先日、熱膨張係数の違いを活用してベアリング取り外しを成したが、我々の身の回りにはこの熱膨張に係わるものが多く存在し、それを知ることは有意義かつ面白そうなので、ネット等を利用しつつこれらを集めてみることにした。
おさらいとして
熱膨張係数(熱膨張率)とは、
・温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を、1℃当たりで示したもの。
・熱膨張率ともいう。
・単位は 〔1/ ℃〕である。数値が小さいので通常は〔×10^−6/℃〕を使う。
・温度の上昇に対応して長さが変化する割合を線膨張係数(線膨張率)といい、
体積の変化する割合を体積膨張係数(体積膨張率)という。
・線膨張係数をα、体積膨張係数をβとすると β=3α の関係がある。
・特殊なものを除く通常の物質のこの係数値は、温度によって一定ではなく、高温ほど大きい。このため精密な計算をする際には、その温度差における係数値を用いる必要があるので、注意を要する。(0℃から1℃上昇する時の線膨張件数よりも、100℃から1℃上昇する時の線膨張係数の方が大きい。)
・一例として、アルミと鋼の線膨張係数は(20℃時)、単位:〔×10^−6/℃〕
アルミ 23~24
普通鋼 10~11
*合金度合いにより変わる
以下に、熱膨張(線膨張)に係わるものを挙げてみる。
〔ビンのフタ回し〕
・ビンの金属製のフタが回らない場合、フタを暖めると回し易くなるが、これはフタが膨張して大きくなり、ビンとの締め付けがゆるんで回し易くなるのである。
・ガラスの線膨張係数は9〔×10^−6/℃〕程度でり、アルミ製フタの場合は線膨張係数の差が大きいので、フタは手で暖めただけでも回しやすくなる。
・なお、フタの外周をたたいても回り易くなるが、これはふたの外周がたたかれて薄くなり、径が大きくなるためである。
・ビンの栓が抜けにくいときには、ビンの口を湯につけたり、火であぶったりすると、ビンの口は大きくなり抜け易くなる。
〔5円玉の穴〕
熱膨張の話しになると、5円玉のように真ん中に穴のあいている金属を熱したら、この穴は小さくなるのか、それとも大きくなるのか、という難問が出てくる。(ビンのフタは理解できるのだが!)
正解は「大きくなる」だが、膨張するのだから、穴は小さくなるんじゃないかとも考えられ、なんぼ考えても理屈の整理ができない。実験してみれば良いのだが、未だ試してない。
ここで解りやすい説明は:5円玉はどの部分も膨張率は等しく、熱すればそのままの形で膨らんで相似形で大きくなり、したがってその穴は大きくなる。・・・だそうである。納得!
〔焼き嵌め〕
・穴より少し太いシャフト等を差し込んでガッチリ固定する際に、外穴側を加熱して穴径を広げ、そこへシャフトを差し込み、常温に冷やして穴を収縮させて固定する手法である。
〔鉄筋コンクリート〕
・鉄筋コンクリートは、引っ張り強度が高い鉄筋とコンクリートを一体に固めてコンクリートだけより曲げ強度をアップさせるのだが、コンクリートと鉄筋の線膨張係数はほぼ同じで、温度変化による伸縮差がなく、ひび割れしない。その分野ではよく知られた話である。
〔水銀体温計〕
・水銀は熱膨張性の良さと、温度に対する膨張係数が線形に近いことから体温計に用いられる。
〔バイメタル〕
・バイメタルとは熱膨張率の違う金属板を貼り合わせたもので、温度の上昇に伴って、熱膨張率の大きい金属板の方が多く伸びるため、貼り合わせた金属板は反り曲がる。
この金属板の片端を固定し、他方側に接点を付けておけば、温度変化により接点を開閉することができる。
・応用としては、電熱製品の自動温度調節用スイッチ(バイメタルサーモスタット:電気こたつ、アイロン、クリスマスツリー電球など)、蛍光灯のグローランプ、メーター型の温度計などがある。
〔送電線〕
・送電線の電線はカテナリー曲線という曲線を描いてたるんで(垂れ下がって)いるが、このたるみ量を”弛度(ちど/dip)と呼んでおり、電線張力を増せば当然ながら弛度は少なくなる。
ここで電流による発熱と外気温の変動により電線温度が変化すると、線膨張係数と温度変化に応じて電線が伸び縮みし、電線が長くなると弛度が増し、縮むと弛度は少なくなる。
このたるみ変動の実態は、電線温度が上がって電線が伸びると電線張力が下がるが、この張力が下がると弾性係数に応じて電線が縮み、一定値に落ち着くという複雑な動きをする。
また、強風が吹き付けたり、雪や氷が付いたりすると電線張力が増し、これが過大となれば断線する。
このため、想定される最大外力(風速、氷雪量)を定めて、これに耐える張力(最大使用張力)を越えないような張力で張る必要があるが、電線を張るときは外力はないので、工事するときの気温に応じた張力やたるみ量(弛度)を逆算的に算出して、それにより電線を張る作業をしている。この計算に線膨張係数や弾性係数を用いる。
この計算にはカテナリー曲線では計算が厄介なので、ほぼ近似できる放物線(2次曲線)として、計算している。(3次方程式を解くので、電子計算機がない時代は厄介な計算だったが、これを計算できる計算尺を利用した)
・・・送電線は以前の自分の仕事だったので、線膨張係数という用語が懐かしく、つい長くなった・・・
〔負の膨張〕
・一部の物質に温度の上昇により収縮(負膨張)するものがあり、
・水は0℃から3.98℃までの範囲で負膨張を起こす。・・・中学生の理科?で勉強したはず・・!
