金木病院

太宰治のふるさと津軽の金木町。危機に瀕した金木病院がみんなの協力でもちこたえました。

救急再開の現場記録!

赤字が倍に!

2007年03月31日 07時20分40秒 | 金木病院を守ろう
金木病院 赤字3億円
06年度決算見込み 救急停止で患者減

『陸奥新報』
http://www.mutusinpou.co.jp/news/07033006.html

医師不足で今年一月から救急車受け入れを休止している公立金木病院(五所川原市金木町)の二〇〇六年度の収益的収支の決算見込みが二十九日、分かった。休止が明らかになった昨年十二月以降、入院・外来患者数とも減少が顕著で、同年度の純損益は前年度(約一億三千八百万円の赤字)を上回る約三億円の赤字見込み。

入院・外来の一日平均患者数は昨年十二月ごろから落ち込みが続き、今年二月は入院百六・八人(〇六年度目標値百五十一人)。同年度の経常収支は約十五億六千八百八十万円。純損益は約三億円の赤字。累積欠損金は約十九億二千四百八十万円の見込み。

病院を運営する事務組合管理者の平山誠敏五所川原市長によると、救急車受け入れ後も、タクシーや自家用車での外来は時間外も受け付けている。しかし「時間外診療すべてが休止した」と誤認する地域住民もおり、収支を圧迫する要因になっているという。

このため同事務組合側は時間外診療の周知を図るととともに、救急体制の早期復活に向け、現在二人の常勤内科医を三人体制にするため医師確保に努めている。

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夜間の時間外外来の利用が低下したのは誤認もあろうが、金木病院が救急体制を失うとともに失った地域住民の信頼感にある。不完全な病院より、まともな病院を選ぼうとするのは人情というものだ。また、救急取り下げの引き金となった「内科医二名」の退職により、内科患者を西北中央病院に向かわせている傾向もある。

自治体病院の生命線は救急体制にある。民間の医療機関がカバーしきれないものであるがゆえに税金を投入している公的医療機関がはたすべき本務である。

救急取り下げによって金木病院は心臓部を抜かれた。赤字が前年度の倍になったことがその証左である。

医師は引く手あまただからどこでも勤務先を変えることができるし、また開業という手段もあるだろう。しかし、地域に生きるわれわれはそうはいかない。泣きをみるのは住民だけである。

一日も早く救急を復活して金木病院の信頼を回復しなければならない。

県議選、今日告示

2007年03月30日 08時11分47秒 | 金木病院を守ろう
医療問題 大きな焦点に 医師不足、立候補予定者の政策は?
競う「充実」「安心」
「具体策困難」冷めた見方も

『朝日新聞』青森地方版

今回の県議選では、医師不足を中心とした医療問題が大きな焦点になりそうだ。この数年、県内の自治体病院で医師の充足率が落ち込み、この状況をどのように改善するのか。医療の充実を掲げ、有権者にアピールする立候補者も少なくない。

藤崎町の福島公民館で23日夜、南津軽郡区で立つ予定の自民党現職阿部広悦氏(59)の県政報告会があった。30人ほどが集まり、配られたパンフレットには阿部氏の訴えが記されていた。四つの政策の一つとして「がん対策の充実」をうたい、がん検診受診率の向上を訴えている。

阿部氏は「議会の一般質問で、知事に『がん検診日本一の県を掲げよう』と問いかけました」と自らの取り組みを語った。最後に「がん検診に行ってけへ。4月8日には県議選の投票に行ってください」と締めくくった。

同じ南津軽郡区に民主党公認で立候補予定の新顔成田文雄氏(56)は、有権者に訴える政策を農業問題に絞る予定だ。

五所川原市区では、中核病院を中心とする自治体病院の再編問題が大きな課題として浮上している。

五所川原市の財政が厳しく、新しい中核病院の基本設計費を今春の一般会計当初予算に盛ることができなかった。公立金木病院は医師が減り、年初から救急車の受け入れを休止したままで、住民らは反発している。

