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(有)遠藤測量設計事務所の「人生は上々だ!」

静岡県内で土木測量設計にたずさわる技術者のブログ

設計ミスについて

2013-01-17 12:33:48 | 土木技術について

前回の「会計検査」に続き、
今回は、設計業務にまつわる、「設計ミス」について、書いてみようと思います。

技術屋が試行錯誤して「ものを造る」ときには、ミスや失敗は付き物です。
原因はさまざまですが、大体、同じような要因であることが多いです。
以下に、設計する際に多い、ミスを引き起こす5大要因を挙げます。
  1.無知・経験不足
  2.思い込みによる判断ミス
  3.慣れによる確認不足
  4.打合せ・協議不足による設計思想の相違
  5.調査不足による現場との不整合

これらについて、私見を具体的に列記します。

 1.無知・経験不足
  いくら高学歴な出来杉君でも、これはどうしようもありません。

 2.思い込みによる判断ミス
  「オレの経験上、これでOKだ」という、慢心からくるミス。
  設計の根本が間違っている可能性があるため、大きな失敗につながります。

 3.慣れによる確認不足
  特に、構造計算ソフトなどの入力数値が変更されていなかったり、
  図面、計算書、計算式のコピぺミスによる過ち。構造計算ミスのNO.1原因です。

 4.打合せ・協議不足による設計思想の相違
  いやなヤツと話をするのがイヤで勝手にどんどんやってしまい、
  結果、「なんだこりゃー!」となってしまう、わかりやすいミス。
  成果納品前に発覚する場合が多いので、設計段階で大きな手戻りとなりますが、
  工事への影響は小さいと考えます。

 5.調査不足による現場との不整合
  現況・土地利用条件や用地境界、地下埋設、地下水位、土質・地形状況など、
  現場にはさまざまな制約があります。
  その制約(設計条件やコントロールポイント)が十分把握されないまま
  (机上のみで)設計されると、いくら素晴らしい芸術的な設計でも工事発注時に大爆発・・・
  「こんな設計で、工事なんかできねーよ!」と開店休業に・・・
  土方のくせに現場と汗を嫌い、白魚のような手をしたスーツにネクタイ紳士、
  机上大好き、建設コンサルタント技術者に多いミスNO.1です。

これらのミスを防ぐには、
定期的に「第3者技術者による照査を受ける」ことが最も効果的ですが、
経営難や技術者不足にあえぐ地場コンサルタントでは、
専属の熟練照査技術者を別室に据えることは困難です。
したがって、
経営難や技術者不足が深刻な中、いかに「品質を確保するか」が課題である。

どこのコンサルも技術者不足で経営難・・・

ひとり時間差、社内制手工業、独立採算制状態・・・

高い金だしてISO登録した会社でも、
内情は、どこもこんなもんかもしれません・・・




会計検査

2013-01-15 01:03:22 | 土木技術について

公共土木事業には、
市町村などの地方公共団体の単費で実施するものと、
国から交付金(補助金)を受けて実施するものがあり、
後者にあたるものには、
「おまえら、補助金やったんだから、ちゃんとした仕事したんだろうな!」
という国(会計検査院)による事業検査が完成数年後に行われます。
これを、会計検査といい、
発注者および受注者が最も恐れる検査です。
ですから両者とも、
常日頃、「会計検査」を意識しながら業務に励んでいる
といっても過言ではありません。

公共土木事業には各プロセスがあり、
大まかにいうと、調査・測量→設計→積算→施工があります。
そのうち、会計検査で最も多くミスを指摘されるのが「設計」であります。

設計し発注されたものは、設計図のとおり築造されてしまうことが多く、
過去にあった「姉歯事件」のように、
設計ミスで造ったばかりの構造物を「取り壊さなければならない」など、
取り返しのつかない事態となる、大きなリスクも含んでいます。

したがって、「設計」は、土木プロセスのなかで「花形じゃーん」といわれますが、
反面、ものすごく多くの、重大な責任を負います。

土木設計における失敗には、軽微なミスから、
「せっかく作った構造物をぶっ壊さなければならない」重大なミスまで
さまざまです。
特に、安定や構造計算が絡む構造物設計では、
軽微なミスや無知・経験不足による安易な考えが致命的な計算ミスにつながり、
結果、構造物の強度・安定不足などの
重大な失敗につながるケースが少なくありません。

会計検査の指摘事例については、さまざまな書籍がでています。
読んでみると、大体、指摘される案件は同じようなもので、
同じパターンのミスについて指摘しているものが多いと感じます。

他方、
ミスの指摘についても、
確かに高度な技術面で指摘しているものもありますが、大抵のものは
経験者が図面を見れば「ん~っ???なんじゃこれは???」と
気がつくものばかりであると思います。

たとえば、
盛土の幹線道路設計の、アンダーパスのボックスカルバート設計について、
ボックス上部に3.5mの盛土道路が築造されるにもかかわらず
ボックスの頂版鉄筋の主筋がD13@150で配筋されている・・・など、
設計技術者であれば「感覚」でわかるようなものが多いと感じます。
(大体、15cmピッチで配筋していること自体、どうかと思うけど)

会計検査で指摘され設計ミスが確定すると、是正勧告がなされます。
そこで責任の所在を明確にし、その是正(瑕疵)に対しての責任を取らされます。
補強工事で済むのか、はたまた、取り壊してすべてをやり直すのか、
いずれにせよ、多かれ少なかれ、賠償金が発生します。
場合によっては会社ひとつ、
宇宙の彼方まで吹き飛び、跡形もなくなります。
さらに追い打ちをかけるように、
お決まりの「数か月間の指名停止」になります。
(このへんは、レストランの「食中毒発生-営業停止」に似てますね)

こんな具合に、
ある意味、この恐ろしい「会計検査」があることで、
「土木構造物の品質・安全性が確保されている」
と言えます。

ちなみに、
この指摘例では、
ボックス上部(頂版)にかかる上載土圧荷重を軽減するため、
上に載る盛土土塊をすべて発砲スチロール(EPS)に置き換えて対処しています。
 (ま、当然といえば当然な対処法ですね~)

しかし、この是正に関する費用は、
すべて設計したコンサルタントに請求されたようですが、
それもどうかと思いませんか???