荻原浩を「ユーモア作家」と呼ぶ書評をいくつか見たが、『コールドゲーム』『明日の記憶』と読んできた自分にとって、違和感この上ない。
が、本書を読んで納得。この作家の出自はそこなのだ。
もっとも「ユーモア」というより毒の鱗粉を幾分含み、「ギャグ」と言った方がぴったりくるかも。
人口の少ない過疎地、牛穴村。野球チームも9人揃わない。そこに住む人々が主役である。いや、主役はそんな村の村おこしをプロモーションの仕事として受けてしまったユニバーサル広告社の面々―杉山、石井、村崎―である。
いなか言葉丸出しの村人と今にもつぶれそうな零細広告社の面々が繰り広げるドタバタ、と言うとおおよそどんな話か見当がついてしまうと思う。それにもかかわらず読む価値があると思わせるのは、あちこちにちりばめられたギャグ、もといユーモアの数々と隠し味に効かせた純情。なにせジョン・レノンの「LOVE」が出てくるし、著作名にしたってサリンジャーのパロディだ。
そうそう、ラブロマンスもひとつ(^^;
そういえば、じっくり読んでしまったな、この本。薄めの文庫なので、通常のペースだと往復の電車1日分だと思うのだが、3日もかかってしまった。隅々まで神経の行き届いた表現が小気味いい。
映像が頭に浮かんできて、このまま映画にできそう。誰か撮りませんか(^^;
各章ごとのタイトルも、広告業界で、やや得意げに使われる「クライアント」だの「プレゼンテーション」だののカタカナ言葉を茶化しているのが、ニヤリとさせる。
続編『なかよし小鳩組』とセットでおすすめしたい。
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