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 『半落ち』で知られる横山秀夫の一冊。確かな人間洞察に裏打ちされたストーリーは、読者のセンチメンタリズムにもたれかかることなく、一服の清涼剤にも似た読後感を生む。近頃、ファンタジー(と言っても、センスオブワンダーの片鱗すら無い)要素に頼った小説が多い中、人間の汚さから目をそらさずに正面から向き合う作家の姿勢に好感が持てる。文章も、さすが。
 聞き取り調査をして犯人の似顔絵を描く平野瑞穂巡査、23歳が主人公。着眼点が魅力的で、これだけでも随分おもしろいエピソードを紡ぎだせると思う。しかし、諸般の事情で瑞穂がその腕を振るうエピソードはほとんどないんだな、これが・・・。
乞う続編、といったところ。それでも面白い、おすすめの一冊。
 そうそう、これ読む前に瑞穂が登場している『黒い線』を読んだ方がいい。

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