目の中のリンゴ

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「小さいおうち」 中島京子

2010年09月10日 | 読書
今年の直木賞受賞作。
いろいろの書評が非常に好評で、
興味があったので図書館で予約。
思いのほか早く回ってきてヨカッタ。

「小さいおうち」(中島京子 文藝春秋)

昭和5年、14歳の時に東北から東京へ
女中奉公に出た主人公タキ。
美しい時子奥様と出会い、
妹のように可愛がってもらった記憶。
時子奥様が二度目の結婚で嫁がれた、
赤い屋根のモダンな洋館。
ブリキ玩具会社にお勤めの旦那様と
連れ子である恭一坊ちゃまとの日々を
年老いたトキが回想録に綴っている、という形で進む物語。

戦前戦中、そして戦後の、
少し裕福な家庭の暮らしぶりがリアルに、
そして丁寧に描かれていて、ホンモノの手記のようで
小説ということを忘れそうなくらい。
情景が目に浮かんでくるようです。
筆者の中島さんは膨大な資料を調べ、読まれたことでしょう。

時々、手記を書いている現在のタキの視点に移り、
それを甥の息子である現代っ子がツッコミを入れる。
戦時中、こんな暢気なわけがない。
本当の戦局も知らずに浮かれていたのか?など。

ほんとうに、この物語を読んでいると
大変な世の中にも、工夫して
暮らしを楽しんでいるようにも思えるくらい。
身内が出征したわけでもない、ちょっと裕福な家庭では
こんな様子だったんでしょうね。

お仕えするお家が本当に大好きで、
良い女中であろうとするタキ。
市原悦子というより、猫村さんを思い出す。

彼女が60年後も胸にしまう、
大事な思い出と秘密が、ちりばめられ
最終章でクライマックスへと導かれます。
可愛らしい表紙と裏表紙の絵の意味もわかります。

夢中で読んでしまいました。
もっと読んでいたかったくらい。
自分でも買おうと思う一冊です。

余談ですが、
この物語の中でも出てくる
バージニア・リー・バートンの絵本、
「ちいさいおうち」、昔、好きだったので、
子供が生まれた時に買ったんです。
でも、なんか記憶の中の絵と違う・・・。
ストーリーは間違いないのに・・・と思っていたら、
私が読んでいたのは、ディズニーがアニメ化したものの
絵本だったみたいです。
動画サイトにそのアニメがあって、
とても懐かしかったです。
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