中泊町を含んだ同選挙区は定数3に現新4人が立候補を予定する激戦区の一つでもある。4人が告示前に配布したパンフレットでは、それぞれが医療について触れている。

自民唯一の現職成田一憲氏(68)は「地域の医療・福祉の充実」を四本柱の一つに据える。公立金木病院については「救急医療体制の一日も早い復活」を訴える。

民主の現職今博氏(55)は、同党公認の県議選候補者共通の政策として「格差をなくして県民が助け合う仕組みをつくる」とし、「医療・介護の安心」を掲げている。

自民公認で新顔2人も立つ。寺田達也氏(44)は「少子高齢化対策の充実による豊かな長寿福祉社会を形成する」。櫛引ユキ子氏(53)は「医療の充実」「高齢者が健康作りに励み、充実した人生を過ごせるような諸施策の実現」を主張する。


県議の中には、冷めた見方もある。「医師確保とか具体的な公約は掲げられない。県議1人で何ができるのか。医師確保でも、国会議員や県に働きかけて一緒に実現していくものだ」(自民現職)と話し、公約に掲げることに消極的な議員もいる。

県内では医師不足のため、地域間で医師の取り合いになっている現状があり、県幹部は「地域代表の県議がまとまって医師確保のための政策を打ち出すのは難しいのでは」と話した。

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当記事のとなりに「各政党が談話 雇用・医師を確保」が載っている。青森県の県議会選挙は医師不足問題を中心におこなわれる。立候補者には当選のあかつきには全力で医師招聘に取り組んでいただきたい。

ところで、もう弱気の候補者がいるのはなさけない。医師不足は国策であることは論を俟たない。県議こそが国に「もの申す」立場にあることをわきまえていない。

住民は住民の立場で議員は議員の立場で悲惨な県の医師不足問題に取り組むのは当然のことではないだろうか。こんな議員がいるから、先の県民アンケートで明らかになったことだが県議会の信頼が地に落ちているのだ。まるで反省がないことだ。

医師招聘という大きな問題にあえて挑戦する勇気ある議員の誕生を願わずにいられない。

アンケートから

2007年03月29日 09時16分34秒 | 医師アンケート
青森県内総合病院勤務医の方々からいただいたご回答から特に印象にのこったものを2つ紹介する。

◇アンケート7「地方の医師不足」・・回答D「国策の問題」

「現在の状態の理解がうすく、今後の国としての方針が見えてこない。地域ごとに今まで通りやるのか、拠点をつくって集約化するのか。現在集約化しているのは、地方でやむをえず統合しているものばかりである」

・金木病院もそうだが、地域に必要な病院を「集約化」という名前で、いかにもムダを省き効率化することが良いことのように宣伝しているが、実態はご指摘の通り「やむを得ず統合」しているのである。問題のすりかえである。この現実を直視し根本的に問題にとりくまなければならない。はじめに統合ありきでは青森県の医療はジリ貧となる。医師養成、医師招聘を第一としなければならない。

◇アンケート7「地方の医師不足」・・回答F「その他」

「そもそも医療は赤字であっても仕方がないという意識を皆が持つ必要があり、健康は更に社会的、経済的成果を生んでいる事を知る必要がある」

・医療の収支は病院の収支だけで判断してはいけないという貴重なご意見だ。実際、健康であることによってその人が生み出す社会的・経済的効果は莫大なものである。医療の果たす役割を考えたとき、市場原理システムは馴染まない。

※医師アンケートは今月31日まで受付ています。現場からの声をどしどしお寄せください。
http://members.goo.ne.jp/home/kinbyou

陸奥新報「社説」

2007年03月28日 07時36分09秒 | 金木病院を守ろう
西北五中核病院  しっかりと再編の見直しを
『陸奥新報』http://www.mutusinpou.co.jp/news/07032807.html

つがる西北五広域連合は、二〇一一年度開業を目指していた中核病院の基本設計者選定作業を白紙に戻すことを決めた。

広域連合は、五所川原市を中心に六市町圏域にある五自治体病院の医療機能再編計画を進めてきた。同市の西北中央病院を母体とする中核病院の創設が前提となっている。

中核病院は高度・先端医療を担う拠点。鯵ヶ沢中央病院と公立金木病院は一般病床を減らし、療養病床を持つ後方支援病院、つがる市の木造成人病センターと鶴田中央病院は無床の診療所として、地域在宅医療を充実させようという医療機能再編基本計画が策定されている。

年々赤字が膨らむ自治体病院。地域の病院で役割を分担しながら、広域圏の医療環境を維持したいとの建前は建前として、地域から入院施設がなくなるつがる市民や鶴田町民の不安や医師不足により救急車受け入れ休止となった公立金木病院など、圏域には緊急課題が多い。

