名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

「公立学校にタブレットが配備された!すごい!」と思っている保護者の皆様へ

2021-02-23 10:35:13 | 教育に関する私論
GIGAスクール構想がついに現実になり、公立小中学校にもタブレットが導入され始めました。

「公立学校にタブレットが配備された!すごい!」
「これで某大手通信教育のような学習を、公立小中学校でやってもらえるようになる!」


という保護者の声も良く聞くようになりました。

このブログを読んでくれている人の中にも、そう思っている人がいるかも知れません。

それに対して、ちょっと待ってという話です。



進研ゼミやZ会のような、大手通信教育会社は、タブレットを利用した通信教育を売り出しています。

それについては私は使用者でも開発者でもないので、評価をすることはしません。

ただ、声を大にして言いたいのは

「進研ゼミやZ会と、GIGAスクール構想は、どちらも手段はタブレットだけど、そもそもの目的が違う」

ということです。



詳しく書くと長くなっちゃうので、大雑把に書きます。

文科省がやろうとしていること(GIGAスクール構想)
→学級内での集団学習を、タブレットを用いることで、今までより円滑で質の良いものにする

進研ゼミとかZ会とかがやろうとしていること
→個別学習を、タブレットを用いることで、最も合理的に行えるようにする


手立ては同じだけど目的が全然違います。

ですから、「公立小中学校にタブレットが配備される!これで高いお金を払わなくても、チャレンジタブレット的な教育を我が子に受けさせられる!」というのは誤りです。



そして、筆者が以前から指摘している、「生徒の実態とは無関係に、入学からの経過時間で学習内容が決定される」という公立学校の問題点はそのままです。

また、学級内での生徒の習熟度がバラバラな実態はそのままに、授業内でのディスカッションが重視されるようになり、それをタブレットで深めようと言うのですから、私は効果に大変懐疑的です。

例えば、「バネにおもりをつるしていき、その伸びを測定することで、フックの法則を導出する」という授業であれば

学級内には大まかに

「自宅学習や塾での学習ですでに理解済みの生徒」
「先行学習はしていないが授業を受ければ理解できる生徒」
「そもそも比例の理解を取りこぼしてるので、授業を受けても理解できない生徒」

がいるのです。

その子たちに「さあ実験結果をもとに話し合え!タブレットを使って話し合うとスムーズだぞ!」

は不毛だと思うのです。



各地方自治体がなけなしの予算をぶっこんで整備したタブレット。

1台当たりかなりの額が使われています。

それは、ぼったくられているからではありません。

家庭と違って、端末だけ買えば良いわけではなく、破損に備えた保険や、サーバーなどの保守点検費用、何百台も同時接続するためのルーター増強などのコストもかかっているからです。

これがどれだけの効果を発揮するのでしょうか。

10年後の人がこの一大事業をどう評価するのでしょうか。



GIGAスクール構想に対して、皆さんの意見をお寄せ下さい。

ご意見はこちらまで。


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