ジムニー用ARBエアロッカーの改良新型であるRD207型(JA71、JA11、JB23前期等のフロント用)を、JA71フロントデフへ組み付けしようとしたところ、2つの不具合が生じて、その対応には以下のように難儀した。
不具合は、
・その1: デフケースの外径が大きいためピニオンに接触して、かじりが生じる。
・その2: シールハウジングが、セットするシャフトからはみ出して、内部のOリングが機密不良を起こす懸念あり。
この新型について、インターネット検索をしたが、強度アップとかシンプル化などの賞賛記事のみで、これらの不具合記事は見つからなかった。
ということは、「今回のデフキャリア特有の問題なのだろうか」、との疑問も抱いたのだが、いずれにしても組み付けしなければならないので、以下のようなことで対処した。
まずは、デフケースの問題だが、
デフケースとピニオンギヤ歯先が接触かじる状態
仮セットでかじってできた傷跡
収まり寸法関係を概略計測した結果は、
・デフケース中心軸からピニオン先端までの距離 L= 53.0mm
・デフケース(デフ玉)の外径 D = 107.0mm、→ 半径 R=D/2= 53.5mm
ここで R>L のため、寸法的に明らかにかじってしまうのであって、組み付け不良によるものではない。
また、リングギヤとピニオンの製品番号は、双方とも同じ番号であり、パーツ組合せ上の問題はない。
双方に同じ製品番号:L773が電気ペンで表示されている。
なお、ピニオンシャフトは、オイルシール交換のため取り外したが、規定の締め付け値で組み付けしたので、組み付け不良はない。 (・・・向かい合う2個のテーパーローラーベアリングの回転抵抗(プレロード)が5~13kg・cm程度に締め付け)
〔対応について〕
デフケースを削ることは設備的にも無理なので、好ましいことではないがピニオン側を削ることとした。
幸いにピニオン歯先は面取りされているので、この面取り代までの切削は噛み合い上の問題ない、との判断をした。
ピニオン歯先の面取り状態
面取り代の切削後は、切削量を最小限にするため、デフケースにマジックインキ(光明丹がないので)を塗布し、ピニオン歯先の付着状態を見ながら接触しない状態まで切削を進めた。
デフケースにマジックインキ塗布状態
ピニオン歯先へのインキ付着状態
結局、ピニオン歯先をおおよそ1mmほど削り落とすこととなった。
ピニオン歯先切削が完了状態
この不具合の対応は、悩みつつピニオン歯先を削ることとしたのだが、このデフが中古品であることからギヤ設定が正常かどうかを確認する必要がある。
このため、急きょ光明丹を入手し、歯面当たり状態を確認することとした。
その確認結果は、全く正常の歯面当たりであった。よってピニオンは正規状態収まりであることから、現時点でのこの不具合の原因はエアロッカー製品の設計、あるいは製作上の不備によるものと思わざるを得ない。
ホワード(前進)歯面当たり状態
リバース歯面当たり状態
リングギヤの正しい歯面の当たり状態は、下図のようにホワード、リバース共に当たり位置が歯高さの中間で、歯巾の中心よりやや内側に寄っていること。
リングギヤの正規の歯面当たり図
【参考:光明丹とは】
今回、はじめてお目に掛かった光明丹
光明丹(こうみょうたん)は、一般には”鉛丹(えんたん)”と呼ばれるようだが、鉛化合物の極めて細かや微粒子粉末で、赤色顔料、錆止塗料、電子部品、ガラス添加剤、バッテリー極板など色んなものに使われている。
微粒子のためわずかな凸凹判定ができること、また、柔らか滑らかで焼き付き防止剤としても用いられることから、擦り合わせても傷を付け難いので、”すりあわせ・当たり面テスト用”として用いられている。
すり合わせ・当たり面テストには、粉末をマシン油など低粘度の油で溶いて塗布するが、硬化しないので拭き取りが容易で、また拭き取りが不十分でも、優れた潤滑性があるため問題ない。
このテスト用としては、粉末以外に練り状のもの、スプレー品などがあるようだ。
純粋な光明鉛丹は橙赤色をしており、大型トラックの下回りを朱塗りにしているのを見かけるが、それがこれの油性系錆止め塗料である。優れた錆止め効果がある。
また、朱塗りの神社や朱塗りの橋、船舶の船底の塗料もこれである。
ところで、鉛は有毒であり、微粒子粉末は飛散し吸い込み易いので、取扱いには充分な注意が必要である。
つづく
不具合は、
・その1: デフケースの外径が大きいためピニオンに接触して、かじりが生じる。
・その2: シールハウジングが、セットするシャフトからはみ出して、内部のOリングが機密不良を起こす懸念あり。
この新型について、インターネット検索をしたが、強度アップとかシンプル化などの賞賛記事のみで、これらの不具合記事は見つからなかった。
ということは、「今回のデフキャリア特有の問題なのだろうか」、との疑問も抱いたのだが、いずれにしても組み付けしなければならないので、以下のようなことで対処した。
まずは、デフケースの問題だが、