広域連合はこれまで、中核病院整備を最優先に計画を進めてきた。基本設計者選定作業も一月に審査委員会を発足させ、プロポーザル(技術提案書)方式で委託業者を募っている。しかし、五所川原市が財政難を理由に、〇七年度当初予算に基本設計費の負担金を計上できなかった。

中核病院優先の背景には、まず医師不足を解消したいとの圏域理事者らの焦燥感があったようだ。新設・中核病院の予定は病床四百九十二床、医師五十五人。同計画を実現させることで、周辺病院の機能もまた柔軟に対応できると見たものか。

結果として、広域連合は中核病院整備を最優先とする方針を修正し、先送りしていた周辺病院の機能分担の協議とともに、中核病院自体の機能も再検討することになった。

ただ、基本設計者選定作業を白紙に戻すことで、一一年度目標の中核病院開設も遅れることになる。県主導で進んできた西北五圏域の自治体病院の機能再編成計画だった。それだけに、圏域の医療環境を十分酌み取った地域との協議と全体計画が必要だったはずだ。

広域連合長の平山誠敏五所川原市長は「〇七年度の早い機会に洗い直し、今年度中に方向性を出したい」とし、さらに国、県に財政支援の必要性を求めるという。

津軽のことわざに「田の中よりも田の畔(くろ)走(はけ)ろ」がある。一見遠回りに見えても、確実に物事を進めよ―ということである。

広域圏に中核病院を新設し、既存の自治体病院の機能を再編するつがる・西北五の取り組みは、同じ悩みをかこつ全国の自治体から熱い視線が注がれている。というより、県が進める県内六圏域化、自治体病院機能再編の先頭を走っているこの計画に、県内の各圏域も強い関心を持っているはずだ。

国、県の財政支援と自治体の財政負担はどうなるのか。周辺自治体病院の一体的活用や厳しい医師確保はどうなるのか。つがる・西北五が試金石となる。

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先にも書いたが、白紙撤回の原因は
1. 財政難
2. 医師確保の見通しがたたないこと
にある。

これらは地方切捨ての国策と、厚労省の医療費削減施策に基づくものだから根は深い。地域医療を守るには、これらを克服しなければならない。財政問題を解決するには徹底的にムダを省き収入を増やすことだ。行政の手腕が問われる。医師招聘は、これまでの限界に達した手法を根本的に改め、他に例をみない独自のユニークな取り組みが求められる。医師不足問題は自治体病院の勤務医不足にある。いまの待遇や勤務状況を他に例をみないほど大ナタを振るって改善すべきである。発想を転換するのである。

医師の声、住民の声を反映させ、地域医療の模範となるようなシステムを構築しよう。先日故人となった城山三郎の代表作「辛酸」ではないが、辛酸に押し潰されてはならない。これを好機と捉えて積極的に取り組む姿勢が求められている。

マスタープラン見直し

2007年03月27日 07時44分52秒 | 金木病院を守ろう
西北五中核病院 設計業者選定が白紙
広域連合 再編の在り方見直し

『陸奥新報』 http://www.mutusinpou.co.jp/news/07032704.html

西北五地域の自治体病院機能再編成を進めるつがる西北五広域連合(連合長・平山誠敏五所川原市長)は二十六日、同市内で正副連合長会議を開き、同市の財政難などで中断していた中核病院の基本設計者選定作業を白紙に戻すことを決めた。今後は同連合の構成市町の財政状況、国、県の財政支援や医師確保の見通しを踏まえ、中核病院整備を最優先とする方針を修正し、先送りしていた周辺病院の機能とより一体的に協議し、再編の在り方を洗い直すことを申し合わせた。

中核病院の基本設計費は約一億円。設計者選定作業は一月に審査委員会を発足させ、プロポーザル(技術提案書)方式で委託業者を募り、十数社が応募した。しかし、約78%を負担する五所川原市が財政難などを理由に、二〇〇七年度当初予算に基本設計費の負担金を計上できず、業者選定作業を中断していた。

この日の正副連合長会議は非公開で行われた。同連合事務局によると、設計者選定作業を白紙に戻すことに異論は出なかった。

今後は、連合を構成する各市町の厳しい財政状況、医師充足の見通しをさらに精査し、〇六年二月に策定したマスタープランを基礎に中核病院と、後方支援病院か無床診療所と位置付けた周辺四病院の機能などを従来よりも一体的に洗い直し、圏域全体の在り方を固めた上で、中核病院の基本設計に新たに取り組む方向だ。

