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冬のソナタに恋をして

父親を探して1 高校生番外編①

カンジュンサンは、物心がついた時から、自分の家は普通ではないのだと、何となく感じていた。母親のミヒは、チュンサンには言わなかったが、未婚のままチュンサンを産んだことで、自分の両親とは絶縁していたので、天涯孤独だったのだ。

ミヒはいつもピアノのリサイタルで世界中を飛び回っていたため、幼稚園の頃からお遊戯会や運動会、参観会などあらゆる行事はお手伝いさんが出席していた。しかも、お手伝いさんは都合で数年で代わってしまうので、愛着を感じてもある日突然別れが待っていることになり、チュンサンは次第に心を閉ざすようになった。
 
幼稚園に入ると、周りの子たちには「父親」という人がいて、それは母親とセットになっているもので、友達がその真ん中で笑っているのを見ると、どうしようもない寂しさを感じるのだった。
 
時々帰ってくる母親に
「お父さんはどこにいるの?」と聞くと、必ず
「あなたが生まれてすぐに死んだの」という答えが返ってくるのだが、母親の動揺する様子を見るたびに、生きているけど自分に会わせたくないのだと、幼心に感じた。
ミヒは、小さな頃から無口で物静かで影がありなかなか懐かない、子供らしさが皆無の息子にどう接して良いか分からず、いつも悩んでいた。
 
小学生になると、チュンサンはますます無口で陰気な子供になった。それは生い立ちと母親からの愛情不足だったが、ミヒにはそれが分からなかった。
チュンサンは次第にクラスから孤立して、友達にいじめられるようになった。でも、チュンサンはそれを誰にも言わなかった。
 
ある日ミヒが家にいるときに、チュンサンは真剣な顔つきで尋ねた。
「お母さん、みんなが僕をシセイジって言うんだけど、シセイジって何なの?」
ミヒはそれを聞いて、息子が小学校でいじめられていることを知り、ハラハラと涙を流し、チュンサンを抱きしめた。そして、チュンサンを他の小学校に転校させて、リスタートすることにした。
チュンサンは、母親の涙を見て、その言葉を胸にしまい、二度と口にしなかった。その言葉の意味を知ったのは何年も後のことだった。
そして、二度と母親を悲しませない事と、どこかにいるだろう父親にいつか会うときに胸を張って会えるように、勉強やスポーツに全力で打ち込むようになった。表面上は友達ともそつなく付き合い、中学生になる頃には誰からも一目置かれる存在になった。しかし、相変わらず愛されたいという強烈な寂しさは胸の中で燻っていた。
 
そんなある日、母親がまた海外に行っているため、寂しさからミヒのアルバムを開いていた。すると、手が滑ってしまい、アルバムが床に落ちた。床の上に20歳ぐらいのミヒと、左隣には微笑む優しそうな男性が写っていた。右側は破られたのか一部がなくなっている。どうやら他の写真の裏側にこっそりと隠されていたらしい。チュンサンはこの男性こそ父親に違いないと確信した。ついに自分のルーツと母親と今一緒にいない理由がわかるのだ。
 
 
チュンサンはすぐに弁護士に電話した。その弁護士は小さな頃からチュンサンの学費など財産管理をしている信頼のおける男性だった。そして理由は言わずに、写真の人物の身元を探し出してくれるように頼んだ。
 
少し時間はかかったが、やがてその男性は春川の大学で数学の教授をしているキムジヌだと判明した。ジヌには妻とチュンサンと同い歳になるサンヒョクという息子がいることが分かった。サンヒョクとチュンサンはちょうど半年違いでチュンサンの方が月齢が高かった。母親は24歳ぐらいでチュンサンを産んだことになる。大学院卒業間近の時だろう。母親は不倫していたのだろうか。チュンサンはかなりのショックを受けた。そして、ミヒには言えない秘密を持ったことで、より一層ミヒとの心の距離は離れた。
 
それでもチュンサンは勉強を頑張り、ソウル科学高校という名門校に合格した。そして2年のときには数学オリンピアードで金メダルに輝いた。それも全て父親に近づきたい、誇れる息子でありたいという気持ちからだった。また、何かに夢中にならないと、自分自身が壊れてしまいそうな気がした。
 
高校2年の夏、チュンサンは思い切って春川第一高校に転校したいと訴えた。もちろん、自分の父親に会って息子だと告げたからだが、父親の生活や、その高校に通っている異母兄弟のサンヒョクにも会いたかった。自分には兄弟がいるのだ、血のつながった人間がこの世にいると思うと、チュンサンの孤独感に火が灯るような気がした。
ミヒはもちろんチュンサンの考えなど知らなかたが、猛反対をした。春川に家は置いたままだけれど、帰りたくもない嫌な思い出ばかりある故郷だ。
しかし、生まれて初めてチュンサンは懇願をした。そして、自室から出てこないという強行手段までして訴えて、ついにミヒの許しを得た。
ただし、一学期だけの転校で、そのあとはアメリカに行き、そのまま大学に入る準備をすることが条件だった。
それでもチュンサンは喜んだ。
秋も深まった頃、チュンサンは春川に向けて出発した。
自分の未来が明るいものになると信じて。

コメント一覧

kirakira0611
@hananoana1005 さま、ありがとうございます😊
これは何も参考にしてない完全な創作なんです。わたしもhanatyanさまと一緒で納得いかなかったので、書いてみたのを思い出してリンクしてみました。こんな感じで納得していただけて嬉しいです。
ありがとうございました😊
おやすみなさーい。
hananoana1005
キラキラ✨さん~
拝見しました❗️
創作なんですよね⁉️
凄いです❗️
脚本家は本当はここまで書いておかないとダメなんですよね。
ドラマに実際表れなくても。

初めて春川に来た理由が繋がりました。
視聴者はなんとなく、ぼんやりと想像していただけだったけど…
スッキリしました❗️
有り難うございます💚
kirakira0611
おはようございます。コメントありがとうございます。
わたしは卒韓してます。
ブログのお写真がキレイで、海が大好きなので、フォローさせていただきました。
これからも楽しみにしてます。
よろしくお願いします。
kirakira0611
りぼんさん、おはようございます!
歴史系のドラマが好きなんですね。
中国ドラマを観てる方って多いんですね。
TSUTAYAに行くと感じます。
ちなみにわたしはこんなブログを書いておいて、最近はもっぱらアメリカドラマしか観てません。
1話完結で、人間関係がドライなんで、観ても疲れません。
またよろしくお願いします。
lovecatrose
はじめまして。
りぼんと申します。
私のブログに、いいね。ありがとうございます。
フォローさせていただきます。
以前、韓国ドラマは観ていましたが、夫が好きではなく、
夫の定年で、観ることが出来なくなりました。
ファンジニとか、韓国ドラマでも、歴史系が好きだったんですけどね。
今は、何故か、1人で中国ドラマ(歴史系)を観ています。(笑い)
よろしくお願いします。
e29012h
初めましてフォロー有難うございました。私も宜しくお願い致します。
卒韓もしていなければ入韓(笑)もしておりません
貴ブログにて今更ですが冬ソナ入韓させて頂きます
追々読ませて頂きますね。
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