読書ノート  

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インド:グローバル・サウスの超大国 2023中公新書

2024年02月27日 | 国際関係・海外事情(外務省、JICA)

この本は、インドの多様な地域特性に始まり、政治情勢、モディ政権化のインド経済、主要財閥と産業、貧困と環境問題、外交、日印関係までを幅広く解説している。
インドに関する日ごろの疑問

1独立後、インド経済はなぜ長らく停滞し、なぜ近年急成長しているのか?
 独立から1996まで国民議会派がほぼ政権を握り、インディラ・ガンジー首相などが非効率な社会主義的慶経済運営を推し進めたことから、東・東南アジアとは対照的に経済は停滞した。1991年に経済自由化に着手し、貿易自由化、関税引き下げ、輸出振興策が採られて経済は上向き、2003年にはBRCsの一つに挙げられるなど高い経済成長を記録した。2010年代には調整局面を迎えたが、2014年総選挙のBJPインド人民党勝利とモディ首相就任以後高い経済成長率を示し、その後コロナ禍があったが目覚ましく回復した。
 
2モディ首相とは?
 モディはグジャラート州のやや低いカーストの紅茶売りの子として生まれ、州議会議員、州首相として経済成長、インフラ整備で実績を挙げた。
 モディが属するインド人民党はヒンドゥー至上主義の非営利団体を支持母体とする右派政党。都市中間層のヒンドゥー教徒が支持層で、ビジネス志向、愛国主義的傾向が強い。
モディ政権の主な実績は、①インフラ整備、②投資環境の改善、③汚職撲滅。
 ただし、土地収用法の改正はとん挫し、国営企業民営化は遅れている。
 著名な経済学者からモディ政権が批判されるのは、開発独裁的な姿勢、貧困、公式統計への介入などが理由。

3インドのIT産業の興隆はどのようにもたらされたか?
 ①観念的なことに秀でるインド人の素養、②優秀な人材が理工系に進学する傾向と英語教育。③インド政府のIT振興策。④安い労賃を生かしたローエンドのソフト開発で独壇場、⑥米国IT産業のインド人が米国企業とのパイプの役割。
4インドの製造業はなぜ遅れているのか?
 電力供給の不足や道路整備の遅れなどインフラの未整備。
 労働者の生産性の低さ。若者多くは近代的な工業部門で働くためのスキルを身につけていない。職業訓練施設が不足し未熟練労働者が多い。


5インドの貧困の実情と改善の見通しは?
 インドは教育や保健でも政府の取り組みが不足している。政府予算の保険支出がアジアでも少なく、医師看護師は先進国の10分の1以下。神混相はコロナでも病院にたどり着けなかった。
 極貧層が1.39億人、世界の20%もいて、世界で最も貧富の格差が激しい国の一つ。労働人口の46%を占める農業の生産性が極めて低く、農村は貧しい。灌漑設備や農道の整備を怠ってきた。
 男女間格差が深刻で、女児は中絶するケースが多く、女性の社会進出、政治参加も遅れている。
 カースト制度が根強く残り、憲法はカースト差別を禁じている(カースト制度自体は認めている)が、カースト間には越えられない壁がいまだに存在する。


 



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