医師確保の見通し次第では中核病院の規模(病床四百九十二床=一般四百三十八、精神=五十、感染症四=、医師五十五人)を見直す可能性も否定できず、同病院整備を最優先した同プランの一部修正もあり得るという。

平山市長は「二〇〇七年度の早い機会に洗い直しに着手し、できれば○七年度中に方向性を出したい」とした。一一年度を目標とする中核病院の開設時期は「早いに越したことはないが、拙速ではまずい。大事業だから間違いのない安心できる形で進めたい。(洗い直しの結果、開設が)半年、一年遅れても結果的にプラスになると思う」との見解を示した。

実現にハードル高く
------解説

西北五地域の自治体病院機能再編成事業に伴う中核病院の基本設計者選定作業が白紙に戻ったことは、同事業が圏域全体の事情をより有機的にとらえなければならない事業であることを改めて示した。つがる西北五広域連合が中核病院整備を最優先した背景には、深刻な医師不足に対応しようとの焦燥感があった。しかし、一部の医療現場関係者や住民団体からは、厳しい医師充足の見通しを踏まえ、圏域の医療機能を一体的に論議すべきとの指摘や、事業を進める財政的裏付けを不安視する声も絶えなかった。

現在の状況はその指摘や不安の通りスピード最優先の方針に無理が生じた形で、同連合の構成市町から財政支援を求められている県が、圏域全体の在り方をまず提示するよう求めている状況も同連合の方針修正を促したと言える。

連合長の平山誠敏市町は国、県の財政支援の必要性と働き掛けをこれまで以上に強調し、関係市町の協力体制をより充実させたい考えだ。

しかし、公立金木病院の救急車受け入れ休止などに表われた医師不足は深刻さを増しており、早急な詰めが必要なことに変わりはない。その中で、今後の議論には従来以上の綿密さも求められ、事業実現へのハードルはさらに高くなっている。(五所川原支社・長内忠光)

※『東奥日報』は本日のトップ記事としてとりあげています。
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070327092826.asp

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医師不足をハコモノ建設で乗り切ろうとしたことに、ボタンの掛け違いがあったのではないだろうか。住民の悲願であり地域医療を守る金木病院の救急を復活するための医師すら招聘できない状況でいまのマスタープランは夢物語だった。再検討を決定した英断に敬意を表する。

これで、金木病院の救急復活に本格的に腰をあげなかった市の当面の根拠はなくなったわけだ。金木病院の救急復活をあらためて強く要請したい。金木病院を充実させれば、中核病院がスタートしたときそれは圏域の大きな戦力ともなるのだ。

財政の見通しは暗いし、医師不足がすぐに解消されるとはとても思えない。そんな状況を直視して、実情にあった地域住民の目線に沿った構想が検討されなければならない。

まずは、医師をどう招聘するか・・これが第一のステップとなることは間違いない。関係者には医師の声・住民の声を重く受け止めて全力を尽くしてもらいたい。

患者の声

2007年03月26日 10時30分06秒 | その他
医療相談 職員への苦情目立つ

『東奥日報』 http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070325164514.asp

「頭痛ぐらいで来るなという対応だった」「看護師が患者の悪口を言っていた」-。県は、医療相談窓口に寄せられた二〇〇五年度の相談・苦情の事例をまとめた。件数は、過去五年間で最高の二百四十七件で、診療内容に関する相談のほか、医療者側の接遇に関する苦情が目立ち、項目別では「職員の対応」が二十三件と多かった。

ケース1 目を閉じていたので眠っていると思ったらしく、いろいろな患者の悪口を言っていた。ベテラン看護師で信頼していたのに残念。

ケース2 父親が頭痛のため受診したら、頭痛ぐらいで来るなといった対応で痛み止めを渡された。一カ月後に再受診したら脳梗塞(こうそく)と診断された。

ケース3 (診断を誤った医師から)「訴えるつもりなのか。医師にもミスがある」と言われた。

ケース4 大腸ポリープ手術が可能ということで受診したら「満杯だから今、手術はできない。大腸ポリープより大腸がんの方が優先だ」と素っ気なく言われた。最初から言ってもらえれば二千円の診察料を取られずに済んだのに-など、医療者側の問題点が浮かび上がった。

