰ると言ってさっさと行ってしまった。ユジンは慌てて後を追った。すると、サンヒョクはまたチュンサンはユジンを弄んでいるのだと言いはじめた。
ユジンははっきりと言った。
「サンヒョク、違うの。私が好きなの。私がチュンサンを好きなの。」
ユジンの真剣な表情に、サンヒョクはショックを受けて走り去った。ついに恐れていた一番聞きたくない言葉を聞いてしまった。
ひとつの恋に終止符が打たれた瞬間だった。
 
 

コメント一覧

kirakira0611
ツッコミありがとうございます😊
kirakira0611
@hananoana1005 ありがとうございます。
ちなみに口にはしてないので、ストーリーは壊してないかと(笑)ほっぺです。
hananoana1005
今晩は~
初キッスは雪だるまのシーンだよね?!
もうひとつの「冬ソナ」だね~
ちょっと新鮮!
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「冬のソナタ 1.2.3話 高校生」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事