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 結果は少々期待はずれ。
 何人かの登場人物の奇妙な生活が、最後にカチリとパズルのようにかみ合う。作中を重低音のように流れているのは、だまし絵のようなエッチングで有名なエッシャーの、ぐるぐる無限に塔の上を歩き続ける人の列を描いた作品。
 文章のうまさは、ツッコミを入れて読まなくてもいい程度。構成は巧みで、「ああ、あれはこういうことだったんだ」という納得は確かに快感だ。しかし、キレがよいとは言いがたい。この手の作品が多くなり、目新しさが失われたということもあるだろう。
 しかしカタルシスを得られなかった最大の原因は、(自分にとって)人物たちにリアリティが感じられず、感情移入できなかったからではないか。
 断っておくが、単に荒唐無稽というのとは違う。例えばカフカ「変身」は荒唐無稽な設定にもかかわらず、「この後どうなってしまうんだろう」という圧倒的興味に引きずられて一気に読了し、なんともいえない塊が胸に残ったものだ。
 あえて言葉を捜せば、身体感覚がない、という感じか。頭の中だけで言葉を組み立てた感じといえば、当たらずといえども遠からず、というところだろう。

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