各病院は、患者の声を掲示板に張り出し、接遇に力を入れるようになったが、苦情・相談はなかなか減らない。一方で、「金木病院の救急体制を維持する会」が三月一日から、県内十三病院を対象に行っている勤務医アンケートで、コンビニ感覚で夜間も受診するなど、患者側のモラル低下を指摘する声もある。

県医療薬務課は「大切なのはコミュニケーション。患者と医師のコミュニケーションが密になれば、トラブルに発展しなかったケースもある。医療者側は、事例を参考に患者の立場を考えてもらいたい。患者側もふだんから何でも相談できるかかりつけ医を持つようにしてほしい」と話した。

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当ブログ「医師アンケート」の患者版とでも言おうか、今回は患者の生の声が報道されている。医療現場は医師と患者の連帯によって築かれなければならない。そのためにも「本音」を出すことも大事だ。ただそれが両者の反目・・負の方向に向かってはならないと思う。

医師と患者の関係は「エホバの証人」裁判で逆転したという。それまでは医師は「父権主義」であり患者は信頼し従う立場だった。この裁判で最高裁は患者の意志が医師の判断に優先するという判決を下した。

医師と患者の間にあった暗黙のルールがいま失われている。従来の関係が良かったかどうかは別として、あたらしいルールが必要である。医師不足という引き金によって医師と患者の双方が無秩序の中に放り出され互いに不満を噴出している・・そんな状況だと思う。医療とは医師と患者が「戦友」としてともに連帯し実現するものだろう。そのためには患者は多くを学ばなければならないし、医師も旧来のスタイルを変えなければならない。

患者の声や医師の声を21世紀的日本の医療をつくる土台にしなければならない。ゆめゆめ負の方向に向けてはならない。

医師一二万人も不足

2007年03月25日 07時19分18秒 | その他
広がる「医師不足」 矢吹紀人

   『週間金曜日』3/23号 
http://www.kinyobi.co.jp/Recent


絶対的な医師不足

医師不足が深刻化する中、埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏医師は「医師自身が声をあげなければ日本の医療は崩壊する」と、多数のメディアで積極的に発言している。

「栗橋病院のある女性外科医は、午前と午後に手術をしたあと入院患者を診察。夕方五時から当直で救急患者への対応など。午前二時に仮眠し、翌朝はそのまま外来診察で午後には手術。三七時間連続の勤務が終わったのは午後九時でした。これが通常なんです」

こうした状況を生む最大の原因は、絶対的な医師数の不足。厚労省のいう「医師の偏在が問題」という見方は誤りだ。本田医師はそう断言し、次のように指摘する。

「○三年時点のOECD(経済協力開発機構)加盟二九ヶ国の人口一○万人あたり医師数平均は約二九〇人ですが、日本は二〇〇人弱。二九ヶ国中二六位です。WHO(世界保健機関)の〇六年の報告でも一九二ヶ国中六三位。日本の医師数は二六万人ですが、OECD平均なら三八万人必要で一二万人不足している。五割増員して、やっと世界平均並という実情なんです」

本田医師が財務省資料で調べたところによると、ひとりの医師が一年間に診る患者数はスウェーデンで九〇三人、ドイツで一八五七人。欧米でもっとも多いイギリスでも三一七六人。これにくらべて、日本では八四二一人と飛びぬけて多くなっている。「日本の医者は三・五倍多く働いている」と本田医師はいう。

先進各国のGDP(国内総生産)あたりの医療費は、もっとも多いアメリカが一三・九%。ドイツ一〇・七%、フランス九・五%などだが、日本はわずか七・六%。逆に、家計支出に占める医療・保険費用では、日本はイギリスの約一〇倍、フランスの三倍、ドイツの一・五倍となっていて、国が医療に支出する費用が少なく、国民負担率が高い日本の現状が明白になってくる。

「医師不足や勤務医の疲弊の根本原因は、これら国の医療政策にあるのです。病院を集約化しても医師数が増えなければ、そこでまた過重負担が生まれ、医師がドロップアウトするだけに終わってしまうでしょう」

このままでは日本の医療は崩壊する―本田医師の言葉には、医療現場の混乱を招いた国家行政への痛烈な批判がこめられる。

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本田宏医師 http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/blog/honda/index.jsp

当記事の前段に「置き去りにされる地域医療」として、千葉県山武郡の医療崩壊がレポートされている。新中核病院の完成予定は早くて二○一○年なのに、現在ある病院の医師不足による窮状は放置したまま・・・わたしどもの置かれている状況によく似ている。