・マンガン窒化物をベースとして開発された負膨張率の高い新素材がある。
以上、熱膨張に関することを並べたが、まだまだ面白そうな話しがあるので、以後も追記の形で補充していく予定である。
おさらいとして
熱膨張係数(熱膨張率)とは、
・温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を、1℃当たりで示したもの。
・熱膨張率ともいう。
・単位は 〔1/ ℃〕である。数値が小さいので通常は〔×10^−6/℃〕を使う。
・温度の上昇に対応して長さが変化する割合を線膨張係数(線膨張率)といい、
体積の変化する割合を体積膨張係数(体積膨張率)という。
・線膨張係数をα、体積膨張係数をβとすると β=3α の関係がある。
・特殊なものを除く通常の物質のこの係数値は、温度によって一定ではなく、高温ほど大きい。このため精密な計算をする際には、その温度差における係数値を用いる必要があるので、注意を要する。(0℃から1℃上昇する時の線膨張件数よりも、100℃から1℃上昇する時の線膨張係数の方が大きい。)
・一例として、アルミと鋼の線膨張係数は(20℃時)、単位:〔×10^−6/℃〕
アルミ 23~24
普通鋼 10~11
*合金度合いにより変わる
以下に、熱膨張(線膨張)に係わるものを挙げてみる。
〔ビンのフタ回し〕
・ビンの金属製のフタが回らない場合、フタを暖めると回し易くなるが、これはフタが膨張して大きくなり、ビンとの締め付けがゆるんで回し易くなるのである。
・ガラスの線膨張係数は9〔×10^−6/℃〕程度でり、アルミ製フタの場合は線膨張係数の差が大きいので、フタは手で暖めただけでも回しやすくなる。
・なお、フタの外周をたたいても回り易くなるが、これはふたの外周がたたかれて薄くなり、径が大きくなるためである。
・ビンの栓が抜けにくいときには、ビンの口を湯につけたり、火であぶったりすると、ビンの口は大きくなり抜け易くなる。
〔5円玉の穴〕
熱膨張の話しになると、5円玉のように真ん中に穴のあいている金属を熱したら、この穴は小さくなるのか、それとも大きくなるのか、という難問が出てくる。(ビンのフタは理解できるのだが!)
正解は「大きくなる」だが、膨張するのだから、穴は小さくなるんじゃないかとも考えられ、なんぼ考えても理屈の整理ができない。実験してみれば良いのだが、未だ試してない。
ここで解りやすい説明は:5円玉はどの部分も膨張率は等しく、熱すればそのままの形で膨らんで相似形で大きくなり、したがってその穴は大きくなる。・・・だそうである。納得!
〔焼き嵌め〕
・穴より少し太いシャフト等を差し込んでガッチリ固定する際に、外穴側を加熱して穴径を広げ、そこへシャフトを差し込み、常温に冷やして穴を収縮させて固定する手法である。
〔鉄筋コンクリート〕
・鉄筋コンクリートは、引っ張り強度が高い鉄筋とコンクリートを一体に固めてコンクリートだけより曲げ強度をアップさせるのだが、コンクリートと鉄筋の線膨張係数はほぼ同じで、温度変化による伸縮差がなく、ひび割れしない。その分野ではよく知られた話である。
〔水銀体温計〕
・水銀は熱膨張性の良さと、温度に対する膨張係数が線形に近いことから体温計に用いられる。
〔バイメタル〕
・バイメタルとは熱膨張率の違う金属板を貼り合わせたもので、温度の上昇に伴って、熱膨張率の大きい金属板の方が多く伸びるため、貼り合わせた金属板は反り曲がる。
この金属板の片端を固定し、他方側に接点を付けておけば、温度変化により接点を開閉することができる。
・応用としては、電熱製品の自動温度調節用スイッチ(バイメタルサーモスタット:電気こたつ、アイロン、クリスマスツリー電球など)、蛍光灯のグローランプ、メーター型の温度計などがある。
〔送電線〕
・送電線の電線はカテナリー曲線という曲線を描いてたるんで(垂れ下がって)いるが、このたるみ量を”弛度(ちど/dip)と呼んでおり、電線張力を増せば当然ながら弛度は少なくなる。
ここで電流による発熱と外気温の変動により電線温度が変化すると、線膨張係数と温度変化に応じて電線が伸び縮みし、電線が長くなると弛度が増し、縮むと弛度は少なくなる。
このたるみ変動の実態は、電線温度が上がって電線が伸びると電線張力が下がるが、この張力が下がると弾性係数に応じて電線が縮み、一定値に落ち着くという複雑な動きをする。
また、強風が吹き付けたり、雪や氷が付いたりすると電線張力が増し、これが過大となれば断線する。
このため、想定される最大外力(風速、氷雪量)を定めて、これに耐える張力(最大使用張力)を越えないような張力で張る必要があるが、電線を張るときは外力はないので、工事するときの気温に応じた張力やたるみ量(弛度)を逆算的に算出して、それにより電線を張る作業をしている。この計算に線膨張係数や弾性係数を用いる。
この計算にはカテナリー曲線では計算が厄介なので、ほぼ近似できる放物線(2次曲線)として、計算している。(3次方程式を解くので、電子計算機がない時代は厄介な計算だったが、これを計算できる計算尺を利用した)
・・・送電線は以前の自分の仕事だったので、線膨張係数という用語が懐かしく、つい長くなった・・・
〔負の膨張〕
・一部の物質に温度の上昇により収縮(負膨張)するものがあり、
・水は0℃から3.98℃までの範囲で負膨張を起こす。・・・中学生の理科?で勉強したはず・・!
・マンガン窒化物をベースとして開発された負膨張率の高い新素材がある。
以上、熱膨張に関することを並べたが、まだまだ面白そうな話しがあるので、以後も追記の形で補充していく予定である。
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