名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

部活が居場所?

2017-08-07 23:22:11 | 教育に関する私論
部活動のあり方が、最近よく議論されています。

テレビでは、ブラック部活動だとか、部活動未亡人だとか、色々と言われています。

今日話題にしたいのは、私の職場にいるある人の意見。

「○○君(生徒の名前)は勉強ができないから、授業には全然ついて行けない。だから、部活動で活躍の場を与えてあげないとなぁ」

決して珍しい意見では無く、似たようなことを言っている・考えている先生は多いと思います。

でもこれおかしいと私は思うんですよね。



この理論を簡単にまとめると、こうなります。

勉強ができない生徒がいる
→勉強ができない生徒は、授業で居場所が無い
→でも、学校において何らかの居場所は与えなければならない
→その居場所として部活動が有力である
→よって、そのような生徒のために、部活動を活発に行うべきだ

でも我々中学校教師って、何で採用されてます?

教科でしょ?

国語とか数学とかの先生であって、サッカーや野球の先生として雇われているわけでは無いはずです。



現行の、学力別学級編成を行わないシステムでは、クラス内で学力差が出るのは当然だと思います。

だから、いわゆる落ちこぼれが出るのは仕方が無いのかも知れない。

でも我々教師は、その落ちこぼれに対して、学習以外の居場所を提供することを考える前に

まずは少しでもその子らの学力補充の場を与えるべきなのではないでしょうか。

何でやらないの?と言われると、ほぼすべての教師が部活動の顧問を持たされているからです。

当然ですが、部活指導をしながら学力補充をやるなんて、無理です。体は一つですから。

生徒側も、所属する部が活動してるのに、それを抜けて学力補充を受けるというのは難しいものがあります。

よって、学力補充をしようと思ったら、週に何日か、全校統一で部活動を行わない日が必要になるでしょう。

加えて、部活動指導の負担減が必要でしょう。



最近、「教師にも部活動をやる・やらないの自由をください」と主張している現役教師の発言を良く耳にします。

ちなみに私はその活動に賛成の立場です。

前年度まで、やったこともない競技の運動部顧問をやらされ、大変な思いをしました。

私はつらいし、子どもたちはろくな知識も技能もできないやつから指導を受け、得をする人は少ないです

それでも周りは私に「がんばって勉強しろ」と言うだけ

子どもは正直です。付け焼き刃なのはすぐに感じ取ります。



少し話は変わりますが、この間、うちの県が税金で運営する公営の学習塾を作ることを検討しているとニュースで報道されていました。

お金が無くて塾に通えない子が不利を被らないようにするためらしいです。

いや、そんな金あるなら学校の予算を増やせば良いじゃん、と思います。

学校に予算を付けて、それで放課後学力補充の運営をすればいい。

部活動顧問をやりたくないと思っている教師にそれを担当させれば、喜んでやるんじゃないですかね?

私なんかは運動嫌いの理科教師ですから

「運動部やらなくて良いから放課後学力補充やって」

って校長に言われたら、「はい喜んで!」ですよ。

そして、その予算で教師志望の大学生でもバイトで雇えば、どうでしょうか。



ちょっと話がそれましたが、元に戻すと

勉強ができない生徒がいる
→勉強ができない生徒は、授業で居場所が無い
→でも、学校において何らかの居場所は与えなければならない
→その居場所として部活動が有力である
→よって、そのような生徒のために、部活動を活発に行うべきだ

ではなくて

勉強ができない生徒がいる
→勉強ができない生徒は、授業で居場所が無い
→そんな生徒が少しでも苦しまなくて済むように、授業外で学力補充をする場を提供する
→でも、それだとどうしても勉強ができる子が目立ってしまうから、部活動という場も用意する

が本来だと、私は思うのですけどね。

ま、でも無理でしょう。

部活動に打ち込み頑張る姿を美徳とする価値観はまだまだ根強いです。

保護者や地域社会の中はもちろん、教師の中にもそのような価値観を持っている人は少なくありません。

学校によっては、授業はテキトーでも部活で優勝旗を持ち帰れば職員室で英雄扱いというところもあります。

もしもこの状況を変えるのであれば、文科省が、指針とかガイドラインとかいう曖昧なものでは無くて、はっきりと

「部活動は週4日以上行ってはならない。例外は認めない」

とでも言わない限り、状況は変わらないと思います。



「教師は授業で勝負しろ」

よく言われる言葉です。

研修とかでも、教育委員会のお偉いさんがよく言ってます。

至極当然のことだとは思いますが、一方で授業とその準備以外の業務が多すぎて(多様すぎて)勝負のための準備にあまり時間が割けないというのも現実です。

その授業以外の業務の代表例が、部活動指導ではないでしょうか。

そして、この部活動問題を考える場合、部活動を重視する価値観を持つ勢力の存在を無視することはできません。

これは、教師(上の立場の者、現場の立場の者どちらも)、教育委員会、地域住民、保護者、それぞれに一定数いると思います。



ちなみに、部活動指導員のボランティアを募集するという対応策もあり得ますが

私に言わせれば、実にたわけた策です。

今度機会があれば書きます。



最後に、すでに定年退職をされた方ですが、以前一緒に仕事をさせていただいていたベテランの先生の言葉を紹介して終わります。

私が教師1年目の時に言われた言葉です。

「今は君はまだ初任者で、あまり仕事を任されていないから、授業の準備にたくさん時間を割ける。
でも経験年数が増えるにつれて、授業準備の優先順位はどんどん下がっていく。
他にやらなければならないことがどんどん降ってくるから。
良いことだとは思わないけれど、これが今の現実だよ。」


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