社会のひずみは最初にマイノリティーに顕れる。医師の三二時間連続勤務も含めて青森県ではすでに経験済みのことだ。医療関係者は是非とも青森県、なかでも最弱者である西北地区で実態を調査してもらいたいものだ。

それにしても世界水準からみて医師が十二万人も不足しているとは・・・。この国はどうかしている。さらに「国が医療に支出する費用が少なく、国民負担率が高い日本の現状」は、医療後進国の汚名まぬがれないだろう。ほとほと困ったものだ。

医師と患者は戦友

2007年03月24日 07時36分56秒 | その他
鈴木厚著「崩壊する日本の医療」から

かつて傲慢な医師がいたことは確かです。その当時に体験した悪い医療が心的外傷になって病院を批判する人が多くいますが、医療現場は大きく変わっています。現在の医療は五年前とはまるで違います。一年前とも違います。自分より患者を優先するのが当たり前の時代になっているのです。

医療にとって最も大切なのは「医師と患者の信頼関係」なのです。医療の評判が悪い、あるいは病院のイメージが悪ければ、医療にとって最も大切な「医師と患者の信頼関係」が損なわれることになります。信頼関係が損なわれれば、医療そのものが成り立たないのです。医師と患者は同じ人間です。そして病気という共通の敵と戦う戦友なのです。この戦友という共通した気持ちがなければ医師と患者との良好な関係は生まれません。医師が奢りをみせれば、患者が信頼の気持ちを持たなければ良好な医療は生まれないのです。

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前回の「戦争」を引き摺るわけではないが、「医師と患者は戦友」という捉え方に共感する。医師と患者がいがみあっていると喜ぶのは厚労省だけだ。

ところで・・「患者」の対義語は「医者」だったはずだ。それが医師になったのは、医者がある意味差別語だったからだろう。患者はあいかわらず患者のままだが、ともに医療に連帯する戦友としてなにか適切な表現はないものだろうか。

医師と患者の関係を21世紀的に捉えなおす・・そういう時をむかえているのだろう。

集約「既に進展」

2007年03月23日 07時47分04秒 | 青森県の医師不足
青森で医療体制検討会
『東奥日報』 http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070323112835.asp

産科医療提供体制の在り方に関する検討会が二十二日、青森市で開かれた。国が提案している産科医の集約・重点化について「産科医不足が著しい本県では既に集約化・重点化は進展している」との認識で一致。今後、産科医の勤務環境改善や助産師の活用を打ち出した「産科医療体制の将来ビジョン」の具体化に取り組んでいくことを確認した。

国は、地域実情に応じて産科の集約化・重点化を検討するように促し、二〇〇六年度末をめどに実施の方向性を決めるように求めている。

この対応について県側は、青森労災病院(八戸市)や弘前市立病院の産科が四月から休診し、常勤医が他の医療機関に転勤になる方向を踏まえて「既に本県では集約化・重点化は進んでいる」との認識を示し、「さらなる集約化・重点化の必要性を検討する状況ではなく、限られたマンパワーの中で、安心かつ安全に妊娠・出産ができる環境を整備するため、『将来ビジョン』の具体化に取り組む」との方針を示した。

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青森県の医療は崩壊寸前である。産婦人科、小児科はもとより、内科など医師不足は全科に及んでいる。医師の集約化といえば、ムダを省いて効率的にマンパワーを活用するというふうに聞こえるが、実は医師数はジリ貧状態で必要な病院すら無床化や閉鎖をよぎなくされていて、その結果かろうじていくばくかの病院が残っているというのが青森県の医療の現状なのである。この話はどこか戦時中の「転戦」という表現に似ている。実際は「敗走」なのだが、それを認めたくない大本営があみだした言葉のトリックである。「集約化・重点化」というよりは「玉砕化(これも大本営が造った語で、実際は全滅ということだが)」のほうが正しい。

わたしどもの西北五圏域ではもとより「集約化」が完了していて、その結果金木病院の救急が取り下げとなり、「医療連携」も実現している(そうせざるを得ない)。それで地域の医療がよくなったかと言えば、答えは「NO」である。四万人を対象にしている金木病院には産科なし、内科不足、救急なし・・悲惨な状態だ。

言葉のあやで本質を誤魔化してはならないし、誤魔化されてもならないと思う。

津軽の自治体病院再編混迷深める

2007年03月22日 09時05分07秒 | 青森県の医師不足
津軽の自治体病院再編混迷深める
『東奥日報』 http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2007/20070315112241.asp

