今年の桜はスタートダッシュという。



上野の森美術館ではVOCA展2025ー現代美術の展望・新しい平面の作家たちー開催中。

佐藤香。
推薦者:大政愛(はじまりの美術館学芸員)。
佐藤香(1987~)は福島県生まれ。東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コース卒業。東京藝術大学大学院美術研究科壁画専攻修了。
作品名:私たちは、ここで生まれた。
素材:パネル、土、木の枝、花、マニキュア、バスケットボール、水溶性樹脂。
サイズ:194×391×5㎝。

佐藤は、東日本大震災後に実家(福島県田村市)の土を使用して作品を制作したことをきっかけに、全国の様々な土地を訪ね、そこで出会った人々と交流を重ねながら、その土地の身近な素材、土や炭や植物を使用して、土地と人のつながり、生命の循環などをテーマに制作を続ける。
全国各地で起こる災害やコロナ禍を経て、人の移動や地方と都市の関係性や感じ方の変化に関心を寄せているという。
今回の作品は、田村市にルーツを持つ属性の異なる3名とのコミュニケーションから生まれた。



佐藤壮馬。
推薦者:宮井和美(モエレ沼公園学芸員)。
佐藤壮馬(1985~)は北海道生まれ。ロンドン大学UCL人文学部ファンデーションコース修了(近代西洋文学及び芸術史・人文地理学・批判理論専攻)。同大パートレット校建築学部建築学科中退。
作品名:種の連環。
素材:エンカウスティーク、イチョウの葉、鏡。
サイズ:200×300×5㎝。

佐藤は、自然と人間とが築き上げてきた形容しがたい関係性に興味を持ち、丹念な調査を重ね、作品に反映する。
イチョウは2億年以上前に出現した最古の現生種のひとつである。3度の大量絶滅期を生き延び、現代では絶滅危惧種に指定されている。
近代以降の日本では街路樹や公園樹として植栽が推奨され、人間と密接な関係を築いてきた。
この作品に用いられるイチョウの葉は、街路樹が描き出す都市の輪郭をなぞりながら佐藤が毎晩採取したもので、1枚ごとにその日付が刻印されている。
人間は2億年命をつないでいけるとは思えないと思いながら眺めていた。



澤田華。
推薦者:茂原奈保子(長野県立美術館学芸員)。
澤田華(1990~)は京都府生まれ。京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程修了。
作品名:軸足の確認(壁、用紙、センター合わせ)
素材:インクジェットプリント、紙、画鋲、磁石。
サイズ:42×59.4×0.4㎝が6点、84.1×59.4×0.4㎝が1点。


今回展示されてる7枚の紙は、澤田が撮りためたスナップ写真をプリントした紙を、壁面やガラスに貼ったり、屋外に持ち出したりして「再撮影」した様子が写されいる。という。
一見、感性頼りだけの不規則に見えるけど、「イメージ」に着目すると見えてくるものがある。


スクリプカリウ落合安奈。
推薦者:山田裕理(東京都写真美術館学芸員)。
スクリプカリウ落合安奈(1992~)は埼玉県生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
作品名:ひかりのうつわ。
素材:発色現像方式印画。
サイズ:250×400×5.8㎝。

落合の父方の故郷はルーマニア。
コロナ禍を経てようやく訪ねることができた場所での経験の昇華。
テキストが印象的。

長谷川彰宏。
推薦者:菊池真央(埼玉近代美術館学芸員)。
長谷川彰宏(1997~)は三重県生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。同大大学院美術研究科デザイン専攻修士課程修了。
長谷川は、10歳の時に戒光山西教寺にて得度し、天台宗盛宗西教寺にて四度加行を満行している。
作品名:懺悔、来迎、祈り、あるいは地平線 Ⅲ。
素材:油絵具、アクリル板、木製パネル。
サイズ:227×291×4㎝。

構図は仏画の「山越阿弥陀図」からの引用だが、私の心には長谷川作品の方がグッとくる。
阿弥陀は無限の光。
長谷川は現代の無限の光を追い求める。



Barrack(古畑大気+近藤佳那子)。
推薦者:秋葉史典(名古屋大学大学院情報学研究科教授)。
古畑大気(1987~)は長野県生まれ。愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域修了。
近藤佳那子(1987~)は三重県生まれ。愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域修了。
作品名:The sign for the next space is titled Fascia.。
素材:ターポリン、油絵具、木枠。
サイズ:238.5×392×3.7㎝。

「Barrack」の名は、今和次郎の「バラック装飾社」に由来するという。彼等の作品は、関東大震災後のバラックに絵を描き、街や生活を少しでも美しくしようとした今のマインドを受け継ぐ。
「よしとしているものは似ているけど、どうよしとしているかは違う」
2人は、美術を食・歴史・音楽などと交わらせ、生きた場所や人との多層な関りの中で作品やスペースを着地させてきた。という。