収まり寸法関係を概略計測した結果は、
・デフケース中心軸からピニオン先端までの距離 L= 53.0mm
・デフケース(デフ玉)の外径 D = 107.0mm、→ 半径 R=D/2= 53.5mm
ここで R>L のため、寸法的に明らかにかじってしまうのであって、組み付け不良によるものではない。
また、リングギヤとピニオンの製品番号は、双方とも同じ番号であり、パーツ組合せ上の問題はない。

なお、ピニオンシャフトは、オイルシール交換のため取り外したが、規定の締め付け値で組み付けしたので、組み付け不良はない。 (・・・向かい合う2個のテーパーローラーベアリングの回転抵抗(プレロード)が5~13kg・cm程度に締め付け)
〔対応について〕
デフケースを削ることは設備的にも無理なので、好ましいことではないがピニオン側を削ることとした。
幸いにピニオン歯先は面取りされているので、この面取り代までの切削は噛み合い上の問題ない、との判断をした。

面取り代の切削後は、切削量を最小限にするため、デフケースにマジックインキ(光明丹がないので)を塗布し、ピニオン歯先の付着状態を見ながら接触しない状態まで切削を進めた。


結局、ピニオン歯先をおおよそ1mmほど削り落とすこととなった。

この不具合の対応は、悩みつつピニオン歯先を削ることとしたのだが、このデフが中古品であることからギヤ設定が正常かどうかを確認する必要がある。
このため、急きょ光明丹を入手し、歯面当たり状態を確認することとした。
その確認結果は、全く正常の歯面当たりであった。よってピニオンは正規状態収まりであることから、現時点でのこの不具合の原因はエアロッカー製品の設計、あるいは製作上の不備によるものと思わざるを得ない。


リングギヤの正しい歯面の当たり状態は、下図のようにホワード、リバース共に当たり位置が歯高さの中間で、歯巾の中心よりやや内側に寄っていること。

【参考:光明丹とは】

光明丹(こうみょうたん)は、一般には”鉛丹(えんたん)”と呼ばれるようだが、鉛化合物の極めて細かや微粒子粉末で、赤色顔料、錆止塗料、電子部品、ガラス添加剤、バッテリー極板など色んなものに使われている。
微粒子のためわずかな凸凹判定ができること、また、柔らか滑らかで焼き付き防止剤としても用いられることから、擦り合わせても傷を付け難いので、”すりあわせ・当たり面テスト用”として用いられている。
すり合わせ・当たり面テストには、粉末をマシン油など低粘度の油で溶いて塗布するが、硬化しないので拭き取りが容易で、また拭き取りが不十分でも、優れた潤滑性があるため問題ない。
このテスト用としては、粉末以外に練り状のもの、スプレー品などがあるようだ。
純粋な光明鉛丹は橙赤色をしており、大型トラックの下回りを朱塗りにしているのを見かけるが、それがこれの油性系錆止め塗料である。優れた錆止め効果がある。
また、朱塗りの神社や朱塗りの橋、船舶の船底の塗料もこれである。
ところで、鉛は有毒であり、微粒子粉末は飛散し吸い込み易いので、取扱いには充分な注意が必要である。
つづく
僕は光明丹は無くす可能性があるので、工具箱に常備しております。
知り合いにちょっと分けてもらって、5gのハンドクリーム(ペットボトルのふたよりちょっと大きい)に入れて持ち歩いています。
これだと、必要量をいつでも使えますし、フタで水に溶けば廃棄する必要もなく、いつでも便利に使えています。
世話になっている車屋でデフをばらした時に、当り確認をする時に出して見てたら「今の車屋でも中々持ってないのにシロートが持ってるなんて君もマニアック」と言われました(笑
ネット見てたら、保管にはファンデーションの入れ物が100均でも売っているのでいかがなものでしょう?
ってレポートとは全然関係ないですね。
光明丹を常備とは驚きです!
自分は、今回初めて見ましたよ。 必要な時はマジックインキや塗料を代用してました(汗
今回、近所のパーツ店へ駆け込んだら、「最近の車屋さんは使わないので、在庫なし」とのことでしたが、机の下を捜して手持ち品を分けてくれました。
保管容器の件、ありがとうございます。 微粉末のため扱い難いので、早速、採用させていただきます!
診断できないんかも知れないし・・・・!
機械加工屋さんは使うでしょうが、車関係では、趣味的にしか使わないんかもね・・・・!