津軽地域の自治体病院機能再編成で、県が二〇〇六年度中に示す予定だった再編の基本的枠組み具体案が、年度中には提示されないことが十四日、分かった。弘前市に予定される中核病院構想が暗礁に乗り上げ、各病院の機能分担の協議が実質ストップしているため。事務局の県医療薬務課は「本年度中の具体案の提示はできないが、あきらめたわけではない」と新年度も協議を継続する方向。しかし、リーダーシップを取る組織がなく、協議再開のめどもない。病院の経営改善、医師不足解消を目指す再編構想は混迷を深めている。

県が〇五年三月に作成した再編の枠組み案のうち津軽地域については「弘前市立病院と国立病院機構弘前病院が連携し中核病院機能を形成する」ことなどが盛り込まれた。

この中核病院実現に向けて昨年一月、検討委員会を設置。同六月には作業部会が開かれたが、それ以降一度も話し合いの場が持たれていない。〇六年度内を目指していた枠組み具体案提示は不可能となった。

県は「国立病院機構弘前病院の建て替え計画が浮上するなど、それぞれバラバラな動きをしているため」と説明する。これに対し、国立病院機構弘前病院の五十嵐勝朗院長は「耐震構造上、将来、建て替えが必要となるが、中核病院構想と建て替えは別」と説明。現状について「再編を進めるコンダクター(指揮者)がいない。もっと民意をまとめて、方向性を決めるべき」と語る。

弘前市立病院の松川昌勝院長も「医療全体のことを考えて、リーダーシップを取る主体が、どこか分からない」。

再編協議が凍結し、病院経営が悪化する状況で、黒石市や平川市など周辺自治体が危機感を表す。黒石と平川、大鰐町、藤崎町、田舎館村の五市町村で構成する津軽南市町村連絡協議会(会長・鳴海広道黒石市長)は二十八日、県に出向いて事態改善へ向けた早期の対応を求めていく方針。

鳴海・黒石市長は「各首長はそれぞれ病院運営で課題を抱えており、自治体間で譲歩しながら効率の良い運営を考えようという思いで一致している。南黒地方は意思統一して行動するつもりであり、今後、弘前市はもちろん板柳町との連携を大切にしたい」と語る。相馬〓一(しょういち)・弘前市長は「周りの動きが流動的な中にあるので、現段階では軽々とコメントできない」と慎重な姿勢だ。

一方、県医療薬務課は「県は助言・指導、側面支援はできるが、強制力は持っていない。本来は圏域で進める問題」と、ボールを投げ掛ける。さらに「弘前市は狭いエリアに似たような規模の病院がある。医療資源の有効活用のためにも再編は必要だ。ただ、『国立病院機構』と『市立』という設立母体が違う二つの病院が連携するのはなかなか難しい」との見解。県内最大の中核病院・弘大病院や他の民間病院との兼ね合いもあり、津軽の複雑な“連立方程式”を解くのはそう簡単ではない-とみている。

※相馬〓一市長の「〓」は「金」へんに「昌」

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青森県を6つの圏域に分割し医療の集約化をはかる青森県のグランドデザインが暗礁に乗り上げている。私どもの西北五圏域も市の財政難で宙に浮いたままだ。

そもそもグランドデザインは医師不足対策として立ち上げられたものである。だから医師不足という根本の原因を解決する方策に取り組むことなしに青森県の医療をまもることなど不可能なのである。腹痛に軟膏を塗っているようなものだ。

当ブログでおこなっている「医師アンケート」に寄せられているドクターのコメントを見て思うのだが、その緊迫感に、この国の医療は大きな転換期をむかえているような気がする。90年代後半から陥っている経済不振によって自治体は赤字となり病院運営が重荷になっている。住民は情報の増加によって医師に過剰な要求をするようになった。自治体病院勤務医はそんな厳しい状況のなかで疲弊している・・・。

青森県だけではない。もうそろそろこの国も21世紀的医療のありかたを根本的に考えなくてはならない。これまで培ってきた日本医療の良きもの(医療の平等)を踏襲し悪しきもの(ハコモノ建設)を捨てるという英断が求められている。その場しのぎの医療施策では腹痛がおさまらないどころか病気が進行して手遅れになってしまうだろう。

金木病院は実に象徴的な存在だ。これを守りきることができなければ、この国の医療はロクなものではない。