読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

大学的鹿児島ガイド 鹿児島大学法文学部編2018

2019年02月11日 | 地理、観光(国土地理院、観光庁)

(この本から学んだこと)
・九州南部の地形の50%は火砕流堆積物によるすシラス台地。浸蝕されやすく、谷が深く、河川争奪が多い。 
・島津氏は、源頼朝の時代から江戸幕末まで29代、700年近く薩摩を支配した。鹿児島の城は歴史的には4箇所あり、よって近世の城は鶴丸城と呼ばれている。
・近世、島津氏は、領国に10余の外城を置いた。外城の武士の集落が「麓」で、その景観を現在までよくとどめているのが知覧、出水、入来(薩摩川内市)の3箇所。
・屋久島は1993年に日本の世界自然遺産第1号に登録。そもそも鹿児島県が政府の背中を押して日本が世界遺産条約を締結することになった。世界遺産条約は1972年にでき、78年にはイエローストーンなどが最初に登録された。しかし日本は世界遺産条約に入る必要がないと考え、長いこと条約締結の準備をしていなかった。

 (この本で残念なこと)
 法文学部の先生達が書いているためか、歴史文化に重点が置かれており、現在の鹿児島の経済社会や、地形や植生など自然科学分野のことは少しだけしか書かれていない。「こだわりの歩き方」と副題がついているのに、史実の現場の正確な位置やアクセス方法についての記述が乏しい。
 奄美の日本復帰後の振興開発事業を、「補助金で「霞が関」に支配されてきた」と述べ、江戸時代の薩摩による「植民地支配」と同列に扱っている。正しくは、振興開発事業は、地元の強い要望を受けて実施されてきたもので、手厚い予算配分、地元負担軽減という一種の再分配政策である。「砂糖きび強制栽培」(による収奪)とは真逆のものだ。振興開発事業の問題点として、環境破壊や地域経済の依存構造を招いた側面があることは否定しないが、その一面のみを強調し、このようなイデオロギー的で誤解を招くような記述がみられるのはまことに残念。


コメントを投稿